第十六話 さらば志穂!決着の時
友知は写真を眺めていた。
自分と母親と志穂の3人が写った写真を。
それはデジカメを初めて買った日に撮った写真。
「家族の写真に一緒に写るわけには…」
そう言ってしぶる志穂に友知は言った。
「何言ってんのよ!ほら、早く撮ろう!!」
お尻をペチッと叩いて無理やり写らせた写真。
「ムササビ!ドラゴンヴァルキリーサマ!!」
ムササビ魔女に突然話しかけられ、写真をしまうと友知はムササビ魔女の方を向いて聞いた。
「…うるさいわねぇー。何の用よ?」
「ムササビ!あのおカタがもっとツヨくしてやるからモドってこいと…」
友知はムササビ魔女を睨みつけて言った。
「何それ?アタシが聖女に負けてるとでも?」
「ムササビ!いえ、ワタシはそのようには…」
「いいわ。」
友知は立ちあがって言った。
「聖女を殺してから再改造を受けるわ…そうだ!聖女の腕をもいで取り付けてもらいましょうか!!これは名案!!」
そう言って友知は深呼吸をした。
「罰ゲーム…忘れてないよね、聖女さん?」
同じ頃、志穂も写真を見ていた。
友知と同じ写真を。
鳥羽兎の自分の部屋から出て、店の中に出るとコーチ、香矢、マリ、ユリ、ゴローがみんないた。
コーチが言った。
「ねっ、行くのか田合剣…」
志穂はコーチにペコリとお辞儀をし言った。
「お世話になりましたコーチ。」
香矢は泣きじゃくりながら志穂に話しかけてきた。
「志穂さん…絶対戻ってきてくださいっスよ!!」
志穂は香矢の手を握りしめて言った。
「香矢さん、帰ってきたら少しは女の子らしくしてくださいね。」
マリは涙をこらえながら言った。
「あなたには命を助けられたのに…何もできないなんて…」
志穂は笑顔で首を振り、
「いいえ、助けられてきたのは私の方ですよ。」
ユリも目に涙をためながら言った。
「どうして…こんな親友同士で争うような事を…」
志穂はマリの次にユリの手を握りながら言った。
「親友だからこそ、私が助けたいのですよ。ユリさんにも分かりますよね?」
最後にゴローが言った。
「志穂ちゃん。友知がこんなことになってしまって何てお詫びを言えば良いのか…」
志穂は口に手を当てて言った。
「悪いのはゴローさんじゃないですよ。だから謝らないでください。」
店を出るとマユがすり寄ってきた。
志穂はマユの頭を撫でながら言った。
「そういえばマユさんにお礼を言ってなかったですね…助けてくれてありがとう!」
そして鳥羽兎を後にしようと立ち去ろうとして、振りかえり香矢の元に行った。
「香矢さん、これを預かってもらえますか?」
「!そんなのいやっスよ!!形見を渡すみたいな…」
志穂はニコリと笑い言った。
「大事なものだからなくしたくないだけですよ。ちゃんと返してもらいますよ?」
そして胸の十字架を引き千切り、赤い戦う姿になって飛んで行った。
「そろそろ最後のゲームを始めましょう?」
そういう手紙が来て指定されたその日であった。
指定された場所は富士の樹海であった。
恐らく、邪魔が入らない場所にしたかったのだろう。
「来たよともちゃん!出てきなさい!!」
志穂が叫ぶとフルートの音色が鳴り響いた。
友知がコツコツと歩いて来てフルートを投げ捨て話し始めた。
「逃げずによく来たね。まぁ、当り前か。この胸にあんたの父親の脳があるんだからね!」
自分の胸をポンと叩きながら話を続ける。
「見たい?最後のお別れに。いやーん、聖女さんのエッチぃー。」
友知の言葉を返さずに志穂は剣を構えて言った。
「…早く戦う姿になりなさい。」
「あっはははっは!そんなに早く殺し合いがしたいわけぇー?まぁ、もう少しお話しましょうよぉー。最後なんだし。」
「もう、話が通じないのは分かっているわ。だから戦う!戦って全てを取り戻す!!」
「ふぅん。ずるいんだな。アタシはもう取り戻せないのに。神様は不公平。」
「今更、そんな言葉に惑わされると思っているの!?」
その言葉が戦いの合図であったかのように友知は青いドラゴンヴァルキリーに変身して言った。
「じゃんけんで言えばグーとパーね!アンタがグーでアタシがパー!!…パー?やっぱ訂正、アンタがパー!!!」
剣先から水を放出し志穂にぶつけようとする。
ギリギリで志穂は避ける。
友知が言った。
「あっはははっは!やっぱアンタがパー!何で最初から変身してくるわけ?弱点ついてくださいって言ってるようなもんじゃん!!」
「読みが甘いよ。」
志穂が素早く赤から緑色の姿に変身した。
「へー、つまり青くなるのを誘ってたわけ?少しは考えてるじゃん!えらいえらい。」
友知は楽しそうに青から赤に変身した。
「ほーらほら、火気厳禁。」
志穂は袖からの植物を出すのを止めて黄色い姿に変身した。
「また、電力勝負?あんた前に負けたの忘れたの?」
しかし、志穂はカミナリを友知に向けてではなく自分に向けて放った。
「あーそんな技もあったね。相手に利用されるぐらいならってかぁー?」
友知も黄色い姿に変わり自分に電撃を放った。
「充電完了ってね。」
その瞬間に志穂が切りかかってきた。
「うぉ!危ね!?」
寸前で受け止める友知。
「チャンバラかね?言ったでしょ、チャンバラはいつもアタシの勝ちだったって!」
キィンキィンと剣を切り結びながら友知は余裕の様子だ。
