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Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇少年期編~第一章~◇
20/66

ベイト脱出作戦

2013年1月1日改修

 今、リンネとマリアンヌは、

『エルウィン王国開放戦線』が包囲されつつある『ベイト港』に向けて

飛竜ドラグーンを飛ばしている。


 僕らの格好は、上から下まで、真っ黒な服装で、胸には硬皮で出来た黒塗りの胸当てをし、

ダガーを指したベルトを襷がけに掛け、頭には黒いターバンを巻いて、

口元もそのターバンで隠し、目だけ出している…

まるで、中東の暗殺者のような格好だった。

僕は、それにプラスして両腿にもダガー用のベルトを巻きつけていた。


 僕は風を切って疾走するドラグーンの背中で、

さっき分かれたユーリの事を思い出していた…

僕は、マリアンヌから、ベイトの脱出作戦への協力を依頼された後、

何も言わずに会場を後に出来なかったので、一度、会場内に戻り、

ユーリを連れ立って、会場外の人気の少ない場所で、

ユーリに、ベイトにいるアルベール兄さんの助けに向かう事を話した。

ユーリは黙って僕の話を聞いていたが…


「何で!

何でリンネが何時も危険な目にあわなきゃいけないの!?」

と僕に言いよる…


「ユーリ…

解ってほしい…この事態を打開できるのは…残念ながら僕しかいない…

急に敵に対抗できる兵も集められない現状じゃ…

僕が協力するしかない…ユーリどうか解ってほしい…」


 ユーリはしばらく黙り込んでいたが、

「リンネの事だから…

私がいくら反対しても…

もう決めちゃっているんでしょ?」

と寂しげに顔をうつむかせる。


僕は、何も言い返せず、黙ってしまっていた。


ユーリは、僕が何も言い返さないのを肯定と判断したらしい。


 一度、深呼吸してから

「じゃ!

ひとつだけ約束して!

必ず無事に戻ってくるって!

無事じゃなかったら夕飯抜きぐらいじゃすまさないんだから!」

と言ってきた。


 僕は、苦笑しながら頭の中で

『無事じゃなかったら…夕飯どころじゃなんだけど…』

とつっこみたくなるのを我慢して、口では、

「ああ!

解ったよ!

必ず無事に帰ってくるよ!

約束だ!」

と言って会場を後にした。


◇◇◇◇◇


 飛竜ドラグーンで移動しながら、マリアンヌから状況を確認した所、

敵の包囲網は、100人ほどの敵部隊により、

黒魔法の探知結界を張りながら、探索を港に向けて行い、

徐々に包囲網を狭めながら近づいていて、陸路からの脱出は困難な状態らしい。

また、海には湾外にウルク帝国の軍船が、一隻出入りのする船に探索魔法をかけて、

出港を規制しているとのことだった。


 僕への依頼は、包囲網が完全に狭まる前に、軍船を排除してほしいとの依頼だった。

『エルウィン王国開放戦線』のメンバー50名は、すでに商船に偽装した船に乗り込んでいて、

何時でも出航可能な状態で、待機している…


 ウルク帝国側も他国内というもあり、おおっぴらには行動していないようだったが、

深夜まで待って、軍船に奇襲をかけるには、包囲網が港まで及ぶ時間を考えると、

時間的には微妙に思えた。

 今、最短でベイトまでは、ドラグーンで半日かかるので、着くのは夕方…

丁度、日が沈みかける時刻になりそうだった。

僕は、マリアンヌの背中で、

『日が沈んだ直後に仕掛けるか…』

と考えていた。


 ベイトまで、近づいた所で、僕らは一旦、地上の森に降りた。

日はかなり傾いて、日差しは赤い夕日となっている。

「殿下、これ以上の町への接近は、敵に探知される恐れがあります。」

そう言って、地上に降りるとベイト周辺の地図を広げる。


そして、地図の湾から少し離れた岬を指差す

「殿下、私が確認したところ、この岬からなら、

殿下の狙撃が可能と思われます。」


僕も地図のその場所を確認する。

マリアンヌの指した場所は、確かに湾の出入り口付を確認できる場所に突き出していた。

「マリアンヌさん、この場所から敵の軍船までの距離はどのくらいですか?」


「はい…

この地図の縮尺から考えて、5kmほどかと…」


「5km…」

前世の世界最長の狙撃記録は2.5kmだからその倍の距離である。

だが、僕は今まで、最長で7、8km前後の距離で狙撃をしてきたので、問題はないだろう。

しかし、敵も今までの僕の狙撃を何度と無く受け、このくらいの距離からの狙撃は

警戒していることも考えられる…

このまま、この岬での狙撃で、軍船を沈めることが出来るか?

