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09.それは、突然現れる

 時は夕暮れ。


「―――――さあ! 現在時刻17時ちょうど! 39周目もあと半分となりました! 24時間マラソンでございます!」


 うさぎのような耳も生やした小さなロボットが、言う。

 それは、私の周りをぐるぐると飛び回り、うざったい。なぜかこのトレーニングにて使用されることになった。


「息も絶え絶え、足を引きずるようにして走っているカレン選手! 最後まで持ちこたえられるのか!?」

 などと、私の実況をし続けるロボット。ひたすらにうるさく、ウザったい。


「アリヤ! このロボットを口をふさぐ方法はないのですか! うるさいです!」

 生き物と違い、口がないから塞ぎようがない。


「その質問は、21周目に聞きました。答えは、そのような必要はない。以上です」


「うがあああああああっ」と喚きながら、私は走り続ける。


 おかしい。おかしいぞ!


 私はこんなに汗水たらし、足を引きずりながらも走っている。なのにアリヤは、1周目から39周目まで、全く顔色を変えず、一滴の汗もたらさず走っている。

 速さも私にそろえているだけで、本気を出せばもっと速いだろう。


 同じ人種とは思えない。




 24時間高速マラソンも、40周目に入った。コースはずっと変わらない。

 ジャンヌダルクの領地を外壁に沿って走っているだけ。


 森の中は、カラスが鳴くだけで他には何も存在していない。


「……っうえ、ごほ、げほっ」

 体中で疲労を感じ、自然と吐いてしまった。もちろん、走ることはやめてはいない。

 やめてはいないが、やはりもう限界である。


 目の前が揺らめいていて、冷や汗をかき寒気を感じる。


 さすがのアリヤも、しびれを切らし私に言った。

「あともう少しではありませんか。あなたの様子じゃもう一周は無理ですね。この一周で終わりにします」



「基地をゴールに、走れ!」



「……イェェエエスッ! アリヤ!」

 最後に力を振り絞って、叫ぶ。

 

 険しい森の中を、草木を掻き分け進む。道があるわけじゃない。道なき道を進んでいく。


 小川をジャンプで乗り越えって、岩で躓きかけ加速し、草で小傷を得る。


 ひたすらに、草木を分けて走っていく。



 その時。



「!」

 今、一歩踏んだ瞬間から何かが変わる。




「――――軽い」


 さっきまでの疲労感は嘘のよう。


 私の体は、雲のように軽くなって車のように速い。




「ふふッ」


 なんだか機械のようで、疲労よりも、楽しさが勝ってくる。


 それは、この一周で終わり、ということが決定したから疲労感が消え去ったのか、それとも。


 何なのだろうか。



「……速度が上がりました。呼吸もいいです」

 そう言って、アリヤが近づいてきた。私の顔を見て、驚き喜ぶ。


「何か、顔についていますか?」


「いえ、なんでも。後程お伝えいたします」

 その含みのある言い方と笑い。いったい、何なのだ?


「さらに速度を上げますよ。ついてきなさい! カレン!」


 アリヤが私の前に出て、今まで以上の速度を出す。一気においていかれそうな背中を、追いかける。


 つま先に勢いをかけて一歩、岩に躓いて姿勢を低くし、加速。小川で大きく、遠くへ飛ぶ!


 とにかく、とにかく追いかけて、それがとにかく楽しくて。


 不思議と笑いがこみあげてくる。


 先に、大きな光が見える。森の出口。

 もうすぐ、基地の門に着くんだ。



 私はどんどんアリヤに近づく。そして、アリヤの呼吸を感じる。


「っは、っはあ、はあ―――――――――」

 さっきは乱れていなかったアリヤの呼吸が、荒々しくなっている。


 これは、超える(いける)



