第二十四話 女医の正体は?星になった友知
「ゲッーソ!どうした、かかってこないのか?」
友知は動けずにいた。
魔女と長い間戦ってきた彼女には分かっていた。
(こいつ…強い!今まで戦ってきたどの魔女よりも…!)
そう思いながらも剣を構えて友知は言った。
「細かい事考えても仕方ありませんわね…!」
左手の剣から炎を放出してイカ魔女にぶつけた。
「続けていきますわ!」
そう言って今度は雷雲を呼び出し、右手の剣にカミナリを落とし、イカ魔女にぶつけた。
「ゲッーソ!イカ魔法スミケッカイ!」
墨を噴き出し、炎と雷を止めてしまった。
驚いて友知が言う。
「なっ!?そんな物で止められるなんて!?」
「ゲッーソ!これをただのスミとオモうなよ!キサマのコウゲキはスベてこのスミのマエにはムリョクだ!」
友知は剣をクロスさせて言った。
「無力かどうか…試させてもらいますわ!」
そして叫んだ。
「ドレスチェンジ!」
今度は青と紫の姿になった。
「火が駄目なら水ですわ!」
右手の剣から水を出す。
「どんな物質も腐らせる腐食ガスもどうぞ!」
左手の剣から腐食ガスを出す。
しかし
「ゲッーソ!イカ魔法!スミケッカイ!!」
再び、イカ魔女のスミにかき消されてしまった。
友知は剣をクロスさせて言った。
「魔法が駄目なら!物理攻撃ですわ!!」
そして再び叫んだ。
「ドレスチェンジ!」
今度は黄と緑の姿になった。
「ボクの植物で押しつぶしてあげるよ!」
袖が植物に変化し、イカ魔女に向かっていく。
「ゲッーソ!イカ魔法ジュッポンアシ!!」
イカ魔女の背中から十本の足が生え友知の植物を逆に絡めていく。
「くっ!」
友知は慌てて自分の両袖を切り落とした。
友知は憤慨して言った。
「ノースリーブ姿になるなんて、とんだサービスだよ!ドレスチェンジすれば戻るけど、その前に…」
剣にカミナリを落とし自分の体に電気を送り込んだ。
「お前を倒す!」
先ほどの黒豹魔女にも匹敵するスピードで突っ込んで行った。
が、
「ゲッーソ!ゴリラ魔法ニクタイキョウカ!」
突っ込んでいった友知を逆に殴り飛ばすイカ魔女。
友知は驚いて言った。
「何でお前がゴリラの魔法使ってんだよ…」
「ゲッーソ!ワタシはホカの魔女の魔法もツカいこなすコトができるのだ!」
「…ドレスチェンジ」
友知はそう言って赤と青の姿に変わるので精一杯であった。
「ゲッーソ!どうした、もうねたギれか?」
友知はなおも剣を構えて言った。
「…んなわけないでしょ。これから奇跡の逆転勝利と行くんだから!」
「ゲッーソ!タシかにここからギャクテンすればキセキだなぁ!だがな…」
イカ魔女は懐からラジカセを取り出した。
「ゲッーソ!これがわかるか?」
友知は笑って言った。
「残念だけどドレスアップした後のアタシにその武器は通用しないわよ?」
「ゲッーソ!そうオモうか?」
イカ魔女はラジカセを口の中に放り込み言った。
「ゲッーソ!今までのオンパとイッショにするなよ!イカ魔法ダイオンキョウ!」
イカ魔女の腹の中から音楽が鳴り響いた。
その音は友知を狂わせた。
「ぐぅぅわぁあぁあぁあああ!!!」
「ゲッーソ!どうしたどうした?ツウヨウしないんじゃなかったのか?」
のたうち回る友知。
「ねっ、夜葉寺院!」
「友知!」
「友知ちゃん!」
「夜葉寺院ちゃん!」
「ワン!」
そこに叫び声が響く。
コーチ達であった。
しかし、友知は相変わらず苦しそうだ。
「ゲッーソ!チョウドいい!そいつらをヤツザキにしろ、ドラゴンヴァルキリー!」
