11. 勇者たちが、やってきた
ズズ――――ッと音を立て、砂嵐が起こった。
地面には、足跡が後ろに向かって流れる跡が付く。
ジルは腹部を押さえ、しゃがんだ。
「はあ、はあ、はあ……っ」
「――っはあ、―――っはあ、―――っはあ」
両者の荒い呼吸だけが、この空間に響き渡る。
一方は立ち、一方はしゃがみ込む。
お互い、何も考えられなくなっていた。真っ白な頭は、次の動きを考えるのではなく、ただひたすらに呼吸することに使われる。
呼吸が正常になるにつれて、ジルの頭の中は真っ黒な感情で満たされていった。
どうして、どうして、と。
私の方が、私が、究極であるというのに。
一瞬は、同じ力量だった。これならば勝てると、本気でそう思っていた。
そんな彼女のプライドは、電光石火のごとく粉々に壊された。
不倶戴天の敵による、一発で。
「……おい」
私が口を掛ける。
「もう終いか」
私の体は、もう完全に傷を塞いでいた。だがどんと来い、とは言えなかった。
傷が塞がろうと疲労感がないわけではない。筋線維が、固くなり切れ、ガタが来ていることなんて体で感じていた。
相手だって同じだろう。生き物ではないから、筋肉の痛みを感じるわけではないだろうが、それにしたって彼女の体のへこみ具合は尋常ではない。
まるで、大きくて鋭利な岩石が上から降ってきたように、大きくへこむ跡がいくつもある。
「まさか、究極ともあろうロボットが、この程度でへばってんじゃないだろうな」
そう煽るように言えば、決まって彼女は私を睨み付ける。
憎まし気に。
「……いや、お前の負けだ」
ジルは小さくそうつぶやきながら、右手で背を探った。
と。
その時。
「そこまでだぁぁぁぁぁあああああああああああああッ!!」
何かが、私とジルの間に現れた。
上からだ。上から何かが降ってきたんだ。
降ってきた瞬間、それはジルに向かって剣を振りかざした。
さすがのジルも、不測の事態に後方へ退くことしかできない。
背中にあった物を持つのではなく、完全に防御に出たジル。
「残念だったな! 悪党め! この僕が来たからには、弱い者いじめなんてさせないんだな!!」
と格好つけながら参上したのは、ジルと同じぐらいの少年だ。
顔は幼く、蒼い髪、蒼い瞳。
そして何より、細く長い剣。
それでもジルが引き下がる様子はなく、動き出そうとした時。
「!」
どこからともなく、銃弾が飛んできた。
あと数ミリ、ジルが動いていれば見事に脳を貫通していたことだろう。
たまたま外れたのか、それともわざと外したのか。
ていうか、どっか撃ったんだ!?
私は今だ、どこからその銃弾がやってきたのか分からなかった。
「……若造、そのような不純な行為はこの場にはふさわしくないぞ」
ジルの真後ろから、草を掻き分け何かが現れる。
ジルに大きな影を作るほどの、大巨漢。否、巨人と呼んでもいいほどだ。
赤毛の、大きな戦斧を持った男。
それが現れた途端、ジルも私も血相を変えた。
――――勝てない。
そう思わせるほどの、重圧。
「その剣、只の剣じゃないだろう。隠し玉が、見えるぞ」
ジルは、背中に伸ばしていた手を戻した。この状況で、彼女は剣を引くことが出来なかった。
それをしてしまったら、最後。
そう思ったはず。
「それに、相手は武器を持っておらんのだぞ。負けを認めよ。さもなくば」
「おい、それぐらいにしておけ!」
勇者だ何だと語っていた少年が、口をはさむ。
「こいつは強い。きっとこいつが、隊長が言ってた新メンバーだ!」
「なんだと!? そうだったのか! ならもっと早く言え!」
がははははははっ、と先ほどまであんなにも怖い顔をしていた巨漢は笑い出した。
ん? いやいや、この状況。まずくないか?
焦った私は、
「あ、あの、違っ」
と、言葉になっていない言葉をこぼした。
それに気が付いた彼らは、私の方を一瞬見て、またジルの方を向いた。
え?
私、ノインだぞ? 普通に考えてこっちだろ! な、なんで、そんな……そんな目で私をちらりと見るんだ。私は除け者か!?
何故か信用を受けてないらしい私。
私はいない者のように扱われ、ジルの方へわんさか集まっていく。
ジルも状況を飲み込めていないらしく、口を開けたまま唖然としていた。
しかしすぐに、はっと正気に戻り戦闘の構えをした。
「お前たちが何を勘違いしているのか知らないが、私はお前たちの敵だ。特にそこの奴」
私は指を指された。
「お前を殺し、心臓を焼くまではここを立ち去らない」
「お前たちがどれほど強かろうと、私が引き下がることはない。お前たちごときなら、私でも勝機はある」
そう、宣戦布告をした。
その時。
「―――では、そこに私が加わってはどうだろう」
それは聖女の声だった。
美しい白髪をなびかせて、鮮紅の軍服を魅せつけながら。
「……ジャンヌ、ダルク」
まさしく、その人。
皆さまこんばんは!なんだかジャンヌダルクのpvがとてつもなく減ってしまった夏神ジンでございます!
当たり前と言えば、当たり前なのかもしれません……投稿頻度が低いから!!!
頑張っておりますが、毎日投稿は無理です!ですが、なぜか突然投稿することがこれから多くなると思います!火曜日、金曜日だけでなく、突然土曜日と日曜日続けて出します!とか……まあ、明日の自分は明日にしかわかりませんから!
最後に、ここまで読んで頂きありがとうございました!ぜひぜひブックマーク、コメント等して抱けると嬉しいです!!