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Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇少年期編~第一章~◇
19/66

大会~二日目(使者)~

 今日は、大会二日目だ。

今日は、自分も試合が無いので、クラスのみんなとメイン会場で行われている

競技を見学する予定だ。


 それにしても、昨日の夜はえらい目にあった。

まあ、ユーリのおかげもあり、ふさぎこまずにすんだので、良いとしておく。


 支度をし、一階の食堂に向かう。

食堂にはユーリと僕の叔母であり養母の『ミリア・アルベール』が既に、着席していた。

ミリアの容姿は、僕の実母のメアリに似ていたが、

印象はまったく違っていた。

花に例えるなら実母のメアリは天真爛漫で明るい『向日葵』、

養母のミリアは儚げな『百合』といった印象だった。

ちなみに目も髪もユーリや僕の実母と同じ青色だ。


ユーリと養母は楽しげに何か話しこんでいるようだった。


「お母様にも昨日のリンネの雄姿を見せたかったわ!

目にも留まらないような早業だったんだから!

なんていったって大会新記録なんだから!

会場の盛り上がり方はほんと、すごかったのよ!」

「まあ!

そうなの。

それは私も見たかったわ!

昨日は又、体の調子がすぐれなくて、外には出られなかったから…

残念だわ…」


「でも…

お母様…最近は、少し良くなって来たって聞いてたけど…」

「そうなんだけど…

やっぱり、まだたまに目眩がして、立っていられない時があるの…

でも大丈夫。

ユーリ、心配しないで。

これでも、以前よりかなり良くなってきているから!

近い内に私もサイアスに行けるようになるわ。」


するとユーリは顔を曇らせ伏目がちに、うつむき、

「ごめんなさい…お母様。

私もお母様に付いていてあげるべきだと思うんだけど…」

「いいのよ。

ユーリ…

あなたは、リンネに付いていてあげて…

あの子の心の支えは今、ユーリだけだと思うから…」


「ありがとう…

お母様。

でも、最近じゃリンネにも友達が出来て私だけじゃなくなったから…」

「あら?

ユーリ?

あの子に友達が出来て寂しそうね?

もしかして、その中に女の子もいるのかしら?」


「お…お母様!

わ…私はそんなんじゃ…」


僕は、話の内容が変な方向にいきそうだったので、

階段の上で聞き耳を立てて様子を見るのを止め、

一階に降り、食堂に入り声を掛ける。


「お養母様、ユーリおはよう」


すると、ユーリが顔を赤くし、挨拶する。

「お…おはようリンネ。」


そして、養母が、にこやかに挨拶を返してくる。

「おはよう。

リンネさん。」


「楽しそうな話声が聞こえましたが?

何を話していらしたんですか?」

とちょっといたずら心が浮かび、養母に聞く。


養母は、どこか楽しそうに返事を返す。

「実はユーリがね…

あなたの事を…」


「わー!わー!わー!

お!お母様!

な!何を言おうとしているんですか!

わ、私は、昨日の大会の話をしていただけですよ!」


「そう?

大会の話の後・・確かお友達の話を…」


「そ!そうよ!

私たちに仲がいい友達が出来たって話!

ね!

リンネ!」


「ああ…そうだね。

『キース』に『ティファ』に『エリザ』っていう仲の良い友達ができたんですよ。」


「そうそう!」


すると養母は、少し考えるような仕草の後、聞き返す。

「あら?

ティファさんにエリザさんはもしかして女の子?」


「そうですが?

何か?」


「ああ!なるほどその二人が…」


と養母が口走った途端ユーリが

「ちょっと!

お母様!

いくらお母様でもこれ以上は!」


養母は、ユーリの反応を見て、コロコロと笑い。

「ごめんなさい、ユーリ。

あなたの反応があまりにも面白かったから!

そうなの、

よいお友達が出来てよかったわ!

リンネさん、そのお友達を大切にしてね。」


「はい。

自分もそう思っています。」


と僕が返事をする。

ユーリは養母にからかわれて少しむくれていた。


◇◇◇◇◇


 僕らは屋敷を出、会場に向かった。

会場の入り口で、キースとティファとエリザが僕らを待っていた。

みんなが挨拶してくる

「よう!リンネ!ユーリ!」

「リンネさん、ユーリさん、おはようございます。」

「おはようございます。」


僕らも

「おはよう!」

と挨拶を交わす。


するとキースが聞いてきた。

「リンネ、昨日は眠れたか?

久しぶりの実家で、おふくろさんとあったんだろ?」


「ああ、昨日母と久しぶりに話をして、ゆっくり休んだよ。」

本当は、祖母の小言の為、養母とは昨夜は話せなかったのだが…


「そうか!

よかったな!

お前たちの母さんって、体が弱いんだろ?

大丈夫そうだったか?」


「ああ、この所、だいぶ、具合は良くなってきているみたいだ。

以前は、起き上がるのも苦労していたけど、

遠出はできないけど、近くを散歩できるぐらいには良くなっているみたいだよ。」


「そうか!

それはよかったな!

じゃあ、近い内にサイアスにくるのか?」


「それは、まだ先だろうけど、サイアスに来たらみんなにも紹介するよ。」


「それは、楽しみだ!

