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聖女ドラゴンヴァルキリー  作者: BALU-R
第Ⅴ部   最後のドラゴンヴァルキリー
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第三十九話 三番目の聖女

「時は満ちた。」

女手は呟いた。

ここは日本最大の湖である琵琶湖。

その中心の水の上に女手は立っていた。

「魔力の高まりはもう十分だ…さぁ、ドラゴン様!今こそ復活を!!魔法世界の始まりだ!!!」

女手が両手を上げて叫ぶと、その目の前に黒い城が水の中から生えてくるように現れた。

女手はその光景を満足そうに見ながら呟いた。

「ドラゴン様を迎える前に…あたしの汚点を消しておかなくちゃねっ!」

その後ろにはトゲウオ魔女が水面から顔だけを出していた。


「見えますか、みなさん!昨夜のうちに琵琶湖の中心に現れた中世の城風の遺跡…一体、何が起こっているのでしょうか?」

TVでリポーターが琵琶湖に現れた城をヘリコプターの上から中継していた。

鳥羽兎でその光景を見守るメンバー。

トッコが言った。

「これって魔女関係だよね、やっぱり…」

香矢も口を開く。

「遂にラスボスのお出ましっスかね…」

志穂がみんなの方に向けて言った。

「みなさん、家族を連れて日本から離れてください。」

全員が驚く。

ヨッコが言った。

「何を言ってるの?私達も最後まで一緒に…」

友知が頭を掻きながら言った。

「足手まといだよ…もう、そういう次元の話じゃないんだよ。いくらあたし達でも守りきれる自信はないよ…」

香矢がむっとして言った。

「そこまで言うスか!?たかが、敵の城が出てきただけで何を弱気に…」

友知が言った。

「分かるんだよ…この先の地獄が…」

志穂も言った。

「そう、私達の胸の奥の何かが告げるんです…この城が出てきた意味を、これから何が起こるのかを!」

コーチがそこで口を開いた。

「みんな、二人の言う事を信じよう。ねっ?」


「カチカチ…チョコ、おマエはせめてガイコクにニげろ。」

チョコの家にきていたカイコ魔女はTVの魔女の城を見ながら言った。

チョコはカイコ魔女の方を振り返って言った。

「何で!?魔女さん、貴女は何をそんなに怯えているの…?」

カイコ魔女は震えていた。

そして言った。

「カチカチ…ワタシはウラギリモノだからな。まだ女手のブカのままであったら、あのシロをミてカンキしていただろう。だが、イマはギャクだ。あのシロのマリョクがジブンにムけられているとオモうだけでオソろしくて…」

