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Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇青年期編~第二章~◇
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戴冠式

 エルウィン王国の首都を奪還してから一ヶ月…

2週間後には、各国に独立宣言を発表し、エルウィン王国は復権を内外に発表した。

ウルク帝国は、この独立を不当なものとし、不支持を表明したが、その他の中央大陸の国々は、

『エルウィン王国』の独立を支持し、新たな同盟国として、迎え入れた。

これにより8カ国同盟が成立したのだった。


そして、今日は、新生エルウィン王国の国王、

『アルベール・ウォーター・ペンドラゴン』の戴冠式当日だ。

戴冠式は、首都『エルウィン』にある大聖堂で行われる。


 この世界には、聖十字教会という一大宗教がある。

細かい宗教も存在するが、中央大陸での主な宗教と言えばこの『聖十字教』を指した。


 この宗教の教示は3つ『博愛』『節制』『勤勉』を主として、庶民から絶大な支持を受けていた。

特に貧困層には、『博愛』精神の基、施しなどが定期的に行われていたので、特に人気がある。


 ちなみに、法王庁の所在地は、中央大陸で2番目に東の国『レプラホーン王国』にある。

そして、現在の法王は『ベルトーネ・アバリスク』法王だった。


戴冠式などの神の神事を受けなければならない時は、

この『聖十字教』の神官から戴冠されるのがこの中央大陸での通例なっている。

今回もその例にならい、『聖十字教』から戴冠を受ける。


今回の戴冠式は、法王が高齢の為、エルウィン王国在住の枢機卿が式を執り行う予定だ。


 そして、午後からは、各国の来賓を招いた晩餐会が行われる予定だ。

晩餐会の会場は、無骨なアイルゼン砦と言うわけには行かなかったので、

ウルク帝国が使用していた宮殿を使う予定だ。

もっともこの宮殿自体は、旧エルウィン王国時代の第一王子エギルが使用していた『エギル宮』であるのだが…


 リーンは、首都の中心にある大聖堂までの護衛を任されている。

護衛自体は、『雷鳳ライホウ騎士団』の精鋭200人で護衛するが、キース率いる斥候部隊が街の各所を警備していた。その他、各国からの来賓者も護衛しなくてはならないので、結局、王国軍総出で首都全体の警備をしなければならなかった。


戴冠式には僕も列席しなければならないので、全体の統率は副指令兼副団長のリオンが担当してる。


僕は、主にアルベールの身辺警護が主な任務だ。

そして今、アルベールを乗せた馬車を先導する形で白馬に乗って警備し大聖堂に向かっている。

服装は、白を基調にした軍服だ。

僕のこの軍服の印象は、ベルサイユの薔薇のオ○カルみたいだ…と言っておこう…

自分的にはちょっと気恥ずかしい…

だが、僕はそんな事はおくびにも出さず、平然と石畳の街中を進む。


 沿道は、こんなに人が居たのかというほどの人が詰め掛けていた。

通り道以外、人で埋まっている。

沿道で見れない人は街道沿いの建物の窓や屋根からこの行進を見学していた。

皆一様にエルウィン王国の国旗を掲げ、紙ふぶきを散して手を振り歓声を上げている。


「「「エルウィン王国万歳!!!」」」

「「「アルベール国王万歳!!」」」

「「「リーン将軍万歳!!」」」


 人々が口々に叫ぶ、みんなウルク帝国の圧政からの解放を心から喜んでいた。

僕は、清々しい気持ちで、馬を進める…

…僕のやって来たことが報われたと心底思え、僕は感慨に思わず耽る。


そして、余談だが…歓声には、黄色い女性の歓声も多数含まれていた。

「リーン殿下!愛してます!」

「リーン殿下素敵!!」

「リーン殿下こっち向いて!」


…何だかアイドルにでもなった気分でこそばゆかったのは言うまでも無い。


その人気は、アルベールを凌ぐものだった。


そのリーンの人気に、馬車の列に同行している摂政のマルケルは危機感を抱く…


国民は、当初、リーンの事を『無色』だからと、その存在が明らかになった時は、

大して役に立たないと侮っていた。

だが実際は、今回の戦で、高い能力を示し、王国奪還を果たした事で、

今度は、リーン王子を『英雄』として褒め称えていた。


沿道での行進は、滞り無く進み、馬車は、大聖堂へとたどり着く。

予定通り、各国の来賓者も参列して戴冠式は、滞りなく行われた。

実に10年間、正式に戴冠できなかった、アルベールの心境はひとしおだったことだろう。

 

