イスキア到着
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アルミラに魔素の制御訓練をつけてもらいながら移動すること二日後。
「……潮の匂いじゃな」
荷台で寝転がっているアルミラがスンスンと鼻を鳴らしながら呟いた。
潮の匂いがしたということは、海が近いのだろうか?
首を伸ばして周囲を見渡してみるが、まだ海が見えない。
きっとアルミラの嗅覚だからこそかぎ分けることができるのだろう。
「そろそろ海が見える頃よ」
程なくして隣に座っているエリシアが右側を向きながら言った。
手綱を握りながらそちらに視線を向けると、木々を抜けた 先には目が痛くなるような鮮やかな海が広がっていた。
「おお! 海だ!」
「ルードは海を見るのは初めて?」
「一度だけ見たことがあるけど、こんなに広いのは初めてだ!」
俺が過去に見たことのある海は辺境にある漁村の入り江 くらいのものだ。こんなにも視界いっぱいに広がる海は見たことがなかった。
海原の上にはいくつもの船が出ていっては、戻ってきてといった光景が見える。
あれらの船はすべて漁船で毎日のように町に新鮮な海鮮食材が運び込まれているのだろう。
海魚、貝、甲殻類……味わうのが非常に楽しみだ。
彼方まで広がる海を横目に街道を進んでいくと俺たちは城壁の前にたどり着き、ギルドカードを提示して中に入ることができた。
イスキアの大通りにはたくさんの人々が行き来していた。
種族は人間が多く、その次に獣人、ドワーフが多いといったところか。
漁師が多いからか浅黒い肌をした者やガタイのいい者が多く、ぱっと見で誰が冒険者かわからないくらいだ。
「わはは! 人間たちがたくさんいるのじゃ!」
荷台にいるアルミラが窓から顔を出して無邪気な声を上げる。
「町だからな」
「我が元気にこの辺りを飛び回っていた頃はこんな町は無かったのじゃ!」
そりゃ、災害竜が元気に飛び回っているところに町を作ろうとは思わないだろう。
大通りの端には白塗りの建物が並んでいる。
「イスキアの建物はやたらと白塗りのものが多いな」
「石灰で白塗りにすることで潮風による劣化を防いでいるって聞いたことがあるわ」
素朴な疑問を抱いていると、エリシアが答えてくれる。
「ところどころ生えているあの変な木はなんだ?」
「ヤシの木ね。熱帯気候の土地や海辺でよく生えている植物よ。観賞用として植えられることも多いけど、あんな風に屋根代わりに使われることも多いわ」
エリシアが指さす先ではヤシの木の大きな葉っぱを組み合わせて作ったと思われる民家や露店が並んでいた。
簡易的な屋根になって便利そうだ。
街の外に生えていたら何枚か採取して、マジックバッグに入れておきたいものだ。
そんな風に気になったものを尋ねていくと、エリシアはすらすらと答えてくれる。
色々な場所を旅してきた 経験もあってか彼女の知識はとても豊富だ。
新しい町にやってくると、右も左もわからないので町を知る人間 がいると非常に心強い。
「二人とも最初にやるべきことはわかってるわよね?」
馬車を走らせているとエリシアが念を 押すように尋ねてくる。
港町にたどり着いて最初にやるべきことなんて決まっているじゃないか。
俺とアルミラは顔を見合わせて頷く。
「「ああ! 海鮮食材の食べ歩きだな!(じゃな)」」
「違うでしょ!」
至極当然の主張をすると、なぜかエリシアに怒られた。
港町にきたんだ。美味しい海鮮食材を食べる以外に何があるというのか。
大通りにはたくさんの屋台が並んでおり、そこかしこで海の食材の香りがしている。
この暴力的な香りを前にして食べ歩き以外の選択肢があろうか? いや、ない!
