ポイズンラプトルの討伐依頼
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グラムが魔素を込めた一撃に耐えられることを確認した俺は、そのことを伝えるべくドエムの工房に足を運んだ。
「呪いの剣か……さすがにそれは参考にならねえな」
昨日のことを説明すると、ドエムは難しい表情を浮かべた。
それもそうだ。呪いの武具はとにかくわからないことが多く、その呪いの所以によって能力があったり、使用者との相性によって性質が変化したりする。
詳しい仕組みもわかっておらず、一概にこういうものだと断定することはできない。
「解析するために色々と調べてはみてえが、呪いが強いせいかワシじゃおいそれと触ることもできねえからな」
エリシアの時と同様にドエムが手を差し伸ばそうものならグラムはそれを拒絶するように赤黒いオーラを噴出させる。
それに触れれば、ドエムが呪われてしまうことは誰にでもわかるだろう。
「一応手持ちの剣を手に入れたことだし、借りてた大剣は返すぜ」
あくまでこれは繋ぎのために借りていた大剣なのでドエムに返却する。
「おう。魔素に適合する大剣の製作はこのまま続けるが問題はねえな?」
「そっちは続けて頼む」
今すぐに必要はないが、もしグラムを紛失したり、壊れてしまった時に使えなくなってしまうのも困るのでグラム以外にも魔素に耐えられる武器を持っておきたい。
護衛依頼なんかで呪いの武器を忌避する人がいるかもしれないし、公然と持てる武器も欲しい。
そんなわけでドエムには引き続き魔素に耐えられる大剣の製作を頼むことにした。
ドエムへの報告を終えると、俺はその足で冒険者ギルドに足を運ぶ。
エリシアは先にそっちの方に向かっており、今日こなすべき依頼を物色しているはずだ。
ギルドにやってくると、掲示板の前にエリシアはいなかった。
「こっちこっち!」
その声に振り返ると、エリシアは併設された酒場のテーブルに腰を下ろしていた。
テーブルには果実水と依頼書が置かれている。どうやら目ぼしい依頼を見つけて、待っていてくれていたようだ。
「すまん。待たせたな」
「そこまでだから気にしないで」
「いい依頼は見つけたのか?」
「ええ、瘴気迷宮にいるポイズンラプトルの討伐とそのボスの討伐よ」
ポイズンラプトルというのは小型の鳥竜種の魔物だ。
集団行動が得意ですばしっこく毒を吐いてくる。
一体一体はそこまで脅威ではないが、群れが膨れ上がると恐ろしい強さを発揮する。
今回、迷宮内で数が膨れ上がったのはポイズンラプトルのボスが出現したからであろう。
ポイズンラプトルの群れの討伐はDランク相当であるが、そこにボスが加わるとなると難易度が上がってCになる。
「相変わらずギリギリの難易度の依頼を取ってくるのが上手いな」
「イルミには白い目で見られたけど何も言われなかったわ」
もはや、言っても聞かないと思われているんだろうな。
まあ、前回のバフォメットの討伐依頼はきちんとこなしているし、ランク以上の実力があることは認知されているはずだ。問題ないだろう。
「よし、それじゃあ瘴気迷宮に向かうとするか」
「ええ!」
既に依頼の手続きは完了しているようなので、俺たちはバロナを出て瘴気迷宮へと向かった。
●
瘴気迷宮の中は、今日も瘴気に包まれていた。
薄紫色の霧がほんのりと階層内に漂い、俺たちの身体を蝕んでくる。
しかし、俺にはユニークスキル【状態異常無効化】があるのでどこ吹く風。
歩き慣れた道を散歩するかのような気軽さだ。
隣を歩いているエリシアの胸元では瘴気草が光っており、彼女を蝕む瘴気を軽減していた。
「瘴気は平気か?」
「ええ、低階層なら瘴気も弱いし、瘴気草があれば長時間いてもなんともないわね。不快なことに変わりはないけど」
瘴気草によって瘴気が軽減されるも、重ったるさや淀んだ空気のようなものはしっかりと感じるらしく、歩いているだけでも不快なようだ。
俺には状態異常がどのようなものかわからないので、普通の人からこうして話を聞くのは新鮮だな。
「そっちはまるで散歩するかのような気軽さね」
「なんていったって効かねえからな」
