表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇少年期編~第三章~◇
28/66

学園祭~一日目(前半)~

2013年1月3日改修

 ユーリ・アルベールは、窓から入る朝日で、目を開けた…

開けたは良いが…体が重く熱っぽい!?

何とか体を起こそうとするが力が入らなく、節々が痛むのが解った…

今日はサイアス魔法学校の文化祭一日目の朝だ…

私は今日の文化祭を何日も前から楽しみにしていた。

去年は、リンネの落ち込みようが酷く、リンネは結局去年の文化祭は休んでいたのだ…

今年は、やっとリンネも落ちつき、

私は、今年こそ一緒に文化祭を楽しめると期待を膨らませていた。


 私は、何度か起き上がろうと試みたが、とても起き上がれないので、

今しばらく休んでから起きることにした…


どのくらいたったのだろう?

不意に冷たいものが額に当てられる感覚で目を覚ます。

重たい目を開けるとリンネがこちらを覗きこみ、右手を私の額に当てていた。


「あ…リンネ…おはよう…」

とかすれた声を絞り出す。


「ユーリ、おはよう。

熱がかなりあるね…

やっぱり風邪かな?

ユーリにしては珍しいよね?

水魔法の使い手は体内調節が得意だから滅多に病気にならないって話だけど?」


「リンネ…

水魔法の使い手は、他人の体内の流れを調整するのには長けてるけど…

自分自身はそんなでも無いのよ…

特に熱などで自身の意識が朦朧としている時は、調整が効かないのよ…」


「そうななんだ…

でもこの様子だと今日は学校は休んだ方がいいね…」


私は、咄嗟に目を見開き、起き上がろうとする…

リンネは慌てて私を支え、私は何とか上半身を起き上がらせた。


「そんな…

今日は楽しみにしていた文化祭なんだよ…

こんな風邪ぐらい…」

と言って起き上がろうとするが、体に力が入らない…


リンネはため息をつき、

「ユーリ…

今日はおとなしく休みなよ?!

そうしないと…文化祭の三日間、全部ダメにしちゃうよ?

今、執事が医者を呼んでいるから、今日一日養生すれば直るだろうから、

今日の所は我慢しなよ。」


私はうつむき、再度、涙目で反論しようとしたが、リンネの言う事ももっともなので、

頷き、しぶしぶ今日だけは、休む事を承諾した。


リンネはそんな私を気遣い、頭を撫でながら

「大丈夫だよ。

今日一日休めば、明日には出かけられるようになるさ。

今日は早めに帰ってくるから…

ユーリはゆっくり体を安みなよ。

そしたら明日は、文化祭を一緒に回ろう!」


私はしぶしぶ了承し、再び頷いて答えた…


◇◇◇◇◇


 リンネ・アルベールは、学校に登校すると、

みんなにユーリが風邪で今日は休む事を伝えた。

クラスのみんなは軒並み心配してくれ、残念がったが、取り合えず、

今日シフトに入っているユーリの分担時間分をどうするか話合わなければならなかった。

何せ、一日目はほとんどのクラスの女子は、所属のクラブの出し物に参加するとあって、

今日の接客のシフトはユーリがメインになっていたからだ…

一番花もあって、当てにしていたユーリが不在とあって、女性陣はあれやこれやと話し合っていた…

僕も悪いとは思ったが…

ユーリの体調の方がなによりも優先なので、ここは、他の女性陣にがんばってもらうしかない…


すると…エリザがこちらを振り向き、トコトコと近づいてきた。


僕は訝しんで、首を傾げる。

「エリザ、僕に何かよう?

僕に何か協力できることでもあるかな?」


「…リンネにしか協力できない事があるんだけど…」


「僕に協力できることなら協力は惜しまないよ!

ユーリは僕の妹だから!

ユーリの穴埋めは出来るかぎり協力するよ!」


エリザはニヤリと微笑む…

何故か僕はその笑顔を見て、背筋に寒気を感じた。


「それは、助かるわ!

じゃこっちに来て…」

と言って、僕の左手をつかんで、女性陣の方へつれていく。


「…みんな。

リンネが協力してくれるそうよ。…」


すると、女性陣から黄色い声が飛び交う

「ほんと!助かるーー!」

「リンネなら間違いないよね!」

「そーそーリンネしかウチの男子の中じゃできそうにないしー」

「これで、何とかなるんじゃない!?」

とみんな喜んだ。


僕はあっけに取られ…

「…エリザ…僕は何をするんだい?…」


エリザは、ティファに顔を向け、ティファが申し訳なさそうに

教室の後ろの女性用の更衣室に当てられた仕切りの空間からある衣装を取り出す…


僕はそれを見て絶句する…

「エ…エリザ…ま、まさか…これを僕に着ろというのかい…?」

と僕は、冷や汗をかきながらエリザに振り向く。


エリザはさも当然といった感じで胸を張って大きく頷く。

「そう…。これは、ユーリの双子であるリンネしかできないわ。

ユーリの『メイド服』を着ることは!」

と、平然と言ってのける。


僕は、慌てて反論する

「いや!いや!ありあえないって!