軍船を沈めるとなると人を狙撃するのとはえらい違いだ。

人なら一発で良いが、軍船だと、2、30発は打ち込まないとだめだろう…

しかも、この世界の軍船は帆船でありながら抗魔法をかけてあり、

燃えにくく、沈みづらい。

主にマストには水魔法で、火の防御をし、甲板などの船体は地魔法で強化している。

僕のレールガンで船底まで貫通したとしても、一発では、意味が無いだろう。

打ち込むにしても、船体が折れるようなうち方…

船体の真ん中に一直線に打ち込み真二つになるように打つか…


僕は、考えをまとめ、

「解りました。

この岬から狙いましょう。

弾になる僕用の矢は用意してありますよね?」


僕用の矢とは、鏃だけでなく、全体が鋼で出来た『大きな針状の矢』をさしている。


「はい、ドラグーンに乗せています。」

とドラグーンに括りつけてある木箱を指差す。


「どのくらいの本数ですか?」

「はい、一応、100本ほどですが…

足りますか?」


「はい、それだけあれば、何とかなるでしょう。」

「そうですか、安心しました。

ドラグーンには、長距離を移動させる為、これ以上は、乗せられなかったのです…」

とマリアンヌは釈明かちに話す。


「敵の包囲網はかなり狭まっているでしょう。

時間がありません。

早速、岬に向かいましょう!」

と立ち上がり、マリアンヌを促す。

マリアンヌも頷き、立ち上がった。


僕らは再度、飛竜ドラグーンに乗り込み、ベイトの町を迂回して、岬へと向かった。


 岬は、町からかなり離れた場所だったので、草がうっそうと茂っているだけで、

人の気配はまったくしなかった。

僕達は、用心深く、岬の先端の崖に進み、ベイトの港の方角を確認する。

確かに、港の出入り口付近に他の帆船とは違う、黒塗りの大きい軍船が停泊しているのが

確認できた。


 マリアンヌが矢の入った木箱に手をかけようとした時、

僕は、周辺に違和感を感じた…

僕は、魔法ではない、違和感を感じ、後ろを振り向く…

手をマリアンヌの前に差出し、マリアンヌに動きを止めるように、指示をだす。


 僕が、周囲を警戒していると、不意に5人ほどの人影がゆっくりと立ち上がった。

立ち上がった人影はどれも大柄で身長は180cm前後といったところだった。

この世界の人間の身長は、男性でも平均170cm前後なので、

目の前の人影たちはかなり大柄となる。

まして、服装の上からでも、筋肉隆々な感じがうかがい知れた。

服装は、迷彩服に迷彩のマント、迷彩のヘルメットを被っていた。

そして、手には『サブマシンガン』が…

左胸に『星条旗』の刺繍が確認できた。


僕は、それを見た瞬間、驚き、その刺繍を凝視していた。

するとリーダー格らしい、中央の男が

「おい、おい…

この女子供がまさか『雷の狙撃者(Thunder Sniper)』じゃないだろうな?」

と声を掛けてくる。


僕らは、警戒し、黙り込む。

僕は心の中で

『まずいな…

完全に囲まれている…

魔法の気配ばかり気にして、魔法を使わず近づいてきたことに気がつかなかった。

…それにあの『星条旗』…

こっちの世界であんな刺繍や紋章は見たことがない…

向こうの世界の人間なのか?

それとも僕と同じ転生者?

