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Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇少年期編~第三章~◇
38/66

旅立ち


 年も明け、一月初旬になっていた。

カストラートは中央大陸でも南に位置している為、

温暖で、サイアス領はその中でもさらに南に位置しているので、冬でも暖かい。


だが、ウルク帝国は恐らく、雪に覆われている頃だろう…

この次期の行軍はかなり辛い筈だ。

帝国への反抗を行うならば絶好の時期に指しかかっていた。


 僕は、サイアス邸に残してきた自分の知識を書き綴っていたノートを取りにサイアスに向かっていた。

このノートは、前世の記憶を元に書き出したものだ。

きっと、エルウィン王国でも役立つと思い、一度、サイアス邸よることにしたのだ。


…できれば、ユーリや友人には、手紙だけ書いて、出かけようと思っていた…


 ちなみに、道中の休憩で、同行者の雷光騎士団の二人には、素顔を始めて見せている。

部隊内では、副団長にしか、素顔は見せていなかったからだ。


 サイアス以降は、マスクをする必要が無いというか、代理がレウンにいるのだから、

雷光騎士団団長は、他の場所に居ない事にしなければいけない…

で、今後は、素顔で行動するので、マスクは取ることにしたのだ。


なお、二人の反応は……

「団長!実はは女だったんですかい?」

とは、ロドリゲスの言。


ベアトリスは、微笑みながら

「あら♪団長、随分かわいらいいお顔立ちだったんですね♪」

と喜んでいた…

どうも彼女はかわいいもの好きらしい…


◇◇◇◇◇


 僕は、1ヶ月半ぶりに自宅であるサイアス領館の竜舎の前に、

3頭のドラグーンで降り立った。


執事の『アレクシア』とメイドの『アメリア』と『シア』、

それと何故か、今は魔法学校の授業中のはずの『ユーリ』が

僕らを出迎える。


メイドの二人はにこやかに手を振り、執事も何処と無く穏やかな笑顔を

していたが、ユーリは何故か制服姿の仁王立ちで、僕を睨んでいた。


「「「お帰りなさいませ、リンネ様」」」


執事達が一斉にお辞儀をして、迎えてくれた。

…ユーリは相変わらず睨んでいるが…


「…た、ただいま。

みんなもユーリも元気そうで良かった」


僕はユーリの顔を見て、焦りながら挨拶する。


するとユーリがおもむろにしゃべりだした。

「……ちょっと!リンネ!一ヵ月半も音沙汰無しって酷くない?!」


僕は慌てて弁解する。

「ユーリ、そうは言っても事は急を要していたし、

秘密裏に行動しなくちゃいけなくて……

連絡はしないように制限されていたんだよ」


ユーリは、黙って僕に近づくと、不意に僕の胸に頭を押し当て呟いた。


「リンネの馬鹿!本当に心配したんだから!」

ユーリは、少し涙声で囁いていた。


僕は、そっとユーリの頭を撫で言葉を返す。

「心配かけて、本当にごめん…」


◇◇◇◇◇


 ユーリが落ち着くのを待ってから、

同行者の騎士団の二人を紹介した。


「この二人は、僕が団長をしている『雷光騎士団』で

副団長補佐を勤めている『ベアトリス・バトン』と百人長の『ロドリゲス・ゼファ』だよ」


団員の二人が、ユーリに対して右手を胸に当てた敬礼をする。


「副団長補佐の『ベアトリス・バトン』です。

リンネ団長にはいつも、お世話になっております。

貴方が、妹君の『ユーリ・アルベール』様ですね。

お噂は兼ね兼ねお聞きしておりました。

今後ともよろしくお願いいたします」


「俺ぁ百人長の『ロドリゲス・ゼファ』ってもんです。

騎士団で一番の団長の部下でさぁ!

よろしくたのんます!」


ユーリもそれに答え、お辞儀をして挨拶する。


「『ユーリ・アルベール』です。

兄がいつもお世話になっております。

これからも兄の事をよろしくお願いします」


と、普段からは考えられない、御しとやかな感じで挨拶を返していた。


「いやあ…それにしても団長、かわいらしい妹さんで羨ましい限りですな!」

と、言ってロドリゲスが「ガハハ」と笑う。


「…いつもこんなにおしとやかな感じだといいんだけどね?」


「ちょっと!リンネ!それじゃ何時はおしとやかじゃないみたいじゃない!」


ユーリは、そう思わず言い返した後、自分の口元を押さえたが、

それを見ていた、騎士団の二人は苦笑していた……


◇◇◇◇◇


 僕らは、一度サイアス邸に入り、休憩し、この後、旧エルウィン王国に向かう旨を

ユーリと執事達に伝えた。


「そんな!今帰って来たばかりなのに!

もう、行くの!

それも、エルウィン王国になんて!」


「ユーリ…これは、僕の意思だけでは無く、カストラート王国への正式な依頼でもあるんだ。

陛下の了承も得ている」


ユーリは、暫くうな垂れていたが、不意に決意が篭った目を僕に向けて、宣言した。

「じゃ!私も一緒に行くわ!」


「いや…ユーリ、僕は雷光騎士団の任務で行くんだよ?!」


「じゃ!私も騎士団の団員にしてよ!

雑用でも何でもするから!

それに、魔法だって、水竜から貰った結晶を首飾りにした『水竜晶の首飾り』で、

そこら辺の兵隊になんか負けないぐらいの魔力を持っているわ!」


僕がどう説得したものかと苦慮していると、玄関の呼び鈴が聞こえてきた。

執事のアレクシアが対応に応接間から出て行く。


暫くして、戻ってきたアレクシアが、『キース』と『ティファ』と『エリザ』の

来訪を伝えた。


この時間は、まだ昼下がりで、授業中の筈なんだけど…

僕は、応接間に通すように伝えた。


キース達が、少し勢いこんで、応接間に入ってくる。


「リンネ!

