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Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇少年期編~第三章~◇
34/66

試合

 時間は少し遡る。

元同盟国との秘密会議から、遡ること2週間前、『雷光騎士団ライコウキシダン』の団員が何とか揃い、

演習を行っていた。

当初、リンネ・アルベールが考えていた人数より、幾分多い、1千名程度が集まっていた。

騎士団としては、少ないが、光属性魔法の使い手だけを選出したので、この人数は予想外に多いと言えた。

殆どの者が金髪、金目の外見だ。

副団長の『エクス』に確認した所、殆ど実戦経験の無い後方支援部隊の所属の者達との話だった。

200名程は、斥候部隊などの実戦経験者であるが、それ以外は、戦闘経験は皆無との話だった。


 僕は、まず、実戦経験者と、そうで無い者とに振り分け、実戦経験が無いものには、

100名を一組とし、100人長を任命し、徹底的に、レーザー銃の扱いを訓練させた。

訓練は、『正確性』『次射装填の迅速性』『他の者との連携』の三つを軸に訓練を行った。


 レーザー銃に関しては、光魔法の充填に早いものでも10秒以上かかる。

これを、補う為、予め、魔法石に光魔法を充填しておき、カートリッジ代わりとし、

照射後、このカートリッジを交換する事で、光魔法の充填を短縮した。

このカートリッジの製作は、就寝前に出来る限り準備し、予備弾倉は、10個以上作っておくよう指示してある。


 余談になるが、『光魔法』は『光粒子』と『ガス』的特徴を合わせ持っているようだった。

その為、レーザー銃の銃身部分の魔法瓶内では、光魔法が充満すると、共振して、光魔法粒子が同調する。

そして、レンズで集束した、光魔法を照射する事で、レーザーとしての事象を起こす事が出来ていたようだった。

普通の光だけでは、ここまでの威力は出なかったので、思いもよらなかった嬉しい誤算だったと言える。


 このレーザー銃の光魔法の一回の照射時間は約3秒、その威力は、鋼鉄の甲冑を焼き抜ける程ではあったが、

魔法障壁には、阻まれる事が確認出来ていた。

…やはり魔法である事には変わらないということだろう…

この世界の戦闘では、魔法障壁を展開しながら、攻撃をするのが常なので、

戦闘時には、まず、魔法障壁をどうにかする手段が必要だと僕は考えていた。


◇◇◇◇◇


 『雷光騎士団』は、カストラート王国から北にある国境の城塞都市『レウン』から、

数キロ南の平原で、この訓練を行っていた。


僕は、天幕で訓練状況の報告を『エクス』から聞いていた…


「只今、大方の連携訓練は終了し、何時でも実戦可能です。」


「そうですか。

以外に早く準備が整いましたね?!」


「後方支援に従事していたとは言え、皆、兵士です。

今まで扱った事が無かった武器ですが、それ程取り扱いが難しい武器ではありませんので、

使用には問題なかったようです。

何にも益して、前線で活躍できるとあって、士気が上がっています。」


「そうですか。

慣れない武器で戸惑うか、とも思いましたが、取り越し苦労でしたね。」


「光魔法の使い手は、元々目がよく、狙撃者向きですから、この武器は打ってつけだと言えます。」


「じゃ、予定の10kmの狙撃も可能ですか?」


「…流石にその距離を当てられる者は、少ないですね。

8kmまでなら、何とかなると思いますが…」


「まあ、正確に当たらなくても、レーザーが其処まで届けば問題ないです。

威嚇も兼ねていますし、何万規模の戦闘では、余程大きな目標でなければ、狙わなくても構わないでしょう。」


 今、カストラート王国は、ウルク帝国との戦闘を間近に控えていた。

2週間前にウルク帝国の要求を正式に拒否し、国内のウルク帝国駐留部隊を強制退去させたからだ。

駐留部隊は、一部隊の兵力も千名前後とそんなに多くはなく、

駐留場所も、ベイト領とサイアス領の二箇所だった為、問題も起きず、退去させる事が出来た。

それは、監視部隊が拍子抜けするほどだったという。


 その後、ウルク帝国軍より、宣戦布告がなされ、帝都からウルク軍が、

カストラート国境へと向かおうとしていた。


 この間、1ヶ月…リンネ・アルベールは、レーザー銃を改良し、

騎士団員分を何とか揃える事に成功していた。


「何とか、開戦に間に合いそうで安心しました」


「ええ、私も冷や冷やしました。」


僕とエクスは、笑い合う。


「…で、エクス、養父に頼んでいた件が、上手くいきそうなんだ。

あなたには、申し訳無いが、特使としてそちらの交渉に向かって欲しい」


「私がですか?

