表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/55

豚鬼王の旨塩鍋

魔物喰らいの冒険者、LINEマンガにて公開中。

ウェブトゥーンをよろしくお願いします。


 豚鬼王と四十五体の豚鬼を討伐した俺とエリシアは、念のため森の中を探索。


 森の中腹ほどまで足を延ばして探索してみたが豚鬼の群れは確認できず。


 豚鬼王を倒したことから群れはほぼ掃討できたと判断し、依頼を切り上げることにした。


 ギルドが定めた討伐数は十体。


 その四倍以上の数を討伐しているし十分な成果だろう。


 さらに豚鬼王を討伐したことから特別に報奨金なども貰える可能性も高い。


 装備の費用がかさんでいた身としては非常に嬉しい結果だ。


 さて、仕事のことはバロナに帰ってから考えるとして、瘴気竜のスキルを使ったせいで俺の胃袋が限界だ。


 そんなわけで俺とエリシアは森の中で昼食を摂ることに。


 昼食のメイン食材となるのは豚鬼王と豚鬼だ。


「豚鬼って食べられるの?」


「イータ伯爵の手記によると美味いらしいぜ」


 豚鬼の分厚い筋肉は魔素によって強化されているらしく、その味は豚肉を遥かに越える甘みと旨みがあるらしい。


「へー」


「とりあえず、下処理だな」


 俺は豚鬼王と綺麗な死体の豚鬼を並べると、頸部を切り裂いて血抜き処理をする。


 豚鬼王の方が身体は大きいが、喪失した腕の方からも血液は抜けているので時間差はほぼないだろう。


「今回はどうやって食べるの?」


「今、それを考えてる。シンプルにステーキにしてそれぞれの食材の味を食べ比べるべきか……いや、瘴気竜の時にもステーキにしたしなぁ」


 またステーキで味わうっていうのも面白くない。


「鍋にするっていうのはどう? あれなら色々な具材も食べられるわよ?」


「アリだな。よし、鍋にしよう」


「決まりね! 私もお昼は豚鍋にするわ!」


 俺が鍋に決めると、エリシアもマジックバッグから鍋を取り出して準備をし出す。


「うん? 別に俺に合わせる必要はねえぞ?」


「同じものが食べられないから、せめて同じ料理にして雰囲気を味わいたいの!」


「ああ、そうか。すまん」


 どうやら俺の気を遣っているのではなく、彼女の気持ちの問題だったようだ。


 普通の人間には魔物を食べることはできない。


 そのため冒険中はエリシアと同じ料理を食べることはできないので少し寂しいのだが、それを埋めるために同じメニューにしているようだ。


「なんとかエリシアも食べられるようになればいいんだけどなぁ」


「こればっかりはルードのようなユニークスキルがない限りは無理よ」


 なんとか普通の人でも魔物を食べられる方法はないものか?


