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Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇少年期編~第二章~◇
24/66

潜入

2013年1月3日改修


 ヴィクター・メンゲレは、

帝国軍によって作られた新造艦『シュタイナー』号の最下層にある『貯蔵層』に向かっている。

『シュタイナー』号は、帝国で初めて作られた『蒸気フリゲート艦』だ。


 ヴィクター・メンゲレはこの世界の人間では無い。

元『アメリカ第八空挺師団』の『技師』だ。

この世界に来たとき、我々は戸惑ったものだが、

私は、生来の研究好きを遺憾なく発揮し、自軍の兵器開発を行っていた。

今や『ウルク帝国軍研究開発主任技師』として、帝国軍の兵器開発の全権を担っている。


 この船の最下層の区間は本来の船ならば船体のバランスを取るための

バラスト水を溜めておく箇所だ。

だが、この『シュタイナー』号は通常の船と違い、

バラスト水だけでは無く『ある生物』を貯蔵して置く箇所として、流用している。

もちろん、バラスト水代わりというだけでなく、ある用途のために…


 私は、最下層に広がる空間に足を踏み入れる。

そこは、通常の船ならば真っ暗であるはずだが、

今は光魔法の魔法石でこうこうと照らせて、最下層のこの空間は昼間のように明るい。

その空間には、数人の白衣を纏った人間が数人せわしなく何かの作業を行っていた。

その中の一人が、私に気づき、駆け寄ってくる。

「ヴィクター博士!

予想どおりの出力は確保できました。」


私は頷き、

「ふん!

まずは予定通りか・・・だが一昨日の古代竜は惜しい事をした。

魔道兵器のテストは行えたが、取り逃がしたのは痛かった。

次回の発見時は、私が直接『魔道兵器』の指揮を取る!

発見次第、直ぐに『魔道兵器』が稼動できるよう準備しておけ!」


白衣の男は拳を作って胸に当てる簡易敬礼をし、

「了解しました」

と返礼した後、作業に戻っていった。


 私は、一人、最下層を見渡す。

その空間には、通常の船と変わらず、水が満たされていたが、縦横無尽に浮き橋がかけられ、

正方形に区分された池が出来ていた。

まるで何かの養殖場に似ている。

だが、実際そこにいたのは、鎖に繋がれた5m級の『水竜』が所、狭しと繋がれていた。

その数、50体はいるだろうか。

その『水竜』の背中には銛が刺さり、銛からは、銀色の管が伸び、

その管は一箇所に繋がっていた。


 そう…最下層の中央部に設置された巨大な『魔法石』へと。

その『魔法石』は、通常見かける大きさとは逸脱した大きさだった。

通常の魔法石はどんなに大きくても、30cm程度しかないが、

その魔法石の高さは3mはあり、幅も1mある六角柱の形をし、上下の先端が尖っている。

それが、中央の台座に鎮座していた。

その巨大な魔法石の横にはこの世界では見かけない『キーボード』のような操作盤の台が

設置され、先ほどの白衣の男がなにやら作業を行っていた。


 私は、白衣の男達を見渡し、独り言をいう…。

「やはり、大魔法を駆使するにはかなり巨大な『エーテルクォーツ』が必要だな…

今の『エーテルクォーツ』では演算速度と要領にかける…

大魔法は2つぐらいが限度だろう…

やはり、古代竜なみの『エーテルクォーツ』が必要だな…」


私は、一人頷き、作業の確認の為、『魔法石』へと向かった。


◇◇◇◇◇


 竜狩りを行っていると見られる軍船…

それは、沿岸から少し離れた場所で、煙を上げて航行していた。

予想通り、蒸気機関を併用した帆船、俗にいう、蒸気フリゲート艦だ。

外輪が無い所を見ると、スクリューで航行するタイプのようだ。

このタイプは第一次世界大戦時のものだったはず…

あのアメリカ兵達はもしかしたら、

リンネ・アルベールの時代(2012年)では無い年代の人たちなのか…

この世界では、ガソリンとかは生成しづらいのかもしれない…

もしかすると、飛行機の燃料だけで手一杯なのかな?


