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Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇青年期編~第一章~◇
40/66

王弟

今回から青年期編となります。

目の色の設定をカラコンで変化させていた事に変更しました。


 サイアスを出てから三日、僕達は、

『ウルク帝国第7区』旧エルウィン王国の 南の端の町『ヴォルタール』に付いていた。

このヴォルタールは、以前は、エルウィン王国の『風の公爵』として有名だった、

ヴォルタール家の領地だ。

今は、ウルク帝国の第7区の一部に過ぎないが…

ここは、それでも区域内では、帝国から一番離れているので、

エルウィン王国解放戦線の拠点となっていた。


 僕らは、日が沈んでから、事前にカストラートに連絡のあった、

ヴォルタールの町外れにある三階立ての大きめの屋敷に裏庭に降り立った。

貴族の屋敷にしては、それ程ではないが、ある程度の豪商の屋敷と見受けられる。

裏庭には、『風雷騎士団』団長の『リオン・ウィード・ヴォルター』と数名が、

僕達を出迎えてくれた。

リオン達は、跪いて頭を垂れる。


「リンネ様、お久しぶりです!

大きくなられましたね」


「リオンさん!

お久しぶりです!」


僕は、飛竜ドラグーンを飛び降り、膝をついているリオンの手を取って、

勢い良く握手をした。


『風雷騎士団』団長の『リオン・ウィード・ヴォルター』…

幼少の頃、僕に剣と体術を教えてくれた師匠であり、

ウルク帝国のエルウィン王国侵攻時には、僕の狙撃の護衛をしてくれていた人物だ。


リオンは、苦笑して立ち上がり、僕らを屋敷に促した。


「リンネ様、アルベール陛下がお待ちです。

ご案内いたしますので、どうぞこちらへお越しください」


 僕らは、飛竜ドラグーンと荷物を預け、

リオン達に促され、屋敷の広間に案内された。

どうやらこの広間は、謁見場代わりに使われる広めの部屋らしい。


 広いといっても、城や砦ではないので、30人も入れば良い方だろう…

広間に入ると、一番奥に椅子があり、少しやつれたアルベールが見て取れた。

椅子の左背後に摂政の『マルケル・ド・フランシーヌ』が確認できる。


 僕らは、リオンの後に続いて、入室する。

リオン達は、僕らを挟んで前後に分かれて、入室したが、

部屋に入ると、兵達は、両壁にそれぞれ分かれて、起立した。

リオンだけ僕らを先導し、アルベールに僕らの到着を告げる。


「リンネ・アルベール様と『雷光騎士団』の方々をお連れしました」


アルベールは、頷きそれに答えると、リオンは、右の列の一番奥に並んだ。

謁見場は、どうやら、アルベール、摂政、騎士団員の計12名程度しか居ないようだ…

他の貴族や兵士はこの会場には見当たらない。


僕らは、跪いて挨拶をする。


「リンネ・アルベールと雷光騎士団員、6名、

アルベール陛下のご要望に応じ、はせ参じました」


「遠路遥々、よく来てくれた。

リンネ・アルベール殿……

いや、『リーン』よ」


僕は、その言葉にギョっとして、アルベールを凝視する。

アルベールはニヤリと笑っている。


部屋の中の人々も僕と陛下を交互に見る。

マルケルが慌てて、言葉を発する。


「へ、陛下!

何をいきなりおっしゃるのですか!

ここに居るのは雷光騎士団団長、リンネ・アルベール殿ですぞ!」


アルベールはマルケルを一瞥した後、話を始める。


「リンネ殿は、今、レウンにて帝国に睨みを利かせているはず…

ここにはこれないのであろう?」


「陛下!

それはあくまで建前上の話です!」


「…そんな建前など不要だな…

ここに居るのは、『リーン・ウォーター・ペンドラゴン』…

私の実弟なのだからな」


みんなの視線が僕に集まる。

僕は、兄のこの発言の真意を測りかねていた。


僕は、念を押すように質問した。

「アルベール陛下…

『本当にそれでよろしいので?』」


「構わん!