エリシアから羨むような視線を受けて、俺は豪快に笑った。
そんな中、ふと思った。
エリシアの瘴気状態を肩代わりすれば、彼女も万全に動けるのではないか。
「なあ、ちょっと【肩代わり】してみてもいいか?」
「やってみて!」
俺の意図することが伝わったのだろう。彼女が顔を輝かせて頷く。
エリシアの肩に手を置き、彼女の状態異常をスキルによって【肩代わり】する。
すると、彼女の身体を蝕んでいた瘴気が俺の身体に流れ込み、俺のユニークスキルが無効化した。
「あっ、すごい! 身体が楽になった……けど、またなんか重くなったわ……」
喜びを露わにしていたエリシアのテンションがみるみる落ちていく。
「どうやら俺が肩代わりして無効化しても、またすぐに瘴気状態になっちまうみてえだな」
エリシアの瘴気を無効化しても、迷宮内に漂い続ける瘴気がまたすぐに彼女の身体を蝕む。
いくら肩代わりをしても無限ループから抜け出せないようだ。
「残念ながら肩代わりしても無駄みてえだ」
エリシアの状態異常を無効化することを諦めて歩きだすと、彼女が無言で俺の手を握ってきた。
女性特有の柔らかな手の感触にドキッとする。
「……なにしてんだ?」
「ずっとは無理だけど、こうしてルードに触れていれば無効化できるんでしょ?」
「それはそうだが、ずっと手を繋いでいるつもりか?」
「私たちのレベルなら低階層の魔物なら相手にならないし問題ないわ」
会話をしている間にシルバーウルフが襲ってくる。
が、エリシアは手を繋いだままでシルフィードを呼び出し、襲いかかってくるシルバーウルフたちを精霊魔法でズタズタに切り裂いた。
「ね?」
確かにこのレベルの相手ならエリシアの魔法で一発だな。
俺が剣を振るう必要もない。
とはいえ、迷宮内で男女が手を繋いで歩くというのはいかがなものだろうか?
傍から見たら迷宮内でいちゃつくバカップルあるいは命知らずとしか思えない。
「……別にいいけど危なくなったらすぐに離れてくれよ」
「わかってるわ」
悩んだ末に俺は低階層の間だけエリシアに手を繋ぐことを許可することにした。
彼女も深い意味があってやっているわけじゃない。
俺と手を繋ぐことで不快感を回避できるのであれば、手を繋いで快適に移動しようという軽い魂胆だろう。
効率的な迷宮探索のための必要な行動だと思えば、それほど気になることではない。
そうやって気持ちを割り切って移動していくと、俺たちはポイズンラプトルの出現する二十五階層へたどり着いた。
石造りの通路から打って変わり、ぬかるんだ地面や腐った木々などが生えている。
階層全体が沼地へと変化していた。
さすがにここまでやってくると、魔物のレベルも高くなる上に数も多くなる。
エリシアの瘴気無効化のためとはいえ、手を繋いで動き回ることはリスクが大きい。
「ほら、手を離すぞ」
「はーい。うわっ、気持ち悪い」
手を離すと、エリシアがすぐに不快感で顔を顰めた。
「精霊魔法で索敵してもいい?」
「ああ、任せた」
これだけ開けた場所だと俺の【音波感知】による索敵範囲は狭くなってしまう。
だったらより広範囲を探ることのできるエリシアに任せた方がいい。
俺が頷くと、エリシアは風精霊を呼び出した。
子供の身長くらいあったシルフィードとは違って、手の平サイズの少女たち。
恐らくシルフィードよりも力の弱い風精霊なのだろう。
エリシアがポイズンラプトルを探すようにお願いをすると、風精霊たちは周囲に飛び去っていった。
「風精霊が飛び回って階層内を探してくれているのか?」
「いいえ、風を流して情報を拾ってくれるのよ。仕組みでいえば、ルードの【音波感知】と近いかしら?」
エリシアがそう説明してくれた瞬間、無風なはずの階層内に肌を撫でるような柔らかい風が吹いた。
恐らく、これが階層内全体に広がっているのだろう。
程なくすると風精霊が戻ってきて何事かを耳打ちする。
「あっちの方にいるみたい」
「わかった」
今のでポイズンラプトルの群れの居場所がわかったみたいなので、俺はエリシアの後ろを付いていった。
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