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父と子

シモン博士たちは20〜28階までを難なく突破し、29階に足を踏み入れた。


「ムゲンは結局帰ってこなかった。凶作と引き分けた様だな」

部屋の中央には青紫色をした鬼の様な生物が座っていた。


〜29階の番人、ブザン〜


「こいつは手強いぞ」

とシモン博士が言うとロボットはジェットブースターの出力を全開にしてブザンに襲いかかる。

ロボットが長剣を振り下ろすとブザンは白刃取りの形でそれを受け止めた。


「この塔の材質はこの世のものではない。そしてその硬度は地球上の鉱物の比ではなく、破壊することは不可能だ。まったくどこから生み出された代物かは見当もつかんが・・・」

「その素材はその長剣にも使われておる。そしてその剣に斬れないものはない。それが不吉であってもな」

シモン博士がそう言い終わると同時に長剣の背の部分から小型のジェットブースターが飛び出し出力を全開にした。


ブオオオオオオッ!

長剣はブザンの白刃取りからするりと抜けて、ブザンの腹部を切り裂いた。


「グアアッ!」

ブザンは驚き、後ろに素早く後退する。


「正直言って貴様ら番人のことは知らん。だが、この塔から滲み出る不吉エネルギーに関しては熟知しているよ。貴様に勝ち目はない」

シモン博士の勝利宣言は偽りではなかった。

なぜなら彼は独房で塔の事ばかり考えていたのだ。


ロボットは煙玉を放ち、辺りは濃厚な煙幕に包まれていく。


「見えているぞ。ジジイの不吉は」

ブザンが右腕を振り下ろすと凝縮された不吉の思念体が手刀から射出され、それがシモン博士の胸を貫通した。


「無駄だ・・・生き残ろうと思ってはいない・・・この命は塔にくれてやるつもりだ・・・」

かろうじて立っていたシモン博士はそう言い残すと前のめりに倒れた。


「マイファーザアアアアアアアアアアア!」

ロボットは片言の雄叫びを上げた。


「悪いが人の手が加わった時点でロボットにも不吉は宿るのだよ」

ブザンが右腕を振りかざすと煙を掻き分けてロボットが目の前に現れた。


感情の持たないAIのはずだったロボットの脳内で何かが弾け飛んだ。


「マイファーザアアアアアアアアアアア!」

ロボットはブザンと組み合ったままブースターの出力を最大にした。

ロボットの感情はバーストし、限界突破した出力の勢いでブザンを壁に叩きつけた。


「グフッ!」

あまりの衝撃に喘ぐブザン。


ロボットはすでに機械を超えて、人の域に到達していた。


「面白い・・・!」「・・・!?」

ブザンがロボットを払い退けるとロボットはすでに動かなくなっていた。


シモン博士の敗因はAI学習機能の限界に挑戦し、本物の人間を産み出してしまったことにあった。

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