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聖女ドラゴンヴァルキリー  作者: BALU-R
第Ⅱ部   魔女・ドラゴンヴァルキリー編
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第十三話 弱点

志穂は鳥羽兎の店先の掃除をしながら物思いにふけていた。

(ともちゃんを止めるには言葉だけじゃ駄目なのかな…)

靴の先を何かが舐める感じがした。

どこから迷い込んできたのか、柴犬がいた。

人懐っこいので人に飼われているのかもしれない。

志穂は柴犬に話しかけた。

「どうしたのですか?お腹でも空きましたか?」

柴犬は志穂の方を見ながら尻尾を振っている。

その時、店の中から香矢とルリが出てきた。

「志穂さん、掃除終わりましたっスか?」

「あー!どうしたのそれ?可愛い!!」

ルリが柴犬の頭をなでる。

志穂はその光景に微笑んで言った。

「分かりません。お客さんの犬とは違うみたいですし…」

何かを思いついたのか香矢の目がひかり、言った。

「何を隠そう、そいつはあちき愛用のバターけ」

言い終わる前に、ルリの平手が飛んできた。


「そういえば、今日から新しいバイトが来るってね。」

店の中に入ってルリが話し始めた。

ほほを撫でながら香矢が答える。

「あぁ、ひとみさんが辞めたからその代わりっしたっけ?いいなぁー結婚退職!」

志穂がそれに驚き言った。

「えぇ!?ひとみさんって結婚して辞めたのですか!?」

ルリが溜息をつき言った。

「香矢~、分かりにくい冗談言うのやめなって!彼氏が出来て忙しくなったから間違ってはいないかもしれないけど・・」

香矢が目を輝かせながら言った。

「いいな~、ひとみさん。きっと「君の瞳に乾杯」とか言われてるっスよね~。羨ましい話しっスよ…」

「…ねっ羨ましいか、それ?」

そんなバカ話をしているとコーチが帰ってきた。

「ねっ、買い物ついでに新人を連れてきたよ。」

そう言うコーチと一緒に入ってきたのはマリだった。

「マリさん!?」

香矢と志穂が同時に声を出す。

ルリもその声に驚く。

「えっ、二人の知り合い?」

マリはペコリとおじぎをし、言った。

「今日からお世話になります。名前は…」

と自己紹介が終わる前に

「クーン」

と先ほどの犬がマリによってきた。

マリは驚いて言った。

「あれ?マユ!何でお前がここにいるの!?」

マユと呼ばれた犬はマリのズボンを必死に引っ張っている。

志穂が聞く。

「その犬さんと知り合いですか?」

マリはマユと呼ばれた犬の頭を撫でながら言った。

「うん、私とユリが小さい頃に拾った犬でね…ユリが前に住んでいたアパートの大家さんに預けてたはずだったんだけど。何でここにいるんだろう?」

マユは必死にマリを引っ張っている。

「…もしかしてこの子、ユリさんの居場所に案内しようとしているのでは…」

そう言うと、志穂はエプロンを外しながら言った。

「行きましょう。マリさん。」

マリはうなずいた。

二人が出て行った後に香矢が言う。

「あのー本来ならここでマリさんとバイト交代のシフトっスが…」

コーチが香矢の肩をポンと叩き言った。

「ねっ、緊急事態により、このまま香矢のシフトに変更!」

「そ、そんなー!」

香矢がおおげさにリアクションする。

ルリはクスリと笑い言った。

「いいじゃん、家帰っても暇なんだから。」


ここはある町の防空壕。

ユリはこの奥に捕まっていた。

その目の前には彼女の両親の仇…ワニ魔女がいた。

「ニニニ!イマ、おマエのリョウシンにアわせてやるからな!!」

そう言うと、口を大きく開けてユリを飲み込もうとした。

「おあずけ。」

そう言ってワニ魔女を蹴りあげる人物がいた。

友知であった。

「そいつはドラゴンヴァルキリーをおびきよせる大事な囮だよ。食うのはその後。」

ワニ魔女はひるみつつも従った。

どうやら魔女は友知の命令に従っているようだ。

力の差ゆえだろうか。

友知はユリの猿ぐつわを外して言った。

「はーい、元気してる?」

ふざけた事をいう友知を見つめながらユリは言った。

「夜葉寺院ちゃん…もう、私の知っている子ではなくなってしまったのね…」

それに対し友知は小馬鹿にしたように笑い言った。

