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Reincarnation saga(リーンカーネーション・サーガ)  作者: 八咫烏
◇少年期編~第一章~◇
13/66

兆し

2013年1月1日改修

 僕らは、剣術部、体術部、投てき部と順番に周り、

実際に決めるのは後日ということにした。

一通り、クラブを回って、学校から帰る時には、もうかなり日が落ちてきていた。

 最近は、昨日のように、ウルク兵がうろついて、物騒になってきている事もあり、

クラブ活動の生徒も早々と切り上げて、今はほとんど、学校に生徒はいなかった。

僕らも急いで帰り始める。

 途中の分かれ道、ティファ達とは、方向が違ったので、

キースに残りの女生徒二人を送ってあげるように頼んだ。



「じゃ!また明日!

朝、必ずこの曲がり角で一緒に登校してくださいね!

約束ですよ!」

ティファは名残惜しそうに言った後、登校の約束の念を押す…


 それを見ていたユーリが少し『冷めた目』で僕をみているのを感じ、

僕は背筋に冷たいものを感じた。


 屋敷について、部屋に入るとどっと疲れを感じ、

そのまま、夕食も取らずに寝入ってしまった。

暫くして、ユーリが夕食に呼びに来たが、あまりに、疲れている様子だったので、

そっとしておいてくれたらしい。


僕は、不意に窓に

『コン、コン、コン……』と小石の当たる音で、深夜に目を覚ました。


こ…これは…

もしや!

ここ2年、聞いていなかった物音だった。

 僕は、跳ね起き、自室の2階の窓を開け、眼下の裏庭を確かめる!

やっぱり!