僕と同じなら…

『ルールスペース』も使えるのか…?』

と、頭の中で色々と考え込んでしまった。


すると、リーダー格の男は、

「まあいい…」

と言うとゆっくりと左手を挙げる。

すると他の男達がいっせいにサブマインガンを構えた。


 僕は、反射的に両もものベルトからダガーが引き抜き、

投げつけた。

ダガーの射線上に極小の電磁レールをイメージすることも忘れない。

極小といっても、20cmほどなので、十分、普通に投げるより加速され、

貫通力も通常のダガーを軽く凌駕する。


 僕のダガーナイフは、20cm程度のものだが、それを弾丸として使用しているのだから、

戦車の砲弾と変わらない。

もっとも、いつもの狙撃の時につくりだす5mの電磁レールより威力は比べ物にならないほど

小さいが、5、6m離れている人間など紙切れ同然だ。


敵の5人の内、右手で投げたダガーの2人は見事に胸の中央を打ち抜かれ胸に大きな穴を空けて、

その場に倒れる。

左手で投げたダガーも命中はしていたが、一人は右肩、もう一人は、右足に当たって、

肉をえぐって大きな風穴を開けていただけでなく、

肩口に当たった兵士の右腕はもう取れかけていたし、

右腿に当たった兵士の右足もかろうじて端がつながっている程度だった。

左側の二人は、さすが歴戦の兵士らしく、叫び声も上げず、うめきながらその場にしゃがみこむ。

ただ、中央のリーダー格の男はヘルットの端を掠め、

ヘルメットが吹き飛んだだけですんでいた。


 ヘルメットが吹き飛び相手の顔があらわになる。

額の端から鮮血が滴っている。

その顔は…金髪に青い目そして、耳が…この世界ではありえない形だった。

僕の前世の世界での人間の耳だったのだ…

よく見ると、倒れている兵士も同じ形の耳をしていた。

僕は、この時、この兵士達がこことは違う世界…

僕の前世の世界からの来訪者である事を悟った。


僕が、リーダー格の男を凝視していると…


リーダー格の男は、一瞬の出来事に驚き、僕を睨みつけ、

「こ…小僧!

貴様!何をした!」


どうやら、あまりの早業だったため、

まだ状況がはっきり飲み込めていないようだ。


僕は、舌打ちし、

『今ので、仕留め切れなかったのは痛かった!』

と心の中でつぶやく。

僕は、無言でそのリーダー格の男に向かって走りだす。

リーダー格の男は慌てて、サブマシンガンを構え連射した。


「ダダダダダ……」

あたりに、マシンガンの弾をはじき出す音が響き渡った。


 僕は、ルールスペースを自分の前方2m程度まで展開し、すべての弾を空中で停止させた。

そして、ルールスペースを最大空間の5mまで広げ、そのリーダー格の男を空間内に把握した。

僕は、心の中で『勝った!』と叫んでいた。


 だが…僕が、リーダー格の男の動きを止めようと、

相手の服や空間内の分子を静止させるイメージをしても相手は平然と横に動き、

マシンガンを撃ち続けていた。


僕はあせった。

『相手の動きを止められない!

あいつもルールスペースを使えるのか!?』


僕は、今一度相手を凝視する。

すると…相手の体と武器を薄いオーラが包んでいた。


どうやら、僕のように空間を広げられないようだが…

この世界の影響を受けない空間を身に纏っているようだ。

それだけではなく、僕の『ルール・スペース』も受け付けない…


リーダー格の男はサブマシンガンの弾を全弾撃ち終え、

トリガーを何度も引いていた。

「カチ、カチ、カチ…」

と空虚な音が鳴り響く。


リーダー格の男は使えないサブマシンガンを投げ捨て、

腰に下げていた、大振りのサバイバルナイフを抜き出した。


「この化け物め!」

と言い放つと、僕を睨みつけ、闘牛の如く、ナイフを構えて突進してくる。


 僕は、咄嗟に、腰に下げていたショトソードを引き抜き、相手のナイフを受け止めた。

だが、体格差が大きく違う為、後ろに吹き飛ばされて、一回転して、片ひざをつく。


相手は、あまりに、僕があっけなく吹き飛ばされたので、拍子抜けして僕を見つめていた。


「はっはー…

貴様、さては格闘戦が苦手だな?!」

と言い、ゆっくり僕に近づいてくる。


僕は、心の中で、

『格闘戦以前に体格が桁違いなんだよ!

どう見てもそっちは100kg超えだろ!

