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聖女ドラゴンヴァルキリー  作者: BALU-R
第Ⅳ部   復活・ドラゴンヴァルキリーⅠ編
30/41

第三十話 女教授の哀しき正体!

「バーラァ!ショウブだ、聖女!!」

バラの姿をした魔女がそう叫んだ。

志穂の元に果たし状が届いた。

その相手が目の前のバラ魔女であった。

志穂は青と紫の姿になってバラ魔女の挑戦を受けている。

志穂は言った。

「正々堂々の勝負ならいつでも受けます…来なさい!!」

バラ魔女はうなずいて叫んだ。

「バーラァ!バラ魔法!ばらすのツルギ!!」

バラ魔女はバラの剣を出し、志穂に切りかかる。

志穂も剣で受けるが、その高速の太刀筋は防ぎきれず、何回か切られてしまった。

志穂は呟く。

「くっ…!こいつ、ツバメ魔女以上の剣客!?」

バラ魔女は誇らしげに言った。

「バーラァ!ワタシは女教授チョクゾウサイキョウの魔女!」

志穂は距離をとり言った。

「確かに今まで一番の強敵ね…悪いけど、飛び道具で応戦させてもらうわ。」

志穂は剣先から毒ガスを放出した。

「バーラァ!バラ魔法!ばらすのタテ!!」

そうバラ魔女が叫ぶと、バラの剣は盾の変化し、志穂の毒ガスを防ぐ…いや、跳ね返した。

「くっ!?」

志穂は慌てて水を放出し自分の体を覆う。

「バーラァ!ウスいマモりだな…バラ魔法!ばらフブキ!!」

バラ魔女がそう叫ぶとバラの盾は散り散りになり、その花びらの一つ一つが小さなバラに変化して志穂に向かって襲ってくる。

大量のバラは水のバリアごと志穂の体を覆う。

「バーラァ…そのままオしつぶされるがいい!」

志穂を覆ったバラの塊は徐々に小さくなっていき、最後には半分ぐらいの大きさまでになってしまった。

「バーラァ!あっけなかったな、聖女!」

バラ魔女はそう言ってから指をパチンと鳴らした。

覆っていたバラがボロボロとこぼれ落ち、中から水が流れ出し、志穂の体は…なかった。

「バーラァ!?」

バラ魔女が驚くと同時に背後から剣が振り下ろされた。

皮一枚でバラ魔女が飛び避けて振り向くとそこに志穂がいた。

「バーラァ!いつのまに!?」

志穂は言った。

「さっきまであんたが攻撃していたのは水で作った私の虚像…最初からあんたの後ろで油断するのを待っていたのよ。」

「バーラァ…さすがだな!」

(あんたもね。)

バラ魔女の声に志穂は心の中で答えた。

(今の一撃で致命傷を負わせれなかったなんて…)

志穂は再び剣を構えバラ魔女と睨みあった。

(隙を見せたら…負ける!)

志穂は相手に集中した。

音が消えた。

お互いに動けなくなったのだ。

その瞬間、

「パンプキン!」

「!」

かぼちゃの姿をした魔女が志穂の背後から飛びかかり志穂を羽交い締めした。

志穂は言った。

「しまった!伏兵がいたの!?」

「パンプキン!かぼちゃ魔法!ダイバクハツ!!」

そうかぼちゃ魔女は叫ぶと爆発した。

かぼちゃ魔女の破片が飛び散る中、片膝をつく志穂。

(うかつだった…大したダメージはないけど、今の爆発は電気も帯びていた…これではしばらく動けそうにない…この間にバラ魔女の攻撃がくれば…)

志穂は歯を食いしばった。

しかし、バラ魔女は動こうとしない。

志穂は思った。

(どういう事?果たし状を出すぐらいだから卑怯な横やりを嫌うとか…)

バラ魔女はまだ動かない。

(横やりを嫌って攻撃してこないにしても…何も言わない、立ち去ろうともしない…)

