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レベルダウンを無効化


「レベルがダウンする呪いだって? そんな呪いは聞いたことがないんだが……」


 通常の呪い状態とは、軽微なものであれば体調不良などで済むが、凶悪なものになると呪いをかけたものに攻撃をしただけでダメージが跳ね返ってきたり、各防御耐性が下がってしまうことなどもある。


 厄介な状態異常攻撃の一つであるが、レベルがダウンするなんて悪質な呪いは聞いたことがない。


「私もこんな呪いを受けたのは初めてよ」


「ちなみにレベルが下がるとどうなるんだ?」


「レベルアップの恩恵はなかったことにされてステータスの数値が下がるわ」


「だからファルザスたちに苦戦していたのか」


 ステータスはその者の根源的な強さを表す。


 いくらSランク冒険者であるエリシアでもステータスの数値で負けていればファルザスたちに負けてしまうだろう。


「ええ、あいつら私が弱くなったことを知って売り飛ばそうとしていたみたい。本当に下種だわ」


 吐き捨てるように言うエリシア。


 あいつらのせいで長い間逃亡生活を強いられていただけに毒づいてしまうのも仕方がない。


「ちょっと【鑑定】でステータスを確認してみてもいいか?」


「構わないわ」



 名前:エリシア

 種族:エルフ族

 状態:呪い状態(レベルダウン中)

 LV43

 体力:212

 筋力:126

 頑強:134

 魔力:358

 精神:322

 俊敏:146

 ユニークスキル:【精霊魔法】

 スキル:【杖術】【体術】【弓術】【魔力操作】【魔力消費軽減(大)】【遠視】【隠密】【瘴気耐性(小)】【演奏】【詠唱破棄】【対話】【採取】【細工】【調合】

 属性魔法:【火属性】【水属性】【氷属性】【風属性】【土属性】【光属性】【雷属性】



 許可を貰って【鑑定】をかけてみると、エリシアのステータスが視界に表示された。


「うん? これでレベルが下がっているのか?」


 俺とレベルがほとんど変わらないし、突出した数値については普通に負けているんだが……。


「ええ、全盛期の三分の一以下よ」


 となるとSランク冒険者時代は少なくともレベル百は越えていたというわけか。


 当たり前のようにユニークスキルを持っているし、属性魔法も闇以外はすべて使える。


 じっくりとステータスを見ると、エルフ族って反則だなと思う。


 まあ、そんな俺の僻みは置いておくとして、エリシアは確かに呪いの状態異常にかかっているようだ。


「聖職者やスキルによる浄化はできなかったのか?」


「あらゆる伝手を使って頼んでみたけど無駄だったわ。できたのは精々レベルダウンの速度を鈍化させるくらいのものよ」


「となると、残っている手段は深淵の魔物を倒すくらいか」


 呪いを解くには、高位の光魔法を操る聖職者に浄化してもらうか、スキルによって解呪してもらうかが一般的だが、場合によっては呪いをかけた術者を倒すことで解呪できる場合もある。


 Sランク冒険者が手を尽くしてダメだったのだから、今回の呪いは後者が解呪の糸口になる可能性が高い。


「それは無理よ。全盛期の私とその仲間がいても敵わなかったんだもの……」


 エリシアが顔を俯かせながら呟く。


 それぐらい彼女も何度も考えただろう。しかし、パーティーで挑んで敵わなかった魔物を相手に、一人で挑んでも敵わないのは当然だった。


 エリシアは呪いと共に生き、レベルダウンを受け入れ続けるしかない。


「……レベルがゼロになるとどうなるんだ?」


 ふと疑問に思った。レベルがこのまま下がり続けて、ゼロになってしまうとどうなるのかと。


「その時は死ぬような気がするわ。根源的な力が抜けていくから何となくわかるの。レベルがゼロになった時に私は死ぬんだって」


 どこか諦観をはらんだ笑みを浮かべるエリシア。


 聖職者やスキルによる解呪もできなければ、深淵の魔物を倒して解呪することはもっと不可能。


 彼女がどこか諦めにも似たような気持になってしまうのも無理はない。


「暗い話をしちゃってごめんなさい。とにかく、これが冒険者狩りに追われていた理由だから。本当に助けてくれてありがとうね。ギルドに戻ってお金を下ろしたら改めて謝礼は払うから街に戻りまし

ょう」


 しんみりとした空気を振り払うかのように健気に笑みを浮かべるエリシア。


 どうにかして彼女を救うことはできないだろうか?