「がぁあぁぁあああああ!」
コーチ達の方に剣を構えて走ってくる友知。
その瞬間、間に割って入った人物がいた。
志穂であった。
志穂は振り下ろされる左手の剣をかわし、右手の剣の柄を握りこう言った。
「負けないで…私の良心を受け止めて!!」
金色の柄は光り輝き、二人の体を包み込んで行く。
そして、輝きが止むと友知の変身が解除されていた。
友知は志穂の方に崩れ落ちた。
「!ねっ、イカ魔女は!?」
コーチがそう叫んだがいつのまにかいなくなっていた。
マリが言う。
「逃げた?でも何で?」
しかし、いない事に全員が安堵するのであった。
そして香矢が言う。
「でも、あんな無茶苦茶なやつが出てくるなんて…せっかく志穂さんが帰ってきてくれたのにっス…」
ユリがそれに対して言う。
「そうだ!田合剣ちゃんよ!!田合剣ちゃんならあいつの音波攻撃が効かないでしょ!」
「…無理だよ。」
いつのまにか気が付いていた友知が喋り出した。
「志穂の傷は完治していないもの…そんな状態で慣れないダブルドレスを使いこなせるわけがない…」
「だったらどうすれば良いっスか…!?」
香矢が泣きつくように聞いた。
友知は静かに答えた。
「みんなごめん…志穂と二人きりにしてくれるかな?」
その言葉に全員が去って行った。
友知が口を開く。
「志穂…お願いがあるの…」
そして作戦を告げると志穂は驚いて言った。
「!何を言っているの!!それなら私がやるよ!」
「お願い…これはアタシのけじめなの!一生のお願い!!」
志穂は友知から目をそらして言った。
「…友知の一生のお願いは何度聞いたことか。」
コーチ達、4人と1匹はトボトボと歩いていた。
「時間が…もう少し時間があれば…志穂さんがダブルドレスに慣れる時間がせめて少しでもあれば…」
香矢は力なく呟いた。
「無駄だよ。」
目の前に突然現れた女医が言い捨てた。
そして続けて女医は言った。
「あれは私の最高傑作だ。今更、もう一人の聖女が出てきたところで相手にはならん。」
コーチが怒りながら言った。
「ねっ、貴様…イカ魔女はどうした!?」
女医はニヤリと笑い胸のポケットからスルメを取り出し言った。
「目の前にいるじゃないか。」
プチリとスルメを食いちぎると女医の姿はイイカ魔女に変化した。
「女医の正体は…」
「イカ魔女!」
イカ魔女は言った。
「ゲッーソ!聖女のマエにおマエラをチマツりにアげてくれる!!」
その時、フルートの音色が鳴り響いた。
友知であった。
「ゲッーソ!ミズカらのテでナカマをアヤめたくなったのか!?」
フルートから口を離し、友知は言った。
「アタシは…もう魔女には戻らない!!」
そして右手で胸の十字架を握りしめた。
その胸には志穂の…金色の十字架だけで銀色の友知の十字架はなかった。
「ドレスアップ!ドラゴンヴァルキリャー!!」
そう叫ぶと姿が変わった。
赤一色に。
髪は金色に。
「聖女!ドラゴンヴァルキリー!!レッドドレス!!!」
右手に剣を持ち、そう叫んだ。
イカ魔女は言った。
「ゲッーソ!タシかにそれならオンパはキかなくなるが…ダブルドレスでもカナわなかったワタシにそんなフルい姿でカてるとオモってるのか!?」
そして二人はぶつかり合う。
香矢が見守りながら言う。
「あいつの言うとおりっスよ…友知、やけになったんスか!?」
「いいえ。」
志穂が後ろから現れて答えた。
「あれで良いんです…あれで…」
そう言いながら志穂の顔は暗かった。