「まずは冒険者ギルドに顔を出して依頼の確認。それと拠点にする宿の確保。食べ歩きはその後よ!」
「用事を後にするのじゃダメなのか? エリシア?」
「我らは今すぐに魚を食べたいのじゃ!」
「どうして私がワガママ言ってるみたいな扱いなの? 新しい町にやってきたらすぐにギルドに顔を出す! 冒険者の暗黙のルールなんだからね!」
たとえ、その土地で依頼を受けるつもりがなくても冒険者ギルドがあれば、顔を出しておかなければいけないらしい。顔を出していないと何か事件を起こした時にギルドとしても仲裁に入るのも難しくなったり、何かやましいことを考えていると勘繰られたりするようだ。
「しょうがねえな。さくっと用事を済ませようぜ」
「これが人間世界の洗礼じゃな。煩わしい」
俺は品行方正な冒険者を心掛けているので、エリシアの言う通り先に用事を済ませてしまおう。先にやるべきことを済ませた方が飯も美味しくなるからな。
そんなわけで俺たちは冒険者ギルドへと向かった。
イスキアの冒険者ギルドは港から少し離れた海上に浮かんでいた。
さすがに馬車のまま進むわけにはいかないので港の端に馬車を停めさせてもらって徒歩で向かう。
水上に組まれた足場の上に立ち並ぶ木製の円形建物。周囲にはいくつもの桟橋が伸びており、大小様々な船が停泊していた。
「バロナにあるギルドとは随分と雰囲気が違うな」
「冒険者ギルドはその土地の特色を受けやすいからね。特にここは港町とあって独特よ」
足を進める度にギシギシと音が鳴り、海水の流れる音や波のぶつかり合う音が聞こえる。
やがてギルドらしき建物にやってくると、俺たちは両開きの扉を押して中に入った。
フロアに入ると、冒険者たちの視線が一斉にこちらに突き刺さった。
港町で生活しているからか冒険者の多くは日に焼けている。
しかし、俺たちはほとんど日に焼けていない。一発で他所からきた冒険者だとわかるんだろうな。
他所者を疎むようなもの、値踏みするようなもの……様々な視線が突き刺さる。
露骨なまでの情欲の視線はエリシアやアルミラへ向けられたものだろうな。
エリシアは容姿端麗なエルフだし、アルミラはやや肉感的に乏しさはあるものの妖艶な美しさを秘めている。男たちの視線がいってしまうのも無理はないだろう。
「とりあえず、掲示板を確認するか?」
「その前に受付でパーティー申請をしておきましょう。道中でアルミラも加わったことだし――って、そもそもあなたギルドカードは持ってるの?」
「持っておるぞ」
懐からギルドカードを取り出してみせるアルミラ。
「なんで持ってるんだ?」
「昔、暇つぶしに人里に降りた時にな」
そういえば、気晴らしに人間の町で生活をしていたこともあると言っていた。
実力に問題のない彼女が稼ぐ手段として冒険者登録するのは理に適って いるといえるか。
「にしても、このギルドカードかなり古いわね」
「登録したのはかなり昔じゃからの」
「それって大丈夫なのか? 確か長い間依頼を受けていないと冒険者資格が失効するんだろ?」
冒険者の資格を維持するには、一定期間の間に規定された数の依頼をこなさなければいけないルールがある。
冒険者には最低限の身分保障、宿の割引、関税の軽減といった特典がある。その庇護を受けながら国や街や村に貢献しない者をギルドは冒険者とは認めないのだ。
「確かにそうだけど、私みたいにランクが高いと失効とまではいかないはずよ」
エリシアによると、S、Aになると失効することがなくなるそうだ。
彼女が逃亡生活中に長期間依頼を受けなくても問題なかったのは、そういったランクによる優遇処置があったからだそうだ。
「前に活動していた時のランクは覚えてる?」
「随分と前じゃ。もう覚えていない」
「せめてBランクぐらいまでいっていれば、何とかなるかも……」
「そうなのか?」
「このくらいのランクになれば過去にそれなりの貢献があるだろうし 、一発で失効にはならないと思うわ。まあ、罰則によってランクダウンくらいはあると思うけど」
最新のギルドカードとは素材が違うので、俺とエリシアではどのランクを示すのかわからない。その辺りは職員に見てもらって判断してもらうしかないだろう。