チョコはポシェットからとんがりコーンを取り出し、カイコ魔女押し付けて言った。

「じゃ、一緒に逃げようよ。」

カイコ魔女は驚いて言った。

「カチカチ…だが、ワタシにはやることが…」

チョコは言った。

「復讐?そんなの自己満足でしょ。それよりも生きようよ。」

カイコ魔女は言った。

「カチカチ…イきていたって…」

チョコはカイコ魔女をポカっと叩いて言った。

「そんな事言わないで!少なくとも、あたいは生きていてほしいと思っているだって…」

「カチカチ…」

「あんたはあたいの家族なんだから!!」


次の日、琵琶湖はなくなっていた。

魔女の城の面積が広がり、琵琶湖全てを覆ったのであった。

リポーターはTVに向かって叫ぶ。

「皆さん、見えますか!?これは一体何事なのでしょうか…まるであの城が琵琶湖を食べたかのように…?」

その時、リポーターを乗せていたヘリコプターが城に突っ込み消えた。

まるで引き寄せられて吸収されたかのように。


その光景を満足そうに城の頂上から女手が眺めている。

そして呟いた。

「そうだ、食え…科学文明など全て食ってしまえ!そしてドラゴン様復活の糧にするのだ!!」

「ククク…女手サマ」

トゲウオ魔女が女手の後ろに手を地につけながら現れた。

「ククク…ウラギリモノのショケイのジュンビができました。」

女手は言った。

「手早くね…もう、時間はないんだから。」


「カチカチ…どうしたのだ?」

チョコの屋敷が騒がしかった。

メイドの一人にカイコ魔女が聞くと狼狽しながら答えた。

「蝶子お嬢様が…いらっしゃらないんです!昨夜、確かにベッドでご就寝になられたはずなのに…」

カイコ魔女は駈け出した。

すぐに分かった、連れ去られた事が。

すぐに分かった、自分をおびき寄せるためである事が。

すぐに分かった、連れ去られた場所が。

それは今、自分が最も行きたくない場所…


カイコ魔女は魔女の城にたどり着いた。

門の前に来ると大きな音を立てて門が開いた。

そして中からトゲウオ魔女がたくさんのかぼちゃ魔女を従えて出てきた。

トゲウオ魔女は楽しそうに言った。

「ククク…ようこそ、ウラギリモノ。いや、おかえりなさいとイったホウがいいかな?」

カイコ魔女は超振動ブレードを取り出し言った。

「カチカチ…どけ。キサマにカマってるヒマはない。」

トゲウオ魔女はおどけたポーズをとて言った

「ククク…そうつれないコトをイうなよ。カタキをウちたいんだろう?ほら、おマエのカタキがメのマエに…」

「カチカチ…3ドメはイわない。キサマにカマっているヒマはない。」

「ククク…ああ、そうかよ!」

トゲウオ魔女が叫ぶとかぼちゃ魔女が取り囲んだ。

「ククク…こっちもそうオモってたところだよ!さっさとショケイをカイシしようじゃないか!」

かぼちゃ魔女が一斉に飛びかかってきた。

しかし、カイコ魔女は器用にそれをかわし、次々とかぼちゃ魔女を切り捨てていった。

トゲウオ魔女は言った。

「ククク…科学のチカラをウマくアツカうもんだ。しかし、それがゲンカイだ。魔法をツカうエリート魔女のワタシのマエではザコ。トゲウオ魔…」

トゲウオ魔女が魔法を唱えようとした瞬間、何かがトゲウオ魔女の体に刺さった。

トゲウオ魔女はうろたえて言った。

「ククク!?これは!」

それはモグラ魔女の右手のドリルであった。

かぼちゃ魔女達を全て倒したカイコ魔女は言った。

「カチカチ…どうだ、エリート魔女とやら?ジブンがミクダしていたモノにヤブれるキブンは!?」

カイコ魔女はトゲウオ魔女の首元に超振動ブレードを突き付けて言った。

「カチカチ…サッキはおマエにヨウがないとイったが…このシンユウのカタミはそうではないらしい。」

「ククク…タノむ、イノチだけは!ワルいのは女手…なのだ!!ユルしてくれ!!!」

「カチカチ…それはあのヨでクジラ魔女とモグラ魔女にイうのだな。」

カイコ魔女が力を込めようとした時に城内からチョコの悲鳴が響いてきた。

「カチカチ…」

目の前には親友たちの仇がいる。

もう、仇を討つのに1分もいらないだろう。

「カチカチ…ナニをマヨうヒツヨウがあるのか!!」

カイコ魔女はトゲウオ魔女の体を投げ飛ばし、チョコの悲鳴が聞こえた方へと急いだ。


「助けて!父様、母様!魔女さん!!」

眼を覚ましたチョコは縛られながら必死に助けを求めた。