「マリアンヌさん!」

と僕は思わず声を出していた。


 そうそこには、黒髪黒目の近衛騎士団リオン遊撃隊従士

《現在は騎士》の《マリアンヌ・デュファ》が立っていた。


 僕は、エルウィン王国を脱出後、

兄の第二王子『アルベール』から密かに戦闘の援護依頼をたびたび受けていた。

その依頼とは、『レールガン』で、敵の指揮官を『狙撃』することだった。


『アルベール』は、どこからか、僕の能力の事を聞いていたらしい。

僕は、気が進まなかったが、祖国から脱出させて貰った恩義もあるので、

何度にもわたり、『レールガン』で、敵の指揮官を狙撃した。


 僕の狙撃は、基本的にボーガンを使用し、ボーガンの射線上に電磁レールを作りだして、

打ち出す方法を取っていた。


 この狙撃のかいが合って、ウルク帝国との戦闘が5年もの長期になったともいえた。

この狙撃により、ウルク帝国側は、指揮官を最前線に派遣できず、

また、狙撃を恐れて、虎の子の機械化部隊も派遣を見送り、指揮系統が伸びきって、

上手く機能できなかったと聞いていた。


 その狙撃者は、『雷の狙撃者 《雷のような音が後から聞こえた為》』

として帝国側で恐れられる存在になっていた。

何せどんな魔法防御も鉄でできた厚い壁も簡単に打ち抜いて、

しかも狙撃場所がぜんぜん特定できなかったからだ。


それはそうだろう、実際十数キロ離れた場所から狙撃していたのだから…


だが、2年前のあの『アイルゼン砦』攻防戦では、ウルク帝国は、同盟国軍を矢面に立たせ、

《同盟運には、カストラート王国の兵も含まれていた》

連合軍での物量で攻めてきた。


 僕は、指揮官が分からず、また、帝国軍と連合加盟国との見分けがつかない状態で、

何処を狙うべきか判断がつかずにいた。

 しかたなく、戦線を崩す為、急遽用意してもらった、

鉄製の矢《羽なしの大きな針状のもの》5千発をボーガンを使わず

空中にベルトリンク状《ベルトの様に繋げて》に並べ、

レールガンをマシンガン《機関銃》状態で打ち続けたが、

結局、十万人前後にも及ぶ戦線は崩せず、能力を使い果たし、気を失った。

…後に、この攻撃《レールガンでの斉射》は『トールハンマー』と言われ、帝国軍内で恐れられた。


まさに、その攻撃は、人間戦術兵器と化していたと自分でも思う。


 以前は、大規模広域魔法を使う魔道士もこれぐらいの威力の魔法で、損害を与えていたらしいが、

今は、対抗魔法が発達して、見た目が派手でも、実際の被害はそれほど出ていないのが現状だ。

だが、僕の攻撃は、そんな対抗魔法壁も簡単に貫いて、見たままの被害を与えていた。


 さすがに最後のレールガンのマシンガン状態は、光の帯となって、戦線を貫いていたため、

狙撃場所を特定され、敵の飛竜ドラグーン部隊による追撃を受けたらしい。

《僕は気を失っていて知らなかったが…》

追撃を阻止する為、リオン遊撃隊が囮になって戦闘し、

その中、深手を負いながら、僕を運んでくれたのがこの

『マリアンヌ・デュファ』だった。


 マリアンヌは、傷の治療後、すぐに隊の戻ると言って、飛び出したきりだった。


「マリアンヌさん!

全然、連絡が無かったから心配したよ!」


マリアンヌは、深々と頭を下げて少し嬉しそうに答えた。

「リーン王子!お久しぶりです。

ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。

……

今まで、王子には大変なご尽力を頂き、陛下ともども感謝しております。

今日は、無事なご報告と、アルベール陛下からの言伝をお伝えにまいりました。」


僕は、息を呑み聞き返す…

「アルベール兄さんは生きているのですか?」


「はい、アルベール陛下、摂政のマルケル様、あと、リオン隊長もご無事です。

ですが、アルベール陛下は、先の大戦で負傷され、現在も完治できていない状態です。

しかし、アルベール陛下やその他の臣下一同は、まだ、エルウィン王国の復興を諦めておりません!

今しばらく、反撃の準備には時間がかかると思いますが、反抗の際は、リーン殿下にも是非、ご参戦いただきたいとのご言伝です。」


僕は、どう答えたものか、押し黙ってしまった。

「……」


 そこに誰かが駆け込んで、僕とマリアンヌの前に両手を広げて、立ちはだかった。

『ユーリ』だとその背中を見てすぐわかった。


ユーリは、マリアンヌを睨みつけ。

「あなた!

また、リンネを危険な目に合わせるつもりでしょ!

そんなこと、私が絶対許さないんだから!」

とすごい剣幕で、マリアンヌに詰め寄る。


マリアンヌは、静かにユーリを見つめる。


「ユーリ様、ご無沙汰しております。

その説は大変お世話になりました。

今日は、近況のご報告に伺っただけですのでご安心ください。」

とマリアンヌは、お辞儀をしながら言った。


ユーリは、尚も睨みつづけた。


マリアンヌは、これ以上は、ここには居られないと判断したらしく

「殿下、今日は夜分に急な訪問、失礼いたしました。

また、改めてお伺いしたいと思います。」

と言って、乗ってきた、黒い飛竜ドラグーンにまたがる。


ユーリはその背中に向って、言い放つ。

「もう、いらっしゃらなくてけっこうですから!」


マリアンヌは、苦笑しながら、

「殿下、今日は失礼いたしました。

ではまた!」

と手綱を『ピシリ』と打って、ドラグーンを飛び立たせ、漆黒の空に消えていった。


 僕はしばらく、その方向を見送っていると、

不意にユーリが振り返り、僕の胸に顔を埋めた。

そして、少し嗚咽交じりに

「ほんとうに…

あの夜は心配したんだから!

もう目を覚まさないかと思ったんだからね!

あんな、危険な事はもうしないでよ!」


僕は、黙って、ユーリの頭に手をのせ、その青色の髪を撫でた。

猫耳が僅かに動くのを感じる…

「ごめん。

あの時は、心配かけて…

これからは、できるだけ心配かけないようにするよ…」


と僕は、言ってはみたが…

マリアンヌからの伝言はもしかすると近い次期に何か起こるような予感を

感じさせずにはいられなかった。

こんにちは、八咫烏です。

第二章第五部です。

この回で、リーンの過去の空白の時期の状況を少し出しました。

これから、色々と展開していく予定です。


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