上振れ
「人類滅亡までの5年間を14回繰り返していると言いましたが正確ではありません」
「こういう状況なので、繰り返し能力を塔の攻略に充てるのが自然な流れなのはお分かりになるでしょう」
「14回という数字はとある研究者に接触し私が塔を調べ始めてからの数字なのです」
「そもそも、人類が滅亡するというのは本当なんだな」
凶作が根本的な質問を投げかけた。
「はい、塔の頂上から暗黒物質が流れて世界を包み込みバッドエンドです」
タスクは微笑みながら言った。
「私の接触した研究者はシモン博士といい、この塔を設立した張本人なのですが、シモン博士自身はこの塔の開発に後悔しています」
「私はシモン博士から<不吉>というベクトルの力を聞き、博士の紹介で超小型ドローンを手に入れました」
「その情報と小型カメラを搭載したドローン撮影によって塔の調査をしてきたわけです」
「まず、この14回は全く同じパターンではありませんでした」
「それぞれのパターンを集計するとこの塔に挑戦した猛者は6名います」
「この資料を見てください」
勇者ガルバタン 挑戦14回 最高踏破数38階
シモン博士 挑戦12回 最高踏破数18階
火の手ハオラン 挑戦6回 最高踏破数18階
暗殺者ワイヤー 挑戦3回 最高踏破数18階
風弓師ハサウェイ挑戦2回 最高踏破数8階
猛田 猛 挑戦1回 最高踏破数8階
「これをみると分かる通りガルバタンさんは毎回挑戦し優秀な成績を収めています」
「勝因は不吉と対を成す力<幸運>を習得しているためでしょう」
「そういえば凶作の名前がないな」
ガルバタンは聞いた。
「そう!そして今回15週目には上振れポイントが2つ存在します!」
「まず一つ目、ガルバタンさんが単純にいつもより強いこと!」
「そして二つ目、凶作さんが初挑戦しているということです!」
タスクが声高らかに言った。
「俺が初登場?」
凶作はタスクの調子に圧倒されながら聞き返した。
「ええ、もしかすると別の時間線では能力を持っていなかったのかも知れません!」
「しかも、ジャキを悠々と倒しています!」
タスクが意気揚々と話し続ける。
「まあ、大体わかった」
「これからどうする?」
ガルバタンは聞いた。
「2人の能力は<吉術>と呼ばれるもので、吉術の中でも2種類に分けることができます」
「2人ならお分かりでしょうが、<不吉>と<幸運>です」
「この2つは反対の性質を持つので相性に応じて入れ替わりで戦うのが良いと思います」
「しかし、フィジカル的に考えてガルバタンさんの方に多く戦ってもらうことになると思います」
「別に問題ないさ」
「決まりだな、明日も早いしもう寝よう」
別に明日早くは無いが、早く休みたかったガルバタンは早々に場を収めた。