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人の顔が殴れなくなりボクシングを止めようと思ったのに、気になる女性がボクシング好きだと知ってしまった話。  作者: コヨコヨ


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ベルーガ視点九

 私は愛龍ちゃんと学校に来て教室に入った後、万亀雄君に手を掴まれ、教室から引っ張りだされた。そのまま、階段まで移動して止まる。


「芽生、お前に弟はいるか?」


 私は頭を一度だけ縦に動かす。そのまま、口を動かして喋ろうとするが声は出ない。万亀雄君に頭を撫でられ、小恥ずかしくなった後、メモパットに『弟はいるけど、最近見ていない。どこにいるか心配している』と書き、彼に見せた。


「今日の午前三時頃か、桃澤怜央と言う少年と会った。やっぱり、芽生の弟だったか。だが、芽生の弟が不良少年だなんてな」


『怜央が、万亀雄君に迷惑をかけたの? もしそうなら、謝らせて』


「まあー、言いようによっては、迷惑だな」


 私は怜央が万亀雄君に迷惑をかけたと思い、頭を下げて誠心誠意謝った。そのまま、怜央はどうなったのかとメモパットで訊く。


「あいつなら、立てなくなるまでボコボコにしてやったよ。大切な女を殴ろうとしたらしいからな。ひん曲がった根性を叩きのめしてやった」


 万亀雄君の口調からして事実だろうと思った私は彼をぶん殴りたくなった。だが、怜央の素行の悪さを知っているため、ギリギリで踏みとどまり怜央が他の人に迷惑をかける前に彼にボコボコにされてよかったのかもしれないと少しだけ感謝の気持ちも生まれる。


「だが、あいつはそれでも自分を曲げなかった。つえーよ、あいつ」


 万亀雄君は手放しで怜央を褒めていた。その言葉を聞き、私は自分が褒められたかのように感情が高ぶり、頭を縦に振るう。そうしていると、彼は子犬でも撫でるかのように私の頭に手を置き微笑みながら撫で始めた。

 私は万亀雄君の優しい手つきに少々ドキリとしながら視線を落とす。まるで子供のようじゃないかと思い、羞恥心が増して行く。


「怜央のことは心配だろうが、気にしなくてもいい。今朝、中学にも無理やり行かせた。強くなるだけが大切な者を守る方法じゃねえから、勉強しろってな」


 その話を聞いて私は万亀雄君に頭を何度も下げる。そのたび、頭を撫でられて、恥ずかしさと感謝の気持ちで心がいっぱいいっぱいになりつつあった。


「ほんと、表情がコロコロ変わるな。愛龍とまた違った可愛さがある。にしても、やせ型だな……。ちゃんと食べているか? 腹いっぱい食って暖かい風呂に入ってしっかり寝ていればもう少し肉が付くはずだ」


 万亀雄君は私のスカートの内側に手を入れ、すべすべの太ももを掴む。いきなりのセクハラを受け、私は咄嗟に脚が出た。伸びた足は万亀雄の顎に当たり、一撃を食らわせた。


「く……、い、良い蹴りするじゃねえか……」


『万亀雄君の、変態!』


「安心しろ、俺は脚より胸派だ。栄養が足りない体なのに、胸はデカいんだな。制服を着ていると普通に見えるのは着ぶくれしているだけか」


 万亀雄君のデリカシーの無さすぎる発言に私は文句を言ってやりたい気分だったが生憎声が出ない。胸をポンポンと叩いてメモパットに『そんなんだから、愛龍ちゃんに見向きもされないんだよ!』と書き記し、見せる。


 万亀雄君は改心の一撃を鳩尾に食らったくらい「ぐふっ!」と声を上げ、階段の壁にもたれかかる。まるで、リングのロープに体を預けているかのようだった。


「はぁ、はぁ、はぁ、俺をここまで追い詰める女なんて、愛龍以来だぜ……」


『視線、話し方、かかわり方、態度が全然なってない! 私が教えてあげたこと、全然やろうとしないし、やけに海原君に張り合うし、愛龍ちゃんに振りむいてほしいなら、もっと真面にならないと』


