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聖女ドラゴンヴァルキリー  作者: BALU-R
第Ⅴ部   最後のドラゴンヴァルキリー
40/41

最終話 聖女の死、終わる科学

「どうしますの?」

泣きじゃくるチョコを見ながら友知が聞いた。

志穂はチョコの頭を撫でながら答えた。

「連れてはいけないよ…一旦、戻ってコーチや香矢さんに預けよう。」

友知はチョコをおんぶして言った。

「最終決戦を前にとんだ回り道ですわね…」

志穂は先に窓から飛び出し言った。

「悪態つかないの。」

その後ろを追いかけながら友知は言った。

「…言ってみただけですわ。コーチ達はもう、空港でしたっけ?」


空港は人であふれかえっていた。

ヨッコが呟いた。

「私、空港って初めてきたけど…こんなに混んでるもんなの?」

香矢がポカーンとしながら言った。

「前年比250%ってとこっスよ…でも、何で?旅行がブーム…って雰囲気でもないっスよね。」

どちらかという空港の雰囲気は重苦しかった。

警備員と喧嘩をしている人までいる。

トッコが言った。

「例の城の影響みたいだよ…「日本の終わりだー!」って言う意見が多いみたい。まぁ、魔女事件も多いし、その上あんな人食い城まで出てきたんじゃね…」

香矢が溜息をついて言った。

「まぁ、こないだのヘリコプター吸収は衝撃的放送事故だったスからねぇ…それよりも」

キョロキョロ周りを見渡しながら続けて言った。

「店長は?」

ヨッコが答えた。

「マユを飛行機に乗せる準備で遅れてるみたいだよ。何かあの子、ぐずってるみたい。」

トッコが言った。

「珍しいね、大人しい子なのに。」

「あっ、みんなぁ!」

大声で3人に声をかけてきた人物がいた。

鳥羽兎で一緒に働いているルリであった。

「みんなも海外に?やっぱり魔女事件だけでなく、あんな城まで出てきちゃねぇ…」

ルリの話を聞いて香矢が言った。

「って事はルリっちも?」

ルリはコクンと頷いて言った。

「うん。本当は外国なんて行きたくないけど…もう、日本には戻ってこれないのかなぁ…」

ショボンとするルリに香矢が言った。

「大丈夫っスよ!すぐに解決するっスから!だって、」

ドラゴンヴァルキリーが何とかしてくれるから、と続けて言おうとして香矢は止まった。

(そういえば、ルリっちは志穂さんと友知の戦いの話を知らないんだっけ。)

