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聖女ドラゴンヴァルキリー  作者: BALU-R
第Ⅴ部   最後のドラゴンヴァルキリー
34/41

第三十四話 遊園地であたしと握手

「あっ、小枝子さえこちゃんだ。」

鳥羽兎でTVを見ていたルリが言った。

TVにはツインテールの女性が歌っている姿が映されている。

香矢が言う。

「はー、最近よく見るっスよねぇー?元声優もすっかり国民的アイドルっスか…やっぱりアイドルになるには顔や歌だけでなく一芸、必要なんすかね?」

友知が面白くなさそうに言った。

「けっ!必要なのは芸じゃないって!コネでしょ?」

香矢が言った。

「コネって…まぁ、確かに生い立ちとかプロフィールが謎の存在すよね。そこを隠したいからスかね?TVのお偉いさんの娘さんとかスかね?」

友知は言った。

「香矢は何を甘い事言ってるの?コネって言ったら男と寝たに決まってるでしょ!でなければこんなブス…」

香矢は溜息をついて言った。

「そう言うの何て言うか知ってるスか?志穂さん。」

志穂は頷いて言った。

「ブスのひがみ。」


「お疲れ様でーす」

小枝子はTVの撮影を終えてスタッフに笑顔を振りまいていた。

そこに共演していた男性歌手が近寄ってきて話しかけてきた。

「お疲れ様、小枝子ちゃん!この後も仕事?」

小枝子は手帳を開いて言った。

「えっと、今日はこれで終わりですね。」

「小枝子ちゃんはマネジャーもつけずに自分でスケジュール管理までしてて偉いなぁ…それじゃあ、ボクと食事にでもいかない?」

そう言って男性歌手は小枝子の肩に手をかけようとした。

しかし、小枝子はその手を華麗にかわし言った。

「ごめんなさい!美容のために夜の食事は抜いているんです!それでは私はこれで!!」

不満そうな男性歌手に背中を向けて小枝子は走り去った。

エレベーターに乗って一人になったところで小枝子は呟いた。

「…臭い。」

小枝子はハンカチを取り出し、鼻を覆って言った。

「ああ!人間は本当に臭い!!息が詰まる!!」

「クマー!それならば、あいどるなぞやらなければヨいでしょうに…」

頭上から声がした。

天井が開いて熊魔女が顔を出した。

小枝子はハンカチをしまって言った。

「臭いのは嫌いだが、見るのは好きなのさ。バラバラに解体した姿を想像するだけもう…そのために多くの人間を見る事ができるアイドルをやっているのさ!」

熊魔女は降りてきて言った。

「クマー!どちらかとイうとオオくのヒトにミられるシゴトでは?」

小枝子は言った。

「ふん、それも好きなのさ!…それで?お前はアタシと世間話をするためにエレベータの上に隠れていたのかい?」

熊魔女は姿勢を正し言った。

「クマー!ウィッチサイゴのカンブである、女手じょしゅサマにミチビいてイタダきたくサンジョ…」

そこで女手は熊魔女を遮って言った。

「待って、最後の幹部?他の3人はどうした?」

熊魔女は表情を曇らせて言った。

「クマー!はっ、女医サマも女教授サマも女帝サマもゼンイン、聖女にヤブれました…ゴゾンジなかったのですか?」

女手は背伸びしながら言った。

「んー?アタシは他の3人とは連絡とってなかったし、興味もなかったし…」

熊魔女は絶句した。

女手はそんな熊魔女を見てニヤリと笑い言った。

「「こいつ、大丈夫か?」とか思ってる顔ね!心配しなさんな!あたしが他の3人と連絡とっていなかったのは別格だったからだよ!何しろあたしは始まりの魔女、ドラゴン様と唯一コンタクトがとれる魔女だからね…」

