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聖女ドラゴンヴァルキリー  作者: BALU-R
第Ⅱ部   魔女・ドラゴンヴァルキリー編
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第十五話 感情のその先に

「今回は相手が悪すぎなのかもしれないっスね…」

相変わらず、店の窓から空を見上げている志穂を見ながら香矢が呟いた。

あの、お父さんを助けに行くと行った日…

志穂は友知に無残にやられた姿で鳥羽兎の扉の前に投げ捨てられた。

店の中から飛び出してきたコーチ、香矢、マリ、ユリの方も見ずに志穂に向かって友知は言った。

「強くなりなさい…せめてアタシを楽しませるぐらいにね!!その時まであんたの父親は殺さずに大切にとっておくから。」

そう言って持っていた志穂の左手を投げつけた。

志穂の左手はすぐにくっついたが…

「心の傷の方が大きいみたいだねっ…」

コーチが頭をかかえる。

マリも頭を抱えながら言った。

「それにしても、リーダーの脳を奪われるなんて…」

3人とも事情は知っていた。

志穂が自ら話したのだ。

いつもなら巻き込みたくないと話したがらないのに。

香矢が言った。

「そんだけ落ち込んでるって事っスか…」

香矢も落ち込んでいるみたいだった。

コーチが志穂に近くに行き、言った。

「ねっ、田合剣!」

「あっ、コーチ。」

「ねっ、お前がそんな事でどうする?今もユリちゃんが魔女の事を調べているっていうのに…」

「でも、私じゃともちゃんに勝つ事が…」

「ねっ、それがどうした。」

コーチは冷たく言い放つ。

「勝てないのなら何故、勝てないのか考えなさい。ねっ、次は勝てるように。」

(勝てない理由…)

