孟悟仁と云ふ男
〈冬風に当たつて冷ます怒りかな 涙次〉
【ⅰ】
カンテラ、外殻に籠り、早朝の眠りを貪つてゐた。と、その夢に-「オ久シ振リダナ、かんてらヨ」-「あれ遷ちやん(* 謝遷姫である)。今何処にゐるの?」-「東京ニ來テヲル」-「何で事務所に顔出さないの。水臭い」-「妾ハ方向音痴。然モ東京ノ地理ニハ疎イ。連レガイルノダ。道ニ迷ツテ氣ヲ惡クスルトイカンデノ」-「連れ?」-「孟悟仁ト云フ。妾ノ新シイふぃあんせダ」
* 前シリーズ第93話參照。
【ⅱ】
じろさんにその話をした。じろ「遷ちやんも戀多き女だよねー」−カン「つひ昨日まで* 金尾つて云ふ許婚者がゐたのに」−じ「然もその前後には、カンさん、あんたに、そしてフルに懸想してゐた...。然し今回は亭主関白のようだな」。思い出話に華が咲いたが、傍で聞いてゐたテオは一人、きな臭い臭ひを嗅ぎ取つてゐた。
* 前々シリーズ第90話參照。
【ⅲ】
例しに「中國淸代・浙江省(遷姫の生まれた時代・場處である)・孟悟仁」の検索ワードで、對【魔】専用PC、「PCテオ」に伺ひを立てゝみた。すると−「孟悟仁とは− 中國淸代の道教道士。様々な式神を操る。自らの治める帝國を造り上げやうとして、淸帝國追放」と出て來た。テオはそのデータをカンテラに渡した。
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〈朝まだき一人プランを練つてゐる今日の創作如何にせんかと 平手みき〉
【ⅳ】
で、またカンテラの夢の中。「遷ちやん、フィアンセは飛んでもない人のやうだが」−「妾ハ色ンナ意味デ強イ男ガ好キナノダ」−「それにしたつてねえ」−「悟仁ハ四神ヲこれくとシテヲル。朱雀・玄武ハこれくと濟ミダ。後ノ白虎・靑龍ハ、カンテラ、オ主ノ許ニイル」−「それを彼氏は狙つてゐるつて譯?」−「有リ躰ニ云ヘバ、サウ云フ事ダ」
【ⅴ】
じろさん「で、カンさん、あんたと勝負したい、つて譯? 本當に飛んでもないな」−「さうなんだ。いきなり『封神演義』の世界に紛れ込んだ氣分だよ」−「勝負の場處は?」−「多摩川沿ひの河川敷だ。いくら遷ちやんが方向音痴でも、だうにか來て貰はないと」。テオが口を挾む。「方向音痴つて云ふのも、云ひ逃れなんぢやないんですか? 實は悟仁、【魔】と連帯してるんぢや」−カン「事務所に來たら、タロウもゐるし、結界も張つてあるつて事?」−テオ「はい。尤もこれは推測に過ぎませんが」
【ⅵ】
さて、新シリーズの幕開けである。カンテラvs.孟悟仁。本當に『封神演義』ばりの展開になつて來たな。作者、正直云ふと『封神演義』は未讀。だう書くかは、次回からのお樂しみ。ぢや開幕するとしませうかね。また。
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〈瀬戸際で風邪防御する夕まぐれ 涙次〉