お前たちの母親なら、さぞ美人なんだろうなー。」


するとユーリがキースの言葉を聞き咎める。

「ちょっと!

キース!

私たちのお母様なんだから、変な目で見ないでよね!」


するとキースは、僕の肩をつかみ引きよせ

「お!

じゃあ!

リンネならいいのかな?」

と意地悪くユーリに言い返す。


ユーリは、あせって、僕とキースの間に割り込み、

僕らを引き離しながら

「だ!だめにきまってるでしょ!」

と真っ赤になってキースを睨みつける。


キースはユーリのあまりの勢いを見て、

両手を挙げて、

「冗談!冗談だって!

本気にするなよ!」

と弁解する。


僕はあきれて、眉間に指をあて

「キース…

冗談のネタに僕を使うなよな…」

とため息混じりに言い。


ティファがそれに追随する。

「キース!

悪ふざけもたいがいにしてよね!」


エリザもそれに続き、

「そーだ!そーだ!」

と感情がこもらない声で賛同を送った。


キースはみんなから非難を浴び、ふてくされながら、

「わかった!わかった!

ちょっと悪ふざけが過ぎたみたいだ。

すまん、すまん!」

と適当に誤った。


まあ、僕らにしたらいつもの事なので、顔を見合わせ、

みんなあきれながらもキースを許すことにした。


◇◇◇◇◇


 大会二日目は、メイン競技の『学校対抗模擬戦』と『魔法剣術試合』が行われる。

一日目で他の競技は終了しているので、他の競技の選手もこの競技を見学するため、

メイン会場は、室外、室内とも、人でごった返えしていた。

ただ、『魔法剣術試合』は室内会場で行われるため、

室外の『学校対抗模擬戦』より、人は少なめではあった。


 僕らはキースの強い希望もあり、

室内会場で行われる『魔法剣術試合』の見学に来ていた。

午前中は昨日の予選に勝ち残った選手が、

再抽選されたトーナメントの第一試合から準決勝まで行われる予定だった。

午後から決勝戦だ。


 僕らのサイアス魔法学校の選手は、一人本戦に出場していたが、一回戦で負けてしまい、

この後、屋外会場の「学校対抗模擬戦」を見に行くか、

このまま、『魔法剣術試合』を続けて見学するか迷っていた。


 時間は丁度、10時頃だった。

僕は、室内競技場の観客席の窓に背を預ける格好で、

みんなと何処を見て回ろうか話をしていた。


すると、同じ学校の女生徒が僕に話しかけてきた。

「あの…

リンネ・アルベールさんですよね?」

「そうだけど?」

「リンネさんに渡してくれって、会場の入り口のところで女性から、

この手紙を預かったんだけど…」

そう言って、女生徒が手紙を差し出す。


「僕に?」

女生徒は頷き、僕は手紙を受け取り礼を言う。


女生徒がその場を離れ、僕は、手紙を確認した。


 手紙は表紙には何もかかれていなかったが、蝋で留めてあった押し印は、

旧エルウィン王国の紋章『水竜』で押し印されていた。

僕は、驚き、目を見張る。


 みんなが不振がって、僕を見つめていた。

僕は、手紙をポケットに押し込み、

「ちょっと、トイレに行ってくるよ。」

とそそくさとその場を離れる。


 後ろから、ユーリ達の呼び止める声が聞こえたが、

かまわず、会場を出た後、外に走り出した。


僕は、会場の外の木の下で、手紙を取り出し、

急いで中を確認する。


「会場の裏手で待つ。

マリアンヌ」

と書かれていた。


僕が会場の裏手に行くと誰もいなかった。

今はメインの室外と室内で競技が開催されているのだから当たり前といえば

当たり前なのだが…

どうも人が寄りつかないように黒魔法の結界が張られているようだ。

すると、会場の影から、『マリアンヌ』が音も無く現れた。


「リーン殿下、お久しぶりです。

急な御呼び立てにも関わらず、お越し頂きありがとうございます。」

と片ひざをついて、頭を下げた。


「どうしたんです。

マリアンヌさん?

急に昼間にくるなんて?

今まで無かったですよね?」

とマリアンヌを問いただした。


マリアンヌはさらにかしこまり、

「はい。

リーン殿下のご迷惑とは解っておりましたが、

緊急事態ですので、やむなくお伺いさせていただきました。」


僕は、不吉な予感を感じつつ…

「…何かあったんですね?」

と聞き返していた。


マリアンヌは、表情を曇らせ

「こんな事を頼めるのは、今・・殿下しかいません!

今まで、散々お手伝い頂き、さらにこんな事を頼むのは心ぐるしいのですが…

今、我々は、窮地に立たされております!

どうか、殿下に助力していただきたく、恥を忍んでお伺いいたしました。」


僕は、深く息を吸い込み、聞き返す。

「で、何があったんです…?」


「我々は今、帝国の特殊部隊に包囲されつつあります…

どうか殿下のお力をお貸しください!」

と切羽詰った感じで言い放つ。


僕は、目をつぶり、考えた…

『ここで、見捨てたら、今まで助けてきた意味が無い…』


僕は決意し、マリアンヌに向かって話しかける。

「解りました…

僕はどうすればいいですか?」



…これから行われる激戦を知らずに…

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