熊魔女が歓声をあげ言った。

「クマー!おお、ウワサはホントウでしたか…それではワタシをおミチビきを…」

女手は少し考えてから言った。

「じゃあ、こんな導きはどう?」

やがてエレベータが目的の階に到着しドアが開いた。

そこには熊魔女の姿はすでになく、女手は一人で降りてきた。

誰にも聞こえない声で女手は呟いた。

「そっかー。あの3人死んじゃったんだー。」

表情も変えずに続けて呟いた。

「せっかくドラゴン様に力を頂いたのに…馬鹿な奴ら。」

そして、タクシーに乗った。

いつもの小枝子の顔に戻って。


「大変スよ!大変スよ!」

香矢が鳥羽兎に大騒ぎしながら飛び込んできた。

友知が言った。

「どしたの、シフトでもないのに…朝起きたら下着にキノコでも生えてた?」

香矢は叫んだ。

「んなわけあるかい!ちゃんと毎日洗ってるスよ!!ゼイゼイ…走ってきたんだから余計な突っ込みをさせんなっス…」

志穂が水を差しだし言った。

「まぁまぁ…で、何が大変なのですか?」

香矢は水を一気に飲み干し言った。

「小枝子ちゃんが…誘拐されたって!マスコミには隠してるみたいっスけど…」

友知が言った。

「どうだか…案外、男でもできて雲隠れしたんじゃないの?今まで、コビてきたパトロンにばれるのが怖くなってさぁ!」

香矢は溜息をついて言った。

「まーだ、ひがんでるんスか?この譲ちゃんは…警察には犯行声明まで出てるんスよ?」

コーチが奥から出てきて言った。

「香矢、よくそこまで調べたね…」

香矢は胸を張って言った。

「もはや、情報収集でサポートできるのはあちきだけっスからね!問題はこの犯行声明なんスよ。身代金とかを要求せずにドラゴンヴァルキリーの身柄を要求してるんスよ、これが。」