我が弟『リーン』よ!

よく帰ったな…

お前には、王弟として、エルウィン王国解放軍の指揮を取ってもらう!」


会場の人々がざわめく

マルケルが青い顔になって叫んだ。


「陛下!

それはなりません!

そんな事をすれば、軍の士気に関わります!」


「士気?

王弟が、軍の指揮を取って何の不都合か?

むしろ、数々の武勲を挙げている『雷の狙撃者』である『リーン』が指揮を取れば、

士気はかえって上がると思うが?

それに、リーンは、此度のレウン攻防戦で多大な戦果を上げている…

これ以上の指揮官は何処を探しても見当たらないと思うぞ」


マルケルは、拳を握り絞めた後、僕を睨んだ。


僕は内心辟易とする

『…僕を睨んでも…ねぇ?』


『何にせよ…僕はここに戦いに来たのだ…

執事の『アレクシア』の話だと、最近、摂政のマルケルと、

兄との間で意見が対立気味だと聞いている…

恐らく、マルケルを黙らせる為の処置だろうけど…

僕が指揮を取って良いというなら好都合だ。

今までのように下手な役割だけ与えられて、良い様に使われるのはまっぴらだしね…

ここは、兄の提案に乗らせてもらおう…』


僕は、立ち上がり、ルールスペースを薄く発動して、髪の緑色の染料を霧散させた。

僕の白髪の髪が顕わになる。

そして、自分で作り出して、はめていた、緑目に見えるカラコンタクトも分解し、

霧散させ、元の目の色だった、灰色になる。


その姿に周りの人々(雷光騎士団の面々も含む)が目を見張る。


僕は、静かに宣言した。

「陛下!

私こと、『リーン・ウォーター・ペンドラゴン』は、

エルウィン王国解放軍の指揮官を謹んでお受けいたします!

王弟として恥ずかしくない戦果をご覧にいれましょう!」


僕は、恭しく一礼した。

アルベールは、その姿に満足げに頷き、僕に言葉を返す。


「ああ、期待しているぞ

我が弟よ!」


こうして、僕は、王弟リーン・ウォーター・ペンドラゴンとして、

再度、帝国と直接対決することとなるのだった。


◇◇◇◇◇


 謁見場を後にして、リオンに割り当ての部屋の案内をされる途中、

雷光騎士団のユーリとティファ以外の面々が、僕に詰め寄ってきた。


「リンネ!どういうことだ?!お前、エルウィン王国の王子だったのか?」

「……リンネさん、事情は何となく察しますが…私たちには、随行する段階で教えてくれても…」

「大将!王子だったんですかい?!いやーーどことなく気品があると思ってやしたぜ!」

「団長…お辛かったでしょうね…私、『ベアトリス・バトン』がお支えいたします!」


僕は、素性は今まで通り『リンネ・アルベール』で通すつもりだったのが、

思わぬ兄の暴露で、少し予想の斜め上に行く事態に少し戸惑った。


「みんな…今まで黙っていたのは……まぁそこは、察して欲しいんだけど。

何せ亡国の王子だからね…

素性がばれれば、僕だけじゃなく周りにも迷惑が掛かる。

ここにいたっては、隠していてもしょうがないけど…」


僕は苦笑交じりに弁明した。

雷光騎士団の面々もその様子に納得してくれた感じだ。


すると今度は、この騒動に加わらない、ユーリとティファにみんなの目が向く。


キースが怪訝そうにティファに話しかける

「ユーリは…まぁ知ってたとして…

ティファ!

お前知ってたのか?!」


ティファは少し顔を背け反論する

「私?…知らなかったよ。

でもリンネさんなら有り得るかなって…」


「本当か?

何だか怪しいな?」


 僕は、ティファに話した経緯が経緯なので、助け舟を出した。


「…まぁまぁ、キース、もうみんな知ったんだし、良いじゃないか?!