キョトンとしているルリの両肩をガシっと掴んで香矢は話し始めた。

「実はルリっちには言ってなかった事があるんスよ…」

ルリは香矢の目をジっと見つめて言った。

「私もね、香矢に言ってなかった事があるの。」

意外な返答に香矢は面食らった。

そしてルリは言った。

「実は私の正体ね、ドラゴンなの。」


「…何、これ?」

空港の惨状に志穂は唖然として呟いた。

正確には空港だった場所である。

空港の建物はなく、あるのは死体の山であった。

「何?」

チョコが聞いたが、友知が抱きしめて見えないようにしていたのでその惨状を見る事はなかった。

「…見ない方がいいですわ。」

友知はチョコを固定しながら言った。

死体の山の頂上に一人の人間が立っていた。

それは身近な人間…ルリであった。

ルリは志穂達に気付いて言った。

「あらあら、城で待っててくれてると思ったのに…そっちから来ちゃったの?」

志穂は叫んだ。

「どういう事ですかルリさん!これはまさか…貴女の仕業ですか!!」

ルリは不機嫌そうな顔で答えた。

「ドラゴン。」

「えっ?」

「人間だった時の名前で呼ばないで。ドラゴンよ。それが私の本当の名前。」

そしてルリの体が光り輝いた。

見る見るうちに姿が変わっていき、

黒かった髪は青色に変わり、

服は白のミディスカートになり

胸は爆乳になり

背中には黒い小さなコウモリの羽が生え

お尻には恐竜のような緑色の短めの尻尾が生え

志穂達と同じ…ドラゴンヴァルキリーの姿になった。

友知が呟いた。

「その姿…」

ルリは背中の羽や尻尾を触って気持ちよさそうな顔をした。

「ああ、この感覚…似たような姿のあんた達なら分かる?一度なくした手足が再び戻ってきた感覚…」

友知はチョコを離した。

チョコは死体の山の光景を見て卒倒したが、友知は気にとめず叫んだ。

「答えなさい!これは貴女がやった事ですの!?この中にはコーチや…香矢がいたんですのよ!あなたにとっても友達の!!」

ルリはニヤニヤしながら言った。

「友達ぃ?人間がぁ?」

ルリはゲラゲラと笑い言った。

「人間なんかと私が仲良くするわけないじゃない!600年以上前に裏切った、人間なんかと誰が!!」

志穂が言った。

「600年…?魔女狩り裁判の話?」

ルリはピタリと笑いを止めて言った。

「よく知っているな。…ここで話す事ではない。城で待ているよ、娘達よ。」

そして、ルリの姿が消えた。

消えると同時に走ってくる音がした。

マユを連れたコーチであった。

コーチは志穂と友知の姿を見つけて叫んだ。

「これは一体!?ねっ、田合剣、夜葉寺院。何があったの!?」

志穂は言った。

「…ドラゴンです。敵のボスが現れたんです。」

友知は気を失ったチョコの体を抱きかかえ、コーチに渡して言った。

「この子の事をお願いしますわ。カイコ魔女…ドラゴンヴァルキリーⅢからのお願いなんですわ。」

二人はドラゴンの城に向けて飛び立とうとした。

その背中にコーチが叫んだ。

「帰ってくるよな!?ねっ、絶対に戻ってくるんだぞ!!」

二人の姿はすぐに見えなくなった。

(信じてるぞ…)

