逃亡者
ハイファンタジーランキング1位です。ありがとうございます。
今回は短めです。また更新します。
深い森の中を走りながら彼女は身を隠せそうな場所を探していた。
(奴らを振り切ることができただろうか?)
なんて希望的な感想を抱くも、すぐに彼女は頭を振って甘い考えを振り払う。
(いや、彼らはとても執念深い。一度、私を見失ったからといって諦めるとは思えない)
この身に宿った呪いがある以上、追われ続けるほどに不利になる。
(……もう魔力も心許ない)
完璧に振り切るか、腹をくくって撃退するかの道を選ぶしかない。
しかし、今の私に彼らを倒せるだろうか?
呪いのせいで今の私のステータスはかなり減少している。
正面から立ち向かっても勝てる可能性は五分といったところか。
確率を上げるためには何かしらの手段が必要となる。
脳内でグルグルと思案していると、不意に深い森を抜けてだだっ広い沼地へとたどり着いた。
沼地の奥には巨大な石造りの墓標のようなものがあり、地下へと続く階段が見えた。
自然物とは明らかに違うオブジェクトと、地下から地上へと漂う魔素を感知した彼女は、それが即座に迷宮だとわかった。
(この辺りある迷宮といえば……瘴気迷宮ッ!)
冒険者であった彼女は長年の経験から、その迷宮が何なのかを思い出した。
迷宮全体が瘴気に覆われており、足を踏み入れるだけで瘴気に侵されてステータスが減少する。それだけでなく、あらゆる異常に体が悩まされるという厄介な特性を持つ迷宮。
対策をしなければ、まともに探索することも難しく、高ランクの冒険者でさえも毛嫌いして潜ることはほとんどない。
(私が所持している魔道具であれば、瘴気によるバッドステータスを大きく軽減できる。彼らが対策道具を持っていたとしても、私よりも大きなハンデを背負うことになるだろう)
呪いによって拮抗してしまったステータスの差をそれで埋めることができるかもしれない。
もし、追手たちが瘴気を嫌って退散してくれれば万々歳だが、そこまで都合よくはいかないだろう。
(とにかく、ここで決着をつける。もうそれしか選択肢はないのだから)
彼女は迷うことなく瘴気迷宮に入るのであった。
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