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Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇少年期編~第一章~◇
17/66

大会~一日目(夜)~

2013年1月1日改修

 大会初日の競技が終わり、カストラート在住の学生以外は、

それぞれの学校が用意した宿泊施設に戻っていった。


 リンネとユーリは、カストラートにも屋敷があり、

こちらの屋敷に養母が残っているので、実家の屋敷に戻っていた。

しかし、屋敷に到着早々、僕は祖母から王宮の自室に赴くよう、言伝が来ていた為、

重い足取りで、カストラート王宮に向かっていた。

ユーリも一緒に行くと言って聞かなかったが、どうにかなだめて、屋敷に残してきた。


 どうせ、今日のでしゃばった行動(大会記録)で注意されるのだろう…

何せ、祖母は僕が目立つことを極端に嫌っているのだから。


 カストラート王国の王宮は、首都カストラートの中心の小高い丘の上に、

城壁に囲まれてそびえ立っている。

 城の周りには堀があり、大きな城門があるが、今は夜間との事もあり、

門は閉ざされていた。

 昼間なら開いているが、現在、ウルク帝国側の来賓者が滞在している為、

滞在中は、必要でなければ門を閉めている。


 僕は、堀に掛かった跳ね橋を渡り、門の番兵に声を掛ける。

番兵は、僕の顔を見ると、敬礼し、

「リンネ様、ご無沙汰しております。

こんな時間に、どうなさったのですか?」

門の番兵は顔見知りの若い兵士だった。


「祖母の『エヴァ・カストラート』に呼ばれて、参上いたしました。

取り次いでいただけますか。」

と返事を返す。


「それは、ご苦労様です。

只今、確認いたしますので、今しばらくお待ちください。」

と言って、番兵は、確認の為、通用門をくぐっていく。


5分もしないで、意外と早く、番兵は戻ってきた。

一緒に王妃(祖母)の侍女を伴っている。


侍女が、会釈をして、話始める。

「リンネ様、ご無沙汰しております。

王妃様より、王妃様の自室にご案内するよう仰せつかっております。

ただ、王妃様は現在、ウルク皇帝陛下と会食中ですので、

今しばらく、お待ちいただくことになりますのでご了承ください。」


僕は、ため息を一つつき、

「了解しました。

祖母もご多忙の中、わざわざ私と話をしたいようですので、

待たせていただくことにしましょう。」

と少し皮肉混じりに応対する。


『まったく…

忙しいなら、わざわざ呼ばないでほしい!