「まあ、最悪失効してFランクからの登録になっても問題ないだろう」
「それもそうね」
アルミラは災害竜だ。
ワケあって全力は出せないみたいだが、それでも今の俺たちよりも強い。
Fランクからになっても、すぐに駆け上がるだろう。
「それよりも心配なのは、ギルドに災害竜とバレないことよ」
災害竜が人間に化けて人里に降りてきているなんて知られれば、とんでもない騒ぎになるからな。
「安心せい。ギルドの所有する魔道具ごときで我の【隠蔽】を見破ることは不可能じゃ」
自らのスキルにかなりの自信があるらしい。
ならば、俺たちはアルミラを信じるまでだ。
事前確認を済ませた俺たちはギルドのカウンターへと向かう。カウンターには五人の受付嬢がいる。
バロナに比べて、服装が涼しそうなのは気候に合わせてなのだろう。健康的な肌が覗いていて眩しいものだ。
「こんにちは、バロナ支部へようこそ。本日は顔見せでしょうか?」
俺たちの順番になると、受付嬢が見事な営業スマイルを浮かべながら言う。
「ああ、ついさっきバロナからやってきたばかりでな。Dランク冒険者のルードだ」
ギルドカードを提示しながらDランクと告げた瞬間、近くのテーブルでたむろしていた冒険者たちが嘲るように鼻を鳴らした。
こういう奴はどこにでもいるんだな。少しイラっとするが俺が低ランクなのは事実だ。
やってきたばかりの土地で喧嘩を吹っ掛けるわけにはいかない。
「エリシアよ。ランクはSだけど、事情があって受けられないから察してちょうだい」
我慢していると、エリシアがギルドカードを提示しながら、わざと周囲に聞こえるように言った。
「はあ? Sランクだぁ!?」
「なあ、エリシアってあの翠嵐じゃねえか?」
「蒼穹の軌跡の一員だったか? 壊滅したって聞いたが……」
エリシアのギルドランクを耳にして、どよめきの声を上げる冒険者たち。
俺のランクを鼻で笑った冒険者は顔を青くし、そそくさと立ち上がってギルドを出ていった。
「……おい」
「舐められないようによ」
元とはいえ、Sランクがパーティーにいるとなれば、周囲の冒険者も侮ることもないか。
「それと道中で仲間が増えてな。パーティーの追加を頼みたい」
「かしこまりました。では、追加する方のギルドカードをお願いします」
「うむ。アルミラじゃ」
アルミラが前に出て、ギルドカードを提示する。
「え? これは?」
が、今のギルドカードとはまったく違った材質のものに受付嬢は困惑しているようだ。
「ギルドに登録したのが、かなり昔でなぁ。しばらく依頼も受けてなかったんじゃが、どうにかなるかの?」
「う、上の者に確認してまいりますので少々お待ちください」
アルミラが事情を説明すると、受付嬢はカウンターを出て奥の部屋へと行ってしまう。
やや時間がかかっているのは上司が捕まらないのか、情報の照合に時間がかかってしまっているからか。
数十分ほど待っていると、先ほどの受付嬢が初老の男性職員を連れて戻ってきた。
「こちらは二百十年ほど前 に発行されたギルドカードですな。稀に人間族の中にも長寿な方がいますが、そういった類のスキルをお持ちで?」
「まあ、そんなものだ」
しれっと嘘をついている。
ちなみにアルミラのギルドカードには、アポイライトという鉱石が素材として使用されているのだが、産出量が極端に減ったことによって廃止されてしまったらしく、この素材が使用されているカードはかなりの旧式らしい。
「で、アルミラの登録はどうなるんだ?」
「魔道具に情報がなかったので名前と特徴を頼りに文献を漁り、功績を確認したところ過去にBランクの依頼をいくつか受けておられたことを確認できました」
「おー、かなり昔にじゃが飛竜の群れを追い返してやったことや、大墳墓での死霊王の討伐をしてやったことがあるぞ」
「ご本人の口から確認がとれましたので、それらを本人の正式な功績として認めましょう。ただし、Bランクとはいえ、ギルドに所属している以上は依頼を受けるのが冒険者の義務。長期間の依頼未達成の罰則として、アルミラさんは降格処分となり、そこからの再出発になりますがよろしいでしょうか?」