 森を抜ける寸前。

 私は、アリヤを追い越した。




「ゴール! おめでとうございます! 約24時間高速マラソン、完走でございます!」

 ウサギみたいなロボットが、宙を飛び回りながら喜んだ。



「―――っはあ! はあ、はあっ、はあ……」

 私は門の前で座り込んだ。走るのをやめた途端、今まで身軽さが嘘のよう。


「っぐ――――っはあ、っはあ、っはあ、げほ、げほ、げほッ!」

 肺が、酸素を吸おうとめいいっぱい縮みふくらむ。

 やがて呼吸困難に陥り、座っている事さえできなくなる。足がパンパンに膨らんで、痛い。


 体中が、疲労感でいっぱいだ。



「ふふ、うふふふふふ」

 そんなわたしを見て、アリヤは笑った。


「っな、っはあ、な、なん、でっげほっげほ!」


「何故って、おめでたいから喜ぶんです。うれしいから、笑うんです」


 何がそんなにおかしいのか。私は今、死にかけているんだぞ!


「おめでとうカレン。第一関門突破です」


「は、っはい?、っげっほ!!!!!」



 





 つまりは、私が能力開花をしたということらしい。



「まあ、開花と言っても、まだ三分咲き程度。でもよくできた方でしょう。二日でこの域に達するとは、今後が楽しみですね」

 アリヤが私の目を指した。


「あの時、あなたの目が強く光っていた。あの光は、ノインの持つ身体強化。ユールの働きによるものです」


「ユール?」


「きっと、あなたが軍人に追いかけられていた時に奇跡的に発動していた者です。あなたが言う、『私にしかない武器』ですよ」


 私はそこで、全てを理解した。

 顔全体が、真っ赤に染まる。

(全然、私だけの武器じゃないではないか!! もしや、ジャンヌダルクもアリヤも、それを最初からわかっていたのか!?)


 何と恥ずかしい事なのだろう。


「良かったじゃないですか。ユールを上手く扱うのは、ノインでも相当な熟練者じゃなくては難しいです。軍基地では、何とかうまい具合に働いてくれたようですが、運が悪ければ自爆していたに違いありません」


 そう言って、アリヤは私の頭を撫でた。


「おめでとう、カレン」


 嬉しい。


 こんなふうに、褒めてくれること。私をここにいさせてくれること。私にかまってくれること。

 私を、愛してくれること。


 私は、今この瞬間が嬉しくてたまらない。


 別に、こういったことが今までになかったわけじゃない。母にも父にも、兄弟たちにも、動揺に愛されてきた。

 だけど、なんだか、久しぶりすぎるような気がして。




「……カレン、泣いているのですか?」


「っ! 違います! 目に土が入ったんです!」

 気づかれたくなくて、自ら目に土を入れてしまった。

 今日、二番目に恥ずかしいことだ。


 そんな私の心は、すぐに見透かされアリヤはぷぷっと笑った。







 

 ド―――――――――――――ッン!



 

 近くで爆発音がした。同時に土煙が起こり、あたりが見えなくなる。


「いったいなんだ!」

 私は思わず口を開いた。


「……訓練場の方へ向かいましょう。カレン、急いで」


 それは、思わぬ刺客。


 他のどのロボットとも違う、究極体(ユルティム)


 それは完璧であり、完全であり、究極である。

 超えるものなど存在せず、在るだけで正義になりえる。


 




「……どうして、あれが」

 アリヤはそれを知っていた。知っていたからこそ、その存在を認めたくなかった。

 

「アリヤ、あれはいったい何です!」



 土煙などかき消して、究極の風格を露わにする。

 髪を風になびかせ、赤い瞳を光らせて。




 それは。

「――――――フランス軍の、ジル・ドレ少佐。軍が作り出した、バケモノですよ」

 アリヤは苦虫を噛み潰すように、顔を歪めた。



皆さまこんにちわ、こんばんわ!夏神ジンでございます!とうとうジャンヌダルクの方のストックがなくなってしまい、やばい!どうすりゃいいんだ!ということで昨日ポストさせていただいたところ、多数ご意見を頂きました!その中でも多かったのは、やはり「書く」こと!何でもいいから、少しでもいいから、とにかく書け!という感じで、誠に勉強になりました。(うるうる) コメントしていただいた皆様、そしてここまで読んでいただいた皆様!読んでいただき、本当にありがとうございました!ここにもぜひ、ブックマーク、コメント等々書いていただけると嬉しいです!!

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