「そう言ってもな……。今更、自分を変えるなんて、無理だぜ……。天才の俺でも、女心まではわからねえからな。えっと、聞いておくが芽生に好きな奴はいるか?」


 万亀雄君に質問された私は海原君の笑顔や仕草、横顔などを脳裏に沢山思い出す。だが、親友の愛龍ちゃんの好きな相手が海原君だと気づいているため、この気持ちは考えないようにしている。だから、私は頭を横に振った。


「そうか。なら、怜央の面倒を見ている間、俺の言うことを聞いてくれ」


『え、エッチなお願い以外なら……』


「そうか、せっかくなら、その大きな胸を揉ませてもらおうと思ったんだがな。まあ、いい。この前の約束、覚えてるか?」


『六月二二日に会う約束のこと?』


「そうだ。その日が終わるまで、シゲと距離を置いてほしい。そうすれば、俺と芽生にとって良い未来につながるはずだ」


 万亀雄君の話を聞いても私は意味が全く理解できない。でも、怜央の件で万亀雄君に迷惑をかけてしまっているため、私は彼のお願いを聞く以外に選択肢はなかった。


「聞くが、キスはエッチに入るのか?」


『間接キッスもエッチに入るよ……』


「案外、ガードが堅い女なんだな。愛龍と戦い方が全然違うぜ。あいつは攻めまくるからな。ガードが甘いシゲは余裕で落とされるかもしれない。どっちも攻めタイプだから、俺たちガードタイプは待って待って、開いた部分に一撃を打ち込まねえと勝てねえ」


 万亀雄君の話がいまいちわからないが、私は拳を握り彼と同じく顔を守るように腕でガードしていた。

 その後、万亀雄君と共に教室に戻り、授業中も筆談しながら怜央について教えてもらった。昼休みも怜央が何しているのかと、根掘り葉掘り訊き出す。ただ、その間に愛龍ちゃんが海原君とイチャイチャしていた……。


『海原君と愛龍ちゃんがすごいイチャイチャしてる……』

『あぁ、ありゃ、愛龍がとうとう自覚し始めちまったのかもしれん』


 私と万亀雄君はメモパットで意思疎通を図り、互いに苦い表情を浮かべていた。

 私は海原君が愛龍ちゃんを膝の上に乗せて抱きしめながら頭を撫でているバカップルみたいな仕草を見て、食道が胃液で焼けるようなもやもや感が込み上がっていた。


 海原君は眠りそうな愛龍ちゃんを椅子に乗せ、机の上に突っ伏させる。眠っている間も優しい笑みを浮かべながら頭を撫で続けていた。


 私は胸焼けが酷すぎて机に突っ伏していた。その間、万亀雄君が頭を撫でてくる。「本当は逆になるはずだったのに」と、心の中で情けなく呟いていた。


 ある日、万亀雄君が「愛龍と仲良くなりたいから力を貸してくれ」と私にお願いしてきた時を思い出す。

 私は万亀雄君に力を貸した。うまくいけば愛龍ちゃんと万亀雄君がくっ付いて海原君が一人になると思ったのだ。

 だが、どうも上手くいかない。

 万亀雄君が愛龍ちゃんに対してびっくりするくらい弱いのだ。他の女子相手なら何も問題ないのに、愛龍ちゃんに対してだけ、ヘタレになってしまう。

 毎日のメッセージ交換すらできていない様子。幼馴染なら、もっと出来るでしょと思いながら、私としても強く言えなかった。私だってヘタレだから。


 愛龍ちゃんみたいに海原君に話しかけられない。ちょっと席が離れただけで、近くに行って筆談できなくなってしまった。本当はもっと筆談したいのに……。

 六月二二日まで海原君と距離を置かなければならないため、私から彼に何もできない。その間に、愛龍ちゃんと海原君がくっ付いたらどうしようとか、キスやエッチなこともしちゃったらとか、頭に何度もよぎる。それでも、怜央の件があるので、万亀雄君の話は断れない。少しの間離れるだけ……。それだけ。


 海原君と仲良くなってから一ヶ月ほどしか経っていない。二週間、気にしなければ良い。

 海原君と一緒にランニングするのを止めて、牛鬼ボクシングジムに朝向かうのもいったん止めて距離を取る。

 万亀雄君が何を考えているのか全くわからないけれど、怜央と言う弱みを握られているせいで反発できない。エッチなお願いをされたら、どうしようかと思っていたので海原君と距離を取るだけで済むなら、万々歳と言っていいかもしれない。

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