無理!無理!無理!」


するとエリザはジト目で僕を見つめ

「…リンネはさっき『僕に協力できることなら協力は惜しまないよ!』って言ったわ…

大の男が自分の発言に責任を持てないなんて…男らしくないんじゃないの?!」


僕は、「ぐぅ…」と口篭ったが…

「いや!でもその大の男が『女装』とか…ありえないって!」


なおも反論する僕にエリザは

「…まったく…こんな些細なことも出来なくて『平等な世界』とやらは出来るのかしら?」

と耳元で囁いた。


僕はさらに驚き

「エ…エリザ…なんでその事を知っているの?…」


「さぁ…?でも、女性の格好をしている人も平等に扱わないといけないんじゃない?」


僕は、「ぐ…ぐ…ぐぅ…」と呻き、反論を諦め…肩を落とす…

「解ったよ…、やるよ!やれば良いんだろ!」

とぶっきらぼうに答えるのが精一杯だった…


◇◇◇◇◇


 僕らのクラスのメイドカフェはかなり盛況だった。

元々、ユーリやティファは学校内でも一、二を争う美人だという事もあり、

その二人目当ての客が多く訪れていた。

でも、今日、ユーリは風邪で休みだ…

なんでこんなに忙しいんだ?

と思いながら僕は慣れない服装で接客する。


「い…いらっしゃいませ…ご…ご主人様…。」


と少しもじもじしながら新しいお客に対して、必死の笑顔を作り対応する。

どうも…このミニスカートは、スカートがめくれないか気になって…もじもじしてしまう…

他の女子は知らないが僕は一応、スカートの下は直接下着ではなく、短パンなのだが…

今一、このスースーする感じがなじめないでいた…


そんな僕の態度に何故か男性のお客は少し興奮気味?だ。


◇◇◇◇◇


 キース・エンタープライスは、教室の端に作られた厨房で

忙しく調理する合間にリンネの様子を盗み見ていた…

日ごろは意識していなかったが、こうして女の格好をしていると、

リンネはどこからどう見ても『美少女』にしか見えない。

元が、ユーリにそっくりなだけでなく、

恥らう感じが『儚げな美少女』を演出していた…


「いやーー…

ユーリと違ってあの…恥らう感じ…

わざとか?

あれは人気でるよな…」

なんて呟いていると、

「バン!」とトレーが乱暴にカウンターに置かれ、ティファが睨みつけていた。


「ちょっと!キース!

なにサボっているのよ!この忙しいのに!

新規の注文よ!

オムライス一つにカルボナーラ一つよ!」

と怒鳴るように注文する。


俺は、首をすくめ、

「はい!はい!了解しました!

今すぐお作りしますよ!

…お前もリンネみたいにもう少し恥じらいがあったほうが受けるぞ…」

と悪態も付け加えて返事をし、厨房に引っ込む。


ティファはその背中に

「なんですって!余計なお世話よ!

いーーだ!」

とティファは俺に怒鳴り返していた…


◇◇◇◇◇


 朝から3時くらいにかけての忙しい時間帯が過ぎ…

リンネ・アルベールはやっと、遅い昼休みの休憩を取っていた…

教室奥の更衣室に置いてある椅子に座り込み、顔を伏せて深いため息を吐き出す…

「ふーーー…

やっと休憩だ…

つ…疲れた…

まさかこんな目に会うとは…」


すると、誰かが肩に手を置き、肩をもみ始める…

僕が振り返るとそこには、笑顔のティファがいた。

「リンネさん。

ご苦労様。

災難だったね…」


「いや…

ティファありがとう…」

そう言って僕は、ティファの肩もみを暫く堪能する。


すると、肩をもんでいたティファが少し戸惑いながら話し出す…

「リ…リンネさん…

昨日の約束覚えている?」


僕は、閉じかけていた目をはっと見開き、振り返り、返事をする。

「えっと…大丈夫、ちゃんと覚えているよ…」


「じゃ、じゃあこれからお互い休憩だから…

一緒に回りませんか?」


「いいけど…

その前にちょっとクラブに顔を出していいかな?

多分もう直ぐ実演をしなきゃいけない時間だから…」


「はい!

構いません!

じゃ一緒にクラブまでいきます!

その後、回りましょ!」


僕は、苦笑し頷いた。


ご意見・ご感想をお待ちしております。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