それを鬱陶しそうに女手がハンカチで鼻を押さえながら見ている。

そして女手は呟いた。

「ただでさえ人間臭くてたまらんのに…けたたましく騒ぐな!…もう、粛清しちゃってもいいかな?カイコ魔女をおびき寄せればそれで終わりだし。」

女手はチョコの首に手をかけようとした。

その時、フルートの音色が鳴り響いた。

女手は周囲を見渡す。

志穂と友知が部屋の外から現れた。

志穂が言った。

「まさか小枝子ちゃんが女手だったなんてね…よくも騙してくれたわね!!」

友知がフルートから口を離し、呆れ気味に言った。

「アタシは騙されてないけど…まぁ、いいか。志穂の怒りはアタシの怒りって事で。」

二人は胸の十字架を握りしめ叫んだ。

「ドラゴンヴァルキリー!ドレスアップ!!」

「ドレスアップ!ドラゴンヴァルキリャー!」

二人は白い背女の姿に変身し、叫んだ。

「「聖女!ドラゴンヴァルキリー!!ネクストドレス!!!」」

女手はハンカチを破り捨てて言った。

「聖女だと…貴様らの出番はまだだぞ?」

友知は剣を構えて言った。

「お生憎様。脚本はワタクシ達が決めますわ。」

女手は睨みつけて言った。

「いいや、アタシが決める。」

睨みつけられた途端、志穂と友知の体が熱くなった。

「ぐ!?」

「がぁ!?」

二人はその場に倒れこむ。

女手は笑いながら言った。

「どうだい、これが女手の魔法だ!あたしは睨むだけで相手の魔力を暴走させる事が出来るんだ!魔力はどんな生物も持っている血みたいなもの。しかし、さすがは聖女だな。並みの魔女ならもう即死してるレベルだぞ?」

その時、カイコ魔女が現れた。

「カチカチ!チョコ!!」

しかし、その場に無言で倒れこんだ。

女手は言った。

「ほら、こんな風にな。」

女手は閉めきった窓に近寄っていき、窓を開けた。

外の空気が流れ込んでくる。

女手は呟いた。

「ああ、気持良い!今日は良い一日になりそう!!裏切り者の始末は終わったし、ドラゴン様は復活するし…」

その時、女手の体が重くなった。

「!?」

振りかえるとカイコ魔女が羽交い締めにしていたのであった。

女手は驚いて叫んだ。

「何故だ!?確かに魔力を暴走させたはずなのに…」

「カチカチ…おマエのせいだよ、女手。おマエがボウソウさせるマリョクをスベてウバったんだよ…」

女手は無力にさせたつもりが、女手の魔法が通じない天敵を作り出していたのであった。

女手は叫んだ。

「だからどうした!?アタシの動きを封じただけでお前に何が出来る!?」

女手は貫手でカイコ魔女の腹に指を指した。

腹の中でガラスのカンという衝撃を感じる。

女手は驚愕して言った。

「今のは…何だ!?」

カイコ魔女は静かに言った。

「カチカチ…ニトロだよ。ちょっとのショウゲキでバクハツするカガクのヘイキだよ…ハラのナカには魔女をコッパミジンにするだけのリョウがハイっているぞ。」

「…お待ちなさい。」

友知が起き上がって言った。

まだ、フラフラしている。

「…早まっては駄目。」

志穂も起き上がって言った。

女手はその隙に首を動かし、チョコの魔力を暴走させようと…

したが、間一髪のところでカイコ魔女が目を覆った。

カイコ魔女は言った。

「カチカチ…こいつはスコしでもイかしちゃおけない…イッコクのユウヨもない!!」

「魔女さん!」

チョコが泣きながら言った。

カイコ魔女は志穂と友知の方を見て言った。

「カチカチ…タノむ。チョコをタスけてやってくれ。聖女ドラゴンヴァルキリー!」

「…分かったわ。」

「分かりましたわ。」

二人はフラフラしながら言った。

チョコは泣き叫んだ。

「魔女さん!いやよ!!」

カイコ魔女はチョコをしばらく見つめてから言った。

「カチカチ…チョコ、カゾクってイってくれて…ウレしかったよ!!」

そして、女手を掴んだまま窓から飛んだ。

しばらくすると、遠く離れた地面から巨大な爆音がした。

志穂と友知はまるで天国に昇っていくような煙を眺めながら言った。

「あなたも守るもののために戦ったのね…私達と同じで。」

「あなたはもう魔女ではなくってよ。そう、聖女…貴女こそ聖女ドラゴンヴァルキリーⅢ!!」

やがて煙は消え、青空が広がっていた。



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