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Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇青年期編~第二章~◇
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晩餐会~中盤~

 舞踏会場…今日は、戴冠式の参列者が引き続き、この晩餐会とそれに伴う舞踏会に参加していた。

参列者の殆どは同盟国の7カ国からの要人とその同伴者が出席している。

それと、国内の元貴族や有力商人も参加していた。

総勢、300名の男女がこの会場をひしめき合っていた。


 僕は、養父との約束通りユーリを伴いダンスの輪に加わる…

僕の白髪はこの世界では奇異な存在なので、一目で噂の王弟将軍だと分かる。

その為、直ぐに会場の人々の注目を浴びる事となっていた。


僕は、幼少の頃教わったダンスを思い出しながら踊り始めた。


…そう言えば、あの頃のダンスの練習相手もユーリだった…

カストラートに来た頃は、学校などには行かせてもらえず、屋敷の中で過ごす日々だった…


そんな、僕を不憫に思ったユーリが良く外の話をしてくれたり、

ダンスの練習相手をさせられたりしたことを思い出す。

僕が思い出し笑いをしてニヤついたのをユーリが咎める。


「な…なによ。

リーン、何がおかしいの?!」


「いや、ごめん、子供の頃を思い出してさ。

こうやってユーリとダンスを踊ったり、遊んだりしたなって…」


「そうね…何だかそんなにたって無い筈なんだけど…

随分、昔に感じるわね…」


僕らは感慨に耽りながらダンスに興じたのたっだ…


周囲からは感嘆の声が漏れていた。

僕とユーリのダンスは結構練習させられた事もあり、

息がピッタリで、かなり上手い部類だったのもあるが、

僕とユーリがお似合いだという感じの暖かい賛辞も混ざっていたようだった。


一曲終わり、僕らはお互い一礼する。

何だか、ユーリが少し名残惜しそうに僕を見つめている。


しかし、テミス皇女がおもむろに近づき、ドレスの端を摘んで、僕に向かって一礼した。

「リーン様、一曲お付き合いください」


「はい、テミス様、お相手させて頂きます…」


僕とテミスが踊り始めた…


ユーリは所在無げにダンスの輪から離れた…


◇◇◇◇◇


 ユーリ・アルベールは、ダンスの輪を離れ、

リーンとテミス皇女のダンスを見つめていた…

テミス皇女が笑いかけ、リーンが答えるように微笑む…

リーンにしたら社交辞令的に笑顔を返しているのは解っているのだが、

何だか私はそれを見て、胸の奥に『チクリ』と痛みを感じていた…


 私は改めて、思わずにはいられなかった。

『…ああ…私は本当にリーンの事がどうしようもなく好きなんだ…』


 この思いは何時ごろからだろう…

もしかすると会った時からだったかもしれない…

でも今の強い気持ちは以前と比べ物になっていないのが自分でも良く解る。


焼もちは以前からしていたが、最近は拍車がかかっているような気がする。

あんまり、焼もちを焼くとリーンに迷惑が掛かるし、嫌われかね無いと思ってはいるのだが…

どうしても制御しきれていない…


最近は、王弟として、そして騎士団長として接している事もあり、

距離が出来てしまったという思いからかもしれない…


今日みたいに以前と変わらない接し方をされたのは久しぶりなような気がした。

それなのに…テミス皇女のせいで折角の時間が台無しだ。


私はこれ以上、皇女とリーンを見ていられなくなり一人、飲み物を携えて、

テラスに向かった。


◇◇◇◇◇


 リーンは、テミス皇女と一曲踊った後、次々にダンスを申し込まれ…

結局、10曲ほど踊った所で、何とか合間を縫って、ダンス会場から抜け出す事が出来ていた。

普通ダンスは男性から誘うものなので、こんなに女性から申し込まれるとは思っていなかった。


僕は一人ごちる…

「…考えが甘かった…こんなに接点を持とうとする女性が多かったとは…

僕自身の自分の立場を今一度見直さないと…」


と、僕はここで、ユーリが会場にいない事に気づく。

『しまった!結構な時間ほったらかしにしてしまった!』


場内を見るが見当たらない…

テラスに出て外の様子を見ると、噴水の所にユーリらしい人影が目に付いた。

僕は、急いで、屋敷を出て、噴水の端に腰を下ろしているユーリに近づく。


「…ユーリ、ほったらかしにしてごめん!」


ユーリの周りに空のグラスが5杯置いてある…

…振り返ったユーリは少し赤ら顔で、目が据わっていた…


僕は思わず呟く…

「…誰だ…ユーリにこんなに飲ませたのは…」


ここは、会場から離れた中庭である、給仕の者は流石にここまでは来ない…

誰かがグラスを持って来たとしか思えなかった。

もちろん、ユーリが持って来たとも考えられなくは無いが…

流石に5杯は持てないだろう…


すると、突然、背後から僕の独り言に返事があった。

「…私が、お持ちしましたが?…」


僕が驚いて、振り返ると其処にはエリザが軍服姿で立っていた。

僕は、思わず驚いて飛びのく。


「…あ…あぁ、エリザか?!ビックリした…」


「…?そんなに驚きますか?…私が屋敷周りの警備に付いているのは知っていると思うのですが…」


「まぁ…それは知ってるけど…いきなり気配も無しに背後に立たれると流石に驚くよ」


「…そうですか?…」


「それより!なんでこんなにユーリにお酒を飲ませたのかって事だよ!」


「…あぁ、それですか。

ユーリが何だか落ち込んでいて、『飲みたい気分なの…』と言っていたので、持って来てあげました…」


「いや、いや、いや、其処は友達として、程ほどで止めるべきじゃないの?!」


「…そうですか?」


「普通そうでしょ!」


そんな口論を僕がエリザとしていると、ユーリが声を荒げた。


「ちょっと!リーン!今まで何処行ってたのよ!

私をほっぽっといて!酷すぎるんですけどー!」


僕は額に手を当て空を仰ぐ。


「…いや、ごめん!ユーリ。

中々舞踏会場を抜け出せなくて…」


ユーリは目が据わった状態で僕を睨みつける。


「リーン!言い訳なんて男らしくないわ!

どうせ、他の女といちゃいちゃしてたんでしょ!

この浮気者!女の敵!甲斐性なし!」


…いいたい放題である…

僕は、何とかユーリを宥めて、休憩室に促そうとするが…


「リーンの馬鹿ー!あっちいけ!」

などと、腕をブンブン振って抵抗される…


今は、3月初旬だ…まだエルウィン王国は肌寒さを感じる。

こんな夜半に肩を出したドレスで外にいたら風邪を引いてしまう。


僕は、思い切ってユーリを抱き上げ、無理やり移動させる事にした。

僕は抵抗されながら何とかユーリを担ぎ上げる。

いわゆる、姫様抱っこというやつだ。

そして、取りあえず、この屋敷に用意されている部屋へと向かう。


今日は、兄の警備も兼ねて、この宮殿に泊り込む事になっている。

その関係もあり、僕には部屋が割り当てられていた。


僕は、振り返ってエリザに声を掛けた。


「エリザ!ユーリを僕の部屋で休ませるから、

何かあったら、そっちに知らせてくれるようにリオンさんに言っておいてくれ!」


エリザは、頷き、何故か親指を立ててサムズアップする。


『??なんだ??』了承してくれているんだよね?

と、その仕草に不可解さを感じたが、今はユーリを休ませる事を優先して、部屋へと向かった。

ご意見・ご感想を頂ければ幸いです。

執筆の参考にさせて頂きたと思います。

よろしくお願いいたします。

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