帰ったのか?!

さっき、学校からドラグーンがこの屋敷に降りたったのを見て、

もしやと思って、来てみたんだがやっぱりか!」


と開口一番キースが話し出す。


「リンネさん!

急に一ヶ月も居なくなって心配したんですよ!

なんで、連絡くれなかったんですか?」


とは、ティファ。


「…リンネさん…リンネさんとリンネさんの騎士団の噂で、

学校の話題は持ちきりですよ…」


と、これはエリザ。


僕は、3人にまくし立てられた。

後ろに控えていた、騎士団の二人も面食らう。


僕は、事の経緯を掻い摘んで、3人に説明する。

緊急で呼び出され、協力の条件として騎士爵と騎士団を設立し、

新兵器で、ウルク帝国と戦い撃退した事を話した。


3人はかなり驚いたが、僕ならば…と納得して頷いていた。


そして、これからエルウィン王国に向かう事を話すと、3人とも同行したいと言ってきた。


キースが勢いこんで話し出す。

「リンネ!

エルウィン王国の開放戦線に参加するのか?!

俺も協力させてくれ!

俺なら、お前が開発した武器も使えるぜ!

戦闘もこなせる!」


ティファも負けじと話に追随した。

「私だって、魔法力も弓の腕もかなりなものです!

今度、クラブでの代表選手にもなったんですよ!」


エリザは少し控えめに話に加わる。

「…私もクラブの代表選手になった…、足手まといにはならない…」


僕は、困っていた…

ユーリやみんなの気持ちは大変ありがたいが…

今回は、以前の潜入と違って、本格的な戦闘になる…

友人達だけ守って行動する訳にはいかない…

それに学校だってある。


「みんな、気持ちは有難いけど、学校だってあるだろう?

今年が、最終学年の9年生だ、ここで辞めるのは持ったい無い…」


するとキースが今の学校の状況を話始めた。

「リンネ、今、学校は、高学年の7年生から義勇兵の志願が可能になったんだ。

今、ウルク帝国との戦闘状態だからな…

兵が足りないんだ。

だから、卒業していなくても、ある程度の成績を収めていれば、卒業扱いになる。

もちろん、俺達も卒業扱いになるから心配するな!

それに、今、学校じゃみんな『雷光騎士団』に入りたいって話で持ちきりなんだぜ!

なんせ、俺達の学校から救国の英雄が出たんだからな!」


僕は、それを聞いて、苦笑し、少し考え込む…


 そんな中、ユーリが真剣な目で、僕を見つめて、

「リンネ…私達は、リンネの力になりたいの!

何時もリンネは、自分だけで何とかしようとする事が多いけど、

一人じゃできない事も沢山あるわ!」


ユーリが言いたい事も分かる…僕には、能力の使用時間の制限がある…

全てを自分でこなすのは危険だ、特に戦闘時に意識を失うような事態は避けなければならない。


騎士団の二人もいるが、この二人には僕の詳細な能力や使用時間の制限は話していない…

自分の弱点を味方とは言え、何処から情報が漏れるか分からないのだから、

話をしていないのは、仕方が無い事だ。


その点、ユーリや友人達は、夏休みに僕の能力を体感し、話もしてある。

信頼もしている…一緒に行動してくれて、サポートして貰えるのは正直有難かった。


僕は、確認する為、ユーリ達に向き直る。

「…みんな、僕は戦争に行くんだよ。

分かっているの?

殺し合いをしに行くんだ。

それも、カストラート王国とは関係ない所で!

今、カストラートは、一時的とは言え、最悪の危機は脱した。

わざわざ、他国の為に戦争に行く事は無いんだよ?」


ティファ、キース、エリザがそれに反論する。

「私達は、リンネさんの力になりたいんです!

それに、ウルク帝国の圧政を許すことはできないわ!」


「そうだぜ!リンネ!自国だけ良ければいいなんてのは、

俺は反対だ。」


「…リンネさん…正義を翳すわけではありませんが、味方を増やせば、

帝国に圧力をかけられます。

圧力が大きければ、帝国を交渉のテーブルに付かせる事も後々可能になるでしょう…」


 僕は、みんなの真摯な気持ち甘える事にした…

「分かったよ…みんな、一緒に戦おう!」


みんなが一斉に歓声を上げる

「やった!流石、リンネ!話が分かるぜ!」

「良かった!一緒に行って良いんですね!」

「…出来る限り協力するわ…」

「リンネ!やっと一緒に行けるのね!」


僕は、みんなの歓声の中、右手を上げて、歓声を静止させ、一言加える

「…但し!

みんなには、僕の指揮に従ってもらいます!

簡易ではありますが、雷光騎士団の団員に任命します!

それと、ここにいる副団長補佐と百人長の下に付いてもらいますから、

決して、友達感覚で、行動しない事を約束してもらいます!

良いですね!」


みんなは、顔を見合わせ、僕に向き直り敬礼した。


「「「「了解しました!団長!」」」」


 僕らは、今日一日で、旅支度を整えた。

人数が大幅に増えたので、飛竜ドラグーンをティファの商家から、一頭買い求め、

2人づつ飛竜ドラグーンに乗り込む。


「では、雷光騎士団、これよりエルウィン王国へ向かう!

準備はいいか!」


「「「「「「「応!」」」」」」


僕らは、新たに4人を向かえ、エルウィン王国に向かうのだった。



ご意見、ご感想頂ければ幸いです。

よろしくお願いいたします。

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