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Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇青年期編~第二章~◇
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晩餐会~終盤~

 リーンはユーリを抱えながら宮殿内の自分に当てがわれている部屋へ向かっていた。

ユーリは、暴れ疲れたのか今は大人しく寝息を立てている。

ユーリが如何に軽いといっても、完全に脱力した人間は結構重たい。


 僕も日ごろから鍛えてはいるが、線が細いせいか、持久力に欠ける。

今回用意された部屋は、三階の奥の部屋だったので正面の入り口からはかなり離れたいた。

それは、正面左手奥で宮殿の背後が監視しやすいとして、その部屋にしてもらったのだが…

今はそれが仇となっていた…意外と遠い…


 僕は二階から三階に上がる階段のエントランスでへばっていた。

今後の緊急事態に備え、あまり使いたくは無かったがルールスペースを発動して、重力を操作する。

ユーリの体が羽のように軽くなった。

僕は気を取り直して、部屋へユーリを運ぶのだった。


 部屋はかなり広い作りになっている。

前世のホテルのスイートルームといった感じだ。

20畳はあるだろう、応接間と、その半分くらいの寝室がある。

ベットはダブルベットの大きさで、天蓋が付いている。

また、隣接して広めの浴室も付いている。


 僕は、部屋に入り、ユーリをベットまで運び、寝かせた。

ユーリは少しむず痒い感じに「うーん」などと言っていたが、どうやら起きる様子は無いようだ。

平気だと思うが、一応、ユーリの顔を窺う…

『寝ている分には本当にかわいいのにな…』

などと、感じながら頬を突付く。

「う…うぅーん」と少しむず痒い様子を見せたが直ぐに、静かな寝息を立てて始めた。


取りあえず、問題ないようなので、僕は、応接間で一息つく事にした。


応接間のソファーに座り、一息つき呟く…

「今日は気疲れする事ばかりだな…

まあ…こういった式典なんかはしょうがないか…」


僕は、朝からの緊張感が抜け、いつの間にか、ソファーで転寝うたたねを始めるのだった。


◇◇◇◇◇


 ユーリ・アルベールは、薄暗い部屋のベットの上で目を覚ました。

窓のレースのカーテンの隙間からは月明かりが差し込んでいる…

周りを見渡しても見た覚えが無い部屋だ。

不安になり辺りを見渡すと、隣の部屋に続くドアから明かりが漏れている。


私は、ボンヤリした頭で、今の状況を整理した。

『確か…リーンが仲良く他の娘と踊っているのを見て居られなくなって…

中庭の噴水で、お酒を飲んでいたはず…

…えっと…そしてエリザが追加のお酒を持ってきてくれて…?

その後の記憶が……!

そーだ!リーンが来たような気がする!

