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聖女ドラゴンヴァルキリー  作者: BALU-R
第Ⅱ部   魔女・ドラゴンヴァルキリー編
14/41

第十四話 父との再会、そして

(ようやく、奴らの尻尾がつかめそうだぞ…)

彼はあるビルの地下に潜入していた。

そこは世間で魔女と呼ばれる者達のアジト…とでも呼ぶべき場所だった。

(この場所を暴いてマスコミにでも持っていけば…今なら魔女の数より普通の人間の方が多いからまだ間に合う。)

彼は魔女対策本部のリーダーであった。

(マリ達の方は大丈夫だろうか?有力な人材を見つけたと言っていたが…)

しかし、このアジトの潜入でいっぱいいっぱいだった彼は返信のメールを送れずにいた。

(ある程度の証拠を掴んだら返信を送らな)

そこまで考えたところで後ろに気配を感じた。

「しま…!?」

遅かった。

サイの姿をした魔女に捕まってしまった。

「サイサイ!シンニュウシャ、ツカまえた!」

ぐったりした彼を引きずりながらサイ魔女は歩いていた。

「サイサイ!ショケイ!どんなショケイ?クルしいショケイ!!」

「待ちな。」

いつのまにか友知が立っていた。

「何か楽しそうな話をしてるな…」

「サイサイ!これはドラゴンヴァルキリーサマ!シンニュシャミつけた!!」

「侵入者?」

友知は捕まった男の顔を見て言った。

「こいつは魔女対策本部のリーダーじゃないか…そういえば魔女のアジトに潜入するとか言ってたっけ?」

「サイサイ!ショケイ!シュクセイ!」

友知は少し考えて言った。

「そういえばこいつは…処刑よりも良い事を思いついたぞ。」

友知はニヤリと笑い呟いた。

「ここらでゲームをもっと盛り上げないとね、聖女さん?」


鳥羽兎には新しい兎…の姿をした店員が二人いた。

マリとユリだ。

値踏みするように二人を見ながら香矢が言った。

「さすがに大人の色香?みたいなものがあるっスね…目の保養?でも、肌をもっと出してくれたほうがもっとこう…」

ユリがクスりと笑い言った。

「田鶴木ちゃんも同じものを着なくちゃいけないのを忘れてない?」

「だー!やっぱやめやめっスよ!こう見えて毛深いんっスから!!ねっ、志穂さん?」

「…何でそこで私にふるんですか…」

自分に話がフられるとは思わなかった志穂が答えた。

「ほら、思い出してっス?あの夜の事を…」

「そんな夜ありません!」

そこで携帯の音が鳴った。

3人がその途端に自分のポケットを探す。

「あっ、そういえば家に忘れてきたんだっけ。」

とユリが言った。

「あっ、そういえばパソコンにつないだまましたっス。」

と香矢が言った。

最後にマリが取り出し言った。

「ごめん、私のだった…!リーダーから連絡だよ!」

全員がマリの携帯を覗き込む。

ユリが驚いて言った。

「何これ…HELPって!?」

しかし、それよりも志穂が驚いたのは

「…この送信者名…田合剣 一志?…!」

マリが志穂の方を振り返って言った。

「うん、リーダーの名前…言ってなかったっけ?」

その名前は志穂がよく知る…

香矢が言った。

「田合剣って志穂さんと同じ名字っスね。珍しい名字だと思ってたんスけど…」

志穂は答えた。

「それはそうですよ。私のお父さんの名前です。」

3人は驚く。

マリが口を開いた。

「…そうだったの。リーダーは私達の心配ばかりをして自分の事は全く話さないから知らなかったわ…」

志穂はため息まじりに言った。

「…そういう人なのですよ。昔から自分の事より他人を優先する人なのですよ…」

「はぁー血っすかねぇ?」

香矢が変な感心をする。

志穂は続けて聞いた。

「マリさん、他には何か書いてありませんか?」

「えっ?何か地図が添付されてるけど…」

それを聞いたユリが肩を震わせて言った。

「それってどう考えても…」

「罠…っスよね?」

香矢も同意する。

しかし、志穂は言った。

「そうかもしれませんが…行くしかないと思います。少しでも手掛かりがあれば…」


志穂は父親が捕まったビルに着いた。

(ここにお父さんが…?)

そう思いつつも信じてはいなかった。

ビルの中に入ったが静まりかえっていた。

(この雰囲気…あの病院に似ている…)

嫌な予感がする。

地下に降りる階段を見つけたので降りて行った。

(お父さん…無事でいて…!)

