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10. 覚醒

 土煙をかき消して現れたそれは、私を見るや否や何かに気付いたようだった。

 その目は―――――何か仄暗いものに汚染されている様。



「―――ッカレン!」


 その瞬間。

 私が見たのは、迫りくる少女と、私の前に立つアリヤの髪。


「ッ!」

 

 見れば、アリヤの腹部が突きぬかれていた。私は全くもって、その素早さにはついていけず、一瞬何が起こったのかさえわからなかった。だが、すぐにわかった。

 

 アリヤは、私を庇った。



「―――あ、ああ――」


 どうしていいのかわからない。アリヤは動いてくれない。倒れたまま、血を流したまま、立ち上がらない。呼吸だって、微かだ。



 少女ジルは、そこから勢いよく腕を抜いた。抜けば、アリヤはその場に倒れ一言も話さなくなる。

 ぼたぼたと音を出して流れる蒼い血。それは、我々しか持たない神聖なるものだ。


 それを、ジルは汚いと言わんばかりに、倒れているアリヤの髪やら顔になすりつけた。


 


「なんだ、こんなものか」

 ジルは、只そう言う。


「ノインという生物は、もっと強いと思っていた。最強種と名高い、神が愛した傑作が、私の一撃で死んでしまうとは」


「……死んでなんか、死んでいない!」


「いいや死ぬべきだ。ノインという存在は邪悪であり、粗悪な生物だ。貴様らは知らんのだ。自分たちがどれほど欲におぼれ、罪深い存在なのかということを。貴様らは、生まれながらに罪を背負っている」




「然るべきは死である」


 そんなことを、黙って聞いていられるほど私は強くない。


「クソ!」

 私はジルに蹴りを入れた。 


 そんな攻撃は、簡単に躱され、逆に蹴飛ばされてしまう。


「くッ」

 彼女の固い足が、私の腹に突き刺さる。

 血反吐を吐いて、地に伏せた私に彼女は容赦しない。


 上から私の頭を足で蹴る。その足を何とか掴んで、私は彼女を振り回し、投げる。


 しかし彼女は空中で受け身を取り、さらなる打撃へと私の下へ飛んでくる。

 私がどれだけ蹴ろうが、殴ろうが、彼女には一切穴が開かず、代わりに私の肩や、足の関節が外れるばかりだ。



 もう右肩の関節は外れた。足もおかしい。捻ったみたいでうまく走れない。



 

「データベースのどの顔とも、合わない。やはり此奴か」

 小さくつぶやく、ジル。


 

 一度止まり、ジルは言う。

「お前ごときが、何故あの方に気に入られている」

 

「はあ?」

 息絶え絶え、体もボロボロな状態の私と無傷かつ、息も切らさないジル。


「お前は弱い。私の方が強い。私の方が優秀で、頭がよく、力だって強い。私は、究極。なのにどうして」


 今のでよくわかった。

 此奴を動かしているのは、私への嫉妬心。誰に対する者かはわからないが、それが確かに彼女を動かし、今私を殺そうと強い憎しみに変わっている。


「……お前が、弱いから。そうに決まっている。逆に、それ以外の理由があるのか?」

 私は彼女にそう言ってやった。


 彼女の顔は見る見るうちに、真っ赤に燃えて今にも爆破しそうだった。


「うるさい、うるさい! 黙れ!」


「ぐはッ!」

 彼女の強烈な蹴りが、私の顔に当たる。

 