 石炭はこの世界でも使用しているのは見かけるが、

リンネ・アルベールは、石油を見たことは無かった。

実際ガソリンを作るとなると、原油を350℃で加熱し石油蒸気にして、

沸点の違いで蒸気を取り出す精製が必要なはずだ。

確か…軽油232℃、灯油157℃、ガソリン32℃だったはず…

この世界ででも作れるが、原油の産出場所を僕は聞いたことがない。


 僕は、その軍船からは見えない距離で、ヨットを停止させ、

みんなに振り返る。


「どうやら、あれが『竜狩り』をしている軍船に間違いなさそうだ…

みんなまずは、このターバンを頭から巻いて、口元も隠してくれ」

と、僕は、昨夜用意していた、青のターバンを皆に渡す。


 今日のみんなの服装は、青系統の服に統一していた。

海の上ということもあり、出来るだけ目立たなくする為だ。

でもさすがに夏の日差しが暑いので、半そでだったり、短パンだったりしていた。

その状態で、ターバンを巻くと、かなり変な集団に見えたが、

顔を見られるのは、さすがにまずいので、ここは我慢してもらう。


 僕は、みんなが顔を隠し終わるのを確認し、キースに向かって、言葉を発する。

「キース。

じゃ例の魔法をお願いするよ!」


キースは、自分の胸を叩き。

「おう!任せろ!」

と言うと、目を閉じ集中する。


「光の幻影よ!我に従い、かの箇所にその姿を映し出せ!」

とキースが叫ぶと、ヨットの進行方向に四角い靄のようなものが現れる。

キースは、『ニッ』と笑い、親指を立てて『投影魔法』が展開された事を知らせる。


こちら側からだと薄い靄にしか見えないが、

反対側からは僕らの後ろの風景が映っているはずだ。

これは、昨夜、実際に確認済みだ。


僕は頷き、ゆっくり、ヨットを進めるようティファに指示する。


 軍船は、どうやら、停止しているようだった。

何をしているのかは不明だったが、止まっているならば近づくチャンスだ。

僕は、『カリーニ』にも、ヨットの後ろについてくるようお願いすると、

慎重に軍船に近づいていった。


 軍船に近づくとその巨大さがまざまざと確認できる。

全長は100mを超えているだろう。


 僕らのヨットは帆をたたみ、帆柱も寝かせた状態で、水魔法の推進だけで、その軍船に近づく。

何とか、横付けしたところで、息を潜める。

『投影魔法』は前ではなく、頭上に移動し、上から視認できないようにしていた。


僕は、みんなに振り向き、

「みんな…

取り敢えず中に僕だけで潜入して、中の様子を探るよ。」

と切り出す。


するとユーリが勢い込んで、

「ダメよ!リンネ!

一人じゃ危険だわ!」

と、少し大きめの声を出す。


僕らはいっせいに口の前に人差し指を立てて、静かにするように促す。

ユーリは『シマッタ』といった感じで口の前に両手を当てた。


「ここに、通信用に風魔法の魔法石を持ってきているんだ。」

と緑色の10cmほどの魔法石2個取り出し、片方を、ティファに渡す。


ちなみにこの魔法石は、以前、マリアンヌさんから、貰った通信魔法が付与された魔法石だ。

魔法石には、基本一つの魔法しか付与できない。


「僕一人なら、姿も消せるのを昨夜、キースと確認しているんだ。」

キースと僕は、キースの魔法を確認するついでに、僕自身も『ルールスペース』で

『光学迷彩』が使用可能か試してみていた。

予想どおり、光の屈折を変化させる事で可能なことが確認された。


「僕もいきなり、戦闘をする気はないよ。

何かあったら、直ぐ離脱できるように、みんなには準備していてほしいいんだ。

さすがに、海のど真ん中じゃ、僕一人で脱出するのは不可能だろうからね。

大丈夫!取り敢えず中の様子を確認してくるだけだよ。」


ユーリも敵船の中についていくのは、さすがに足手まといと感じたらしく、

俯いて、

「解ったわ…

でも、本当に気をつけて。

決して無茶しないでね。」

と声を掛けてくれた。


他のみんなも頷き、了承を得る。


 僕は、船尾に顔を出している、『カリーニ』に顔を向け、聞いてみていた。

「カリーニ、僕はこの船を見たときに感じたんだけど、

どうも船倉付近に大きな水魔力の力を感じるんだ?

これって…中に水竜が捕らわれているんじゃないかな?」


カリーニは、少し考えるように目を瞑ったあと、問いに答える。

「確かに…

同胞の気配を感じる…

だが…なんだ?これは?

私と同等かそれ以上の魔力をこの船のそこから感じる!」


僕は、頷き、

「やはり、そうですか…

僕も、水竜より大きな魔力オーラが『視え』ましたから…」


僕は、今度はキースに向き直り、声を掛けた。

「キース。

もし、水竜が捕らわれていたら、救出するから、例の魔法!

お願いするよ!」


キースは満面の笑みを浮かべ、

「おう!任せろ!

ちゃんと場所を教えてくれたら、速攻で仕掛ける!」

と、右腕を上げ、力こぶを見せる仕草をする。


僕は、苦笑しながら

「ああ、期待しているよ」

と返事を返す。


僕は、改めて、みんなの顔を見、

「じゃみんな行ってくるよ!」

と言って、ルールスペースを展開して、光学迷彩をかける。

僕の姿はあっという間に、風景に滲み掻き消える。


キース以外のみんなはその姿に驚いていた。


 僕は、船上まで浮き上がり、周りを確認する。

船員が何人か甲板を歩いていたが、誰も僕に気がついていないのを確認し、

船内に入る扉を探した。

扉は直ぐに見つかり、僕は、慎重に船内に忍びこんだ。


ご意見・ご感想を頂けると幸いです。

今後ともよろしくお願いいたします。

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