コーチは足にすりよってくるマユの頭を撫でながら強く思った。


ドラゴンが魔女の城の頂上にある玉座の間についた。

玉座の前にはトゲウオ魔女が手をついて控えていた。

「ククク…ドラゴンサマ、おカエりなさいませ。」

トゲウオ魔女の声が聞こえないかのように玉座に着いたドラゴンはルリの姿に戻った。

そしてトゲウオ魔女を睨みつけて言った。

「何故、ここにいる?」

トゲウオ魔女は驚いて言った。

「ククク?」

「カイコ魔女…いや、今はドラゴンヴァルキリーⅢだったかな?あの子ぐらいの実力者ならともかく、貴様如き雑魚が最後まで生き残っているのは何故だ?」

「ククク!そんなドラゴンサマ、ツメたいコトを!」

ドラゴンはトゲウオ魔女を指差し言った。

「消えろ。少しでも生きながらえたいならな。」

それは死刑宣告であった。

トゲウオ魔女は慌てて玉座を飛び出して行った。


「…わざわざ、入口から入りなおさなくても。飛べるんですから、さっきの窓から再び入ればよかったんじゃありませんの?」

先ほども歩いた城の廊下を歩きながら友知がブツクサと文句を言った。

志穂がなだめて言った。

「急がば回れて言うでしょ?下手にショートカットして罠があったら危ないでしょ?」

「でも…」

友知が言いかけると壁がゴトゴトと音を立てた。

「…入口から入った方が罠にはまる確率が高いって言おうとした矢先にこれですわ。」

二人は身構えた。

壁に穴が開き出てきたのは…

かぼちゃ魔女であった。

しかし、絶命している。

友知が力を抜いて言った。

「…この罠にどんな効果があるのでしょう。」

「ククク…それはただのごみだよ。」

廊下をトゲウオ魔女が歩いてきて言った。

「ククク…ドラゴンサマはヤクタたずはいらないそうだ。だからショブンされた。」

志穂は言った。

「じゃあ、何で貴女は生きてるの?」

「ククク!?」

友知も言った。

「処分する価値もない雑魚って事かしら。」

トゲウオ魔女は憤慨して怒鳴った。

「ククク!どいつもこいつも!!だが、キサマらをシュクセイすればドラゴンサマもワタシのコトをミトめてくれるはずだ!」

友知は呆れ気味に言った。

「大方、幹部が全員いなくなってドラゴンに取り入ろうとして失敗してきたんでしょうけど…哀れですわね。同情しますわ、心から。」

「ククク!ダマれ!」

志穂は歩きだしながら言った。

「どいて。私達が用があるのはドラゴンだけよ。あんたはすでに私達ドラゴンヴァルキリーに敗北している…Ⅲにね。もはや、戦うまでもない。」

トゲウオ魔女が怒鳴った。

「ククク!どこまでもバカにしおって!ワタシはまだマけてはいない!!まだ、ブキがあるぞ!!!」

そう言って取り出したのはラジカセであった。

かつて友知を苦しめた女医のラジカセ。

友知は言った。

「今更、そんな過去の遺物を持ちだすなんて…言っておきますけど、脳改造による洗脳を克服したワタクシにはそんなものは通用しませんわよ?」

「ククク…それはどうかな?ウィッチのセンノウはそうカンタンにトけんぞ。」

そしてトゲウオ魔女はラジカセのスイッチを入れた。

「ククク…サイシンのギジュツでカイリョウされたものだ…さぁ、魔女にモドれドラゴンヴァルキリー!」

友知は耳を押さえながら膝をついた。

「ぐわぁ!?がぁぁぁ!」

トゲウオ魔女はラジカセをブラブラ振り回しながら言った。

「ククク…さぁ、聖女ドウシでコロしあえ!!」

友知の変身は解けてしまった。

そして志穂の方に向かって行く。

志穂も変身を解く。

「ククク?ニンゲンのスガタでコロしあいたいのかい?」

友知は呟いた。

「憎い…憎い!うぐぐ…お母さんの仇ぐぐ。あたしを巻き込んむぐぐ。憎…」

そして志穂の首に手をかける。

志穂は抵抗せずに友知の目をじっと見ている。

トゲウオ魔女は嬉々として叫んだ。

「ククク!そうだニクめ!オモいダせ!!そいつはおマエのテキだ!!!」

友知は手に力を入れて呟いた。

「思い出すうううぐ…」

志穂は静かに目を閉じた。

しかし、すぐに手を離し頭を抱えた。

トゲウオ魔女は叫ぶ。

「ククク!どうした、オモいダせ!」

志穂は目を開いて言った。

「そう、思い出しなさい友知。」

(思い出す…何を?お母さんの事?改造された事?今まで戦い…香矢、コーチ、みんな…志穂!)

そして友知はゆっくりと顔を上げトゲウオ魔女を睨みつけた。

トゲウオ魔女は驚いてラジカセを振りながら言った。

「ククク!?ナニをしている!ハヤくコロせ?」

友知は頭を振って言った。

「分かんないの?もう効いてないっていうのが…思い出したんだよ。あたしにとって一番の目的を。」

トゲウオ魔女はラジカセを投げ出し一目散で逃げ出した。

友知は志穂の方を見て言った。

「一番の目的…これ以上の悲劇を重ねさせない事…だよね、志穂?」

志穂はほほ笑んで言った。

「そうだね。そのためにも進もうか。」

友知は頷き言った。

「それよりも、何で抵抗もせずに目を閉じたりしたわけ!?「お前に殺されるなら仕方がない」とかくだらない事を考えてたんじゃないでしょうね!?」

志穂は歩きだしながら言った。

「違うよ。信じていたから。」

「ふん、ごまかしちゃって。」

友知は照れ臭そうに言った。

「ククク!?おマエ!!」

進む先に逃げて行ったトゲウオ魔女の悲鳴のような声が響いた。

そして何かが破裂するような音がした。

志穂と友知が音の方に走っていくと、トゲウオ魔女の形をした影が壁にこびりついていた。

友知が影を指でなぞりながら言った。

「この魔法…魔力を暴発させたような魔法…」

「ひひひ…ひーひっひひひっひ!」

笑い声が廊下に響いた。

ゴロリゴロリと何かが近づいてくる音がする。

それは頭だけになった女手であった。

女手はニタニタしながら言った。

「ひーひっひひひっひ!お前達には感謝してるぞ!おかげでドラゴン様は復活できたんだからな!」

志穂が言った。

「…どういう事?」

女手は笑いを絶やさずに言った。

「ひーひっひひひっひ!お前達の胸の奥に埋め込まれている…ドラゴンストーン!ドラゴンストーンの魔力の上昇こそがドラゴン様復活のキーだったのさ!!ひーひっひひひっひ!」