 イータ伯爵も生涯をかけて研究したが、そんな方法は見つからなかったので不可能なのかもしれない。


「お肉だけっていうのもバランスが悪いし、ちょっと食材を採取してくるわ」


「ああ」


 返事をすると、エリシアがふらっと森の中に入っていく。


 エリシアも一応は自然と共に生きるエルフなので森の恵みを採取することは得意だ。


 道すがら薬草や木の実を採取して、追加で依頼をこなしていることも多いし、きっとすぐに大量の食材を持って戻ってくるだろう。


 豚鬼王の血抜きが終えると背中から刃を引く。


 臓物などを抜いてロース、ヒレ、バラ、モモといった必要な部位だけを抜き取る。


 イータ伯爵の手記によると、睾丸がとても珍味で食べると絶大な絶倫能力を発揮すると書いてあるのだが、そんな状態になってしまえば料理を味わうどころではない。


 今回は鍋にするためコクのあるバラ肉を使用。鍋に入れやすいようにスライスしていく。


「山菜とキノコを採ってきたわよ」


「おお、美味そうだな」


 エリシアの持っているザルの中には大きなキノコやヨモギなどといった山菜が入っていた。


 鍋に入れたらとても美味しそうだ。


「火を起こしましょうか?」


「いや、それには及ばねえ」


 エリシアの提案を断り、マジックバッグから魔道コンロを取り出した。


「……これってもしかして魔道コンロ?」


「そうだ」


 魔道コンロとは、内部に火の魔石が内蔵されている携帯コンロである。


 とてもコンパクトでいつでも安全に火を起こすことができる。


「二つも買ったの?」


 魔道コンロは魔道具なので高級品だ。


 お金が足りないと嘆いているタイミングでのお披露目とあって、エリシアがジットリとした目を向けてくる。


「エリシアも使うだろうし、複数あればこれからの冒険でも便利だろ?」


「まあ、買ったのは少し前のことだし、いずれは必要なものだものね。ありがとう」


 ちょっと怒られるかと思ったけど大丈夫だった。


 ちゃんと二人分買っておいたのが功を奏したのかもしれない。


 鍋の中にゴマ油を引き、スライスしたニンニクを炒める。


 ニンニクが狐色になり風味が油に移ったら、酒、水、砂糖、塩を入れて、鶏ガラスープを投入。


「今の鶏ガラ出汁よね? どこかで買っておいたの?」


「いや、宿で暇な時に作っておいたものだ」


 さすがにこの場で出汁を作っていたらとんでもない時間がかかるからな。


 時短するために作っておいたものだと説明すると、エリシアはとても感心していた。


 昔からこういったコツコツとやることは好きだったからな。こういう準備は得意だ。


 スープを煮込んでいる間に俺とエリシアはニンジン、ネギ、白菜、キノコ、ヨモギなどの具材をカットする。


 スープが沸騰したところで先ほどカットした具材を流し入れて、最後にスライスした豚鬼王の肉を盛り付ける。


 エリシアの鍋には魔物の食材を入れるわけにはいかないので普通の豚バラ肉を載せて、他の野菜を多めに盛り付けてあげた。


 あとは蓋をして中火で五分ほど煮込むと。


「豚鬼王バラと山菜の旨塩鍋の完成だ!」


 蓋を取ると、こんもりと湯気が上がった。


 加熱されて薄ピンク色に染まった豚鬼王のバラが沸騰したスープの泡で震えている。


 ニンジン、ネギ、白菜などの具材も加熱されたことにより色彩が鮮やかになっていた。


「うわあ、美味しそうね!」


「早速、食べようぜ!」


 空腹だった俺とエリシアは己の茶碗に取り分けると、すぐに食べることにした。


 まずはメインである豚鬼王の肉をいただく。


「んっ! 美味えっ!」


「こっちのお鍋も美味しいわ!」


 解体していた時は硬かったバラ肉だが、魔素が少し抜けて加熱されたことにより信じられないくらいの柔らかさとなっていた。


 噛み締めると、豚鬼王の強い甘みと旨みが口内で弾け出る。


「普通の豚肉とどう違うの?」


「そりゃもう甘みと旨みが段違いだ」


「なにそれ! 食べてみたいんだけど!」


「食うか?」


「食べられないわよ!?」


 などという戯れをしながら俺は豚鬼王の肉を味わう。


 あっさりとした鶏ガラとの相性が抜群でこってりとした脂がスープに深いコクを与えていた。その旨みを柔らかく煮込まれたニンジン、白菜、ネギたちがしっかりと吸っている。


 エリシアの採取してくれたキノコも香り高い。


 ヨモギを食べると程よい苦みが広がり、口の中がスッキリとする。


 それぞれの具材に豚鬼王の肉の旨みやコクが染み込んでおり、どれを食べてもメイン級の美味しさを発揮していた。


 時間が経過しても魔道コンロが加熱し続けているお陰でずっと熱々だ。


 やっぱり魔道コンロを買っておいてよかった。


「ふう、美味しかったぜ」


「ごちそうさま」


 空腹だったこともあり、俺とエリシアはあっという間に鍋を平らげた。


 豚鬼王の肉は鍋でも強い存在感を発揮し、とても満足できる食べ応えだった。


 次は炒め物や揚げ物なんかでがっつりと食べてみるのもいいかもしれない。


「ねえ、豚鬼王からはどんなスキルが得られたの?」


 満足感に浸っていると、エリシアからの問いかけが飛んでくる。



 名前:ルード 

 種族:人間族

 状態:通常

 LV58

 体力:334

 筋力:290

 頑強:264

 魔力:215

 精神:193

 俊敏:223

 ユニークスキル:【状態異常無効化】

 スキル:【剣術】【長剣術】【体術】【咆哮】【戦斧術】【筋力強化(中)】【吸血】【音波感知】【熱源探査】【麻痺吐息】【操糸】【槍術】【隠密】【硬身】【棘皮】【強胃袋】【健康体】【威圧】【暗視】【敏捷強化(小)】【頑強強化(小)】【打撃耐性(小)】【気配遮断】【火炎】【火耐性(大)】【大剣術】【棍棒術】【纏雷】【遠見】【鑑定】【片手剣術】【指揮】【盾術】【肩代わり】【瞬歩】【毒液】【変温】【毒耐性(中)】【毒の鱗粉】【麻痺の鱗粉】【エアルスラッシュ】【火魔法の理】【土魔法の理】【精神力強化(小)】【鋼爪】【魔力回復速度上昇(小)】【猛毒牙】【猛毒爪】【瘴気無効】【毒無効】【麻痺耐性(中)】【雷耐性(中)】【土耐性(中)】【龍鱗】【猛毒針】【瘴気の波動】【闇魔法の理】【闇耐性(中)】【石化耐性(小)】【腐食耐性(中)】

