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Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇少年期編~第三章~◇
36/66

レウン攻防戦~後半~

 私、ウルク帝国軍、総大将『ドラグ・ド・スレイヴ』は、

突然、眼前の大きく映し出された『敵軍の指揮官?』と思しき人物に眉根を寄せていた。


 その司令官と思しき人物は、薄緑の髪に目の周りを灰色のマスクで覆い、

白を基調に金糸の刺繍を施された軍服に身を包み、プレートメイルを付けた、

怪しげな少年?だからだ。

どうも…マスクに覆われていない部分を見る限り幼さを感じる容姿だった。


「…なんだ?アイツは?敵の司令官?か?」


俺は人知れず呟いた。


すると、それに答えた訳ではないだろうが、巨大映像の中の敵将が話しはじめた。


「ウルク帝国軍、並び同盟国軍の皆様…

お初にお目にかかります。

私は、『リンネ・アルベール』、あなた方から、『雷の狙撃者』と言われている者です。」


帝国軍、同盟国軍がザワつきだす。


「まぁ…突然私が『雷の狙撃者』と名乗っても、そちらは、信じないでしょう…

そこで、一つ、私が『雷の狙撃者』であることを証明したいと思います。


私は、今から、真正面の攻城兵器に向けて、『雷の矢』を放ちます。

それを見て、ご判断ください。」


そう言った後、その『リンネ・アルベール』なる人物は、近くの兵から、

長さ1m半ほどの槍?

というか、鉄杭を受け取る…

そして、投擲の構えを見せた!


ウルク帝国軍の中央で進軍していた攻城兵器の前の兵達が同盟国、帝国問わず、一斉に横に移動する。

それは、まるでモーゼの海割りの様に一気に軍が割れていた。


その様子に俺は憤慨し、大声を発した。


「何を怖気図いておるか!

あんなもの敵の這ったりだ!

どうせ魔法でも放つに決まっている!

防御体制を崩すな!」


この声に、ウルク帝国軍の部隊は、体制を建て直し、攻城兵器を守る形で、兵を集中させた。

だが…同盟国軍は、道を開けたままだ。


 その同盟国軍の様子に、再び声を荒げようとした時、轟音が響き渡り、爆風に体が煽られた。

見ると、攻城兵器の左側の前後の車輪が吹き飛び、

その前で、防御していた、兵は吹き飛び、盾や鎧…体まで貫かれて息絶えていた…


 攻城兵器は、体勢を維持出来ず、横に倒れて行く、倒れてくる側の兵士達が必死で逃げ惑っていた。

それはそうだろう…攻城兵器の高さは、40m、横幅は、20mの櫓だ。

しかも、鉄板で覆われている。

下敷きになったら重装備の兵とは言え、只ではすまない。


 攻城兵器は、轟音を立てて横倒しになり、あたりは、兵が密集していたこともあり、

阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。


 ここは、レウンの城壁から8km地点…

この距離をあれだけの威力の槍を投げつけるのは、『雷の狙撃者』しか有り得ない。

全軍が一機に浮き足立つ。


その騒然した中、映像の『リンネ・アルベール』が淡々と話だした。


「…さて、これでご理解いただけたでしょう。

そこで、私から忠告を出させていただきます。

これから、あなた方が『トールハンマー』とおっしゃっている、

『雷の矢』の連続掃射をいたします…

そうですね…10分、猶予を上げますので、逃げるなり、守るなり、攻めるなりお好きにしてください。

では、また。」


そう言うと、空中の映像が掻き消えた…

あたりが一瞬静かになったと思ったと感じた瞬間、

兵達が一斉にレウン城壁の正面から逃れようと左右に波のように動き出した。

それは、主に同盟国軍であったが、帝国軍もその様子に浮き足立つ。


俺は声を振り絞って、指示を出した。

「全軍、動くな!

その場で待機だ!

魔法障壁を最大展開して、防御を固めろ!

動いた者は敵前逃亡と見なし、処刑する!」


自分の周りの兵達が、動きを止める。

副官が俺の指示を伝令に伝えた。


ウルク帝国軍の混乱は、収まりつつあるが、どうした事か、同盟国軍の動きが止まらない。


「くぅ…同盟国軍のヤツラめ!

副官!

左右に逃げる同盟国軍の進路前方に砲撃!

逃亡を阻止しろ!」


俺は副官に砲撃命令をだした。

その時、左右から眩い光が閃き、幾つかの大砲が爆発を起こした。

爆発の大音響が、響き渡る。


俺は爆風の中、状況を知らせるよう大声を張り上げ、副官に確認する。

「今度はなんだ!」


「は!左右から奇襲を受けた模様です!」


「何!偵察部隊は何をしていた?!

確認しながら進軍していたはずだぞ!

こんな平原で敵の伏兵を見逃したのか?」


「そ…それが…敵は確認出来ないと…

今の攻撃も何も無い場所が光ったと思った瞬間、

攻撃を受けたとの報告です…」


「そんな馬鹿な!

何も無いところから攻撃だと?!」


◇◇◇◇◇


 リンネ・アルベールは、敵の混乱する様子を眺めていた。

こちらの斥候部隊による奇襲も今の所上手くいっているようだ。

副官補佐の『ベアトリクス』が状況を報告する。


「団長。予定通り敵左翼、右翼に『光学迷彩』で伏せていた、

斥候部隊が、奇襲に成功したようです。

7割程度の大砲を破壊したとの報告が入っております。」


そう…雷光騎士団の斥候部隊約200名は、

敵の左右にそれぞれ100名づつ、光学迷彩で潜伏し、

僕の合図(雷の矢)の後、敵の混乱に乗じて、

敵砲撃部隊への奇襲をかけたのだ。


『まぁ…10分待つと言うのは僕自身の攻撃だから…嘘は言ってないよ。』

僕は、内心舌をだした。


「報告、ご苦労!

