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Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇少年期編~第三章~◇
35/66

レウン攻防戦~前半~

12月初旬…空は雲に覆われ、これから起こる戦乱を案じているように見えた。

今、カストラート王国の北の国境にある、『城壁都市レウン』には、

カストラート王国の殆どの兵力となる、3万5千の兵力が終結していた。

総大将は、一ヶ月半前に国王に在位したばかりの『フィリップ・フォン・カストラート』が

直々に勤めている。


『城壁都市レウン』とは、カストラート王国最北部に位置する、貿易都市だ。

ここは、カストラート王国と、ウルク帝国との国境も兼ねている。


 この都市の歴史は古く、カストラート王国発祥期にまで遡る。

元々この城壁は、平原の遊牧民族国家『モラド皇国』からの侵攻を防ぐ為に街道だった渓谷に

壁を作り、関所としたものが発展して、都市が出来たのが始まりだ。


 渓谷は40mもの絶壁だ。

その渓谷の入り口に巨大な城壁を作る事で、今まで、如何なる敵も阻んで来ていた。

その壁はダムを連想させる…


 今では、モラド皇国もウルク帝国に平定され、モラド皇国が収めていた平原は、

管理するものの無い只の平原と化していた。


 そして、今、20キロ先にはウルク帝国軍とその同盟国の五カ国からなる連合軍合わせて、

11万の兵が終結していた。

『レウン』の城壁は40mもあるので、城壁からみると平原を埋め尽くした、敵軍が確認できる。

この光景は、カストラート王国軍に恐怖を与えるに十分だった。


 今にも始まろうという決戦に備え、レウンの指令所となるレウン領の領館に、

主要な騎士団の団長と、国王、宰相が会議を開いていた。


一人の騎士団長が報告する。

「エルウィン王国の港の集結していた、ウルク帝国軍の海軍は、

エルウィン王国解放軍からの攻撃に合い、港から出航できないようです。


 エルウィン王国解放軍は、夜襲で、数隻を沈め、

港の出入り口で、大型の輸送艦を座礁させ、港からの出航を阻んでいるもようです。


 この輸送艦を撤去するのと、解放軍からの暫定的な攻撃により、帝国軍は、足止めされ、

我が国へ侵攻できない状態に陥っております」


宰相のエイナス・アルベールが、その報告を聞いて、頷く。

「アルベール殿下は、上手く動いているようだな

これで、海からの侵攻は、度外視しても、大丈夫だろう」


このエルウィン王国解放軍への働き掛けは、エイナスがアルベールに依頼したものだ。

もっとも、発案は、リンネではあったが…


 リンネは、この戦闘への参加の際、

養父エイナスに兄アルベールに軍船の足止めを協力するよう交渉する事を勧めた。


 その際、協力しなければ、今後、自分リンネ・アルベールは、

エルウィン王国解放戦線には参加しないとの言葉を添えて…


 エルウィン王国解放軍も少ない戦力を使うのを渋っていたが、

今後の『リンネ』の協力を見込めない事態には陥りたく無かったのと、

ウルク帝国のこれ以上の拡大を防ぎたかった為、今回の作戦に協力していた。


フィリップ国王が、会議場内の面々を見渡し、重々しく発言する。

「これで、このレウンでの戦闘が雌雄を決する戦いとなる

ここを落とされれば、王都まで砦は無いに等しい…


リンネ・アルーベール!

敵への備えは整っているか?!」


「は!何時でも、攻撃が可能な状態です。

敵が攻撃圏内に入り次第、攻撃を開始いたします。」


「うむ。

頼んだぞ!」


その国王と新米騎士団長のやり取りに他の騎士団長が眉を顰める。

その中の一人が発言した。


「…陛下!

我々にもその『雷光騎士団』の作戦を教え頂きたいのですが……」


そう…この最初のウルク帝国との戦闘は、『雷光騎士団』に一任されていた。

作戦内容は、国王と宰相、そして雷光騎士団にしか知らされていなかったのだ。


この状況に他の騎士団長の将軍達は、不満を露にしていた。


何せ、一ヶ月前に突然現れた小倅《会議中でも覆面使用》

…『雷の狙撃者』こと『リンネ・アルベール』に

各部隊の光魔法を使える兵を引き抜かれ、

『雷光騎士団』などという即席騎士団を作っただけで無く、

この大事な決戦の先方を務めることに将軍達は、大いに不満を抱いていた。


 しかも、その『雷光騎士団』の作戦を知らされていないのだから、

誰も納得など出来ていなかった。


国王が、ため息を一つ付いて、返答する。

「……皆のもの…この作戦は、『レウン攻防』の要である!

万が一にも内容が漏れることがあってはならない!

諸候らを疑うわけでは無いが、何処から情報が漏れるか分からないのだ。


 諸候らは、城壁警護と、万が一に備えての後方待機を命じる!

もしも『雷光騎士団』の作戦が、失敗した場合、諸候らの部隊がこの国の最後の砦だ!