志穂は力を振り絞りながら言った。
「いつもアンタが勝っていたわけじゃないでしょ!!」
そういうと友知の胴に剣が入り、友知は後ずさった。
友知はそれでも余裕の表情を崩さずに言った。
「おしい!皮一枚!!でも、いいのかね?アタシの体を下手に切り裂くとファザーの脳はザバーですよん?」
志穂は紫の姿に変身をし腐食のガスを剣先から放出した。
「おぉ怖い怖い。そのガスはアタシ達の中で最強の攻撃力を持っているからね。」
そう言いながら青い姿に変身する友知。
「そしてこの水はアタシ達のなかで最大の防御方法。さて問題です。最強の盾と矛。勝つのはどちらでしょうか?」
友知が出した水が彼女の体を覆い、腐食のガスを防ぐ。
「答え。盾。」
しかし防ぎきれなかったのか、彼女の右足が少しボロボロであった。
志穂は緑色の姿に変身をし、空に向かって飛んで行った。
「空中戦?面白そう!!」
友知は赤い姿に変身して志穂を追いかけて行った。
空を二つの色が舞う。
赤、青、黄、緑、紫、
次々に変化しながら二つの色はぶつかり合う。
やがて片方の色が赤に変化したところで青に変化した方に富士山の山頂に向けて叩き落とされた。
富士の火口付近に不時着したのは…
志穂だった。
羽根を斬られ、体中は傷だらけであった。
そして青い姿の友知が近くに降りてくる。
「撃墜ぃー。良い格好ね、聖女?いやぁーん、アタシ興奮しちゃうぅー!」
そういう友知の姿もひどかった。
羽根が折れていないとはいえ手足の傷は志穂以上であった。
志穂を見下ろしながら友知は言った。
「ところでさ、さっきから青い姿に変わらなくなったのなんで?もしかして気づいちゃいけない事にアタシ気づいちゃったのかなぁー?」
志穂は剣を杖代わりにして立ちあがり言った。
「分かっていると思うけど、さっきの空中での切り合いで青くなる力がなくなったの。そういう装置?そんなのが傷ついたみたいね。」
「あっらぁー、お気の毒に!よりにもよって防御の要を失うとはね!それでどうするの?見た感じ紫に変わる力も失ったみたいだけど?この後、腐食攻撃しちゃうけどどうやって防ぐつもり?」
そう言って友知は紫の姿に変身した。
それに対して志穂は赤い姿に変わった。
友知は不愉快そうな顔をして言った。
「何のつもり?頭の装置まで壊れましたかぁー?」
志穂は剣を天高く掲げて言った。
「私が何も考えずにここに落とされたと思っているの?」
「はい?」
「私の後ろには富士山が…今は眠っているけど大地が生んだ大きな炎があるのよ!」
途端に富士山の火口から炎が噴き出し志穂の剣先に集まっていく。
友知はそれをじっと見つめながら言った。
「へーよくそんな能力知っていたね。」
「思いつき。」
「…嫌いじゃないよ、そういうの。」
「これだけの炎の力、いくらドラゴンヴァルキリーの水の盾でも防ぎきれないわよ?」
友知は剣を構えながら答えた。
「だから?」
「…」
「だから、降参しろとか言うんじゃねぇだろうな!!防いでも無駄?はっ、だったら守るより攻めろってね!!ちょうどいい、今はドラゴンヴァルキリーで最も攻撃力の高い姿だ!あんたの炎とアタシの腐食ガス。どっちが先に体を貫くか早撃ち勝負だ!!」
お互いに最後の攻撃を放った。
早撃ち勝負は…わずかに友知が早かった。
志穂が剣を振り下ろす直前に志穂の目前までガスは来ていた。
「くっ…!!!」
そのまま志穂の体を…覆わなかった。
左にそれてその後ろの
「ムササビ!」
志穂の後ろから狙っていたムササビ魔女の体を腐らせた。
「ざまぁみろ…2度もアタシを侮辱しようとしやがって…」
そして炎が友知を包み込む。
炎が消えても友知は燃え尽きたりしなかった。
しかし、変身は解けて地面に倒れた。
「ともちゃん…!」
志穂が友知のところに駆け寄って行く。
友知は志穂に抱きかかえられながら言った。
「どうだい…アタシの方が早かったろ…だからゲームはアタシの勝ちぃー。」
「…」
「何てね。あんたの勝ちだよ聖女。でも、悪いけどあんたとの罰ゲームは守れそうにないね…」
「ともちゃん、しかりしてよ!!」
「でも、あんたのお父さんはまだ間に合いそう。持って行きな。アタシが死んだ後にでも。」
「いやよ!いやいや!!ともちゃん死なないで!!」
「あっはははっは!最後まであんたはわがままだなぁー。そうだ、これ持っといてよ。」
ポケットをゴソゴソと探って取り出したのは写真だった。
志穂が香矢に預けたのと同じ写真。
友知と友知の母と志穂が写った写真。
「!ともちゃんこれ…」
「最後に恨みごとの一つでも聞いてくれるかなぁ?」
志穂は黙って次の言葉を待った。
友知は目を閉じて言った。
「ごめんね、しほちゃん。」
それが魔女ドラゴンヴァルキリーの最後の最後の言葉であった。
第Ⅱ部完
富士山での決戦から半年…
志穂はみんなの前から姿を消していた。
そんな中、ついにウィッチが本格的に行動を始める…!
その時、志穂は!?
そして新たな戦士が現れる!!
「そうね、志穂がⅠだとするのなら…アタシは聖女・ドラゴンヴァルキリーⅡ!!」
次回、聖女ドラゴンヴァルキリー
第Ⅲ部ーーー聖女・ドラゴンヴァルキリーⅡ編ーーー
第十七話 新しき聖女、新しき力
見よ、聖女の戦いを!