それより、これからの事を話そう。


みんな、荷物を部屋に置いたら、何処かでこれからの事を話そう。


リオンさん、何処か話し合いが出来る場所はありませんか?」


僕は、強引に話題を変えさせた。


そして、リオンに振り向き確認する。

リオンは少し考えた後、僕に向き直って答えた。


「食堂ならば…今の時間はもう利用していませんが…

しかし、今日はもう遅いですし、明日になされてはどうでしょう?」


「…いや、出来るだけ早く動きたいんだ…すまないけど、

リオンさんも参加してくれませんか?」


「私は構いませんが」


「では、よろしくお願いします」


僕らは、各自部屋に案内された後、食堂に集まる事にする。

ちなみに部屋の振り分けは、僕は個室で、後は2人部屋を割り当てられた。

『ユーリ』と『ベアトリス』、

『ティファ』と『エリザ』、

『ロドリゲス』と『キース』という部屋分けだ。


荷物は、一度、裏庭に下ろされていたので、部屋には必要なものだけ持ち込んで、

後は、一度、倉庫の端に置かせてもらった。


僕らは、その作業の後、食堂に集まる。

食事もまだだったので、食事を取った後、話し合いを行った。


「さて…僕は、先ほど、陛下から、解放軍の指揮権を委託されたわけだけど…

『ベアトリス』と『ロドリゲス』以外は、僕の直属になってもらう。

まだ、みんな、軍にはなれていないからね…僕の補佐をお願いするよ。

後、リオンさんには、副官をお願いしたいんだけど?」


「はい、構いません。

今までも、陛下の副官扱いでしたから問題ありません」


僕は頷き、納得した後、『ベアトリス』と『ロドリゲス』に話をふる。


「で、『ベアトリス』と『ロドリゲス』は、それぞれ隊を任せたい。

主に斥候をメインに活動してもらう事になると思う」


二人とも頷いて了承する。


「そうそう、リオンさん、今の解放軍の兵士はどのくらいいるんですか?」


「…そうですね、今、分散していますが、トータルでは二千人といったところでしょうか?

ですが、ほとんどが、義勇兵で、キチンと兵の訓練をしたものは、半数に満たないと思います…」


「そうですか…で、その中で、光魔法を使える兵はどのくらいいますか?」


リオンは、さらに考え込んだ後、答える。

「…おそらく…200人居るかいないかといったところでしょうか?」


「そうですか、では、その光魔法が使える兵に召集をかけてください。

集まった兵は、『ベアトリス』と『ロドリゲス』に任せます。

兵を二分した後、二人とも百人長として、隊を率いてください」


そこで、僕は、おもむろに、さっき荷物から取り出してきていた『レーザー銃』を取り出す。


「リオンさん、信頼の置ける鍛冶師を紹介してください。

これと同じものを作ってもらいます」


「…リーン様、これは?」


「これは、レウンで使用した『レーザー銃』です。

光魔法を圧縮して、打ち出す事ができます。

光魔法の使い手しか使用できないのが難点ですが…」


僕は、苦笑しながら説明する。

『ベアトリス』と『ロドリゲス』以外の仲間もその銃をしげしげと見る。


「後、リオンさん、この鉱石も出来るだけ集めて欲しいんですが」


と、言って、僕は、二つの鉱石を取り出す。

一つは火薬を作る時に使う硝石になる『硝酸塩』…白い結晶の鉱石。

もう一つは青い結晶の鉱石『硫酸銅』属にいう『硫化銅鉱石』だ。

硫化銅鉱石は、銅の採掘現場から取れるはずだ。

実際に鍛冶師が銅を精製する時に見たことがあった。


「硝酸塩と、硫化銅の鉱石だよ」

と、僕が、その鉱石の補足をする。


「硝酸塩と、硫化銅ですか?

火薬と、何か武器でも作るのですか?」


「まぁ…これに後、『石鹸の廃液』も必要なんだけど…

集めてくれないかな?」


「石鹸の廃液ですか?

…何を作るかまったく見当もつきませんね??」


僕は、ニヤリと笑い、言い放った。


「強力な武器さ!

『ダイナマイト』を作る!」


ご意見・ご感想お待ちしております。

よろしくお願いいたします。

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