その事を肝に銘じて本作戦に備えてほしい。」


将軍等は、渋々了承し、会議は終わった。


 会議室には、国王、宰相、リンネの三人だけ残っていた。


「陛下、ありがとうございます。」


「いや、礼には及ばん。

お前の作戦が成功しなければ、戦力的に劣る我が軍が敗れるのは目に見えている。

少しでも、失敗する要素は、排除したい。

何処から情報が漏れるか分からないからな。」


「ご配慮ありがとうございます。

必ずやご期待に沿える戦果で答えて見せます。


…では、私は作戦の準備がありますので、これで失礼いたします。」


「うむ。」


リンネは、一礼して会議場を退出していく。

その後姿を宰相のエイナスと国王が見送る。


「エイナスよ…で、お前の見立てはどうだ。」


「はい。陛下、この作戦は、現状で取れうる最良策です。

しかもこの作戦は、リンネ団長と雷光騎士団で無いと作戦自体、成立しません。

先ほどの将軍達への対応は適切かと存じます。」


「…リンネ達で、帝国軍を止められなければ…他の軍だけでは、如何にこのレウンが強固な

城塞とはいえ、何日も持つまい…雷光騎士団に期待しよう……。」


「はい…」


国王とエイナスは頷きあった。


◇◇◇◇◇


 僕は、レウン領館を後にし、城壁の外に陣取っている、『雷光騎士団』向かった。

城門の通用口を潜り、城壁の外にでる。

城壁の外には、騎馬対策用の尖った木の杭を重ねた柵が、城壁の前に延々と並んでいる。

それは、城壁の端から端まで緩い弧を描く様に配置されている。

その柵に中に、雷光騎士団団員総勢一千名が整列して、僕を待っていた。


 僕は迎えた副団長に確認し、用意されていた台の上に乗って、騎士団を見渡す。

団員は、僕の発言を待って、もの音一つ立てずに、じっと待っている。


「…団員の諸君!

いよいよ決戦だ!

準備期間は、短かったが、諸君ならば、成し遂げられると信じている!

勝って!このカストラート王国を守ろう!」


僕が、激を飛ばすと、

「「ウォォォォォォーーーーー」」

と時の声が鳴り響いた。


「では、善団員!

所定位置に付け!」


団員達が、一斉に自分のレーザー銃を担ぎ、所定配置へと駆け出す。


団員が駆け出した後、副団長のエクスが声をかけてきた。


「団長…

我々は勝てますか?」


「副団長…

あなたが、不安になってどうするんですか?

大丈夫!

今回、敵軍には異世界人が加わっていないとの情報です。

多少、強力な武器もあるでしょうが、こちらの兵器を上回る事はありませんよ。

それに…どうやら同盟軍は、協力していただけるようです…

僕は案外、圧勝できると思いますよ。」


僕は不適に微笑んだ。


◇◇◇◇◇


 レウンの城壁まで後…10km、帝国軍は城壁攻略の為、攻城兵器を組み立てていた。

この作業が終了し次第、レウンに向けて、部隊を侵攻だせる算段だ。

部隊配置は、先方に同盟国軍、後方にウルク帝国軍の配置で進軍する。

ウルク帝国軍は、城壁を攻める為、軍の最前列に攻城兵器と砲撃部隊を配置し、

同盟国軍を後方から支援する配置を取っている。


 中央大陸の基本的な戦闘隊形は、『ファランクス』と呼ばれる形態での戦闘が

殆どだ。

『ファランクス』は、分厚い盾と重装備の歩兵が第一列に並び、

第二列に長槍の部隊を配置し、第一列の盾の間から、槍を突き立てる戦法だ。


 第一列は物理的に頑丈であると同時に魔法壁を展開し、

防御に専念するので、ちょっとやそっとじゃ、この第一列を崩す事は難しい。

 また、第二列の槍部隊も攻撃に専念できる。

この盾部隊と槍部隊を二列に並べ、敵を物量で攻めるのがウルク帝国軍…だけでなく、

この中央大陸での主要な戦法だ。


 特に帝国軍の『ファランクス』は、強固で有名だが、

今回は、同盟国軍を先方…『露払い』にするので、砲兵や攻城兵器の後ろに控えている。


そして、ウルク帝国と同盟国軍、11万人の大部隊は、ゆっくりとレウンへとその歩みを開始した。


◇◇◇◇◇


 僕は、防御柵の中に立てたちょっとした台の上に乗って、帝国軍の侵攻状況を確認していた。

地平線を埋め尽くすような軍団が、土煙を立てながら横一列で進む様子は、

まさに陸上の津波と言った風景だった。


「…こんな風景は、エイウィン王国攻防の時依頼だな…

あの時は、準備も僕が動かせる兵も、思いつきも全然足りなかったけど…

今回は、そう易々とは行かないよ!」


僕は、振り返り、副長補佐の『ベアトリス・バトン』に声を掛ける。


「ベアトリス!

僕の映像と声の敵の前に最大で表示してくれ!」


「了解です、団長!」


ベアトリクスは、金目の緑髪の女性だ。

その為、光と風の両属性の魔法を使用できた。

映像と音を遠方に届ける魔法も、もちろん可能だ。


僕の画像が、進軍中の帝国軍の眼前に投影される。


「団長。準備が整いました!」


僕は、頷き、話し始めた。


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