表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/55

瘴気竜のスキル

LINE漫画にてwebtoon公開中!


 スキルの検証をしていると、木々をベキベキとへし折るような音が聞こえた。


 慌ててそちらに視線を向けると、ひと際大きな豚鬼がいた。


 通常の豚鬼は簡素な布を纏っているだけだが、この大きな豚鬼は冒険者のように兜や鎧を身に着けており、武器は長大な剣を手にしている。


「豚鬼王よ!」


「マジか!」


 豚鬼の異常発生により、存在する可能性も高いと示唆されていたが、まさか遭遇するとは思っていなかった。


 豚鬼王

 LV42

 体力:430

 筋力:302

 頑強:298

 魔力:158

 精神:136

 俊敏:225

 スキル:【長剣術】【体術】【痛覚耐性(中)】【絶倫】【嗅覚】【統率】【物理攻撃耐性(中)】【強胃袋】【配下強化】【皮下脂肪】



 鑑定してみると、レベルも高く、ステータスも豚鬼と大違いだった。


 以前であれば、LV差に絶望、あるいはその重圧に身動きすら取れなくなっていただろう。


 だが、LV78とかいう化け物と戦ったお陰か怯えることはなかった。


 これが経験というものだろう。


「フゴオオオオオオオオオッ!」


 豚鬼王は地に沈んだ配下を一瞥すると、空に向かって雄叫びを上げた。


 鼓膜と内臓を揺さぶられるような声量だ。


 あちこちの方角で豚鬼が呼応するかのような声が響いてくる。


「増援を呼ばれたみたい! 他の豚鬼たちが集まってくるわ!」


 エリシアが風精霊による索敵で情報を共有してくれる。


 豚鬼王と睨み合っている内にあちこちの方角から豚鬼が現れ、俺とエリシアはあっという間に囲まれてしまった。


 数はざっと見たところで四十体以上はいる。


 豚鬼の数が異常に発生していたのは、この豚鬼王のせいであろう。


「俺がスキルを使って全体の足止めをする!」


「わかったわ!」


 俺の短い一言でエリシアは意図を理解してくれたようだ。


 さすがにこれだけの数を相手に真正面から戦うのは分が悪い。


 一度、豚鬼の数を減らしておく必要があるだろう。


 エリシアがシルフィードを呼び出した。


 魔力を譲渡し、シルフィードが豚鬼たちを殲滅するための力を溜める。


 しかし、相手はそれをむざむざ許したりはしない。


 豚鬼王の指示のもと、豚鬼たちが一斉に襲いかかってくる。


 二メートルを越す巨体が地面を力強く踏みしめ、地面が激しく振動する。


 いくらステータスが相手を上回っていても、四方から押し寄せる豚鬼のすべてを蹴散らすことはできない。だから、そのために必要なスキルを行使する。


「【瘴気の波動】」


 瘴気竜のスキルを発動させると、俺の身体から濃紫の霧が発生。


 それを波動として飛ばそうとするが、思うように広がらない。


 どうやらこのスキルを発動するにはかなりの魔素を必要とするようだ。


 俺は体内にある魔素をかき集めるようにして一気に解放するイメージをすると、濃霧はしっかりと波動となって豚鬼たちに襲いかかった。


 濃密な瘴気の波動に呑まれた豚鬼たちがあちこちで膝をつく。


 中には走り方を忘れたかのように派手に転倒し、昏倒したような個体も続出した。



 豚鬼王 瘴気状態

 LV42

 体力:430→320

 筋力:302→209

 頑強:298→195

 魔力:158→78

 精神:136→67

 俊敏:225→114

 スキル:【長剣術】【体術】【痛覚耐性(中)】【絶倫】【嗅覚】【統率】【物理攻撃耐性(中)】【強胃袋】【配下強化】【皮下脂肪】



 豚鬼 瘴気状態

 LV29

 体力:120→65

 筋力:76→39

 頑強:75→36

 魔力:22→10

 精神:36→18

 俊敏:54→28

 スキル:【棒術】【痛覚耐性(小)】【精力増強(中)】


 鑑定してみると、豚鬼王を含む豚鬼たちのすべてが瘴気状態となっていた。


 豚鬼たちの動きを阻害できれば十分だと考えていたが、まさかこれほどの威力があるとは。


 豚鬼たちは死んだわけではないが、そのほとんどが瘴気に身を蝕まれてまともに動くことができない。


