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恋の形  作者: 雨乞猫
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恋の形7

〈やるじゃないですか。それ、もう脈ありありですよ‼〉

 

みのりに今回の経過報告をした時にいただいたお言葉である。


「そうかな?正直俺にはよくわからんのだが」


〈本当に松岡さんにできるのか?と心配していましたが、やればできるじゃないですか〉


 妙に上から目線のみのりさん、初めて会った時はあんなに殊勝な態度だったのに……

 

女という生き物は変り身が早いと聞いたことがある、やはりみのりも女だったという事なのだろう。


早紀も今日は別人の様だったし。香奈ちゃんはあまり変わらなかった気がしたが……


「まあ、これで第一段階はクリアだ、今度の日曜日にでもデートに行こうと思うのだけれど


正直俺はそういうことに全く疎くて。どういうデートコースがいいと思う?」


〈そうですね、原宿にパンケーキを食べた後の話ですよね……じゃあこういうのはどうでしょうか?〉

 

それからみのりは色々なデートコースを提案してくれた。


ムードがどうの、コンセプトがどうのと、妙にテンション高くまくしたてるようにデートのプランニングを話してくる。


しかしそれを全てこなしたら一か月分くらいのデートになるのでは?


というほどの膨大で壮大な計画をスマホの通話口で長々と聞かされた。



「ありがとう、参考にさせてもらうよ」


〈いえ、私でお役に立てるのであれば何でも言ってください〉

 

女の子が〈何でも〉とか、言うな。と言いたかったが、変にもめても嫌なのでそこで通話を切った。


色々な事があったが、今夜はぐっすり眠れそうだ。


 そしていよいよデートの日、俺は待ち合わせ時間の十分前に来てみたが早紀の姿はまだ見えない


待ち合わせ場所は渋谷のハチ公前、ド定番もいい所だが早紀の強い要望によりここになった。 


周りはカップルか相手を待っている若者ばかり。俺としてはどうにも居心地が悪い。


落ち着かないまま何度もスマホの時計を見直していると、待ち合わせ時間の一分前に早紀は姿を見せた。


「お待たせ、待った?」


「いや、そうでもないが……」

 

早紀はベージュの上着に茶色のパンツルックという服装、背が高くスラっとしている早紀にとてもよく似合っている。


ていうか中学時代までは俺と同じでファッションとかには無頓着だったはず。


制服以外の早紀を見るのは久しぶりであり、この変貌ぶりに少し戸惑っていた。


「あんまりジロジロと見ないでよ」


「あ、すまん、つい……」

 

よほどマジマジと見ていたのだろう、俺は慌てて目をそらし謝罪の言葉を口にする。


それほどまでに早紀は輝いて見えた。可愛いという感じの服装ではなかったが


いかにも早紀らしいかっこいいという言葉が似あうファッション。


完全に着こなしているという感じであり、それでいて女性らしさを感じさせた。


黒のジャンバーにジーパンという何のひねりもない俺の服装とはえらい違いだ。


しかしあの早紀が……女ってやっぱ怖い。


「しかし、凄いな、今日の格好は」


「恰好とか言うな、まるでコスプレしているみたいじゃない」


「そういうつもりじゃなかったが。早紀の私服を見るのは久しぶりだから、ちょっとびっくりしてな」


「どう、今日の私のファッションは?」

 

早紀はおどけるようにクルリと一回転して見せる。


「こう言っては何だが、早紀のくせに妙におしゃれというか、かっこいいというか


着こなしているというか、正直驚いた」


「何よ、それ?褒めているの?」


「褒めているよ、百パー褒めているだろうが⁉」


「優斗にファッションの事を聞いてもね、まあ今のコメントは及第点と言った所かな」


「うるせーよ、俺にしては頑張ったのだぞ、もう少し点は高くてもいいだろ?」


「私だって今日は凄く頑張ったのだぞ」

 

両手を腰に当て、エッヘンとばかりに胸を張る早紀。こういうところは俺の知っている早紀で少しホッとする。


こうして俺たちは目当ての店を目指し、原宿へと向かった。

 

若者の街原宿。若いはずの俺には縁遠い場所であり、東京在住の俺でも来たことは数度ある程度だ。


多くの人々がせわしなく行き交い、どこか生き急いでいるような印象を受ける。


やはり比率的に若者が多く感じ、周りの人間の年齢は、同じくらいか俺より年上が多いはずなのに


町全体がどことなく疎外感を感じさせる。


〈ここはお前が来る場所じゃねーよ〉と言われているような気分になるのだ。


そんな人ごみの中をスイスイと歩いていく早紀。完全に原宿という街に溶け込み


俺と違って完全にこの街の市民権を得ているようだ。


「着いたよ、この店‼」

 

早紀に連れられてたどり着いたパンケーキの店。


おしゃれな店構え、中から漂ってくる甘い香り、まだ早い時間だというのに長い行列が視界に入って来る


その並んでいる人も若い女性が殆どだ。だが俺が驚いたのはそんな事ではない。


店の名前を聞いた時に気付くべきだった。そう、この店は香奈ちゃんと来たことがある店なのだ。


俺は一瞬言葉が出ずに固まってしまった、時間にしたら2,3秒だったろう。


だがそのわずかな間で早紀は気づいてしまったのだ。


「そ、そうか……この店、香奈と来たことがあるのか……ごめん」

 

バツが悪そうに視線を逸らす早紀。最悪だ。


「じゃあ、別の店にしようか。実は他にも行きたいところがあってさ」

 

無理矢理予定を変更し、平気に振る舞う早紀。その気持ちが痛々しく、居ても立ってもいられなかった。


「入ろう、ここに」


「えっ、でも?」


「いいんだ、早紀が来たかったのだろう?今日は俺が付き合うって約束だったじゃねーか」


「ごめん」


「何で謝る?」


「だって……いいの?」


「ああ、今日の俺は早紀と来たのだ、何の問題も無いよ」


 嬉しそうに微笑む早紀は本当に可愛かった。だが先ほど言ったことは強がりなどではなく


本気でそう思ったのだ。正直香奈ちゃんの事はまだ消化しきれていないが


早紀とこの店でパンケーキを食べることに何の抵抗もない、むしろそうしたかった。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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