表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

第二話3/3 一夜だけの夢うつつ

 ――私如きが、皇子のシャツを剥くなど。本来考えられない出来事だろう。


 しかし今回ばかりは違った。良く言えば思慮深い、悪く言えばじれったい皇子を待ちきれず。私はセヴルムのシャツのボタンを、指先ひとつで外した。


 手先で敏感に感じ取る、セヴルムの体の凹凸。引き締まり、中身の詰まった腹筋のひとつひとつを、滑らかに撫で下ろす……この感触。


 昔から《雄》を引き出す事だけは得意だった。肌に指先を這わせ、淡い愛撫を繰り返すうちに。セヴルムは覚悟を決めたような瞳で、私を見つめた。


「んぅっ……」


 スカートの中に、セヴルムの手が忍び込む。太ももからお尻までの身体つきを、じっくりと味わうように撫でられ、私は少しだけ声を漏らす。


 嘘の喘ぎで気分を害する訳にはいかず。感覚リミッターによる快感遮断率は、いつもの半分ほど。


 やがて下着を脱がされ、セヴルムがキス出来るほどの距離まで体を沈めると。


 私はそっと、彼の頬に唇を添えた。


 触手のように絡み合いながら、お互いの下着を脱がす。脱ぎきれぬシャツにドレスを身に取ったまま、はだけた首すじや胸の辺りに何度も口づけを。


 そしてある時。ふとセヴルムは指を咥え、唾液で濡らした指先を……私のお尻へとあてがった。力んだ所を柔くほぐすように、力強く、時に甘くマッサージされ、私は吐息を漏らす。


 私もまた同じように、セヴルムの《ペニス》を愛撫していた。とろりと濡らした手のひらで、彼のペニスを優しく上下に……。……太く、大きい。私の小さな手のひらでは、両手を使ってやっと擦れるほど。


 お互いの準備は出来ていた。火照り、息を荒くし、見つめ合う。


《味わいたい》。セヴルムの私を見つめる瞳から、その言葉を感じ取った。


「んぁッ……!? く、ぁっ……う……!」

「くっ……。……暖かい、カシュラ。君の中は、とてもっ……」


 大きい、感じていた以上に。ぐぐぐ……と、中をかき分けるように貫かれ、セヴルムのペニスが私の中を支配する。


 ペニスが中の肉壁を、ごりゅぁっ……と押し広げ。カリの部分で小刻みに、こりゅっ……くにゅっ……と、小刻みな快感をもたらす。


 丁寧に濡らしたおかげか、痛みは殆ど無かった。それどころか丁度いい摩擦感で、思わず私は目を何度もぱちぱちとさせてしまう。


 亀頭から漏れた愛液が、私の中で糸引いていた。一番奥に塗りたくられた愛液が、腰を引く度にとろぉ……と垂れて、また奥へと押し戻される。


「……どうして、そんな。入念にッ……。これじゃ、なんかッ……」

「全部感じたい、君をッ……。君の全てを余すところなく、感じたいんだッ……」

「嘘っ……いわな、いでっ。くっ……はぁッ……!」


 いつもの客と違う。私をただ乱暴に犯すだけの、無粋な客とは。まるで本当に、《私》を求めているかのような。


 単純な快感だけで言えば、当然アイロムが勝つ。だがこうして激しく抱きしめられ、じっくりと丹念に犯されてみると。なんだか少し、頭がボーっとしてくる。


 むしろ快感をリミッターで制御している分、どこか独特な心地よさがあった。


「カシュラッ……出すぞ、君の中にッ……! 全部ッ……!」


 そして、ラストスパート。セヴルムは果てる直前、彼は私の体をベッドに抑えつけ、一気に腰使いを激しくさせる。


 外に出す理由など無かった。私はセヴルムに両腕を回し、互いの絶え絶えになる呼吸へと耳を澄ませながら……そっと快感に浸る。


 しかしその呼吸音すらも。次第に、セヴルムが私を犯す嬌音で……かき消されてしまっていた。


 ぱんっ……ぱちゅっ……ごりゅッッ……ずりゅぁぉっ……ぱちゅんッごりゅッァ……!

 ずりゅッッぬちゅッッずぷぷぷっ……ごりゅッッッ……ごりゅァんッッ――……!


「ふっ……くッ……――……! ん……くはッ……!!」


 中に注ぎ込まれる、セヴルムの精液。


 どろりと暖かな白濁のそれが、私の中を一気に満たしていく。


 びゅるるっ……びゅーーーー……っと。それでもなお精液は止まる事なく、私は中に注がれ続けた。


 ペニスで出口を塞がれ、行き場を失った精液たちが、私の前立腺を刺激してしまうほどに。


「……出し、すぎ。です。……セヴルム様」

「んっ……すまない、抑えが効かず。……だが今までの人生の中で、一番……心地よかった」


 私も、果てていた。容赦なく貫かれた前立腺によって、こそりと射精していた。


 しかし今となっては、中から溢れた精液と溶け合ってしまい。どれが私の精液なのかわからない。


 ……悪くない感覚だった。一夜の夢にしては。


「……また次も、君に会えるだろうか」


 そして私を抱きながら、セヴルムがぽそりと呟いたその言葉。私は両手で彼を抱き返しながら、「勿論です」と言う。


 だがわかっていた。次など来ない事を。きっとセヴルムもまた、『彼ら』のように……私から去っていく。飽きられ、忘れ、捨てられ、置き去りに。


 人形とはそういうもの。孤独な人間を慰める、一夜の道具。夜が訪れる度に私は別の誰かに愛され、忘れられ、置き去りにされる。


 だがそうだとしても。本当に、今日の夜は……。……案外、悪くはなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