「お前に何が分かる!」

 手、首、腹、足。様々なところを、瞬間的スピードで打ちつけられる。

 それに必死で追いつこうと、その足を掴もうと、する私。


「お前がいるから、お前のせいで、そこは私の席なんだぞ!」


 私の口からは血が流れ、唇は切れ、青あざだらけ。

 それでも、倒れたりなんかしない。


「……っはあ、はあ、はあ」

 もう私に、殴る力は残っていなかった。


 完全に動けなくなった私の首を掴む、ジル。

「ノインなどやはり邪悪だ。お前たちには、生きる価値がない」

 違う。


「ノインなど死ぬべきなのだ。この世から抹消されるべき生き物なのだ」

 違う違う。


「貴様の家族も、仲間も、皆生きている価値がないから殺されるんだ」

 一気に力が掛けられ、呼吸できなくなっていく。苦しくて、その手を離す様に引っ張る。しかし、全く動かない。


「ッく……」


「先ほどのノインも、ここにいるノインも」




「どうせ捨てられ、駆逐され、死ぬだけだ」




「――――貴様もそうだ。ジャンヌダルク大佐に、いずれは捨てられる」

 

 違う、違う、違う。



「……ふふ、あはははははははは!」


「――何がおかしい、いや、何かがおかしい。貴様……まさか」

 首が、熱くなったのを感知し、異変に気付いたジル。


 私はしっかりと、彼女の目を見てやった。

「ふは、ははははは、はははははは!」

 蒼い目を、さらにさらに蒼く染め、光らせて。



「!」

 素早く反応したジルは、私の首から手を離し、距離を空けた。


 


「捨てられるのはお前の方だ。すでにお前は捨てられている」

 私を通してみていたのは、ジャンヌダルクだったのか。

 なら、私は勝てる。


 

「……貴様、今ここで死ぬがいいッ!」

 先ほど同様、瞬間的速さで距離を詰め、強い蹴りを決めるジル。足は私の腕に当たって、衝撃のあまり裂け、吹っ飛ぶ腕。



「ッ!」 

 だが、その程度では効かない。すぐに腕は再生され元通りになる。

 隙を狙って、ジルの顔に一発殴る。強く、速く。


 前とは違う。軍基地の時ように、全力でぶつかるんじゃない。

 一瞬を、切り裂く。



「―――ユールか」

 それを彼女は知っていた。しかし、信じていなかった。

 神なんて、そんなものは存在していない。全ては嘘だと、そう思っていた。

 しかし。



 それはとてつもなく恐ろしいものであり、彼女の体にいとも簡単に傷をつけた。


 

 ここからジルと私の、取っ組み合いが始まった。


 私は容赦なく、彼女を蹴って、蹴って、蹴って、蹴って。殴って、殴って、殴って、殴って。

 ジルはそれでもまだ平気そうな顔をして、同じようにして殴る、蹴る。

 

 両者とも隙が現れた瞬間に、連続して、断続して、まさにマシンガンのように、殴っていく。



「はははははははは! どっちが先に死ぬだろうな!」

 私が言った。


 彼女の鋼のように固いボディか、私の再生能力か。


「――――調子に乗るな、バケモノ風情が!」


 私が殴れば、殴るほど、彼女の体には凹凸ができていく。それと同じように、私の体の部位も殴られ蹴られで、血をふき出しながら再生を続ける。


 

 両者ともに一度下がり、位置について。


 走り出す。


 勢いをつけ、大きく、強く、素早い。



 蹴りを、同時に繰り出す。


 まるで火花が散るような、衝撃。


 それでも、私の方が絶対上だ!

 

 私は出した足を、戻した。

 今まで全体重をかけていたジルは、そんなことをされるとも思わず体勢を崩す。



 その瞬間、私の強烈な打撃が彼女を襲う。





 


皆さんこんにちわ!いつも元気な夏神ジンでございます!が!しかし!今日は大事なお知らせがあります!夏神ジン、毎日投稿をやめさせていただきます!(誠にすみません!) 理由は、クオリティが確実に下がっているから!ストックが切れてからというもの、pv数も減っておりますし、なにより自分自身作品に納得がいきません!毎日投稿をやめてしまうと伸びなくなるリスクも考えましたが、それよりも一話一話ごとの質を高めていくことにシフトチェンジしていこうと思います!誠に申し訳ございません!

投稿日については、ジャンヌダルクもプラズマも金曜日に同時に上げる予定です!

最後に、ここまで読んで頂きありがとうございます!ご意見等ございましたら、ぜひぜひコメント欄に!!

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