こっちは55kgなんだから、ほぼ倍じゃないか!!』

と悪態をついた。


僕は、必死で打開策を考える…

『この体格差は如何ともしがたい…

ルールスペースで、相手を止められない今、

距離を取って、レールガンを打ち込めれば良いんだが…

距離を作る暇は与えてくれないだろうな…』


 僕は、ショートソードを構え、相手を睨みながら後ずさりする…

だが、段差に足を取られ、体制が傾いてしまった!


その瞬間をリーダー格の男は見逃さず、

大振りのサバイバルナイフを脇に構え体ごと突っ込んできた!

僕は、舌打ちし、相打ちを覚悟して、剣を構える。


すると、僕と敵の間に割って入ってくる人物がいた!

マリアンヌだ!


マリアンヌは僕を両手で突き飛ばし、僕は後方に弾きとばされた。

敵はそのまま突進し、マリアンヌの背中をサバイバルナイフが貫いた!

マリアンヌは、僕に微笑みかけその場に倒れる。


僕は、なんとか立ち上がり、剣を構え直す。


敵は、そんな僕を見据えてマリアンヌの体から、ナイフを引き抜き、

ゆっくり近づいてきた。


僕の後ろはもう岬の先の断崖絶壁だった。


敵は、ゆっくり近づきながら言葉を放つ。

「よくも俺の数少ない同胞を殺してくれたな…

この仇は、貴様をただ殺すだけではすまさんぞ!

貴様ら、反抗勢力は根絶やしにしてくれる!」

とドスの効いた声で脅してきた。


「それはお互い様だ!

それに、異世界に来てまで戦争とは…

『アメリカ兵』は、よほど人殺しが好きなんだな!!」

と僕は、嫌味を込めて言い返した。


その僕の言葉を聞き、リーダー格の男は目を見開き、僕を凝視する…


「き…貴様!

なぜそんな事を知っている?!

しかもアメリカ…を知っているのか?」

と言いながら敵は、僕ににじり寄ってくる。


 僕は、唇の端を吊り上げ、嘲笑しながら

「そんな事は自分で調べるんだな!」

と言い放ち、相手を見据えながら後ろへ飛び、崖から、海へと飛び込んだ!


敵のリーダー格の男は、慌てて、

「ま!まて!」

と言って手を伸ばしたが、僕の姿は崖下へと消えていた。


急いで、リーダー格の男が崖下を覗き込んだ瞬間!


リーダー格の男の頭が吹き飛んだ!

男の体は、顔の中央の部分の無い状態で、体制を崩し、崖下の海へと落ちて消えていった。


僕は、崖下の空中に重力を制御して、停止し、

リーダー格の男が崖下を覗き込んだところを、電磁レールを付与したダガーで打ち抜いたのだ。

まさに不意打ちだ。

リーダー格の男は、自分が死んだ事も解らず死んでいったことだろう…


僕は、そのまま崖の上まで、浮かび上がり、倒れている敵を確認する。

2人は確実に絶命していた。

重症の2名も、出血が酷く、虫の息だ…


僕は、倒れているマリアンヌさんに駆け寄り、仰向けの体を抱き起こし、

頭と顔に巻きつけてあったターバンを外す。

マリアンヌの長い黒髪が垂れさがり、猫耳があらわになる。

顔色はすでに蒼白となっている…


僕は、自分のターバンの口元を下げ、声を掛けた。

「マリアンヌさん!

しっかり!」


マリアンヌは目を薄く開け、か細い声で、

「リーン殿下…

良かった…

敵を倒したのですね…」


「ああ!

敵は倒したよ!」


「さすが私達の殿下です…」


「ああ!

後は、軍船を沈めるだけだ!

そうしたら、直ぐ手当てをするから!

がんばるんだ!」


「いいのです…

リーン殿下…

これは、殿下を利用してきた報いなのです…

私はリーン殿下の優しさに付け込み、戦場へと連れ出す死神のような女なのですから…


そんな私ですが、最後に殿下の盾となれて本当に幸せです。

私は、今まで殿下の幸せを願いながら、その逆の行動ばかりでした…


殿下…最後に私のお願いを聞いてくださいますか…?」


僕は頷き、

「ああ!

聞くよ!

聞くけど、マリアンヌさん!