「そうだね、夜葉寺院 友知はもう死んだんだよ…ここにいるのは復讐だけが生きがいの哀れな道化魔女でございまーす。」

「ニニニ!ダレかキた!!」

ワニ魔女の声に友知は振り向き言った。

「…こっちから教える前に来るとはね。鼻が効く事で。さぁて、今日はどう遊ぼうかな?あっははははっは!」


志穂とマリはマユの案内で防空壕の前にいた。

マリが言った。

「この先にユリが?」

「マリさん、マユさんと一緒に隠れててください。敵が出てきました。」

志穂がそう言うと、防空壕の奥からワニ魔女が出てきた。

ワニ魔女は志穂の姿を確認し言った。

「ニニニ!おマエをコロしたらあのオンナをクっていいってドラゴンヴァルキリーサマはイってくれた!」

志穂は胸の十字架を握りしめた。

「…ともちゃんもいるのね。」

十字架を引き千切り、黄色い姿に変身した。

「ニニニ!ガァー!!」

ワニ魔女は大口を開けて突進してきた。

口をかわし、腹に蹴りを入れる志穂。

ワニ魔女は吹っ飛んでいく。

志穂は叫んだ。

「こんなもので…私を倒せると思っているの!?」

「思ってるわけないじゃん。」

防空壕の中から友知が出てきた。

「やっぱり、ともちゃんだったのね…」

「ニニニ!ドラゴンヴァルキリーサマ!チカラをカしてクダさい!!」

「じゃ・ま」

駆け寄ったワニ魔女を友知は蹴りあげた。

再び吹き飛ばされていくワニ魔女。

志穂の方を見て友知は言った。

「今日は決意の黄色か…ついに本気を出してくれるって事?嬉しいよ、聖女。」

志穂は剣を握りしめながら答えた。

「言葉だけじゃ…ともちゃんは止められないと思ったから!!」

「その通り!体張ってどっからでもかかってこい、つーの!!」

友知も胸の十字架を引き千切り志穂と同じ黄色い姿に変身した。

「さぁてと魔女と聖女の電力、どっちが上か…勝負といこうか!!」

雷雲が現れる。

二人は同時に剣を構える。

カミナリは…片方の剣にしか落ちなかった。

友知の剣にしか。

「あっはははっは!この勝負、アタシの勝ちだね!それじゃあ、痺れちまいな!!」

志穂の体に電撃がぶつけられる。

しばらくバチバチとうるさい音して、それが消えると、志穂は倒れていた

そんな志穂を見て友知が言った。

「あっはははっは!黄色い服で良かったね!他の服なら電気に耐性なくてっ即死だよ!!」

動けない志穂に近づいて行き、友知は言った。

「さてと、どうするかね?」

「ニニニ!さすがはドラゴンヴァルキリー様!!」

元気になったワニ魔女がかけよってくる。

それを不機嫌そうに見つめた友知が言った。

「あん?まだいたのお前?」

「ニニニ!?」

「アタシはねぇ。弱い奴が嫌いなの!!」

一瞬でワニ魔女を真っ二つにした。

「…ったく、何かの役に立つかと思ったらとんだ役立たずだよ。」

ふーと深呼吸をしてから再び志穂を見つめて言った。

「あんたにも幻滅ぅ―。ちょっと早いけど、ここでエンディングにする?」

志穂は電撃の痺れで答えられなかった。

「無視すんなこら。」

友知は志穂の頭をカンと蹴った。

その時けたたましく

「ワンワンワン!」

という犬の鳴き声が鳴り響いた。

「駄目!マユ!!」

マリの叫び声も聞こえる。

志穂は目を開いた。

おぼろげな目に友知に吠えるマユの姿が映る。

(駄目!逃げて!!)

友知は自分に吠え続ける犬をジーとしばらく見つめた後に、変身を解いた。

「…次は楽しませてよね聖女さん?じゃあねー。」

友知はそう言って去って行った。

「志穂ちゃん!大丈夫!?」

マリがかけよってきたが電気を発している志穂には近寄れなかった。

(何で助かったんだろう?)

マユはまだ吠えている。

ふと昔の事を思い出す。

友知は小さい頃に犬にお尻を噛まれた事があった。(もっとも自分でちょっかい出した結果で自業自得なのだが。)

それ以来、どんな小型犬にも近寄れなくなるぐらい犬が苦手になったのであった。

(フフフ、まさかね。)

マリは少し電気が抜けた志穂の顔を覗き込み言った。

「あれ志穂ちゃん、何か笑ってない?」


「ここらでゲームをもっと盛り上げないとね、聖女さん?」


「返して!今すぐ!!」


次回 第十四話  父との再会


これは二人の友情の物語である。

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