志穂と友知の顔が変わった。

そして志穂が言った。

「香矢さん、場所とかも…」

香矢はポケットから地図を取り出して言った。

「モチのロン!この遊園地にドラゴンヴァルキリーだけで来いって事スね。」

志穂は立ちあがり友知の方を見て言った。

「アイドルが嫌いなら、私一人で行くけど?」

友知も立ち上がって言った。

「からかわないでよ…人の命がかかっているんだよ?」


二人は遊園地に着いた。

友知は言った。

「静かだね…てっきり警察が包囲してるもんだと思ったけど。」

志穂は首を振って言った。

「警察に犯行声明を出したのは私達が突きとめるのを分かっててやったんでしょ?警察にはウィッチの息がかかってるんだから動くわけがないよ。」

遊園地には警察どころか人の気配もなかった。

友知は周りを見渡して言った。

「あーあ、この状況が魔女事件じゃなければなぁ…アトラクション乗り放題なのに…」

志穂はクスリと笑って言った。

「でも、誰もいないのは寂しいよ。私はガヤガヤした遊園地の雰囲気が好きだよ。」

その時であった。

「パンプキン!」

「パンプキン!」

かぼちゃ魔女があちこちの物陰から姿を現した。

友知は溜息をついて言った。

「良かったね志穂…ガヤガヤしてきたよ。」

奥の方から熊魔女が歩いてきて言った。

「クマー!やはりキたか聖女よ!!スベては女手サマのケイカクドオりよ!」

志穂がその言葉に疑問を持って言った。

「助手…?」

熊魔女は叫んで否定した。

「クマー!そのカきカタではない!タスケるにテではなく、オンナにテとカいて女手サマだ!!」

友知はあきれて言った。

「げっ、こいつ小説や漫画でしかできないツッコミをしやがった…それにしても、また新しい幹部?」

志穂は思い出して言った。

「多分、最後の幹部だよ。最高幹部のドラゴン以外では。おか…女教授が死に際に話してたの。ドラゴンの封印は4人で解いたって。」

熊魔女は言った。

「クマー!そういうコトだ!サイゴにしてサイキョウのカンブ、それが女手サマだ!」

友知は言った。

「何でも良いけど、小枝子はどこよ?」

熊魔女は首を上に向けた。

観覧車に縛り付けられた小枝子がいた。

熊魔女は言った。

「クマー!さあ、ワれらとタタカえ」

友知は溜息をついて言った。

「盾にするとかそういうのはないのかね、このバカ熊は。」

熊魔女は怒って言った。

「クマー!これだけのカズの魔女がいるのにどこにそんなヒツヨウがある!それともたったフタリでカてるとでも。」

志穂と友知は言った。

「もちろん。」

「楽勝だわ。」

そして胸の十字架を握り叫んだ。

「ドラゴンヴァルキリー!ドレスアップ!!」

「ドレスアップ!ドラゴンヴァルキリャー!!」

胸の十字架を引き千切り二人とも白い聖女の姿に変身した。

そして

「「聖女!ドラゴンヴァルキリー!!ネクストドレス!!!」」

同時に叫んだ。

熊魔女は尚も怒りながら言った。

「クマー!ナめおって…やれ、かぼちゃ魔女ども!!」

「パンプキン!!」

かぼちゃ魔女が一斉にかかってくる。

その瞬間に志穂と友知は消えた。

そして次々と倒れていくかぼちゃ魔女達。

熊魔女は驚いて泣き叫ぶように言った。

「クマー!ええい、ツカまえてしまえばかぼちゃ魔女のバクハツで…」

風の中から友知の声が響いた。

「無理無理無理ですわ。ネクストドレスは通常の3倍のスピードで動けますもの。」

そして30人以上いたかぼちゃ魔女は全て倒れた。

そして志穂と友知は姿を現す。

志穂は熊魔女の方を見て言った。

「これで後はあんただけね!」

熊魔女は後ずさりしながら言った。

「クマー!フタリがかりでワタシとタタカうつもりか!!ヒキョウな!!!」

友知は溜息をついて言った。

「何言ってますの…さっきまで30人がかりだったくせに…」

しかし、志穂が言った。

「ならば…正々堂々1対1で勝負よ!」

その言葉に友知が驚いて言った。

「ちょ!?志穂、何を言って…」

「友知は手を出さないでね。あ、今のうちに小枝子さんを助けてきて。」

志穂の言葉に渋々と小枝子の方に向かう友知であった。

熊魔女はニヤリと笑い言った。

「クマー!かかったな!ヒトリヒトリかたずけてくれるわ…熊魔法!」

しかし、熊魔女が魔法を唱えるより先に志穂は剣を構え叫んでいた。

「六竜トルネード!」

志穂の剣から竜巻が放出され、熊魔女の体を打ち上げる。

さらに炎、水、雷、草、毒、5つの色が竜巻の中に入っていく。

熊魔女はもがきながら叫んだ。

「クマー!女手サマ!女手サマ!おタスけください!!」

ボロボロになった熊魔女のところに志穂は飛びあがり叫んだ。

「エンドドラゴン!」

そして横一文字に熊魔女の体を切り裂いた。

「クマー…女手サマナゼ…ワタシをミスてるのですか…」

断末魔の声を上げ熊魔女は息絶えた。

「必殺…七竜剣!」

そう言ってから志穂は剣を胸に持っていき変身を解いた。

「今日の志穂はやけに気合が入ってますわね…」

小枝子を救出して降りてきた友知がそう言って変身を解いた。

小枝子が震える声で言った。

「あたし助かったの?あなた達が助けてくれたの?」

友知が何か言う前に志穂が喋った。

「小枝子さん、実物に会えるなんて…感激です!」

友知はずっこけた。

そして座り込んだまま友知は言った。

「ファンだったんだ…知らなかった…どおりでカッコつけるわけだ。」

志穂は続けて言った。

「あの、握手とかしてもらってもいいですか?」

小枝子は驚いていたが、すぐに営業スマイルになり言った。

「良いわよ!可愛いお譲さん。」

小枝子は手を差し出してきた。

志穂はズボンのすそで手をゴシゴシと高速で拭き始めた。

友知が呆れて言う。

「火でも着けるつもりか!つーか、汗かかないでしょ!!」


小枝子は二人に送られ自宅のマンションに着いた。

ソファーに座って呟いた。

「あれが聖女か…」

その顔は女手に戻っていた。

そしてさらに呟く。

「あれがドラゴンストーンをその身に宿す者の力…見てみたい!あの体をバラバラに解体して成長した輝きを放つドラゴンストーンを…」

よだれが流れていた。

女手はよだれも拭かずに呟き続けた。

「でも、まだ駄目だ…もっと成長させねばドラゴン様は復活できない…そう、もっとだ…ドラゴン様が復活した時…その時こそ…」

ドラゴンの復活…

その時こそ、志穂と友知の最後の戦いになるのであった。



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