【痛覚耐性(中)】【絶倫】【嗅覚】【統率】【物理攻撃耐性(中)】【配下強化】【皮下脂肪】

 属性魔法:【火属性】



 ハイポイズンラプトル、瘴気竜、豚鬼王などの戦闘を経て、俺のステータスはこのような感じへと変化していた。


「まあ、【痛覚耐性(中)】【嗅覚】【統率】【物理攻撃耐性(中)】【配下強化】【皮下脂肪】とかだな」


「とかって何よ? 他にもあるならちゃんと言ってちょうだい」


 エリシアがメモ用紙にスキルを記入しながら不満そうな顔をする。


 彼女の希望によって俺が手に入れた魔物スキルは報告する決まりになっている。


 当然だ。味方がどのようなスキルを持っており、なにができてなにができないのかわかっていないと円滑に戦闘をしにくい。


 しかし、今回手に入れた【絶倫】というスキルを年頃の女性に伝えるのは少し躊躇われる。


「その、なんだ、豚鬼っぽいスキルだ」


「豚鬼っぽいスキル? ……もしかして、【精力増強】とか?」


「……もっと上というか、いっぱいできるというか……」


「もしかして、【絶倫】!?」


 こくりと頷くと、エリシアが顔を真っ赤に染めた。


 気まずい。


 異性とまともにパーティーを組んだのは初めてなので、こういう時に何を言ったらいいかわからない。


 エリシアもセンシティブなスキルにどう反応したらいいかわからない様子だ。


 俺よりも長生きしているので経験が豊富なんじゃないかと思っていたが、意外と初心なのかもしれない。


「そ、それにしてもバロナの外の魔物って意外とレベルが低いんだな」


「そうね。こういう大きな街の傍だと危険な魔物が出現すると冒険者がすぐに討伐に向かうから」


 慌てて話題を変えてみせると、エリシアがすぐに乗ってくれる。


 王の上位個体なのでもっとレベルが高いかと思っていたが、意外と低くてそこまで強い敵じゃなかった。


 まあ、直前に戦ったのがLV78の瘴気竜というのもあったが、少し拍子抜けだったのは事実だ。


 憧れのSランク冒険者になるために、もっと強い魔物と戦い、喰らってみたいものだ。


「強くなるためにもっと深くまで瘴気迷宮に潜るか、あるいはアベリオ新迷宮に潜るべきか……」


「それもいいけど、私としては思い切って場所を変えることを提案するわ」


「場所を変える?」


「ルードは強くなった。だけど、急激に強くなり過ぎて経験が追いついていないわ。圧倒的に場数が足りない」


「それは確かにそうだな」


 以前の俺は誰ともパーティーと組んでもらえなかったせいで【状態異常無効化】を生かし、細々と瘴気迷宮に潜るだけの毎日だった。バロナから遠方の土地に赴いた経験も少なく、他の迷宮を攻略した経験も少ない。


 エーベルトとの決闘でも魔物スキルがなければまったく歯が立たなかった。それは俺に対人経験が不足しているというのもあるが、純粋に冒険者としての技量や経験が足りないということだろう。


「それにルードのユニークスキルのことを考えると、幅広い魔物のスキルを獲得しておく方がいいと思うの」


 ずっと同じ迷宮に潜っていると出現する魔物に偏りが出てしまう。


 瘴気迷宮などは特にそのいい例で瘴気や毒といった状態異常に関係する魔物に偏りがちだ。


 改めて獲得したスキルを確認してみると、随分と偏っているように感じる。


 土地が変われば魔物もガラリと変わる。今とは違った方向性の魔物スキルも手に入れた方が、総合力が上がるんじゃないだろうか。


「そうだな。エリシアの言う通りだ。俺も別の迷宮を攻略してみたい」


「決まりね」


「近くの街にちょうどいい迷宮はあるか?」


「この辺りだとイスキアの海底迷宮なんていいんじゃないかしら? バロナから一週間ほど南下したところにある港町よ」


「港町!? っていうことは、新鮮な海鮮料理が食べられるのか!?」


 港町ということは、そこに海がある。


 海があるということは新鮮な魚や貝といった海鮮料理がたくさんあるはずだ。


 魚の塩焼き、貝のバター焼き、海鮮スープ……想像するだけでお腹が空いてくる。


「新しい魔物のスキルや海底迷宮が目当てじゃないのかしら?」


「あ、いや、もちろん海底迷宮っていうのも気になるぜ?」


 慌てたように言うと、エリシアがクスリと笑う。


 冒険よりもつい食い気の方が出てしまった。少しだけ恥ずかしい。


 海底迷宮ということは海の魔物が多いのだろう。


 陸地の魔物とは違った系統のスキルを手に入れることができそうなので楽しみだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用でした~』

― 新着の感想 ―
[気になる点] 状態異常無効化があるから絶倫は無効化されてしまう気がするwww
[良い点] まさか3日も連続で更新してくれるなんてw女騎士も2日連続★ 代表作も毎日更新してくれれば最高★ [気になる点] やはり取ったかwww『絶倫』www これでいつかエリシアを満足させ子孫も残せ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