05 無知は罪
それから5分経たずに、私の実家の前に降りる。
「着いたよ。」
「ここが君のお家か。いい所だ。」
え、何でも褒めてくれんじゃん。イケメンすぎだろ。
既にMAX値を記録した脳内好感度メーターが限界突破する。私は昂る気持ちを抑えながら、玄関の扉を開け手招きする。
「さ、どうぞ中へ。汚いかもしれないけどごめんね。」
私が家に入るのを確認し、茉白も家に入る。
「お邪魔します。とても綺麗だね。」
あれ、告白された?
明月透香のIQは既に底をついている。
玄関を抜け1階のリビングへ。
私は、茉白をソファへ案内し、すぐさまお茶と来客用の菓子をテーブルの上に用意する。
「そんな気をつかわなくてもいいのに。でもありがとう。ありがたく頂戴するよ。」
茉白はコップに注がれたお茶を一口飲み
「早速なんだけど、私達の存在について説明しようか。」
私は、茉白の隣に座り、傾聴する。
「まず、さっきも言った様に私達は魔素の集合体によって形成された、いわゆる精霊や妖精に近い存在なんだ。魔素というのは、地球に元より存在するエネルギー粒子で、空気を浄化したり木々の成長を促したり、自然を育む重要な存在なんだよ。」
茉白が一息ついてから真面目な表情で
「それで、なんで私達戦乙女と呼ばれる存在が生まれたのかなんだけど、地球の滅亡を救うためなんだ。」
「えっ。」
衝撃の事実。戦乙女は侵略者とばかり思っていた。
私達のしていることは地球存命の邪魔だったことになる。
「魔素は環境の変化を受けやすい性質でね、長年に渡って人間の憎悪等のマイナスな感情が蓄えられ、大半の魔素が正常に機能しなくなったんだ。さらに、悪性の魔素が集結、融合したことで世界を滅ぼさんとする精霊、戦乙女が誕生した。その精霊を倒すのが私達の使命ってわけさ。」
知らなかった情報の数々が私の脳を乱打する。私の中の常識が塗り替えられていく。
「悪魔素は地球に害のある影響を与えるから、私達は【再世界】で世界を創り変える、私の場合は雪原だね。それを人類は侵略だと勘違いしているようだけど。コミュニケーションが取れないから仕方ないね。」
彼女達にとって、それはとても残酷なことだろう。全ては人類のまいた種。彼女の笑顔が、罪悪感が私の心を突き刺す。
「ごめん。」
「……透香ちゃんは優しいね。」
彼女はあまりにも優しすぎる。それでも、その一言で私は救われた様な気がした。
茉白は静かに深呼吸し、真っ直ぐ私の顔を見つめる。
「もし、透香ちゃんが良ければなんだけど……」
2人の視線が重なる。
「私と一緒に世界を救ってくれないかな?」
迷いは無かった。
「もちろん、私で良ければ力になるよ。」
「……ありがとう。本当に。」
彼女の綻んだ顔。正直、私は滅亡から地球を救いたいなんて大層な信念は持ち合わせていない。ただ、今目の前にいる女の子の笑顔を傍で見ていたい。そんなちっぽけな理由が今の私の原動力だ。