第二十一話 愛する気持ち
翌朝
恋が目覚めると、まぁやんはいなかった。
「ん、あれ?まぁ兄?」
恋が部屋を出ると、他の5人はみんな起きていた。
「恋、おはよぉ」
「恋ちゃんねぼうー」
「遅いぞ!恋」
「ごめんごめん!ちょっと寝付けなくて。顔洗ってくるね」
恋は顔を洗って身だしなみを整えた。
「お待たせ!」
その後みんなで朝ごはんを食べて、恋以外の5人は龍弥が送ってくれることになった。
(えぇ!龍弥さんと喋れるかも!)
美紀はトキメいた!
「ねぇ、わたし助手席でいい?」
「美紀ぃ~。あんたもしかして…」
「な、なんのことよ!私はただ…」
「おーい!行くぞ~!早くしろぉ~」
龍弥がみんなを呼んでいる。
「後で詳しく聞かせなさいよ」
「う~…」
そう言って美紀は龍弥が運転するワゴン車の助手席に座った。
「ん?後ろじゃなくていいのか?」
龍弥は助手席に座った美紀に問いかけた。
「はい!ここがいいんです!視界が広いし…あと…」
「ふぅ~ん。そっか。まぁいいや」
美紀は運転する龍弥の横顔をマジマジと見てた。
(やっぱりカッコいい!龍弥さん…)
「…なんだよ?何か視線感じるな…」
「あっ…いや…その…龍弥さんって、独身ですか?」
「あぁ。そだよ」
「お仕事って何やられてるんですか?」
「建築士だよ。A市で設計事務所に勤めてるよ」
「そうですかー!カッコいいですね」
「建築士がか?そうなのかな」
(もうやばい!こんな恋したの初めて…)
美紀の頭の中はお花畑になっていた。
「龍弥さん、昨日はほんとありがとうございます。助けに来てくれて嬉しかったです」
「いやいや全然気にするな。それより傷は大丈夫か?」
「大丈夫です」
「これに懲りて、もう悪さするなよ?ちゃんと勉強して、他の奴ら見返してやれよ」
「はい!」
「やっぱり、はいって言ってくれる子は可愛いな」
そう言って龍弥は美紀の頭を撫でた。
その時美紀は…キュン死した…
その頃恋は、康二がくるのを待っていた。
(ちゃんとお兄ちゃんに謝らないと)
関口さんが恋に紅茶を淹れてくれた。
「はい。どうぞ。康二さん遅いね」
「ありがとう。佳奈さん。大丈夫。待ってる」
「ねぇ恋ちゃん。これからの事考えようか」
「これからの事?」
「うん…恋ちゃん今高校2年生でしょ?そろそろ進路というか、将来何になりたいのかを決めないとね」
「進路かぁ」
「あと3年で、恋ちゃんもここを巣立っていくかもしれないんだし。わたしはずっといて欲しいけど、そうもいかないからさ」
「なりたい自分…なんか全然考えていなかった。勉強もしてなかったし、これから行動して間に合うのかな?」
「大丈夫!間に合う!勉強なら任せて!私が教えてあげるから!」
「佳奈さん…勉強できるの?」
「まぁ!失礼ね!こう見えてもわたし、高校の教員免許持ってるんだよ」
「うそー!どうして教師にならなかったの?」
「ちょっと違うの…教師を辞めたの…」
関口さんはちょっと悲しそうな顔をした。それを察した恋は深くまで聞かなかった。
『こんにちは~』
康二が学園に到着した。
「来たよ。恋ちゃん。さぁ!」
恋は関口さんに連れ添ってもらい、康二の元に向かった。
「康二くん…恋ちゃん、無事だったよ」
恋は康二の前に立った。
「お兄ちゃん…ごめんなさい」
『パシーン!』
康二は恋の左頬を張った。
そしてすぐに恋を抱きしめた。
「バカ!お前…何やってたんだ!ほんと…」
康二は恋を抱きしめながら号泣した。
「お兄ちゃん。ごめんなさい!わたし…わたし…」
恋も一緒になって号泣した。
「恋、お前にもしもの事があったら…俺は…」
「もう絶対どこにも行かない!だから…お兄ちゃん…」
その光景を見ていた関口さんも涙が止まらなかった。
(やっぱり兄妹っていいなぁ)
ひとしきり泣いたところで、3人は談話スペースで話しをした。
「お兄ちゃん、この間殴られたところは大丈夫?」
