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Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇幼少期編◇
5/66

リオンとメアリ

2012年12月30日改修

 リオン・ウィード・ヴォルタールは今、メアリ殿下の離宮を目指して歩いている。

離宮といっても、この「ペンドラゴン城」の城壁内に作られたものなのでそれほど離れていないし、

他の王妃の離宮や王宮内の部屋にくらべるとずいぶんこじんまりしている。


 これは、メアリ王妃が豪華な生活をあまり好まないのと、

他の王妃に遠慮してしたという2つの要素からそうなっていた。


 だが、このエルウィン王国は、他国との海洋貿易でかなり潤っている。

他の国への物資の中継地点という立地の利点もあり周りの国々より裕福なのが現状なので、

メアリ王妃以外の王妃はかなり贅沢な暮らしをされている。

したがって、メアリ王妃の行動はかえって他の王妃にとって疎まれる結果となっていた。


 しばらく歩くとその離宮「メアリ宮」が見えてきた。

メアリ宮は、二階建てで、少し広めの庭には花々が咲き誇っている。


 特に目立つのは、白い花の数、メアリ王妃は淡い色合いを好むので、白や、水色の花が目立つ。

門をくぐり、両開きのドアの横についている呼び鈴を引っ張る。

しばらくして、ドアが開いた。

前もって、騎士団の従者に伺う旨を伝えていたので、対応が早いのだろうと判断する。

扉が開いた時、思わず目を疑ってしまった。


 出てきたのは、執事でもメイドでもなく、メアリ王妃本人だったからだ。

度胆を抜かれて急いで、お辞儀をし、私は、名乗る。

「メアリ王妃殿下、お初にお目にかかります、

私は、「風雷騎士団」のリオン・ウィード・ヴォルタールと申します。

このほど、リーン・ウォーター・ペンドラゴン王子殿下の側近及び

教育係りの命を受け本日参上いたしまた。」


 なんとは、噛まずに名乗りを挙げることが出来、胸を撫でおろす。

そんなそぶりを見ていたメアリ王妃は、気さくに笑顔で対応する。


「そんな、かしこまらなくていいですよ。

今日は、リーンの為に来てくれてありがとう。

リーンは生まれて間もないから…そんな、急に教育係りなんていらないに…

メイドで十分だと思ったんだけど、マルケルが決まりだからってうるさいのよね。

リオンさんもそんなに固くならずに気軽にリーンに接してあげてね。」

と、言ってきた。


 これは、さすがに驚いた。

そんな一国の王妃や王子に気さくに振る舞えなどと言われるとは思いもよらなかった。

私は、「そうは言いましても王妃殿下…」


言葉は途中で遮られた。


「私のことはメアリで良いですよ」

と、王妃は、言ってきた。


私はあっけにとられ…

「えーそれでは、メアリ様…でよろしいですか?」


メアリはにっこり笑い

「はい、これからよろしくおねがいしますね。リオンさん。」

と、手を差し出してきた。


 王族から家臣に対して握手を求めることは、この国、いやこの世界で聞いたことがない…

でも私はとっさに手を差出し、メアリ様の手を握り返していた。

私は、不思議な人だと思わずにはいられなかった。


 そんなやり取りをしていると、パタパタと屋敷の奥からかけてくる数人の人影が現れた。


「メアリ様~、私がお出迎えしますから!

お願いしますから、私達、使用人より先にお客様の応対をしないで頂けませんか~」

と息せき切ってメイドの女性二人と、執事と思われる初老の男性が走ってきた。


「そうですぞ!

メアリ様!

エルウィン王国王妃ともあろうお方が直々にお客人の対応に出なさるとは!

ジイは嘆かわしゅうございます!」

と赤い髪のメイドと黄緑の髪の初老の男性が交互に言ってくる。


 ちなみにもう一人のメイドなにも言わず追随している…


「まあ!だってせっかくリーンの為にいらしてくれたんだから、待ちきれなかったのよね。」

と悪びれもせずに笑顔で使用人達に応対している。


するとメアリ王妃は振り返り執事達を紹介する。


「そうそう、リオンさん、紹介しますね。

うちでお手伝いをして頂いている人たちよ。

こちらの男性は、執事の『アレクシア』」

すると男性は、綺麗な隙のないお辞儀をした。


つづいて赤毛の女性に手を向け、その隣の青い髪の女性もつづけて紹介する。


「こっちの女性二人は、メイドをしてもらっている『アメリア』と、『シア』よ。」

すると女性二人はそれぞれ、お辞儀をしながら、「アメリアです。」「シアです。」

と、名乗った。


私は、再び腰を折り、礼をして名乗った。

「私は、「風雷騎士団」のリオン・ウィード・ヴォルタールです。

このほど、リーン・ウォーター・ペンドラゴン王子殿下の側近及び

教育係りの命を受けて参りました。

皆様、これからよろしくお願いいたします。」


すると、執事の男性が、お辞儀をしながら返答する。


「リオン様、私ども使用人にそのようなかしこまった挨拶は不要です。

我々こそ、今後ともよろしくお願いいたします。」


 そんなやり取りを見ていたメアリ様は何か思いついたように

「そうだ!リオンさん!

朝食まだでしょ!

是非食べて行ってくださいな!

うちの『シア』の料理はとってもおいしいのよ!」

と、言ってきた。


すると名指しされたメイドが

「うん。料理には自信があります。」

と、無表情で答えていた。


 私は慌てて、

「本日は、メアリ様とリーン様にご挨拶にお伺いしただけですので、

そのようなお気遣いはしていただかなくても…」

と語尾が消えかける途中で、


メアリ様が

「良いじゃありませんか。

最近、お客様も来ることが無くて退屈していたのよ。

騎士団のこととか最近の城下のこととか聞かせてほしいわ。」

と、言ってきた。


 私は少し考え、離宮に閉じこもりっきりで、かなり退屈しているだろうと感じたので、

食事をご一緒することを了承した。

「わかりました。

私の知っている事でよければ…

あまりご婦人が興味がある話はありませんが…」

と少し、言いよどむと、


「ほんとうですか!

わー城下とか、全然でかけられないから楽しみだわー」

と嬉しそうにはしゃいだ。

私は苦笑し、メイドと執事に案内されながら食堂に向かった。


 私は、食堂に案内される途中、どうしても、王子に先に挨拶してから食事をとりたい事を伝えた。

メアリ様は、快く了承し、王子が寝ている、ご自分の寝室に案内した。

メイドが慌てて、王子をお連れしてくると言っていたが、

すぐに済むからとメアリ様に押し切られていた。


 寝室に到着し、リーン王子を見た瞬間、私は解っていたこととはいえ、驚きを隠せずにいた。

話に聞いていた通り、リーン王子は「無色」だった。

本当に、まったく、魔法属性が無いのか確かめるべく、

近くまでいき、挨拶をしながら観察する…やはり魔法力による圧迫感は感じられない…

魔法力がある子供は、子供であるがゆえにコントロールが出来ず、魔法力を放出する為、

圧迫感のようなものを感じるものだが…

リーン殿下にはそういったものは感じることが出来なかった。

だが…逆に自分の魔法力が減った気がした…ような…違和感があった。


 しかし本当に、髪も肌も抜けるように白い、顔はメアリ様似でとても可愛いらしい、

とても男の子には見えなかった。

私は、こんなかわいらしい子供をもしかすると殺すことになるかもしれないと思うと

気が滅入るのを抑えることが出来なかった…。


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