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聖女ドラゴンヴァルキリー  作者: BALU-R
第Ⅱ部   魔女・ドラゴンヴァルキリー編
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第十一話 聖女と魔女

「まだ、志穂さんは帰ってきてないっスか?」

香矢がコーチに聞いた。

友知がさらわれた事件から3日程過ぎたが、まだ志穂は鳥羽兎に帰っていなかった。

最も、コーチも香矢も事情を知らないわけだが。

コーチが溜息をついて言った。

「ねっ、ポストに「探し物をしています」という手紙が入っていたから、こないだみたいな失踪とは違うとは思うけど。」

香矢は苦笑いをして言った。

「水臭いっスねぇ?何でもかんでも一人で抱え込もうとするんっスから…」

「ねぇ、それが田合剣の欠点であり、良いところでもあるんだが…」

香矢は力なく笑ってから叫んだ。

「全然っ、いいところじゃないっスよ!!もう少しあちきを頼ってくれてもいいのにっス…」

その時、店のドアが開いて一人の女性が入ってきた。

反射的に香矢が挨拶をする。

「あっ、いらっしゃいませぃー。」

その女性はマリだった。

予想外の店だったためにオドオドしながら言った。

「こっ、こんなところをドラゴンヴァルキリーは住んでいるの?」

香矢は女性をじっーと見つめ言った。

「その容姿…その匂い…そしてその発言…もしやお姉さんはマリさんっスかね?」

マリはビクっとして言った。

「に、匂い?」

コーチがフォローをする。

「ねっ、この娘はちょっとあれなんで気にしないでください。」

「ちょちょちょ、あれって何スか?聞き捨てならぬっスよ!」

マリは少しクスリと笑い言った。

「志穂さんは良い家族に恵まれたみたいね。」

香矢は逆向きに椅子に座り言った。

「やっぱりお姉さんは噂のマリさんだったんスね。」

「どんな噂か気になるけど…ここに来れば散り散りになった仲間と会えるかな?と思って。」

コーチがコーヒーを勧めてきたが断って言った。

「あっ、私苦いの駄目なんで。」

「見た目に反して子供なんっスね~。あちきも乳牛の方が好きっスけど。」

代わりに出されたカフェオレをありがとうございますと飲みながらマリは話し始めた。

「メールで連絡するより直接来た方が早いと思ってきたけど…他のメンバーはきた?」

「あ~、ゴローっつぅおっさんは来ましたね~志穂さんの話だと後メンバーはユリさんって美女とともちゃんってエンジェルでしたっけ?まだ、二人は来てないっすスねぇ。」

「そう…」

マリはカフェオレを飲み干していた。

どうやら甘いものは好きなのかもしれない。

香矢はマリに疑問を投げかけた。

「でも、マリさんもここに来るのに時間がかかったっスね?」

「ん?すぐに行こうと思ったんだけどね。ここに来る途中で魔女らしき姿を見かけたの。すぐに見失ったけど、さっきまで行方を探していてね。」

「その話、聞かせてもらえませんか?」

いつの間にか志穂が店に来ていた。

コーチが心配そうに声をかける。

「田合剣!大丈夫なのか?」

「えぇ、コーチ。それよりもマリさん、その魔女を見かけた場所を教えていただけませんか?」

「え?えぇ、地図ありますか?」

地図を広げ場所を指差した。

「確かこの辺だと思ったけど…」

それは以前に志穂が黒猫と逃げ出した病院だった。

(何で思いつかなかったんだろう?いや、忌わしい記憶を忘れたかっただけかも…)

志穂は鳥羽兎を飛び出していこうとした。

「志穂さん!あちきも行きます!!」

香矢が叫んだ。

志穂は香矢の目を見つめながら言った。

「…危ないですよ?」

「あちきはドラゴンヴァルキリーの相棒っスよ?それに危ないなら志穂さんが守ってくれるっスよね?」

(私に守る力なんて…)

そう思ったが志穂は考えと反対の事を言った。

「…分かりました。」

「うし!じゃぁ、バイク回すっスね!!」

そんな二人を見送りつつマリは呟いた。

「あんなに若いのに…私には何もできないなんて…」

「あの子にはそれだけの力があるからねっ。それにあんたにしかできない事があるでしょ?」

「私にしかできない事?」

「あの子の無事を願う事ねっ!」


二人は病院についた。

志穂にとってはトラウマとなった場所だが、そうも言ってはいられない。

香矢が身震いをし言った。

「うへー、不気味な病院っスね!電気もつけずに真っ暗じゃないっスか!!」

香矢は知らない。

ここで志穂が改造された事を。

改造された。

嫌な言葉が脳裏を通る。

(何を考えているの…ここで目撃されたのは魔女であって、ともちゃんではないんだから…)