こっちはまだ夕食も食べてないっていうのに!』

そんな事を思いつつ、侍女に従って、祖母の自室の応接間へと向かった。


祖母の自室の応接間に通される。

祖母の自室は、さすがに第一王妃ということもあり、かなり広い。

40畳はあろうかという応接間に、隣接した寝室、ドレスルーム、書斎がついた部屋だ。


いつ来ても、冷めた目をした祖母の顔が思い出されていい印象を僕は持てずにいた。

お茶菓子と紅茶を出されるが、お茶菓子をつまむ気になれず、紅茶だけ啜った。


1時間待たされて、ようやく祖母が現れた。

ドアを執事が開け、その後に部屋に入ってくる。


『エヴァ・カストラート、

カストラート王国第一王妃でリンネとユーリの実祖母に当たる。

僕のメアリの母親だけあって美人だ。

印象は母よりかなり冷たい印象を受けるが…

この世界の住人は、年齢が解りづらい、30歳前後から年齢不詳に見えてくる。

60ぐらいであっても30歳代にしか見えないからお得だ。

エヴァ・カストラートも50代のはずだが、30歳前後にしか見えない。

ちなみに祖母の目と髪の色は両方とも薄い青色だ。

唯一、年齢で違ってくるのが、髪の色がだんだん薄れてくるということだ。

年齢を重ねると段々魔法力が少なくなり、それが髪の色に出るとされている。』


 僕は、即座に直立して、お辞儀をする。

「お久しぶりです。

エヴァ様、ご機嫌麗しゅうございます。

本日は、どの様なご用向きでの呼びたてでしょうか?」

と挨拶と共に、早く帰りたい思いから話を切り出す。


すると、エヴァが冷めた青い目で、僕を見下し

「リンネさん。

お久しぶり。

まあ、そう急がず、ゆっくりしなさいな。

まずは、椅子にお座りになりなさい。」


言いながら、自分も僕の前のソファに腰を下ろし、

執事に、紅茶を持ってくるよう指示をする。


僕は、ソファに背筋を伸ばして座りなおす。


数分して、紅茶が運ばれ、エヴァが一口啜ってから、話だした。

「リンネさん…あなたは、まだ自分の立場を理解されていないようですが…

今、ご自分がどんな状況かお分かりになっていますか?」


僕は、つばを飲み込み、

「エヴァ様やアルベール家の皆様には大変感謝しております。

私の出生を隠して、育てて頂き、いくらお礼を申し上げても、したりないぐらいです。」


「なるほど…

感謝をしている…なら、私達に迷惑がかかる行動は慎むべきではなくて?」


「おっしゃっていることが解りかねますが…」

と僕はとぼけて見せる。


するとエヴァは僕を睨みつけ、

「今日の試合で、高得点を出した件です!

なんでも大会新記録だとか!

団体戦の選手になったことは100歩譲って、良いとしましょう!

ですが、個人入賞や記録などを出すことはゆるしませんよ!

今回は、出てしまったものは仕方ありませんが、

今後、このような事があった場合、あなたの処遇を考え直さないといけません!」

とまくし立てた。


僕は、少し首をすくめ、

「はい…

今後はこのような事はしないようつとめます…」

と渋々了承する。


「解ればよろしい!

私もあなたが憎くて言っているのではないのですよ!

あなたの事を思えばこそ、苦言を言っているのです!

その点、誤解がないように!」

とエヴァが付け加えて話す。


「はい解っております。

エヴァ様のご配慮、心から御礼申し上げます。」

と一応頭を下げる。


だが、僕は、どうしてもエヴァが保身でものを言っているようにしか聞こえなかった。

実際、自身の故郷のエルウィン王国への侵攻への参加にも反対しなかったと聞いている…

だが、今現在、厄介になっているアルベール家に迷惑をかけるわけにはいかない、

いざとなったら、出奔する覚悟はしておかないと、と心の中で思った。


その後も、一通り、文句を聞き、退室した時には精神的にヘトヘトになったのは言うまでも無い…


祖母の小言は結局、2時間も続き、屋敷に帰ったのは、10時を回っていた。

ちなみにこの世界の一日の時間も24時間だ。


腹を空かせて屋敷にたどりつき、玄関を開け、玄関ロビーに入り

「ただいまもどりました。」

と帰宅したことを告げる。


すると、パタパタとユーリが駆け下りてきて、

「リンネ!

大丈夫だった!

またお婆様に何か言われたの?」

と聞いてくる。


「心配ないよ…

ちょっと、注意を受けただけさ。」

と言葉を濁す。


ユーリは、じっと僕の顔を覗き込み、

「私には遠慮しないで!

本当の事を言って!」

と少し真剣な眼差しで言ってきた。


「本当だよ。

心配ないって、いつもの事さ、今日は少し目立ってしまったからね。

自重するように言われたんだよ。」


「そう…」

と少し悲しげな表情でうつむく。


「僕の立場では仕方の無いことだから、気にしてないよ。

だから、ユーリも心配しないで。」


「でも…

リンネは本当なら勉強も、実技もすごいのに…

それを隠さないといけないなんて…

理不尽だわ…」


「ユーリがそう思ってくれているだけで十分だよ。」

と僕は、ユーリの頭をなでた…垂れていた猫耳が少し立ち上がる。


「そんな事より!

お腹すいちゃったよ!

