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夏の靴

作者: 夜河氷雨



片腕の臨終めいた、こまやかなしびれ……



夏が一歩、足を踏み出しかけたまま凍ったその昼は 中間テストの真ん中にあって、青い運動靴を夏は履いていた

ぼろぼろと正門から零れていく生徒はくろい 姿をしてちいさな木の影のような憂鬱に肌をあわだたせているので夏の靴が青さのあまりに(自殺)したのを知っているひとは私だけだった



片腕の臨終めいたこまやかなしびれ……



夏があいまいに泣いている ものだから女子生徒たちは同情的にあいまいな顔をしていなければならなくて、頬がすっかり灰のように繊細になってしまったのを思い 出したのはあんまりにも紫陽花のみどりがにおうからで、背伸びをしているからで 私はついぞ彼女らの顔には気づいたことはなかっ た

その頃天球では、この時期にしては珍しい寒気が上空に来ていると テレビは発砲していた……



青空なう 積乱雲なう 雷なう 夏なう

がたんごとん



そして電車は明日もゆく と信仰のように呟く私は この日常の地平にいなくて、ついさっき 

冷房のおもくるしい風にあたっていた腕はことり と もげた

つめたさに 神経の軸索のひとつまでさかだちして、肉の表層がしろくなっているのを私は撫でる……夏の靴があしあとだけを地上におしつける 帰り道

帰り道

は平行線になったままかえ らなくて太陽があいまい笑ったままにおわない



その青 さは 喪 失 すらな くしている……




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