「『妖精の嵐!』」


 そんな好機をエリシアが逃すはずもない。シルフィードの身体に渦巻いていた風が解放される。


 豚鬼たちが竜巻に呑み込まれ、その巨体は上空へと舞い上げられた。


 中で渦巻く風の刃は豚鬼たちの肉体を容易く切り裂き、落下してくる頃には五体満足な豚鬼は一体もいなかった。


 シルフィードによる嵐が止むと、その中心部には豚鬼王が長剣を地面に突き刺しながらも立っている姿が見えた。


「……まだ王が生きているみたいね」


 自らの精霊魔法で仕留めきれなかったことが不満なのだろう。エリシアが唇を尖らせながら言う。


 まだ生きているとはいうものの豚鬼王の左腕はなくなっており、全身が風の刃で切り裂かれて多くの血を流している。


 多くの傷ができたことにより、傷口から瘴気が入り込んでその身をさらに蝕む。


 こうやっている今も豚鬼王のステータスが下がり続けていた。


 ただ立っているので精一杯といったところ。出会った当初の覇気はなかった。


 肉体はもう限界で王の矜持だけで立っているに違いない。


 俺が大剣を持って近づくと、豚鬼王は荒い息を吐きながらも残った片腕で長剣を引っこ抜き、こちらへ振るってくる。


 恐らく最後の悪あがきだとわかっていながらの行動だろう。


 俺は大剣を切り上げることで長剣を弾き、素早く剣を切り返して豚鬼王の首をはねた。


 重苦しい音を立てて、豚鬼王の身体が崩れ落ちる。


 増援の豚鬼や、他の魔物がきていないことをしっかりと確認した上で息を吐く。


「さっきのは瘴気竜のスキルよね?」


「ああ、まさかこれほどの威力があるとは……」


 瘴気によって豚鬼たちの足を止めることができれば、十分くらいに思っていたが予想以上だった。


「状態異常っていうのは、相手の強さに関わらず窮地へと追いやることのできる凶悪な攻撃よ。どれだけランクの高い冒険者でも対策ができていないと全滅しちゃうんだから」


 エリシアの言葉はどこか自分に言い聞かせているようだった。


 そういえば、エリシアのパーティーも深淵迷宮の階層主の呪いをはじめとする状態異常にやられたんだっけ。


 俺には【状態異常無効化】というユニークスキルがあるので大した攻撃ではないと思っていなかったが、エリシアはそうではない。


 俺は大丈夫かもしれないが、仲間にとっては脅威となる攻撃なのだ。


 これからはそのことを肝に銘じて、立ち回らないといけないな。


「それにしてもすごいスキルじゃない。そのスキルがあれば大勢の魔物に囲まれて平気だし、戦闘も大分楽になりそうね。豚鬼王だってこんなにも簡単に仕留めることができたし」


「それなんだがこのスキルは連発するのが難しい」


「もしかして、魔素をすごく消費するの?」


 エリシアの言う通り、この瘴気竜のスキルはとんでもないほどに魔素を消費するのだ。


 得に今回のような広範囲に広げるとなるとかなりの魔素を消費する。


 さっきと同程度の波動を放てと言われたらできはするものの、戦闘不能になるほど消耗する可能性が高い。


「切り札の一つとして考えておく方がいいわね」


 とはいえ、瘴気を纏うくらいであれば、魔素の消費はそこまでだったので狭い範囲で使うのなら消耗は抑えられそうだ。その辺りの運用法は今後の課題といったところだろう。


「あともう一つ欠点がある」


「……なにかしら?」


「めちゃくちゃ腹が減る」


 至極真面目な表情で伝えた俺の言葉にエリシアは目を丸くしてから笑うのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用でした~』

― 新着の感想 ―
[一言] これから豚鬼王の肉を食べるのでしょうが、ルードに【絶倫】スキルが付くんでしょうかね。 まあ絶倫だからといって好色になったり我慢が効かなくなったりするとは限りませんが、さてどうなるか。
[良い点] おおっ!今日も魔物喰らいの更新★ おつかれさまです! ついでに女騎士もwww [気になる点] LINE漫画の宣伝効果が何処まで見込めるか気になる★ [一言] 魔物喰らいの更新★ 明日も期待…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