「あぁ!大丈夫だ。ほんとはさぁ、あいつらを暴行罪で告訴してやろうと思ったんだが…やめた!」
「どうして?」
「実はな、まぁやんに言われたんだ。あいつらを訴えるのはやめてくれって」
「まぁ兄が?」
「あぁ、あいつ『俺がケリつけるから、お前はひいてくれ』ってな」
「そうだったんだ…」
「それで?恋はこれから先どうするんだ?」
「さっきね、佳奈さんともその話してたの。わたし、勉強頑張る!まだ何になりたいとかは考えられないけど、大学に進学したいと思ってる」
「そっか…こっからやり直すぞ!」
「うん!」
「ところでまぁやん、遅いな…」
「まぁ兄はどこに行ったの?」
「うん…最後のケリつけるからって言って出てったんだ」
まぁやんはあの倉庫跡にいた。
恋たちが監禁されていたところに行くと、城田と澤達がいた。
「よう!お前ら!」
「あ!あなたは…まだ何か用ですか…」
「なーにしょぼくれてんだよ!だらしねーな」
「…」
「城田さんよ…柏木とケリついたから…もうこれで終わりだ。お前らからケジメ取ることは何もない。そうだろ?雷斗?」
まぁやんの後ろから雷斗が姿を現した。
「か…若頭!」
「城田ぁ。おめぇクスリなんかに手を出しやがって」
「……」
「本来なら破門だけどな…今回だけは不問にしてやる」
「え?」
「え?じゃねぇよ!まぁやんに感謝しろよ」
「あ…ありがとうございます!」
「それから!そこにいるガキども!」
『はい!』
「テメェらも、本当ならコンクリ漬けにして海に沈めるところだけどよぉ!二度と弱い立場のやつらに手ェ出さないで、しっかり男を磨くんなら、面倒見てやる!どうするんだ?あぁ!」
『はい!すみませんでした!よろしくお願いします』
「まぁやん、これでいいか?」
「サンキュー!雷斗」
まぁやんは雷斗の肩をポンっと叩いた。
「オメェら!今一度まぁやんに対して、礼をしろ!」
『はい!ありがとうございます!まぁやんさん!」
「やめろよ…雷斗…」
「くくくく…」
「あはははは…」
まぁやんと雷斗は倉庫跡を立ち去った。
「ところで恋ちゃん、大丈夫か?」
「大丈夫!あいつは強いから」
「そっか。よかった」
「それよりもよ、あの時学園にあいつらが来たんだよ。恋を探しに。そん時に苑香さんが助けてくれたんだ」
「苑香が?」
「礼を言っといてくれ」
「わかった!学園まで送るよ。恋ちゃんの顔も久しぶりに見たいし」
「サンキュー」
「ただいまー」
「お邪魔します」
まぁやんと雷斗が学園戻ってきた。
「まぁ兄!おかえりなさい」
「恋、康二とは話済んだか?」
「うん!まぁ兄、一緒にいてやるって言ってたのに」
「あっ!悪い!忘れてた!」
「んもう!」
そして雷斗が恋に頭を下げた。
「恋ちゃん、今回はうちの者が酷いことをして。申し訳ない!」
「雷斗さん!頭あげてください!悪いのはわたしなんですから」
「いや…でも…」
「わたしは大丈夫!いい人生勉強になったと思えば」
「恋ちゃん…強いな…」
「えへへ…」
康二も奥から顔を出した。
「雷斗さん、ほんと大丈夫です。気にしないでください」
「康二さんまで…ありがとう」
「よし!今回の件はこれで終い!」
まぁやんが手を叩いてみんなに言った。
みんなに笑顔が戻った。
「じゃあ俺、帰るわ!俺みたいなのいると、康二さん体裁わるいでしょ?」
「あ…いや…全然」
「はははは!冗談!じゃあまたな!」
「おう!雷斗、元気でな!」
雷斗は車に乗り込み、帰っていった。
「さぁーてっと!俺は寝るかな」
まぁやんはほとんど寝ていなかった。
「じゃあわたしが子守唄歌ってあげる!」
「いらんよ。ガキじゃあるまいし」
「うふふふふ」
「その笑い方気持ち悪いからやめろ」
ちょっとした行き違いから、大きな事件にまで発展した今回の一件。
まぁやんはこれから自分のことだけではなく、家族の事もちゃんと考えていかないとと、改めて思った。
そして恋には、まぁやんに対して特別な感情が生まれた。