「構わぬ。冒険者として再活動させてもらえることに感謝じゃ」
過去の功績もあり、アルミラの冒険者資格は失効しないようだ。
エリシアが予想していた落としどころに上手いこと 落ち着いたようだ。
このままでは不便ということもあり、アルミラのギルドカードは最新式のもので再発行されることになった。
「見ろ! ルードたちと同じギルドカードじゃぞ! これで我も若者じゃな!」
最新式のギルドカードを貰えて嬉しいのか、アルミラがギルドカードを掲げてはしゃぐ。
懸念していたギルドの魔道具による【鑑定】はアルミラの【隠蔽】を見破ることはできなかったようで、種族欄にはしっかりと人間族と記載されていた。
ギルドの魔道具がしっかりと仕事をしていないな。
「ランクはいくつなんだ?」
「ドラゴンのDじゃ!」
「俺と同じかよ」
苦労して上がったというのに、降格処分を受けた奴と同じランクというのは、ちょっと複雑だ。
「災害竜がDランクだなんて詐欺だわ……」
アルミラの認定ランクを聞いて、エリシアが詐欺師を目撃したかのような顔になる。
そうは言うが、事情があるとはいえ元SランクのエリシアがDランクのような扱いなのも詐欺だと思うけどな。
そんな感じで俺とエリシアのパーティーにアルミラが正式に加わることになった。
●
顔見せとして正式なパーティー登録が終わると、俺たちはフロアに貼り出されている掲示板を確認する。
荷運び、露店の手伝い、海岸に現れた魔物の討伐、海の食材の採取などがある。この辺りはどこにでもある普通の依頼だが、漁の手伝い、魚の下処理、船団の護衛といった依頼は海の町らしさを感じさせるものだ。
他には深海探索の依頼や、沈没船の調査などがあり、俺たちのメインである海底迷宮に存在する魔物素材の納品などもある。
バロナとは求められる依頼の質がかなり違うが、海という広大な資源や海底迷宮が存在するだけあって依頼はかなり豊富だと言えるだろう。
「ギルドの人からオススメの宿を聞いてきたわよ!」
俺たちが宿に求める条件は部屋が清潔であり、併設されている酒場の飯と酒が美味い ことだ。その条件に見合う宿をエリシアが聞き出してくれたみたいだ。
道順は地図に書いているので、それを頼りして移動。
ギルドから徒歩で十分ほど歩くと、白塗りの壁で造られた三階建ての民家があった。
周囲には高い壁が立てられ、ヤシの木が生えている。
「ここよ! 『南風亭』ってところで店主が漁師でもあるみたい。毎日新鮮な魚介類を仕入れて提供してくれるらしいわ」
「それはいいな! 早速、ここで部屋をとろう!」
店主が漁師というのは心強い。
漁でとってきたばかりの新鮮な魚介を味わうことができるし、イスキアならではの郷土料理を味わうことができそうだ。
宿に入ると、カウンターに従業員がいたので名前を記入した。
ひとまず、十日分の料金を前払いすると、それぞれの部屋の鍵を受け取る。
「残念ながら二部屋しか空いてなかった」
「ならば、我とルードが同じ部屋でいいじゃろ」
「よくないでしょ。私とあなたが同じ部屋だからこっちにきなさい」
俺についてこようとしたアルミラをエリシアが引っ張る。
「えー、エリシアは小言がうるさいので嫌なのじゃ」
「うるさいってなによ! あなたが非常識なことをするからでしょ!」
災害竜ということですっかりと怯えていたエリシアだが、一緒に過ごすことでアルミラの扱い方がわかってきたようだ。
あの様子なら同室でも仲良くできるだろう。
エリシアたちが三階に上がっていくのを見送ると、俺は二階にある割り当てられた部屋に入る。
中央にはベッドがあり、ローテーブルとチェアが設置されている。
一人用なので部屋はそんなに広くはないが、大きな窓からは綺麗な青い海が見えていて景色がよかった。夜になったら静かな波音を聞きながら晩酌なんて乙な時間を過ごすこともできるだろう。
「お? なんだここは?」
部屋の中を確認していると、小さな扉があった。
扉を開けてみると、大人が一人入れるだけのスペースがあった。