 アルベールは、大神官から厳かに冠を頂、大聖堂に来場している人々に高らかに宣言した。

「我、アルベール・ウォーター・ペンドラゴンは、ここに『エルウィン王国』15代目国王となったことを宣言する!」


会場から拍手と歓声が上がり、大聖堂の鐘が打ち鳴らされる。

そして、外では幾つもの花火が打ち上げられた。


国民は諸手を上げて、喜ぶ。


…ここに、新生エルウィン王国の国王の誕生が高らかに宣言されたのだった。


◇◇◇◇◇


 戴冠式も滞りなく終わり、新国王と来賓者達は、晩餐会の会場である『エギル宮』に集まっていた。

昼過ぎに開かれた戴冠式から休憩を挟み時刻は既に夕方…いよいよ晩餐会が始まろうとしていた。


 リーンは、警備の確認をリオンと行い、やっと少し休憩する事が出来ていた。

僕は、中庭の噴水の端に 腰を掛ける。

このエギル宮は街から少し離れた高台にある為、街が一望できる。

しばらく、夕闇にくれようとする町並みをボンヤリ眺めた。


 街は新国王を祝ってお祭りを開催している。

所々、臨時の街灯が設置され、この世界にしてはかなり明るい風景を作り出していた。

こんなに街から離れていても喧騒が聞こえてくるのだから、結構な盛り上がりだと確認できる。


 そんな風景に見入っていると、背後の宮殿から人が近寄ってくる気配がしたので、

僕は何気無く振り返った。

そこには、淡い青のドレスを着た『ユーリ』が立っていた。

ドレスは肩口を出した前世のウエディングドレスを連想させる作りで、

とても、ユーリに似合っていた。


ユーリは少し恥ずかしそうに上目づかいで、僕を見る。

「…ど…どうかな?

似合ってる?」


僕は、思わず言葉を無くし、凝視してしまっていた…

あまりにもユーリのドレス姿が似合っていて、思わず見とれてしまっていた。

僕が返事を返さないのをユーリがいぶかしむ


「…どうしたのリーン?

このドレス似合ってなかった?」


僕は慌てて、首を左右に振って否定する。


「いや、いや、いや、いや!

そうじゃないよ!

あまりに似合っててビックリしただけだよ!」


「そ…そう!よかった!」

ユーリは少し顔を赤らめ、照れ隠しに一回転してみせる。


この会場の警備からはユーリは外してある。

それは、養父のエイナス・アルベールが来賓として、来ている為だ。

国外来賓者の娘が、警備に付くのは対面上都合が悪いと判断されたのだ。

その為、エイナスが滞在中は、部隊からは外す事が決定していた。


他のメンバーは、警備部隊にそれぞれ配置している…

悪いとは思ったが、みんなは快く了承してくれていた。


かく言う僕は、王弟として、強制参加を命じられている…


すると、今度は男性がこちらに近づいてきた。

養父のエイナスだ。


「リンネ…いやリーン久しいな…」


養父トウさん!

お久しぶりです」


「怪我をしたと聞いたがもう大丈夫なのか?」


「はい、日常生活には支障ありません。

只…左手での投擲が以前の様に上手くできませんが…」


「まあ、それぐらいは仕方なかろう、大事に至らなくて良かったじゃないか」


「そうですね…戦ですから、贅沢はいえません。

命があるだけ良かったですよ」


「お前が、命を落とすなど考えられないが…

どうも、お前にとってあの異世界人達は天敵のようだな…」


「…そうですね。

僕も因縁を感じずにはいられません…」


「…で、国の再興が叶った今となっては、こちらの雷光騎士団はどうする?

私としては、復帰してくれればそれに越した事は無いが、そうも行くまい?」


「はい…その事なんですが、やはり辞任させてください。

後任は、エクスさんにお願いしたいと考えていますが…どうでしょう?」


「…仕方が無いな…こちらも将軍職は用意できるが、王弟という立場までは用意できない。

だが、これだけは約束してほしい、カストラールが危うくなったら、直ぐに駆けつけると…」


「はい!何をおいても真っ先に駆けつける事を約束します」


僕らはその後も軍の状況などを話そうとしたが、

黙って聞いていたユーリが口を挟んできた。


「ちょっと!お父様!そんな話は、またの機会にして!

もう、晩餐会が始まっちゃうわ!」


「おぉ…それはすまなかった。

リーン続きは、後ほど頼む。

今日はユーリをエスコートしてやってくれ。

お転婆な娘だが末永く頼む。

…お前にアルベール家の跡を継がせるつもりだったが、そうも行かなくなってしまった。

ここは、アルベール家の跡継ぎはお前達の子供で我慢するとしよう」


ユーリが真っ赤になって養父に詰め寄る

「ちょ!ちょっと!お父様!」


「なんだ?ユーリ。

リーンの事が好きだったんじゃないのか?」


「もう!お父様なんて知らない!」


ユーリは、養父を睨みつけた後、僕も睨みつけ、宮殿に駆け出す。


僕は少し呆然としてそれを見送る。

その背中に養父が声を掛けた。


「リーン、今のは、冗談ではないぞ。

お前も満更でもあるまい?」


「……えー…そ、そうですね…情勢が落ち着いたら考えさせて下さい」


「…そうか…良い報告を待っているぞ」


そう言うと、養父も宮殿に向かってゆっくり歩いて行った。


僕は暫くその場で、佇んでいたが、晩餐会の開始が近い事に気づき、慌てて宮殿に走っていったのだった。

ご意見・ご感想を頂ければ幸いです。

よろしくお願いいたします。

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