じゃ、僕も用意しますか!」


僕は台から飛び降り、その前に備え付けられた兵器の前に立つ。


 その兵器は、ボーガンを100個並べ、弓部分を縦にしたものだ。

全体的に弧を描いた台座にボーガンが備え付けられてある。

そして、矢を放つトリガーは一箇所で、全部の矢を射出することができる様にしてあった。

また、中心部分の矢を置く台はスライド可能で、スライドさせる事で、

次弾の入れ替えが容易に可能になっている。

(…もっとも一人では、持てないので、部下に次弾の入れ替えを任せることになるが)


 これは、僕専用の『100矢同時射出ボーガン』だ。

僕は今までの経験から、ルールスペースで同時複数制御を行うと、

途轍もなく早く、能力を消費する事を悟っていた。


 そこで、電磁レールのみを発生させて能力消費を抑える事にしたのだ。

その他の制御は、器具で補うことで、能力消費をセーブすることに成功していた。


副官補佐の『ベアトリクス』が、経過時間を報告する。


「団長!9分経過です!」


「了解!

では、10分経過したら『雷の矢』を発射する!

カウントダウン、よろしく!

僕の攻撃の後、3秒後に『雷光騎士団』全軍、レーザー照射!」


「了解いたしました!

団長の攻撃3秒後に照射します!」


僕は、前方を確認する…

『敵軍までの距離…7、8km…矢や砲弾ではとても届かないが、

僕のレールガンや魔法レーザーならば!届く!』


「カウントダウン!

10秒前!、9、8、7、6、5、4、3、2、1、発射!」


僕は、『100矢同時射出ボーガン』のそれぞれの射出口に電磁レールを展開させ、

100の矢を扇状に射出した。


狙いは出鱈目だ。

敵の防御魔法を崩せればいい!


「ガガァーーーーン」

矢を放った後のソニックブームの衝撃音が響き渡る。


その爆音の中、ベアトリクスが、指示を出す。


「全軍照射!」


「ビシューーー」


何かが射出されるような音が光と共に響き渡った…


◇◇◇◇◇


 ウルク帝国軍は、砲撃部隊への奇襲で混乱している中、

リンネによる、追撃の『雷の矢』の攻撃を受け、各所で、陣形が瓦解していた…

続いて、謎の光の攻撃にさらされ、部隊は、混沌を極めていた…


 第一撃以降も10回程攻撃を受け、

最早、レウン城塞に攻撃を行うのは困難となっている。

この時点で、帝国軍は、その半数の兵を失っていた…


 ドラグ・ド・スレイヴは死屍累々と横たわる兵士を呆然と見ていた。

辺りは、火災も発生して、煙が充満している…

今も、散発的に光線が飛び、兵達が倒れていく……


「…クソ…『雷の狙撃者』め!」


副官が、憔悴しきった表情で、状況報告してくる。


「将軍!これ以上、ここに留まれば被害が増大するばかりです!

ただちに撤退すべきです!」


この距離では、砲撃も、魔法も、騎馬による突撃にも遠すぎる…

せめて、後3kmは近づかないとどうしようもない。


俺は、奥歯をギリギリとかみ締め、レウン城壁を睨んだあと、

苦渋の決断をした。


「…仕方がない…

全軍撤退!

土属性魔法が使えるものは何でも良いから壁をその場で作ってから撤退!

少しでも敵からの攻撃を阻止しろ!

盾兵は、殿シンガリを勤めよ!無駄かも知れないが魔法防御も忘れるな!」


俺は、苦渋の表情で撤退の指令を出した。


◇◇◇◇◇


戦況はもう勝敗を決していた…

カストラート王国軍いや、リンネ・アルベールと雷光騎士団の圧倒的勝利だ。

この状況を、国王や他の将校が呆気にとられ、レウンの城壁の上から眺めていた。


将軍の一人が呟く。

「…圧倒的ではないか…」


 兵力10倍の敵軍が1時間もしないで敗走しているのだから呆気に当然だろう

事前に、作戦を聞いていた、国王や宰相もここまでの圧倒的な勝利は予想外だった。

 だが、考えて見れば、敵の射程外からの大規模攻撃…

敵に対抗する手段が無ければ、攻撃されるがままだ。

当然といえば当然と言えた。


国王が感嘆の声を漏らす。


「リンネ・アルベール卿の能力と新兵器の威力は凄まじいな……

まさか、これほどとは…」


宰相のエイナスがそれに答える。


「私も演習を見学して、勝つ事は確信しておりましたが、

まさか、ここまで圧倒するとは思っておりませんでした。


やはり、同盟国軍への根回しと、新兵器によるところは大きいと思います。

先のエルウィン王国の攻防戦では、リンネだけでは、戦線はもたなかったのですから…」


「うむ…彼は、個人の能力もさることながら、

彼の知識からくる、発想と用兵がすばらしい…

今回、一団を率いたことで、それが証明されたな。」


「はい。我が息子ながら末恐ろしい限りです…」


「さて!これで、ここでの戦いはこれで終結だろう。

敗走した、同盟国軍から使者も来ている。

これから忙しくなる!

エイナス!

お前の交渉能力に期待しているぞ!」


「は!お任せください!」


エイナスは胸に右手を当てる敬礼で答えた。


レウン攻防戦は、こうしてカストラート王国の圧勝に終わった。


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