何か食べるのものあるかな?」


ユーリは猫耳をピンと立たせて、返事をした。

「ちゃんと夕飯、リンネの分取っといてあるわよ。

今、メイドに用意させるね!」


「ありがたい!

今日は団体戦で負けちゃったからユーリの宣言どおり夕飯抜きかと思ったよ。」

と冗談を言ってみせる。


「あーー!

ひっどーい!

そんな事言う人には、本当に夕飯出さないんだから!」

とユーリがむくれたしぐさをする。


僕は慌てて、

「ごめん!ごめん!

冗談だよ!

ユーリ様!お許しください!」

と拝みながら謝る。


ユーリはこらえ切れず噴出し。

「解ってるわよ♪

さ、食堂にいきましょ。」

と僕の手を引いて、小走りに駆け出す。


僕は、心の中でユーリに感謝した。

『ユーリがいるから、我慢できる…今は、この時を大切にしたい…』

と思わずにはいられなかった。


◇◇◇◇◇


 ダニエルがカストラート王室との晩餐を終え、

カストラート王宮内にあてがわれた自室に戻り、一人報告書類に目を通していると

音も無く、窓が開き、影が滲みでる気配を感じた。

「アベルか?」


「はい、マスター」

と影が答える。


アベルは、続けて、話始める

「昼間の投てき競技の選手の素性がわかりました。」


「で、何処の出のものだ?」


「は!

彼のものは、エイナス・アルベール子爵の息子で、

名を『リンネ・アルベール』と申すものです。

年齢は10歳でサイアス魔法学校6年生です。」


「本当にエイナスの息子か?

間違いではないだろうな?」


「私が、調べました所、双子の片方だと言うことです。

父親は『エイナス』、母親がカストラート第一王妃エヴァの次女『ミリア』、

双子の妹が『ユーリ』と言う少女です。

念の為、妹の容姿を確認しましたが、『リンネ』に瓜二つでしたので、間違いないものと思われます


。」


私は少し考え、つぶやいた。

「私の考えすぎか…

もしや、行方不明のエルウィン王国の第四王子では?

と思ったのだが…」


すると、影が言葉を続ける…

「後、一つ別件になりますが、ご報告いたします。」


「何だ?」

「例のアルベール王子の所在の件です。」


「潜伏先が判明したのか?」

「は!

騎士ジョーンズ様から配下の隠密部隊の斥候が、

ここから南に50kmほど離れた、ベイトという中規模の港町に5、60人で潜伏しているのを確認したと


のことです。」


「そうか!

アルベールと他の主要人物は確認できているか?」

「は!

アルベールと摂政のマルケルを確認しているとの報告です。

他の行方不明の将軍は確認できておりません。」


「まあ、他の将軍はいい、アルベールとマルケルが始末できれば…

だが、5、60人か…

斥候の隠密部隊だけでは、無理だな…

『雷の狙撃者』がいればなおさらか…?」


私は少し考えこみ、一人つぶやく

「現在、陛下の護衛に当たっている黒竜騎士団の精鋭50名は動かせない…

特殊部隊の12名に隠密部隊本隊100名ならいけるか?

だが、隠密部隊と特殊部隊の本隊は、カストラートとの国境付近に待機させているので、

2、3日掛かる…

爆撃機に輸送させて、パラシュートで現地近くに運ぶとしても…本国からなので、

燃料が持たないか…」


私は、アベルに振り向き命令する。

「アベル!

カストラートの国境付近に待機させている特殊部隊隊長の『ジョーンズ』に

直ちに、特殊部隊と隠密部隊を伴ってベイトに向かい、私の到着を待つよう伝えよ!

私も明日、陛下を見送った後、合流する!

後、言うまでも無いが、お前の配下に引き続き、反乱分子を見張らせ、

何か、動きがあれば、逐一、私に報告させよ!」


「は!

了解いたしました。

直ちに、ジョーンズ隊長に伝令いたします。」

と言って、影は薄れて消えた。


私は、一人つぶやく

「アルベール…今度こそ決着をつけるぞ…」


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