身体能力は互角のように感じた。

だとすると精神的な面で劣っているように思える。

志穂は呟いた。

「脳改造…」

「何?何?」

マリも話に入ってくる。

友知は脳改造のおかげで自由に戦う姿を選べる。

一方、志穂は感情がそのまま戦う姿に影響を与えるため自由に変身ができない。

そこに差が出ているようにも思える。

コーチが言った。

「ねっ、あるじゃないか理由が。」

そこに香矢が割り込んで言った。

「ってコーチ…そりゃ無茶っスよ。脳改造を受けろとでも言うんスか?」

「その必要はないね。訓練すれば感情のコントロールも可能だ。」

マリも言う。

「そんなの口で言うのは簡単ですけど…」

「やります。」

志穂は言った。

「ともちゃんに勝てる可能性が少しでもあるのなら…教えてください、コーチ!感情をコントロールする方法を!!」


「喝っ!」

「痛っ!」

志穂とコーチと香矢の3人は山奥のお寺に来ていた。

「ててて…何であちきまで…もっと言えばマリさんとユリさんはスルーっスか?」

愚痴る香矢にコーチが言った。

「お前は煩悩が多すぎるからねっ。ついでに鍛えておけ。」

とまたバシっと叩く。

「痛っ!それにしても志穂さん、やる意味があったんスか?さっきから1度も叩かれてないっスよ…最初から悟りをひらいてたんじゃ?」

「ねっ、やる意味はあるさ。瞑想してるだけでも自分の心の内が見えてくるもんさ。」

志穂には二人の声は耳に入ってこなかった。

こんな体に改造され、怒りに燃えた時…赤い姿になった。

ともちゃんのおばさんに殺してくれとせがまれ、悲しい思いをした時…青い姿になった。

香矢の勇気をみて戦う決意をした時…黄色い姿になった。

オットセイ達の海を慕う姿をみて優しい思いになった時…緑色の姿になった。

乙芽を差別した人達を憎く思った時…紫色の姿になった。

5つの感情…

怒り、悲しみ、決意、優しさ、憎悪。

これを変身する時に思い出せば…

志穂は静かに目を開けた。

その時、山寺に誰かが来た。

ユリだった。

「やっと着いた…魔女のアジトを一つ見つけたんですけど…」

香矢は叩かれた肩をさすりながら言った。

「でも、まだ訓練中っスよ…」

「いいえ。」

志穂が微笑んで言った。

「もう大丈夫です。」


「ヒーマー!」

そのアジトにはヒマワリの姿をした魔女がいた。

「ヒーマー!ハヤくニンゲンをシュクセイしたいよ!メイレイはまだか?」

「残念だけどその日はもうこないわよ。」

いつのまにか志穂がヒマワリ魔女の後ろに立っていた。

「ヒーマー!おマエはニンゲンガワのドラゴンヴァルキリー!チョウドイイ、おマエをコロしてナをアげてやる!!」

志穂は胸の十字架を引き千切り、赤い戦う姿に変身した。

「ヒーマー!?アツいよ!」

ヒマワリ魔女は志穂の炎で簡単に燃え尽きるのであった。

そこでフルートの音色が鳴り響いた。

友知であった。

「運のいいですこと。そいつの弱点の姿になるなんて…そいつ結構強かったんだよ?」

一呼吸置いて、また話し始めた。

「てっきり悲しみで青くなると思ったけど…それは何?アタシに対して怒ってるとか言いたいわけ?聖女のくせに生意気だぞぉー!」

そう言って胸の十字架を引き千切り青い戦う姿になった。

「代わりにアタシが青くなったよぉー!なんてね。炎は水をかければ消えるのよ。これぞ必殺、後出しじゃんけん!!」

そう言いながら楽しそうに水の渦を剣先から作り出していると、志穂が変身を解いた。

友知が意外そうな顔をしながら聞いた。

「あんた何やってるの?やけになった?ヤケ酒はハタチになってからにしなさい。」

志穂はふっと笑い言った。

「私の後出しじゃんけん…見せてあげる。」

再び変身した。

今度は緑色の姿に。

今度は驚いて友知は言った。

「どういうことよ!あんたも脳改造を受けたわけ!?」

「必要ないよ、そんなの…人間の心はそんなに弱くないよ!!」

しかし、そんな志穂を嬉しそうに見ながら友知は言った。

「あっはははっは!嬉しいよ、聖女!私を楽しませるためにそこまでしてくれるとは!!ご褒美をあげましょう!!」

そう言って変身を解除しようとしたが志穂の袖から伸びてきた植物が襲ってきた。

慌てて、剣で応戦する友知。

「こらっ、卑怯だぞ!」

「無理だよ、ともちゃん…再変身する隙を与えた時点でもう終わっているんだよ。」

「だってだって…アンタが再変身するなんて思わなかったから…触るな!エッチ!スケベ!変態!!」

必死に植物を払おうとしていたが無理だった。

やがて植物に巻きつかれ動けなくなる。

志穂は動けなくなった友知に近づき言った。

「終わりだね、ともちゃん。」

しかし、友知は睨み返して言う。

「終わり…?あっそう、今までありがとうねバイバイ。…殺しなさいよ、アタシの母さんを殺したみたいに!!」

その言葉に志穂はもう、うろたえなかった。

「そんなつもりはないよ…私はただお父さんを…ともちゃんを取り戻したかっただけ…」

「フン、取り戻せて良かったね。これからは聖女の肉奴隷として生きていきます。楽しかった日々よサラバ!」

「ムササビ!!」

その時、白いムササビの姿をした魔女が突然飛びかかってきて、強酸を志穂に向かって吐き出した。

意表を突かれた志穂は思わず、友知を縛っていた植物の力を緩めてしまう。

緩められた途端に友知は植物から抜け出す。

「ムササビ!ダイジョウブですか、ドラゴンヴァルキリーサマ!!」

友知は憎らしそうにムササビ魔女を睨んだが言った。

「ふん、一応礼だけは言っておいてあげる。バーカ。」

それから志穂の方を向き言った。

「今日はこれくらいにしといてやろう…。なんてね。」

そう言ってムササビ魔女と共に姿を消した。

後には志穂だけが残る。

「今回は運が良かっただけ…次はうまくいくかどうか…」

そして変身を解き呟いた。

「決着をつける時がきたのかもしれない。」



失くしたものを取り戻そうとする志穂。

失くしたものをあきらめようとする友知。


二人の友情の物語も最後を迎える…


次回、第Ⅱ部完結!!

第十六話  「さらば志穂!決着の時」

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