「志穂殿!」

その時、ミカの声が響いた。

ミカは志穂に肩を貸して言った。

「…とにかくこの場は退きましょう。」

そして煙幕玉を投げて、煙に乗じて走り去った。

後にはバラ魔女だけが残される。

やがて、バラ魔女は崩れ落ちた。


舞台は変わってここは女帝のオフィス。

就業時間が終わり、女帝は一人で本を読んでいた。

その時、荒々しく扉が開く。

女教授であった。

ドカドカと女帝の方に向かって歩いていき、机をバンと叩いて怒鳴った。

「どういうつもりだ!?決闘の邪魔をするなど…あの、かぼちゃ魔女はお前直属の魔女だろ!?」

女帝は本から目を離さずに言った。

「良い出来だったろ?魔力の低さをああやって補えば…魔力の高い人間を探すよりよぽど効率が良い。使い捨てだと考えればな。」

女教授は女帝の本を取り上げ、乱暴に投げ捨てた。

そして、女帝の方を睨みつけながら怒鳴った。

「そういう話ではない!邪魔をした理由を聞いているんだ!!」

激昂する女教授とは対照的に女帝は涼しげな顔で言った。

「もったいないからだ。聖女を我々の元に戻す良い情報を手に入れたのでな。」

そして、女教授に耳打ちをした。

女教授の顔色が変わる。

青い顔で女教授は呟いた。

「まさか…そんな事が…」

女帝は嬉しそうに言った。

「確かな情報だよ。」

女教授は出口に向かって歩き出した。

「自分で確かめる…貴様は信用できん。」

そう言ってオフィスを出て行った。

女帝は、さっき投げ捨てられた本を拾い上げ呟いた。

「せいぜい頑張ってくれたまえよ。」


志穂とミカは鳥羽兎についた。

奥からコーチが駆け寄ってくる。

「大丈夫か?ねっ、田合剣?」

志穂はフラフラしながらも言った。

「大丈夫ですコーチ。少し痺れただけです…それにしても、どうして私は無事なのでしょうか?バラ魔女にとっては最大のチャンスでしたのに…」

ミカが言った。

「あのかぼちゃ魔女の爆発は志穂殿だけでなく、バラ魔女の体も巻き込んでいました…まるで、最初から二人を倒すつもりだったように…」

志穂は納得して言った。

「バラ魔女は女教授直属の魔女と言っていました。女教授と対立している人物がいる…まさか女帝?」

コーチは頷いて言った。

「ウィッチも一枚岩ではないのね…」

志穂は自由になってきた体を動かしながら言った。

「魔女もどんどん強くなっていく…私も強くならないと…」

そして鳥羽兎の扉へと向かっていった。

エミが声をかける。

「志穂殿、どちらへ?お供しますよ。」

志穂は首を振って言った。

「少し頭を冷やしてくるだけです。一人にしてもらえますか?」

そして、鳥羽兎を出て行った。


志穂はかつて自分が住んでいたアパートの前に来ていた。

生まれた時から住んでいる家。

こんな事件に巻き込まれなければ今も住んでいた家。

家を乗っ取った冬虫夏草魔女はもういないので、ここは無人と化していた。

(この戦いが終わったらまたお父さんと一緒にこの家に戻って昔みたいに…ふふふ、無理だよね。もう、普通の生活は送れない体になってしまった…)

その時、後ろから足音がした。

志穂が振り向くとそこには

「女教授…!」

志穂は呟いた。

女教授は顔色が悪かった。

志穂は違和感を覚えながら言った。

「何しに来たの!?人間だった時の思い出にひたる私を笑いに来たの!?」

「ここが思い出の地…やはり、お前は…」

女教授はブツブツと言った。

しばらく考え事をした後に我に返って女教授は言った。

「お前の父親は一志さん…?」

突然、父親の名前を呼ばれ志穂はビクッとした。

怯まず志穂は言った。

「…そうよ。魔女対策本部のリーダーの。」

女教授は道端の石に座り込んで言った。

「…少し話を聞いてくれないか。私の昔話だよ。」


かつて私も人間…高校の歴史の教師だった。

ある日、自分の受け持つクラスの生徒の一人に誘われた。

「まだ未開の遺跡があるんですけど、一緒に調べに行きませんか?」

何でもバイト先の社長の土地から誰も調べていない新しい遺跡が発見されたという事だ。

通常、こういったものは国とかに調べてもらうものだが、その社長は自分で最初に調べてみたくなったようだ。

とはいえ、考古学的な知識に疎い店長はバイトの子に頼んで少しは考古学の知識のある私に調査の協力を頼んできたわけだ。

メンバーは4人。

私とその生徒と社長と社長の友達…医者をやっている女性。

少人数だが見るだけならこんなものであろうと、私はこの話に乗った。

「ここです。」

社長の案内で来た場所は遺跡というより防空壕のように整備された洞窟であった。

私はこの社長に騙されたかと疑いつつも洞窟の中に入っていった。

洞窟の中は殺風景であったが何というか…どこか快適であった。

「?何かありますよ。」

医者の女が言った。

洞窟の行き止まりに十字架のカギがついた箱が置いてあった。

暗い洞窟の中でその存在は異彩であった。

私達はその箱をどうするか話し合った結果、まずは開けて中身次第で持って帰ろうという事になった。

とはいえ、危険な虫や蛇でも入っていたら開けるときに危険だ。

そう思った私は自分が開けるのを提案した。

「…では開けます。」

十字架のカギはついているだけで箱を封していたわけではなかった。

箱はあっさり開いた。

中には何も入っていなかった。

物は。

次の瞬間、私達の中に記憶が入ってきた。

最初の魔女、我らの主、ドラゴン様の記憶、そして、ドラゴン様の憎悪が!