死んじゃだめだ!」


「殿下…

私はこれでも騎士です。

自分の傷が致命傷なのは理解しています。

こうやって、話をしているだけでも奇跡です…

でも、騎士として、心からお慕いしている主君の盾となれたことに誇りを感じています。


…お願いと言うのは、私のドラグーン(飛竜)のことです…

あの子の名前は『アスラン』、

あの子は、私が卵の時から世話をして、育てあげました…

あの子を貰っていただけませんか?

きっと、私に代わって、殿下のお役に立てるはずです…」


「ああ!

ありがとう!

大切にするよ!」

と言って、とめどなく出てくる涙も拭かずに、強く手を握る。


「そう言っていただけて安心しました…

それと…摂政のマルケルには、気を付けてください…

どうか、これからは、周りを気にせず、殿下の思うがままの道をお進みくだいますよう…」

と言って、マリアンヌは息を引き取った。


「マリアンヌさーーーーーーーーん!」

僕は、いつの間にか、戦場だと言うことも忘れて、声を上げて泣いていた。


◇◇◇◇◇


何時の間にか、日は沈み、夜の星が瞬いている。

僕は、のろのろと起き上がり、ベイトの港の軍船を見る。

軍船は、夜になって、所々にかがり火を焚き、夜の海に浮かびあがっていた。


僕は、木箱を無造作に掴むと中身を空中にぶちまけた。

空中でばら撒かれた100本の鋼鉄の矢が静止する。

僕は、右手の人差し指と中指をそろえ、軍船に狙いをつける。

一呼吸して、僕は5mの電磁レールをイメージし、100本の矢をマシンガン状態で打ち出した!

矢は光の帯となり軍船を貫き、軍船は轟音を立てて沈んでいく…


僕は、その光景に目も向けず、マリアンヌさんを抱き上げ、近くの木の下に運んだ。

僕は能力を使い、人が一人入る分の土を持ち上げ、

持ち上げた土の下にマリアンヌさんの体を横たえる。

そして、土を戻し、マリアンヌさんが付けていた剣をその上につき立てた…


「マリアンヌさん…

今までありがとうございました。

幼い僕を何度も救っていただき…最後も僕の盾となって…」

僕は、強く拳を握り締め、つめが手に食い込んで血が流れていたが、

不思議と悔しさが先立って、痛みを感じなかった。


僕は、しばらくその場を動けなかったが…

不意にここにこんなに長く留まることの危険性に気づく。


まずい…

敵の部隊が帰ってこなくて、軍船が沈められたんだ…

敵がこの場所に部隊を派遣して帰ってこないとなったら?

確認に別部隊を派遣するはずだ!


僕は、急いで、崖に戻り、敵兵を確認する。

一人、虫の息だったが、近くに落ちていた拳銃で留めをさす。


兵達の持っていた武装から、サブマシンガンを一丁肩に掛け、拳銃を一丁腰のベルトに指す。

予備の弾層を集め、その他のサブマシンガンと拳銃を能力で破壊し、海に投げ捨てた。


僕は、急いで、ドラグーンの手綱を縛っている、森に戻り、

ドラグーンの『アスラン』を確認する。


「アスラン…

すまない…

お前のご主人を死なせてしまったよ…

すまないが…これからは僕と一緒に来てほしい…」


すると、アスランは悲しそうに

「クォーン…」

と一鳴きし、顔を摺り寄せた。


僕は、その顔をなで、アスランの背中にまたがる。

「アスラン…

これからよろしくな。」

と言い、首筋を軽く叩く。


アスランは返事をするように羽を羽ばたかせた。


「じゃ!

まずは、カストラートに帰ろう!

君にユーリと僕の友達を紹介するよ!」

と言って、僕は手綱を叩き、アスランを飛び立たせる。


飛び上がった、眼下に広がる海には、マリアンヌが言っていた偽装商船が、

沖に向かっているのが見えた…

僕はそれを一瞥し、アスランをカストラートに向けて飛び立たせた…


リーンカーネーション・サーガお読み頂きありがとうございます。

八咫烏です。

今回は、少年期編の中盤の大詰めのお話でした。

今後もしばらく少年期編は続きますのでご期待ください。

今後ともよろしくお願いいたします。

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