「志穂さん?」

香矢が首をかしげている。

志穂は言った。

「…すみません、考え事をしていました。入りましょうか?」


「うひー、中はお化け屋敷ですじゃ~。」

香矢が騒ぎながらピッタリと志穂に体を寄せる。

「つーか、この病院外から見ても変でしたッスけど、中も変!!何で誰もいないっスか!!定休日?」

確かに大きな病院にも関わらず医者も看護師も患者も一人もいなかった。

香矢が力を込めてくる。

「いえ、別に構いませんよ。」

「は?志穂さん誰と話してるっスか?」

「え?今ソーリーって言うからすり寄ってくるのを謝ったのかと…」

「今更、志穂さんの体にすり寄るのに断りいれないっスよ!!」

「じゃあ、今のは!?」

見ると廊下の曲がり角に影があった。

「ソーリーソーリー!シンニュウシャハッケン!!シュクセイします!!」

そう言いながら蠍の姿をした魔女が現れた。

「ででで!?」

香矢が腰を抜かしそうになる。

志穂が叫んだ。

「香矢さん、危ないですから少し離れていてください!!」

志穂は右手で胸の十字架を引き千切り、悲しみの青い姿に変身した。

「ソーリーソーリー!?ウワサのドラゴンヴァルキリーか!?」

その言葉に香矢が感心して言った。

「魔女の間では噂になってるんスね~。」

「香矢さん、馬鹿な事言っていないで隠れていてください!!」

香矢は近くの病室の中に逃げ込んだ。

「この距離ならドラゴンヴァルキリーの戦う邪魔にはならないっスよねぇ~。」

「クスクス」

びくっとして後ろを向くと誰かがベッドの上に座っていた。

香矢は叫んだ。

「誰っスか!?」


「ソーリーソーリー!ワタシのハリをくらえ!!」

蠍魔女の尻尾の針が志穂に向かってきた。

しかし、志穂は水のバリアを出し受け止めた。

「ソーリソーリー!?ナニだこのミズは!ヌけないだと…」

「水はね、物理的な攻撃は吸収するし水圧次第では動きを封じる事もできるの。」

剣で蠍魔女の尻尾を切った。

ダメージに悶え転ぶ蠍魔女。

「ソーリーソーリー!」

その瞬間に志穂の水が蠍魔女の体を覆う。

「…少し話してもらいましょうか。あなたが知っている事を。」

「何か謝っても許しませんよって画みたいっスね。」

香矢が安全になったのを見届け病室から出てきて言った。

「ソーリーソーリー!コロせコロせ!!」

「意外とサムライっスね…その口癖、止めた方がいいと思うっスよ?」

香矢が好き放題に言う。

志穂が剣先を喉元につけて言った。

「話す気はないってわけね…もう人を殺すのを止めるって言うなら見逃してもいいけど?」

「ソーリーソーリー!ニンゲンはスベてシュクセイする!!」

志穂は剣を振り上げたが、すぐに降ろした。

それを見て香矢はホッとして言った。

「良かったっス。志穂さんが怖い人になっちゃったのかと思いましたよ~。」

「…ただ、気分がのらないだけです。」

「またまた、優しいんだからもう~。」

(とはいえ、こいつどうしよう?)

変身を解くと動きを封じている水も消えてしまう。

ここはマリさんに相談してみるか。

香矢ははしゃいでいる。

「そうそ、この施設に女の子がいたんスよ!捕まっていたんスかね?」

志穂は香矢の方を向き聞いた。

「それって…どんな子ですか?」

「志穂さんとは違うタイプの美少女したね。髪が長くて茶髪で。年齢は同い年ぐらいだと思うんスけど…あっ、まだそこの病室にいると思うっスから呼んできましょうか?」

コツコツと病室から足音が聞こえてくる。

「あっ、出てくるみたいっスね?」

扉から出てきた瞬間に影がピョンと

「跳んだ!?」

香矢の驚きの声を背に倒れこんだ蠍魔女の頭の近くに着地した。

手術着を着た少女はゆっくりとこちらを向く。

手術着を着た少女は、

「…ともちゃん。」

「ええええっえっえっ?」

愕然とする志穂と混乱する香矢。

しかし、以前と印象が違う。

それは格好だけではない。

ボサボサだった髪はきれいに整えられ、その顔は自信に満ちあふれていた。

「クスクスクス…」

友知は小さく笑いだした、と思ったら

「あっははははっはー!」

その笑い声は誰もいない病院中にこだました。

志穂はその親友の変化に怯えつつも話しかける。

「ともちゃん、ぶ…」

「無事だったのね、とでも言うつもり!?無事なわけないでしょ!!」

その胸には銀色の十字架のネックレスが揺れていた。

「ソーリーソ…」

「やかましい!今、話してんだよ!!」

そう言うと友知は蠍魔女の頭をグシャっと踏みつぶした。

思わず、顔を背ける香矢。

そんな香矢を嬉しそうに見つめながら友知は言った。

「そういえばそっちのお友達に自己紹介をしてなかったね。はじめまして、こんにちは。こういうものです。」

そう言うと胸の十字架を左手で引き千切った。

友知の体が十字架を中心に銀色に輝きだす。

思わず香矢は目を覆った。

そして十字架は柄の中心が赤い宝石の剣に変化し

茶色い髪は銀色に変わり、

服は全身赤いロングスカートのドレスになり、

胸は膨らみ、

背中には黒い小さなコウモリの羽が生え、

お尻には恐竜のような緑色の短めの尻尾が生え、

そんな姿に、

なった。


「ドラゴンヴァルキリー…」

香矢がそう呟いた。


「何シテ遊ぶ?」

「やめて…お願い…」

「…ここまで巻き込んでおいて今更なんだ!!!」


次回、第十二話  「蘇る魔女軍団」

これは二人の友情物語である。

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