私は構いませんが、部隊はどうします?」


「訓練も粗方、終了したから、あなたの補佐の…女性仕官、

『ベアトリス・バトン』に任せれば平気だろうと思うんだけど?」


「まぁ…彼女ならば、大丈夫だとは思いますが…

部隊内には依然、団長を不振に思っているものも居るようですので…

私としては、部隊を離れるのには、不安ではあります」


「…ここらで、僕も彼らにお飾りでない所を見せようと思っていたんだ…

あなたが、一時的に部隊を離れる前に、催しものを開こう。

部隊で一番強い兵と、僕とで試合を組んでほしい。」


「団長自らですか!?」


「あぁ…カストラートでも強い者を支持する傾向があるからね…

実際の集団戦闘にはあまり個人の強さは、関係ないけど…どうしても、騎士である事が先行してしまっている。

僕の個人的な実力が通常の兵より、上回っていると知れば、みんなも、

僕の言う事を少しは素直に聞いてくれると思うんだ。」


「まぁ…あなたの実力ならばどんな兵にも勝てるとは思いますが…」


エクスは苦笑いを浮かべて肯定した。

エクスには、僕の能力を話してある。

実際、手合わせもしたので、その経験から、どんな兵士でも適わない事を把握していた。

だが、実力を知らない他の兵には、僕を胡散臭い小倅と思う者も少なくなかった。

また、僕は、素顔が女顔で迫力に欠けていたので、

人前では、目の周りを覆うマスクを着けている。

これも胡散駆られた要因の一つだろう。

ちなみに、マスクはまるで『ガ○ダムのシャ○・アズナブル』を彷彿とさせる仕様だった。


 そんな状態だったので、この『雷光騎士団』は副団長のエクスが纏めていると言っても過言ではなかった。

僕としては、エクス無しで、指揮官として認めて貰わなければならなかった……。


◇◇◇◇◇


 エクスが、特使として派遣される2日前、雷光騎士団内で模擬試合が行われた。

試合は、団長の『リンネ・アルベール』と百人長の『ロドリゲス・ゼファ』で行われた。

『ロドリゲス』は、斥候部隊出身の実戦派で、自他共に認める接近戦のスペシャリアストだ。

年も30才を過ぎ、身長も175cmとリンネより10cmは高い。

体格もかなり鍛え上げた体つきだった。

対する僕は、身長165cmで最近少しは筋肉が付いてきたとは言え、痩せ型だ。

どうしてもひ弱に見える…


 部隊内は、この試合があまりに実力差が有りすぎて、意味の無いものだと思っている兵が大半だった。

ロドリゲスも団長の気まぐれに付き合わされて、手加減するのが大変だろうというが、団員の大半の意見だ。


審判役のエクスが、試合場とした、広場で、リンネとロドリゲスに試合の注意事項を告げる。


「双方、木剣を用い、相手が『戦闘不能』な状態になるか『降参』した時点で、

攻撃を止めるように!」


リンネ・アルベールと『ロドリゲス』は了承し、頷いた。


「では、試合開始!」


僕は、木剣を両手で正眼に構える。

今日、僕の使用しているのは、両手持ちの木剣を使用している。

これは、体重差を考えて、防御度外視で、打ち込めるようにしたためだ。


 対して、相手は、片手に木剣と反対の手には、木の盾を構えたオーソドックスなものだった。

僕が、盾を装備していないことに眉を潜めていたが、試合開始の合図と共に、真剣な表情となっている。

そして、僕に対して、話かけた。


「…団長、本当に本気を出して良いんですか?」


「ああ…本気を出して貰わないと困る。

でないと、怪我するよ?!」


「…はっ!舐めてもらっちゃこまりますぜ!」


ロドリゲスは言うやいなや光魔法を発動した。

恐らく、試合開始前から準備していたのだろう。


「【閃光】」


眩い光が弾ける。

目潰しに使う魔法だ。

まともに食らえば、失明しかねないほどの光…

ここの観客は、光属性の兵ばかりだ、これぐらいでは、目くらましにもならないが、

僕に対してならば、効くと思ったのだろう。

だが、僕は、『ルールスペース』を体に纏うように薄く発動中だ。

これぐらいの魔法の光はまったく効かない。


ロドリゲスは、魔法を放つと僕の背後に素早く回りこみ、木剣を上段に構え、袈裟切りに斬りつけてくる。

僕は、余裕で振り向き、半身になってその剣を避ける。


会場に驚きの声が上がった。


「今のを避けるとは…

思っていたよりやりますね。」


「今の程度で、驚いて貰っても困るんだけど?」


僕は、肩を竦めてみせた。

そんな、僕の態度にロドリゲスは青筋を立てて睨み返す。

そして、連続して、剣を繰り出してきた。


 上段から袈裟切り、返す刀で切り上げ、続けて胴を払いに掛かり、咽に突きを突き込んできた。

僕は、それを全て、紙一重で避ける。

実際は、ルールスペースで圧縮した空気を纏っているので、どのような攻撃も届かないのだが…


その後も、ロドリゲスは、連続技を繰り出すが一向に当たらない。

ここに来て、他の団員も僕の尋常ならざる体捌きに驚きを隠せずにいた。


ロドリゲスは、とうとう息を切らし、大きく距離を取る…

僕は、その瞬間を見逃さず、ルールスペースで作った圧縮空気を後方部分だけ開放し、

ロドリゲスに向かって弾け飛んだ!

ロドリゲスは、5mの距離を一機に詰められ、目を向いて、急いで盾で防御したが、

体制の崩れかけた構えに、僕に横に回りこまれ、盾を持っている籠手を打る。

堪らず、持っていた盾を落とす。

そして、僕は、返す刀で、下段からの切り上げ、木剣を弾き飛ばしていた。


僕は、静かに、ロドリゲスの眼前に木剣を突きつける。


そこで、審判役のエクスが勝敗の声を上げた。


「それまで!

勝者、リンネ・アルベール!」


「ウォォォォ―」

「団長!スゲー!」

「なんだ今の体裁き!」

「見たことないぞ!」


静まり返っていた、会場が歓声に包まれていた…


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