志穂と友知は自分の胸を思わず押さえた。

女手は続けて言った。

「今までの戦い、全てそのためだったんだよ…お前達が逃げ出すのも!魔女をお前達が倒すのも!女医を、女教授を、女帝を、倒したのも!全てお前達の、ドラゴンストーンの成長のため…ドラゴン様復活のための計画だったのだ!!ひーひっひひひっひ!ひーひっひひひっひ!」

友知が言った。

「それじゃあ、あんたの死も…?」

女手の顔から笑みが消え、叫ぶように言った。

「そうだよ…何であたしが死ぬんだよ!あたしだけは違うと思ったのに…ドラゴン様の声を聞けたあたしだけは他の3人と違って計画から外されてると思ったのに…あたしも利用されていたんですか!?ドラゴン様、答えてください…」

女手が溶けていく。

消え入るような声で言った。

「声が聞こえない…ドラゴン様の声がもう聞こえない…」

そして完全に女手は消えた。

志穂は言った。

「ドラゴンは私達の事を娘って言ったわ。ドラゴンストーンとやらを身に宿してる私達はドラゴンにとって娘みたいなもんだったからそう言ったのね…」

友知は志穂の背中をパシンと叩いて言った。「でも、私達はあんなやつを母親だなんて思わない!さ、早く決着をつけてコーチのところに…家族のところに帰ろう!!」

志穂は頷いた。


二人は玉座の間にたどり着いた。

「いらっしゃいませー。」

ドラゴンは鳥羽兎に勤めていたルリの時のように言った。

「いかんな。癖が抜けない。」

小馬鹿にしたように笑いながらドラゴンは言った。

友知は睨みつけて言った。

「また、ルリさんの姿になって…あたし達を惑わせようって魂胆?」

ドラゴンは立ちあがって言った。

「そうだな、正装でないのは失礼だったな。」

そして叫んだ。

「ドレスアップ!…こうでよかったかな?」

ドラゴンの体が輝き再び白い魔女の姿になった。

「そういえば自己紹介がまだだったね…我こそは始まりの魔女ドラゴンなり!」

志穂が言った。

「始まりの魔女ですって…」

ドラゴンは言った。

「そう、魔女は最初、我だけであった…しかし、孤独を悲しみ人里におりて才能ある者に我が魔法をさずけていったのだ。彼らは魔法の便利さに我に感謝した。我も友達ができた事を喜んだ。なのに!600年前に人間どもは我を、我の友達を、悪魔扱いして裏切ったのだ!我は共存を望んだ。人間が科学をシンパするならそれも良いと。しかし、科学を持った人間は魔法を悪と決めつけて排除しはじめたのだ!!自分達には使えないからと!!妬んだのだ!!!」

友知が呟いた。

「魔女裁判…」

ドラゴンは深呼吸してから続けて言った。

「我の仲間はみな殺された…我も力を奪われ身を隠すしかなかった…そして残ったのは科学への、人間への、復讐だけであった。お前達にも分かるだろう?この気持ちが。」

友知は叫んだ。

「分からないね!分かりたくもない!!」

志穂も言った。

「あなたと私達は違う…私達の周りには魔法を妬み迫害したりする人はいなかった。それどころか私達の力になってくれた。」

ドラゴンは言った。

「それは今だけだ。我という巨大な力のためにお前達を利用しているにすぎん。もし、お前達が我を滅ぼしたとしよう。その後、お前達は人間どもに迫害されるだろう。我のように。」

