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聖女ドラゴンヴァルキリー  作者: BALU-R
第Ⅲ部   聖女・ドラゴンヴァルキリーⅡ編
22/41

第二十二話 残酷なる恋心

TVで恋愛ドラマをやっていた。

ラブシーンに突入した。

「んーむちゅー。」

友知はTVドラマのキスシーンに夢中であった。

それを白けた顔で眺めていた香矢が言った。

「はぁー、よくそんなもんに夢中になれるっスね。」

それを聞いた友知が言い返した。

「だって、恋愛とか想像すると胸とお腹の辺がキュンとして楽しくない?」

香矢は冷めた顔で答えた。

「恋愛なんてただの本能っスよ。もう少し理知的になりなさいっス。」

「ねっ、どうでも良いんだが…」

洗い物をしているコーチが言った。

「ねっ、お前ら人前でよくそういうドラマを平然と見れるな…」

そう言いながら顔を赤くしてTVから目をそらしている。

友知はそんなコーチを見ながら笑って言った。

「でも、これ面白いよ?恋人を亡くした男が悲しみにくれているところに恋人が死ぬ前からその男が好きだった人が告白して結ばれるっていう…」

「…ドロドロした世界っスね。おー怖。」

香矢が呆れて言った。


次の日、二人はコーチの言いつけで買い物に出ていた。

「ねーねー香矢ぁ?」

友知が香矢に問いかけた。

「香矢が恋愛嫌いなのは…」

香矢はうっとうしそうに話を遮って言った。

「別に嫌いってわけじゃ…」

構わず、友知は続けて言った。

「昔、大失恋して恋愛恐怖症になったとアタシは推理するのですが?」

香矢はチラリと友知を見てから言った。

「別に大失恋とか…」

友知はニヤニヤしながら言った。

「聞きたいなぁー。聞かせろよぉー。」

香矢はそんな友知を無視して思い出に浸っていた。


昔、中学生の頃に通学途中に一目惚れした近くの高校の先輩。

色々調べたっけ。

家とか好きな物とか。

高校も先輩と同じところにした。

でも、自分が高校に入学してからすぐに先輩に彼女ができた。

同級生の子で新学期になって告白して成就したらしい。

それだけの話。

恋愛にもなっていない。

それだけの話。


(そう、それだけの話っスよ…)

友知と香矢の前で女性が倒れた。

驚いて駆け寄る二人。

香矢は女性を起こしながら言う。

「大丈夫っスか?」

その顔には見覚えがあった。

それは先輩に出来た彼女。

忘れもしない幸せそうなあの笑顔…

「…友知、そこの薬局で気つけ薬かなんか買ってきて。」

香矢が友知に言った。

友知は薬局に向けて走っていった。

「あの…どこかでお会いしましたっけ?」

あまりに自分の顔をジロジロ見るので女性は香矢に聞いてきた。

「…いえ。」

香矢は否定した。

自分の顔を知るわけもない。

当り前だ。

「すみません、少し気分が悪くなっただけです。どうもありがとう。」

そう言って女性は立ちあがり去っていった。

そのうなじには蜂のトゲ?みたいな物が刺さっていたのに香矢は気付いたが、引きとめなかった。

「おーい、よく分かんないから正露丸買ってきたよぉー。」

友知が戻ってきて言った。

しかし、女性がいなくなっているのに気付いて驚いて友知は言った。

「あれ、患者はどこじゃ?この正露丸どうしよ?」

「今日の晩御飯にでもすれば良いっスよ…」

香矢は冷たく言い放った。


数日後、香矢はまだボーっとしていた。

「おーい香矢!おーいってば!こら、ペチャパイ!!」

友知がいくら話しかけても適当に相槌をうつだけであった。

「ちぇっ、TVでも見よっ!」

友知はそういってTVをつけた。

TVをつけるとニュースが写った。

「次のニュースです。人間が突然爆発するという事件が立て続けに起こっています。この爆発する人間には共通点があり首の後ろのうなじに蜂の針のようなものが刺さっていると…」

香矢はニュースキャスターの言葉にTVの方を向いた。

次に病院が写った。

病院の周りには人がたくさん集まっていた。

リポーターが解説する。

「いつ爆発するか分からないため、患者の関係者全員が面会謝絶という事態に陥っております。家族は皆、病院側に抗議をし…」

その家族の集団の中に香矢が忘れもしない顔があった。

自分が好きだった先輩の顔が…


その夜、香矢は布団の中で考えていた。

(多分、友知は魔女の居所を調べて動くだろう…動けば彼女は助かる…それでいいじゃないか?)

しかし、眠れない。

(いいじゃないか。いいじゃないか…いいじゃないか?本当にそう?)