「ドレスチェンジ!聖女!ドラゴンヴァルキリー!!ブルードレス!!!」
炎をスミでかき消され青い姿に変わった友知は水のバリアを出した。
「ゲッーソ!それもかきケしてくれるわぁ!」
「ドレスチェンジ!聖女!ドラゴンヴァルキリー!!グリーンドレス!!!」
緑の姿になり袖の植物でスミを払った。
(まだよ…まだ!もう少しで…)
「ドレスチェンジ!聖女!ドラゴンヴァルキリー!!パープルドレス!!!」
今度は紫の姿になり腐食ガスをぶつけようとする。
「ゲッーソ!スミがなくともそのテイドのフショクがすなら!!」
イカ魔女は魔法を使わずに腐食ガスを払った。
(もう少し…)
「ドレスチェンジ!聖女!ドラゴンヴァルキリー!!イエロードレス!!!」
黄色い姿になり、自分に電撃をぶつけ強化して突っ込んだ。
「ゲッーソ!ゴリラ魔法ニクタイキョウカ!どうした、サキほどよりもイキオいがないぞ!!」
あっさり、イカ魔女に受け止められ吹き飛ばされる。
「ゲッーソ!ダブルドレスでなければこのテイドか…ジツにキョウミがワかない。」
そこに志穂が駆け寄る。
友知は変身を解き言った。
「もういいよ、志穂…分かったから。」
そう言って金の十字架のネックレスを志穂に渡した。
イカ魔女は言った。
「ゲッーソ!センシュコウタイか?」
「違う。」
友知が立ちあがって言った。
そして体が金と銀に輝きだした。
「ドレスアップ!ドラゴンヴァルキリャー!!」
友知は十字架を使わずに赤と黄の姿に変身した。
「聖女!ドラゴンヴァルキリー!!ダブルドレス!!!」
そう叫ぶ両手には剣がなかった。
驚いてイカ魔女が言う。
「ゲッーソ!ジュウジカなしで変身するためにあえてフルいスガタにカわっていたとでもいうのか…!?しかしジュウジカもナシでドレスアップすればおマエは…」
「ええ、死ぬでしょうね。今も体中のあちこちが痛くてよ。」
友知はフラフラとしながら言った。
「でもね…」
そう言ったと思うとイカ魔女の体に素早くしがみついていた。
「こんな体じゃ戦えませんけど…あなたをかかえてお星様になることぐらいはできてよ!!」
イカ魔女は驚く。
「!ゲッーソ!ジバク魔法か!?」
友知はイカ魔女を抱えたまま天高く飛んで行き、すぐに見えなくなった。
「ねっ、夜葉寺院だめだ!」
コーチが叫ぶ。
「志穂さん、あんたこうなる事が分かってたんスか!?」
香矢が詰め寄る。
志穂は冷めた顔で言った。
「…分かっていましたよ。」
「だったら何で止めなかったスか!?」
「あの子の気持ちも分かるから…私も聖女ドラゴンヴァルキリーだから!」
(大丈夫ですわ…)
「これ…夜葉寺院ちゃんの声?」
ユリが呟く。
「そんな、あんなに高く飛んで声なんか届くわけないのに…」
マリが目に涙を浮かべながら言う。
しかし、その声は確かに聞こえた。
(ワタクシはいつでも皆さんとご一緒ですわ…またお会いしましょう…)
そして空に一つ大きな光があって消えた。
全員、それを見上げながら泣きじゃくるのであった。
志穂を除いて。
(友知…あなたの想いは私が確かに受け継いだよ!!)
そう強く思い、二つの十字架を握りしめる志穂であった。
第Ⅲ部完
友知の活躍により女医は倒された。
しかし、女医亡き後も魔女の暗躍は止まる事がなかった…
友知のいない今、戦えるのは志穂だけだ!
次回
第Ⅳ部 復活・ドラゴンヴァルキリーⅠ編
第二十五話 志穂の新たな戦いの始まり
友知の想いを受け継ぎ、志穂は戦い続ける。