ビルの地下はとても広かった。

何部屋もあり、開けた部屋の中には見るのもおぞましい手術器具や何かのホルマリン漬けがあちこちに置いてあった。

志穂の中の嫌な予感が膨らみ始める。

(ここは…やっぱり…)

考えているところにフルートの音色が鳴り響く。

振り向くと、廊下の奥から友知が歩いてきた。

フルートを投げ捨てると友知は言った。

「よくここまできたな、聖女…だが、おぬしの冒険はここまでじゃ!」

志穂は胸の十字架を握りしめて言った。

「やっぱり、あんたの仕業だったのね…」

「あっはははっは!分かっててくるとか、聖女さん、勉強はできるけど頭は悪いタイプですかぁー?」

「それは…お父さんがいるから…お父さんは無事なの!?」

「知りたければこいつを倒して行くのじゃ。」

その言葉の後に壁を突き破ってサイ魔女が現れ、志穂を吹き飛ばした。

「サイサイ!シュクセイする!!」

慌てて胸の十字架を引き千切って黄色いドラゴンヴァルキリーに変身した。

それを見ながら嬉しそうに友知が言った。

「あっはははっは!こいつは今までのザコ魔女と違って強いよ?自由に好きな姿に変身できない聖女さんに勝てるかなぁー?」

「サイサイ!」

突撃してくるサイ魔女を志穂は受け止める。

しかし、ジリジリと志穂の方が押されていく。

(こいつ…!力は私の方が負けてるの!?)

「だったら!」

サイ魔女から離れて剣を構える。

電撃をサイ魔女にぶつけた。

しかし、電撃はサイ魔女の体にぶつからず、鼻先の角に集中した。

「なっ!?」

「サイサイ!このツノはヒライシンだ!そしてジュウデンカンリョウ!!」

さっき以上の勢いで突っ込んでくる。

志穂は壁を何枚も破って吹き飛ばされた。

それを見た友知は嬉しそうにピョンピョン跳びはねながら言った。

「力でも駄目!魔法でも駄目!!もう聖女さんには手札がありません!!」

志穂は立ち上がりその言葉を考えていた。

(もう、手札はない…本当にそう?力では負けた。魔法も防がれた。防がれるどころか充電されて相手を強化させてしまった…充電?)

「サイサイ!まだジュウデンはノコってるぞ!とどめだ!!」

再び突進しようと構えたが、その時志穂が再び剣を構え雷雲を呼び出した。

「サイサイ!またジュウデンしてくれるわぁ!」

カミナリが剣先に落ち、電気を帯びたまま自分の体に突き刺した。

「サイ!?」

バチバチとすごい音がし、おさまった後に志穂はふーと安堵の息を吐いてから言った。

「危険な賭けだったけど成功したみたいね…雷の力を操る姿だからあんたみたく充電できるのじゃないかと思ってね…」

「サイサイ!」

再びサイ魔女が突っ込んできた。

しかし、今度は吹っ飛ばされたのはサイ魔女の方だった。

志穂は倒れこむサイ魔女の角を切り落とした。

「サイ!?」

「これでもう充電はできないでしょ?」

再びカミナリを剣先に落としサイ魔女にぶつけた。

「サイサイ!!!」

サイ魔女は消し炭になった。

「…ともちゃんは?」

いつの間にか友知は姿を消していた。

「どこ!?」

志穂は走り出し、まだ開けていない部屋の扉を開けた。

そこには

「…お父さん…嘘でしょ…」

父がいた。

しかし、ホルマリン漬けにされたように水槽の中を漂っており、その頭はまるで中身を持ち去ったかのようにパックリと割れていた。

「何でこんな事を…」

その時、再びフルートの音色が鳴り響いた。

友知が姿を現して言った。

「何かお探しですか、聖女さん?」

友知の白々しい発言に志穂の声も震える。

「あんたが…あんたの仕業なの!?」

ニヤニヤと笑いながら友知は言った。

「別にいいじゃん。あんたはアタシの大事な物を奪った。これでお互い様でしょ?」

「ともちゃん!!」

「お互い様ではないな。まだ、間に合うかもよ?元に戻せば。」

そう言うと、友知は自分の服をビリビリと裂いた。

そこに出てきたのは肌と乳首…はなく、友知の体は透明のガラスの水槽になっており、その中に脳味噌が漂っていた。

志穂はその脳の主が自分の父親のものだとすぐに分かって言った。

「ともちゃん!!何て事を!!」

友知はニヤニヤと邪悪に笑いながら言った。

「そんなに見つめないでよね、エッチぃー」

「返して!今すぐ!!」

志穂は剣を構える。

友知は言った。

「随分と好戦的になったものね…」

「返しなさい!!」

怒る志穂を嬉しそうに見つめながら友知は胸の十字架を引き千切って紫の戦う姿に変身した。

そしてあっかんべーしながら言った。

「やなこった。」


「ともちゃんに勝てる可能性が少しでもあるのなら…教えてください、コーチ!感情をコントロールする方法を!!」


「どういうことよ!あんたも脳改造を受けたわけ!?」



次回 第15話 「感情のその先に」


これは二人の友情の物語である。

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