地面には排水溝があり、壁にはホースのようなものが取り付けられている。
壁に書かれている使用方法を見ると、どうやら水魔石を設置することで水が流れる魔道具らしい。
海風には塩が含まれているために歩いているだけで肌に付着してべたつく。それを洗い流すためのもののようだ。
試しに水魔石を設置してレバーを捻ってみると、ホースの先端についている穴から水が出てきた。
火魔石も同時に設置すると、温水が出てくる仕組みのようだ。
これはとても便利だ。
部屋の中でいつでも温水を浴びることができるのは助かる。
エリシアに頼めばいつでもお風呂に入ることができるとはいえ、毎度頼むのは気が引けるからな。特にこのように別々の部屋に泊っている時はなおさらだ。
俺がしっかりと魔素を制御できれば、温水くらい自分で作れ……いや、俺には水魔法を扱う適性がないから無理か。
しかし、イスキアの海には水魔法を扱う魔物だっているはずだ。そいつを喰らえば、バフォメットのように魔法スキルを手に入れられるかもしれない。
もし、そのような魔物がいたら率先して倒して喰らうことにしよう。
軽く温水を浴びて汗を流すと、俺はエリシアたちの部屋に向かって合流しようとする。
「ひゃいん!」
「わはははは! エリシアがビクッてしたのじゃ!」
「ちょっと勝手に冷水に変えないでよ!」
どうやらエリシアたちも例の魔道具で汗を流しているようだ。
部屋に入れてもらって中で待たせてもらうわけにもいかないな。
まだ時間がかかりそうなので階段を下りて、外で待つことにする。
宿の外に出ると、強い潮の匂いを漂わせた青いエプロンをつけた男性が荷台を引いてやってきた。
「見ねえ顔だな? 新しくやってきた客か?」
「ああ、今日からお世話になることになった。冒険者のルードだ」
「そうか。俺は店主のバートだ。とはいっても、もっぱら漁師が中心で宿のほとんどは娘たちに任せているがな」
受付にいた従業員たちは、どうやらバートの娘のようだ。
宿の経営は主に娘夫婦が担当しており、バートは主に漁や、とってきた食材での調理を担当しているようだ。
「冒険で採れた食材を持ち込んで調理してもらうことは可能か?」
「ああ、少し値引いた上で提供してやるよ」
「ちなみにだが魚の下処理や調理法を教えてもらうことってできるか?」
「……それは構わねえが、どうしてだ?」
バートがこちらを見定めるような視線を向ける。
一般的な認識では冒険者はあまり料理をしないものと思われがちだ。
そんな冒険者である俺が、調理を教えてくれと頼んでくるのが不思議なのだろう。
「料理が好きなんだ。こっちの食材も扱えるようになりてえ」
「そうか。いい食材を持ってきたら教えてやるよ」
「わかった。その時はよろしく頼むぜ」
海の魚の調理法を学ぶことができれば、魔物を調理する際にも役立つからな。
バートに調理を教えてもらえるようにいい食材を確保しよう。
バートが去っていき、それと入れ替わる形でエリシアとアルミラがやってきた。
「ねえ、部屋に設置されている魔道具見た!?」
「お湯を浴びられる魔道具のことだろ? エリシアが前に来た時はなかったのか?」
「ええ、なかったわ。人間の町って、たった数年経つだけで色々と変わるものだからすごいわよね」
「エリシアの故郷はそうじゃねえのか?」
「エルフはよくも悪くも安定した生活をおくりがちだから」
俺の疑問に苦笑しながら答えるエリシア。
長い寿命を誇るエルフはとにかく平穏を好むようだ。
ただでさえ長い時間を生きるのに、いつもと同じ生活をして楽しいのだろうか。
「それよりも早く食べ歩きに行くのじゃ!」
などとエルフの生態について考えていると、アルミラが待ちきれないとばかりに言う。
宿を確保したら食べ歩きをすると決めていた。
ギルドでの登録と、宿の確保を先にやったせいで既に時刻はお昼を大幅に過ぎていた。
いい加減腹が減って仕方がない。
「それもそうだな! 行くぞ!」
「うむ!」
新作はじめました。
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