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恋の形  作者: 雨乞猫
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恋の形21

篠原さんを見送った後、俺は電車に乗ることなくすぐにみのりへと電話をかけた。彼女の尋常ではない態度が気になって居ても立ってもいられなかったからである。


〈松岡さん、今日は随分と早い連絡ですね。デートを早めに切り上げてもう家に帰ってきたのですか?〉


いつもの定期連絡だと思い込んでいるみのりは緊張感のない言葉で話してくる。


「実はみのりに至急聞きたいことがある。電話じゃ何だから、今から出てこられないか?」

 

俺がそういうと、しばらく無言のまま沈黙していたみのり、そして再び話し始める。


〈他の人とデートしてきたというのに、こんな時間に別の女の子を呼び出すとか、松岡さんも中々やりますね〉


「今はそういう話をする気分じゃない、真剣な話をしているんだ」


〈何かあったのですか?〉


「ああ、実は……」

 

俺は今日会ったことを包み隠さずみのりに話した。デート終盤まで楽しく過ごせていたのに


帰り際ある三人組の女子を見た途端、彼女の態度が急変し様子がおかしくなったと。


〈なぜそれを私に聞くのですか?〉


「みのりは、対象者の事を色々調べているのだろう?だったら原因を知っているのではないかと思ったからだ」


〈でも、その原因とやらは篠原さんの報告書には書かれていませんでしたよね?〉


「ああ、しかし篠原さんに関しては最初からみのりが何か隠していると感じていた。


つまり報告書には意図的に載せられていなかったのでは?と考えたのだ、違うか?」

 

以前から感じていた違和感を元に俺が問い詰めると電話口で再び沈黙するみのり、そしてしばらく考えた後にようやく話し始める。


〈わかりました、今からそちらへ行きます。〇〇駅の近くにあるファミレスでいいですか?〉


「ああ、そこで構わない。どれぐらいで来られる?」


〈そうですね、二十分ほどかと〉


「わかった。じゃあそこで待っている」


〈急いで用意します、ではまた後で〉


そう言い残しみのりは通話を切った、俺はそのまま電車に乗り〇〇駅へと向かい、駅前にあるファミレスへと入る。


週末の夜だけにそれなりに混んではいたが待たされる事なく席へと案内される。


席へと案内してくれた店員さんに〈後で連れが来る〉と伝え、ドリンクバーを注文しみのりの到着を待つ。


それから五分後くらいにみのりが姿を見せた。電話からきっかり二十分


あれから出掛ける準備をしてこの短時間で到着する正確さ、こういうところが例の


〈あのお方〉とやらに信頼されている証なのだろう。


「お待たせしました」

 

寒さ対策としてコートや手袋を身につけてはいたが、慌ててきたせいか


鼻も耳も赤く息も弾んでいた。だが今の俺にはそんなみのりを気遣う余裕はない、到着早々早速本題に入った。


「さっき電話で話した件だが、どうなのだ?」

 

俺の切羽詰まった様子に何かを感じたのだろう、みのりはじっとこちらを見たまま何かを考え込んでいたが


何かを決意するかのように静かに語り始めた。


「はい、松岡さんの推察通り、篠原さんについては隠していた事があります」


「やっぱり……で、その隠していた事とやらを聞かせてくれるのだよな?」


「ええ、でもその前に松岡さんに質問があります」


「何だよ、いきなり。テストでもしようというのか?」


「はい、そうとっていただいてもかまいません」

 

力強い口調と真剣な表情で語る。いきなりの展開で少し戸惑ったが


〈篠原さんの秘密〉を知る為にはその質問に答えなければいけない様だ。


どうにも釈然としないがそれしか方法がないのであれば選択の余地はない


仕方がないので俺はその質問を受ける事にした。


「ああ、構わないぜ。質問でもテストでも何でもしてくれ」

 

わざとぶっきらぼうに返し細やかな抵抗をしてみたが、みのりはそれについては何も言わず小さく頷くと静かに話し始めた。


「松岡さんはここまで篠原さんと接してきて、彼女がどういう人間だと感じましたか?」


「どうって……いい子だと思ったぜ。明るいし、可愛いし、優しいし、何より話していて楽しい。


ある意味では理想的な女の子じゃないか?と思うくらいだ」


「それですよ」


「どれだよ?」


「いいですか松岡さん、よく思い出してみてください。あなたは三ヶ月前に彼女に振られて落ち込んでいました。


そしてその後、早紀さんに心動かされ、せっかく恋仲になったのに


その全てを無かった事にされて心に大きな傷を負いましたよね?でもそれからまだ一ヶ月しか経っていません。


それにもかかわらず今では篠原さんに心動かされていますよね?」

 

いきなり痛いところを突かれて、心にナイフを突き刺された気がした。


「そうだよ、俺は誰でもすぐに好きになる軽薄な人間だよ。それがどうだというのだ、今更俺を断罪したいのか?」

 

するとみのりはゆっくりと首を振った。


「違いますよ、松岡さんを責めているのではありません。


そもそも今回の件は我々が無理矢理頼んでそうしてもらっているのです、断罪どころかいくら感謝しても足りない程です」


「だったらどうして俺を責めるようなことを持ち出した?訳がわからんぞ」


「ですから、松岡さんが心動かされたのはあなた自身のせいではないと言いたいのです」


「言っている意味がわからんぞ、一体何を……」

 

俺はその時、みのりが何を言いたいのか気がつき、ハッとなった。


「みのり、お前まさか……」


「ええ、松岡さんがこの短時間で彼女に心を動かされてしまったのは篠原沙織さんが原因です


彼女はいわゆる〈魔性の女〉というやつです」


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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