志穂が胸の十字架を握りしめて言った。

「それでもいい!私が苦しんで他の人が救われるなら!!」

友知も胸の十字架を握りしめて言った。

「香矢、トッコさん、ヨッコさん、母さん…アタシ達に力を貸して!!」

そして胸の十字架を引き千切って叫んだ。

「ドラゴンヴァルキリー!ドレスアップ!!」

「ドレスアップ!ドラゴンヴァルキリャー!」

二人は白い聖女の姿に変身し叫んだ。

「「聖女!ドラゴンヴァルキリー!!ネクストドレス!!!」」

友知が剣をドラゴンに向けて叫んだ。

「これが正真正銘最後の戦いですわ!決着をつけましょう!!」

「ふふふ…さぁ、お前らの力を我に見せてみよ!」

そう言うとドラゴンは両手を掲げた。

その両手に2本の剣が現れ、握りしめられた。

志穂と友知は同時に斬りかかる。

しかしドラゴンは、器用に二人の剣を受け流した。

二人は尚も斬りかかるがドラゴンに上手く流されてしまう。

「そらそらそら、そんなもんか?もっと本気を出せ!」

挑発するドラゴンに友知は距離をいったんおき、剣を構えて言った。

「見せてあげますわ…ドラゴンヴァルキリーの本気を!」

そして友知は叫んだ。

「六竜トルネード!」

剣先から竜巻が放出され、ドラゴンの体を覆った。

しかし、ドラゴンの体は微動だにしない。

ドラゴンはせせら笑って言った。

「これが本気か?では、そろそろ…」

「まだよ!」

志穂が叫び、剣を構えた。

「六竜トルネード!」

志穂の剣からも竜巻が放出される。

二人の六色の竜巻の力にドラゴンの体は宙に浮いた。

「ぬぬ!?」

ドラゴンの体がボロボロになっていく。

そして二人は飛びあがった。

「「エンドドラゴン!ツイン!!」」

二人の剣がドラゴンの体を十字に切り裂いた。

ドラゴンは無言で落下する。

志穂と友知は手をとり合って着地し叫んだ。

「これが本気の…」

「七竜剣!!」

ドラゴンは微動だにしない。

友知が呟いた。

「…やりましたの?」

志穂が頷いて言った。

「これで長かった戦いも終わりね…」

その時、重く低い声が部屋を揺るがした。

「ドーラゴン!ミゴトだ!ホウビにワレのシンのスガタをミせてやろう。」

そしてドラゴンの胸を突き破って巨大な何かが飛び出した。

それは…

「ドラゴン…」

おとぎ話に出てくるみんながイメージするドラゴン、そのものであった。

重い声が部屋中に響く。

「ドーラゴン!ニンゲンどもはワレのスガタをミてクウソウジョウのドウブツをエガいていたからな…このスガタにはミオボえもあろう。さてとそろそろハジめるか、タタカいを。」

「!?何を言ってま…」

友知が言い終わる前に、二人ともその場に倒れこんだ。

志穂が呻く。

「う、動けない…体が重い…」

ドラゴンは言った。

「ドラゴーン!このスガタになるとテカゲンができなくてな…もう、オわってしまったか。すまんな。」

友知が起き上がろうとして再び倒れ言った。

「重力を操ってますの?それにしてもこの力は…」

「ドーラゴン!さてヨキョウはオわりだ。いよいよ、ニンゲンどものシュクセイをハジめよう。ミろ!!」

ドラゴンがそう言うと、水晶玉のようなものが部屋中に浮かび上がった。

その中にはコーチの姿や他の国にいる魔女対策本部の人間の姿が映し出されていた。

志穂はその光景を見ながら言った。

「これは…?世界中の映像?」

ドラゴンは言った。

「ドーラゴン!そのトオり!ではワが大魔法をおミせしよう!!」

その途端、世界中が光り輝いた。

そして建物が、人が、生き物が、次々と吹き飛ばされて行った。

ドラゴンは言った。

「ドーラゴン!科学もたいしたものだよ。カクバクダンだっけ?600ネンでようやくワレとオナじチカラをエるコトができたのだからな!」

「やめて!!」

志穂の声もむなしく、世界は全て吹き飛んだ。

後に残ったのは乾いた大地だけであった。

ドラゴンは言った。

「ドーラゴン!これで科学のジダイはオわった…これからは魔法のジダイのハジまりだ!!」

「そんな…」

志穂は立ちあがる事が出来なかった。

ドラゴンの魔法はもう解けているのに。

この時、地球上で生き残っているのはドラゴン、志穂、友知の3人だけ。

その事実が志穂の体から力を奪っていった。

ドラゴンの笑い声だけが部屋中に響き渡った。




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