私は…私達は人間をやめた。

人間の罪深き姿を知ってしまったから。

それまでの生活も、夫も、娘も捨てて。


「…だから何?」

聞き終えた志穂は言った。

内心は混乱しながらも志穂は言い続けた。

「娘を捨てたなんて話を私にして…そう私にして…」

女教授は優しい顔をしながら言った。

「そうだよ、志穂…お前は私が8年前に忘れて行った私の娘…」

「嘘だ!!」

志穂は叫んだ。

(母親…?)

志穂は小さい頃、自分に母親がいない事を何度か疑問に思った事がある。

父親に聞いたこともあったがいつも困った顔をするので、自然と聞かなくなってしまった。

だから自分には母親がいないのが当たり前なんだと思って育ってきた。

「嘘だ!嘘だ…嘘…」

志穂は叫び続けた。

女教授は優しく言った。

「寂しい思いをさせて悪かったな、志穂。だが、もう大丈夫だ。これからは共にドラゴン様に仕え人間を粛清しよう。」

志穂は女教授を睨みつけて言った。

「ふざけないで!何で私が魔女の味方を…」

女教授は尚も優しく言った。

「お前は知らんのだよ。私達魔女が迫害されてきた歴史を。」

志穂は言った。

「聞いたことはあるわ…15世紀の魔女裁判とかね。でも、あれはあなた達を恐れたから…」

女教授は笑って言った。

「恐れ?人間どもは私達を恐れなぞしないよ!ただ、痛めつける対象が欲しかっただけ…ドラゴン様も過去の魔女達も魔法を持たない人間の力になろうとしてきた…しかし、やつらはその力に嫉妬し魔女達をむごい…思い出すのもおぞましい…仲間たちが殺されるのを悲観したドラゴン様は自ら命を絶ったのだ。復讐に走らないように…しかし!」

女教授から笑みは消えていた。

そして続けて言った。

「何故、力を持つものが泣き寝入りをしなければいけないのだ!?ドラゴン様の記憶を知った我らは自らの体を魔女に改造し人間への復讐を誓った。志穂、」

志穂は叫んだ。

「気安く呼ばないで!私はあんた達に協力なんて絶対にしない!!」

女教授は再び優しい顔しながら言った。

「志穂…母の言う事が聞けないのか?」

志穂は叫ぶ。

「あんたは母親なんかじゃない!私が母と呼ぶのは友知のおばさんと…コーチだけ!あんたじゃない!!」

女教授は困った顔をしながら言った。

「そうか…」

志穂は胸の十字架を握りしめ叫んだ。

「ドラゴンヴァルキリー!ドレスアップ!!」

十字架を引き千切り、青と紫の姿に変身した。

「聖女!ドラゴンヴァルキリー!!ダブルドレス!!!」

女教授は悲しい顔をしながら言った。

「戦うつもりか。ならば仕方がない…連れ帰って脳改造をするのみ!!」

カバンから口紅を取り出し唇を塗りなおすと女教授の体が変わっていく。

「バーラァ!」

女教授はバラ魔女になった。

「バ、バラ魔女だったの…」

志穂は驚いて言った。

バラ魔女は叫んだ。

「バーラァ!バラ魔女サイキョウの魔法をミせてやる!!バラ魔法!ばらフブキキョウ!」

バラ魔女の体が無数のバラの花びらに変化していき、志穂に向かって飛んでくる。

志穂は言った。

「そんな攻撃!さっきと何が違うっていうの!?」

剣で叩き落とそうとしたが、花びらは剣をかわし志穂の背中に回り刺さった。

「ぐっ!?」

志穂はよろめくとあちこちのバラから声が響く。

「バーラァ!このハナびらヒトウヒトツがワタシなのだ!スベてタタきオとせるかな?」

志穂は剣を構えた。

闇雲にではなく一つの花びらに向かって。

「はぁぁぁー!」

そしてその花びらを真っ二つに切った。

その途端飛び交っていた花びらが全て落ちた。

落ちた花びらは切り裂かれた花びらに集まっていき、最後には女教授の姿になった。

女教授は息耐えながら言った。

「見事だ…何故、私の本体の位置が分かった。」

志穂は変身を解いて言った。

「…分からない。ただ、あなたがそこにいると思ったからそこを切っただけです。」

女教授は溜息をついて言った。

「まさか、自分の娘に殺されるとは…いや、幸せだったのかもしれん。人間に殺されるよりはな。」

志穂は無表情で女教授を見ている。

「志穂…お前にも人間の醜さが分かる日がくるよ…いつか必ず。それまで生き抜きなさい。父さんをよろしく…」

そう言って女教授は息を引き取った。

志穂は女教授の亡骸を埋めてその場を後にした。

「さようなら…お母さん…」

そう最後に呟いて。



女教授がいなくなった事で女帝の暗躍が始まる…!

奪われたみかん!?


次回 第三十一話 「恐怖のみかん買占め作戦」


母との別れの悲しみを乗り越え、志穂は戦い続ける!

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