もしかして、ここはリーンの部屋?!』


私は、起き上がり、ドアへと向かった。

起き上がったのは良いが、少しふらつく…

まだ、お酒が抜け気っていないようだ…


ドアをそっと開けると応接間だった。

部屋はシャンデリアの光魔法が付与された魔法石で夜更けでも明るい…

見渡すとソファに座った、リーンが確認できた。

後ろ姿だが、その白髪と雰囲気で直ぐわかる…

もっとも私がリーンを見間違う事などないのだが…


私はそっと近づいてリーンの前に回り込んで声を掛けた。

「…リーン?」


リーンは、俯いて寝ているようだ。

リーンは普段ならこんな無防備な姿は見せないはずなのだが、今日は疲れているのか、

私が覗きこんでも起きないようだ。


リーンは幼少期に刺客に襲われて以後、寝ている際に人が近づくと起きてしまうと言っていた。

唯一、私だけは例外で、私がリーンの寝ている時に近づいても寝ていられるらしい…

その証拠という訳でもないが、今は起きる気配が無かった。


私はもう一度声を掛ける。

「リーン……起きてる?」


私はそういながらリーンに顔を寄せる…

リーンの整った顔立ちが間近になる。

私は、ドキドキしながら、さらに顔を近づけた…


不意にリーンの目が開く。

思わず目と目が合った。

私は驚いて、飛び退いた。


リーンは少し寝ぼけた感じで、声を掛けてきた。

「やぁ…ユーリ起きたんだね。

随分飲んでたみたいだけど…大丈夫?」


「えぇ…もう平気…」

私は焦りながら何とか答えた。

顔が熱いのが分かる…きっと真っ赤になっている…

私は顔を背けてもじもじしてしまった。


◇◇◇◇◇


 リーンが目が覚めるとユーリが僕を覗き込んでいた。

何時の間にかソファーで眠っていたらしい…

窓の外を見ると暗いのでそんなに時間はたっていないだろう…


ユーリは僕が目覚めると距離を置いて俯いている。

顔が少し赤い…まだ酔いが醒めてなのだろう。


僕が声を掛けると、ちょっとどもった返事だが、答えてくれた。

酒は抜け気っていないが、意識はしっかりしているようだ。


僕は、改めて晩餐会での事を詫びる事にした。


「ユーリ、晩餐会では、エスコートする約束だったのに、ほったらかしにするような事になってごめん」


「…それは…リーンの立場じゃ仕方が無いわ…仮にもホスト側なんだし…

…でも…それでも!私の我儘なのは分かってるけど!リーンには側に居て欲しかった!」


「…ごめん、気が回らなくて…」


「…リーンに一つ確かめたかったんだけど…」

ユーリは両の手でドレスをきつく掴んで真剣な表情で、僕を見据える…

何か一大決心をしているようだ…

僕は、ユーリの言葉を固唾を飲んで待った。


「……リーンは私の事をどう思ってるの?……」


『僕の気持ち……ユーリは大切な家族だ、愛おしいくてたまらない…

この感情は『愛』といって良いだろう…

だが…これは恋愛感情なのだろうか?』


僕は少し悩んだ後、当たり障りの無い返事をした。

「…ユーリの事は好きだよ…大切な家族だと思ってる…」


ユーリはブンブンと頭を振る。

「…私が言っているのはそういうこと事じゃないの!

異性として!恋愛対象として!どう思ってるかってことなの!」


僕は言葉に窮する…

僕は今まで恋愛感情を敢えて考えないようにして来た…

…だが今は…国も奪還し、情勢もまだ不安定ではあるが、見通しは明るい…

そろそろ、自分の感情を押し殺すことは止めては良いのではないだろうか…?


思えば、エルウィン王国を出奔して、アルベール家で世話になってから、

何かに付けユーリは僕に良くしてくれていた…


特にカストラートに来たばかりの頃に僕は、かなり落ち込んでいて、人と接する事を拒んでいた。

そんな僕にユーリは明るく接してくれた。

僕はそんな態度にどんなに救われたか分からない…


それに…正直言って、どう取り繕ってみた所で、僕はやっぱりユーリの事が好きなのだ。

失いたくない…誰にも渡したくない…守りたい!

これは、恋愛感情以上…いいや…『愛』だと思う。


僕は、真剣な顔でユーリに向き直る。

ユーリは今にも泣きそうな顔で僕を見つけていた。

僕は微笑み、答えを返す。


「…僕は…ユーリが好きだ。

誰よりも愛している!

それはキチンと異性としてだ!」


ユーリは、僕の言葉を聞いて、僕を見つめたまま、ボロボロと涙を流した。

「ほ……ほんと?」


「…あぁ、本当だ!」


「嘘…じゃないよね?」


「嘘じゃない!」


「信じて良いの?」


「信じて貰わないと困る!」


ユーリは駆け出し、僕に胸に顔を埋める。


「……やっと…やっと言ってもらえた!

嬉しい!」

ユーリは嗚咽交じりに呟いた。


「…随分…待たせたみたいだね…ごめん」


「…ううん…良いの!」

ユーリは僕の胸に頭をつけたまま頭を振る。


僕らは強く抱きしめ合い、お互いの体温を感じる。

そして、何時しか自然に唇を重ねていた…


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