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Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇少年期編~第一章~◇
18/66

アルベール


 ここは、カストラート王国の南西の端に位置する港町『ベイト領』

アルベール・ウォーター・ペンドラゴンは、

ここの領主のベイト・カスピアン公爵の屋敷の別宅で、

エルウィン王国奪還に向けての反抗作戦を練っていた。


 二年前、大激戦の末、ウルク帝国に占領された祖国を取り戻す為、

ウルク帝国に苦渋の支配を強いられている、各国の有力者とここで会い、援助を募っていた。


 祖国で、反抗作戦を行いたかったが、資金面での援助がどうしても不可欠だったのだ。

旧知の仲だったベイト候の好意で、こちらで、有力者との会合を重ねていた。


 私は、二年前の戦闘で、右目を失い、隻眼となり、生死をさ迷った、

今でも、無い右目が疼き、頭痛と吐き気の発作が時折襲う。

この怪我で、感染症も発祥したため、体がまともに動ける状態に回復させるのに、

1年以上の時間が掛かってしまった。


今、私の右目は黒い眼帯で覆われている。


◇◇◇◇◇


 今日も、カストラート国内の子爵と会い、資金援助を確約し、

執務室として使用している部屋で、契約書類に目を通している時と、

部屋のドアを叩く音が響いた。

「空いているぞ。」

とそっけなく答える。


「失礼します。

お疲れ様です。陛下。」

摂政のマルケルが入ってきた。


「どうした?

今日は、もう会議は無いはずだが?」


「陛下。

昨日、進言させて頂いた件、お考え直し頂きたく参上いたしました。」


「『ウルク皇帝』と懐刀の『ダニエル参謀長』の暗殺の件か?

あれは、却下しただろう!」


「ですが、陛下!

こんな機会はそうそうあるものではございません。

50名程度の近衛兵のみを伴って国外にでる事など・・・」


「50名とは言え、精鋭だ。

我々も今、ここには貴公と私を含めても50名しかいないのだ。

勝算などないに等しい!

玉砕覚悟で、奇襲をかけても、失敗する算段の方が高いのは貴公とて解っていよう!」


「で、ありますから、

リーン殿下にご協力を仰ぎ、少数での陽動で敵の目を引き付け、

リーン殿下に狙撃していただく案を提案させていただいたのです。」


「その件は、却下したはずだ!

今いる人員は貴重な戦力だ!陽動で無駄死にさせるわけにはいかない!

リーンにしても、狙撃が成功しても逃げ延びられる可能性が低い。


今のカストラート王都の警備厳重な為、

長距離の狙撃であっても、王都内から逃げられる可能性は殆どないだろう。

今、リーンを使うのは得策では無い。

…それに、リーンの能力は異質なものだ。

できれば、使用しない方が今後の為にも良いと考えている。」


「陛下!

それはなりません。

リーン殿下の能力は貴重な戦力です。

一個大隊にも匹敵するでしょう。

これを使わずに勝利するのは、困難です。」


「マルケルよ…

リーンの能力は、私には、とてもこの世界のものとは思えない…

帝国の機械兵器も異質だが、リーンの能力はそれ以上だ。

いくら、戦力になるといって利用できても、

異質な能力は、畏怖や奇異な目で見られ、

他の貴族や臣民からの信頼を失うことに繋がりかねん…」


「…解りました。

陛下がそこまでおっしゃるならば、

今回は引き下がりましょう…

ですが、リーン殿下の今後のご参戦は再考ねがいます。

帝国への大反抗には、必ず必要となりましょう。」


「…考えておく。」


「それと陛下、帝国側にこの場所が感ずかれた可能性があります。

そうそうに移動すべきかと…

本当は、逆に奇襲をかけるべきだと思いましたが…」


「マルケル。

『急いては事を仕損じる』といってな、

手順を省いていっきに事を進めれば無理が生じる、

今は、兵力を温存し、強化するべき時だ。」


「陛下の仰せのままに…

では、移動の準備が整い次第、移動したいと思います。

ご用意頂きますようお願いいたします。」


「解った。

下がってよい。」


「は!

失礼いたします。」

と、マルケルは会釈して部屋を出て行く。


私は、一人つぶやいた、

「マルケルはどうも油断ならない…

兵士やリーンの事も駒としてしか見ていない傾向にある…

あれでは、民はついてこない。

リーンよ…

できれば、貴公の手を借りずにおければよいのだが…」


◇◇◇◇◇


 マルケル・ド・フランシーヌは、

アルベールの弱気な発言に対して、憤りを感じていた。

「アルベールめ…

どうも、祖国を追われてから弱気な発言が目立つな…

以前から慎重な性格ではあったが…

だが、今、御旗としては、アルベールを担ぐ他選択肢はないのも事実…

私の手持ちの諜報部隊では、さすがに帝国国内ではないとはいえ、厳重警備中の

カストラートの首都での暗殺は無理だろう…

できるとすれば、やはり、リーン以外には考えられない。

だが、今後の事を考えるならば、ここで、危険を冒して、

万が一にも、貴重な戦力のリーンを失うわけにはいかないのも事実、

危険は冒せないか…

今は、取りあえず、アルベールに従うか…

何…また機会はある。」


 そのような事を自室で考えていると、

カーテンの影から、不意に人の気配が沸き起こる。

私はその影に向かい

「何か、変化があったのか?」

と問いただす。


「は!

カストラート国境に待機していたウルク帝国の特殊部隊が動き始めたもようです。」


「何!

どの方面に動き始めたのだ。」


「おそらく…

このベイトに向かっているものと思われます。」


「まずいな…

こちらの予想より早い…

移動用の船はどうなった?」


「は!

本日中に出向可能です…

ただ…港の警備が厳重になっております。

乗り込むのも昼間は無理でしょう。

また、湾を出た所に帝国の軍船が待機して警備しているようです。」


「何!

まずいな…

先手を打たれたか…」


私はあせった…

こんな所で、我々が捕まるわけにはいかない…


「お前は、特殊部隊の動向を逐一報告しろ、

あと、湾外の軍船にも人を回して、動向を伝えるように指示するのだ!」


「は!

了解しました!」

と影は、答え、姿を消した。


私は、屋敷内に向って叫ぶ。

「誰かいないか!

リオン隊長を呼べ!」


そして…頭の中で、

「リーンを使うしかないな・・・」

と一人心の中でつぶやいた。


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