昨日の恋愛ドラマを思い出した。

恋人を亡くした男にその恋人が死ぬ前から好きだった女が告白をし結ばれる話を。

「あー、もう!」

香矢は叫んで起き上がった。


「どうしたの?こんな夜中に。」

夜中に自分をたずねてきた香矢に友知はそう聞いた。

香矢は話した。

自分の失恋話を。

そして恋敵の運命を。

「…それでどうしたいの?」

友知は香矢に聞いた。

香矢は考えた。

自分はどうしたいのだろうか?

「…魔女をほうっておけとでも言うつもり?自分の恋愛成就のために。」

友知が再び聞いた。

香矢は考えた。

自分は何故、わざわざここにきて友知に話したのだろうか?

「…そうかもしれないっスね。でなければこんな話をする意味なんてないっス。…あちきは最低っスね。」

そう白状する香矢に友知は言った。

「香矢は間違っていないと思うよ。」

「…友知?」

「だって好きな人を自分の物にしたいって思うのは人間なら当然の感情じゃないの?それがどんな悪い方法だとしても。」

香矢は何も言えなかった。

続けて友知が言う。

「でも、止めないよね?アタシは魔女を倒すよ。」

香矢はコクリと頷いた。

その反応にニコリと友知は笑う。

そして香矢は言った。

「何しにここにきたか今、分かったスよ。」

「んー?」

「誰かに聞いてほしかった…ただそれだけの事だったんスよ。」

「おう、何でもアタシに話しなさいよ!友達でしょ!!」


「バチバチ!」

ミツバチの姿をした魔女が自分の針を撫でていた。

「バチバチ!ニンゲンどもめ!ワタシのミツバチ魔法ハリバクダンでギシンアンキにオチイるがイい!」

その時、フルートの音色が鳴り響く。

友知がどこからともなく現れた。

驚いてミツバチ魔女が言った。

「バチバチ!聖女!どうしてここが!!」

友知は指をチッチッチッと振り言った。

「聖女の辞書には不可能の文字はないの。」

「バチバチ!しかし、ワタシには女医サマからイタダいた…」

「また、あの変な歌謡曲?こっちも何も対策たてずにきてるわけないでしょ!」

そう言うと懐から正露丸を取り出した。

「バチバチ!?」

蓋を開けてサバーと飲み込んだ。

「うえっぷ。」

そして胸の十字架を握りしめて叫んだ。

「ドレスアップ!ドラゴンヴァルキリャー!!」

そう叫ぶと胸の二つの十字架を引き千切った、

両手の十字架は柄の宝石が青と緑のハーフの入った剣になり

服は青と緑のチェックのミニスカートになり

胸は爆乳になり

そんな姿に

なった。

「聖女!ドラゴンヴァルキリー!!ダブルドレス!!!」

変身を終えるとそう叫んだ。

ミツバチ魔女は焦りながら言った。

「バチバチ!しまった!ナニをするのかとミイってたらオンガクをかけるのをワスレていた!!」

友知は剣を構えて言った。

「だからあんたは二流の魔女なんですわ…さぁ、水の力で強化されたワタクシの植物の力!とくと味わいませ!!」

剣をクロスさせると袖が植物に変化し伸びていった。

いつも以上に太い植物がミツバチ魔女を捕らえ締め潰していく。

「バチバチ!モウしワケありません!女医サマぁ!!」

ミツバチ魔女は爆散した。

ミツバチ魔女を倒した後、友知は呟いた。

「人の命を弄ぶ愚か者…少しは弄ばれた人達の心を知りなさい…」

友知は変身を解いた。


数日後、TVでは病院を退院して家族と抱き合っている患者の姿が写っていた。

その中には香矢の先輩の姿もあった。

「もし…」

友知が香矢に聞く。

「もし、アタシがミツバチ魔女を倒すのが間に合わなくって、この人が死んでいたら香矢はどうしてた。」

香矢はその問いに対してこう答えた。

「分からないっスね…あのドラマのように告白してたかもしれないッスし、勇気が出せなくて何も言えなかったかもしれないスし…」

友知はそんな香矢を見ていじわるそうに笑いながら言った。

「じゃあさ、もし告白出来たとしたら何て言うのか聞かせてよ!アタシを先輩だと思ってさ!」

「!んぐぎくっ…」

そんな香矢の様子を見ながら友知は本当に嬉しそうに笑うのであった。



「スベては!」

「女医サマの!」

「ために!」


ドラゴンヴァルキリーにとって最大の魔女が現れた。

友知の前に現れたのは…!?


次回  第二十三話 「友知、最大のピンチ!!帰ってきた志穂」


友知は負けない、志穂の想いがある限り…


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