 エリシアは俺の憧れでもあるSランク冒険者だ。数々の活躍をした素晴らしい英雄が、このまま潰れてしまうのは人類の損失であり、俺自身が悲しくて仕方なかった。


【状態異常無効化】なんてユニークスキルを持っているんだ。


 俺がその呪いを肩代わりでもできれば……うん? 肩代わり?


 そういえば、ソルジャーリザードの一体がそんなスキルを持っており、喰らったことで手に入れていたな。


 俺はステータスを表示させて、その中にある【肩代わり】スキルの詳細を確認。


【肩代わり】……対象を選択し、その者が受ける攻撃、状態異常などを代わりに引き受けることが可能。


「あっ! もしかしたらいけるかもしれねえ!」


「ええ? どうしたの急に?!」


 興奮していたせいかエリシアが驚いたように振り返る。


「エリシアの呪いを無効化できるかもしれないんだ」


「無効化? 解呪じゃなくて?」


「口で説明するのは難しい。とにかく、今から発動するスキルを受け入れてくれないか?」


「え、ええ。わかったけど」


 こくりと頷いた瞬間に俺は【肩代わり】を発動。エリシアにかかっている呪いの状態異常を肩代わりすることにする。


 すると、エリシアの身体を蝕んでいた呪いが俺へと移行した。


 途轍もない力のこもった呪いが俺の身体を蝕もうとする。


 しかし、俺にはユニークスキル【状態異常無効化】がある。


 凶悪な呪いとはいえ、状態異常であることに変わりはない。


 俺には何の影響ももたらさないままに呪いは霧散した。


「あ、あれ? 急に思考がクリアになって身体が軽くなったような?」



 名前:エリシア

 種族:エルフ族

 状態:普通

 LV43


 試しに【鑑定】をして彼女の状態を確認してみると、呪い状態はなくなっていた。


「ギルドカードを確かめてくれ」


【鑑定】を持っていなくてもギルドカードを見れば、自分のステータスは確認できる。


 俺に言われて、エリシアはおそるおそるといった風に懐から取り出したギルドカードを視認。


「……呪いがなくなってる」


 表示されている項目が信じられないのか何度も視線を泳がせた末にエリシアは言った。


 彼女の頬にツーッと涙が流れる。


 このまま呪いに身体を苛まれ、死んでいくのだろうと覚悟していたエリシアだ。


 急に呪いがなくなれば驚くのも無理はない。


「でも、どうして?」


「俺には【状態異常無効化】というあらゆる状態異常を無効化することのできるユニークスキルがある。【肩代わり】スキルでエリシアの呪いを引き受け、俺のユニークスキルで無効化した」


「ってことは一度、私の呪いを引き受けたの!?」


「そうだな」


「なにしてるの!? 呪いを無効化できなかったらあなたがレベルダウンすることになっていたのよ!?」


 勢いよくこちらに詰め寄ってきながら言うエリシア。


 その声音や表情からただ単に怒っているのではなく、俺が大きな危険を冒していたことにエリシアは怒っているようだ。


「確かにそうかもしれねえが、別にできたんだからいいじゃねえか」


 根拠はまったくないものの俺の中でできるっていう確信があった。


 仮にエリシアの言うようにレベルダウンするようなことがあっても、俺には魔物を喰らってステータスやスキルを獲得できる能力があるので、彼女のようにレベルが下がり続けて死ぬことはないだろ

うなという目算があった。


 だけど、魔物を喰らうことまで明かしていない今は、そこまで言うべきではないだろう。


「バカじゃないの。出会ったばかりの私なんかを助けるためにリスクを背負うなんて……でも、ありがとう」


 トンッと俺の胸に頭を預けながら感謝の言葉を告げるエリシア。


 エリシアのパーティー仲間や恋人であれば抱きしめてやってもいいかもしれないが、俺たちはあくまで今日出会ったばかりの関係であり他人だ。


 とはいえ、突き放した態度を取るのも素っ気ない。


「おう」


 俺はエリシアの背中をポンポンと叩き、感謝の気持ちを受け取った意思を伝えた。






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『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用でした~』

― 新着の感想 ―
[一言] 会って1日も経ってない女がいくら助けられたとはいえ男の胸に頭預けるのは距離感がバグりすぎてて一気にみる気無くす。 テンプレのなろう見たいけど童貞の妄想が見たいわけじゃないんだよな〜
[一言] 肩代わりしてあげたら主人公以外も魔物食えるかも!? まだここまでしか読んでないから、この先の話で既出だったら恥ずかしい
[良い点] 魔化の状態異常を肩代わりしてあげたら魔物のスキル覚えられるんだろうか
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