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智広は動画を見てから、しばらく何事か考えていたようでスマホを戻してもらってからも時々首を斜めにして天井を見上げるような仕草が見受けられた。それはそれとして料理に舌鼓を打ちながら、3人で談笑し合う時間が1時間ほど続いたところで不意に亜季がテーブルに置いていたスマホが振動する。画面をちらっと確認した亜季は、



「あ、電話だ。ちょっと席外すね」



とそそくさと部屋を出ていった。勢い元彼と二人きりの空間になったため、ほんのわずかに気が張るかもと思いきや智広はそれを察してくれたのか、



「そしたらお酒もう一本追加しようか」



と何気ない感じて言ってくれたので特に緊張する事もないなと感じた。そのタイミングで出て行った亜季の事について彼が知っているちょっとした小話をしてくれたりして、わたしの方からも彼女から叩き込まれてよく知る政宗公の情報の補足をしてみて、案外こういう場面でもなんとでもなるものだと気付く。そうやって油断していた頃に迷ったような表情の智広がわたしに、



「ねぇ、もしかして動画の子と真理って会った事あるの?」



と予想もしていない事を訊ねられ、何故か分からないけれどとんでもなく動揺してしまった。



「え…なんで?」



こう訊き返してもわたしの反応で図星だろうと見当がついているとは思うけれど、こちらとしても何故それに気付いたか知りたかったので訊ねていた。それに対して智広がわたしのスマホを指さして、



「キーホルダー。『しょくぱんまん』の」



と一言。<あ…そうだ、動画の中でガチャのシーンがあったんだった…>と思うも時すでに遅しといった状況。誤魔化すのも変なので正直に、



「そう。その子大学生なんだけど地元のカラオケ店で話して、何故かすぐに再会して…動画を見て」



「そうなのか。まあだから何だって話なんだけどね」



「あ、ナンパとかじゃないよ。念のため。ただ普通に偶然が重なって興味持ったからこの間動画撮影を手伝ったの」



「なるほどなぁ…」



その感心したような智広の表情からわたしが何を読み取るべきなのかは分からなかったけれど、何となく恥ずかしい気持ちになったのはちょっと不思議だった。



「あ、でもね」



と自分でもよく分からない何かを説明した時、そのタイミングで亜季が戻ってきた。更に店員さんが先ほど追加したお酒を運んできてくれて、なんとなくその会話は立ち消えになった。もやもやはしたけれど亜季に説明しなければならないという事を考えるとちょっと勇気がいる話だったし、何より智広がやっぱり色々気遣ってくれたのかそこからは積極的に場を盛り上げてくれたので、その日は最後までそのノリで進める事にした。




そんなこんなで2時間半ほど飲んで食べ、それぞれ会計を済ませてそこでその日の会はお開きと言う事になった。店を出て仙台の夜の街の雰囲気を今一度味わうように深呼吸すると亜季がこちらを見ていて、「楽しかったね!」と嬉しそうに言ってくれていたのが印象的だった。この日一番飲んでいたのが彼女で明らかに学生時代よりもお酒に強くなった様子だったので、



「もしかして家でも結構飲んでたりするの?」



と訊ねてみたら、「うふふ」とほほ笑んだ。智広がややあきれ顔で見ていて、「ほどほどにしておけよ」と釘をさす。何だかんだで三人で過ごすとバランスがいいらしく、もしかしたら三人が望む『元の関係』に戻れているのかもなと思えている。そもそも卒業後に付き合いが無くなるという事も普通なのだから、これはかなり嬉しい事なのだと思う。



「真理。今日はありがとう」



改まった感じで智広に言われたので、



「こちらこそ、ありがとう」



と返す。それから彼がまた何気ない感じで言う。



「色々頑張れよ。とりあえず動画の事が何か分かったら今度教えてくれ」



この言葉に対してどう返すのがベストなのかは分からなかったけれど、



「まあ、頑張るよ」



と言っておいた。そこで彼と別れて亜季と二人になってから、



「さて、じゃあわたし達も行くとしますか!」



と声を掛けられる。この日わたしは彼女のアパートに泊まる事になっていたが、彼女の家はそこから歩くとやや遠いらしいのでタクシーを拾って移動した。車の窓から見える夜の街並みについて、きっと学生時代とは違う見え方をしているなと思ったけれど、また来たいなと思わせるものであったのは間違いない。




亜季の家に着いてからは正直亜季とただ飲んでいただけのような気がする。女同士になればなったで、店ではできなかった話もあり、愚痴もあり、彼女の趣味のディープな話もあり、でも気の置けない友の一人と過ごす時間はそれだけで高揚感を与えてくれた。動画の内容に関連して、わたしが調べた限りの地元の歴史、『丹羽さん』の話などをしていると熱心に聞いてくれて、話甲斐があった。



「二本松。いつか行こうと思ってるからその時は案内お願いします!」



亜季にそんな風に頼まれたら、ちょっと名所案内に本気になってしまいそうな自分がいる。夜中、彼女が敷いてくれた布団の上ですぐには寝付けなかったわたしは今後の予定も含めて気が付くと色々考え始めていて、その時まるで天啓のようにひらめいた『ある事』で酔った頭が奇妙にスッキリしたのを感じた。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




翌日、見送りに駅までついてきてくれた亜季と別れ、そこそこ早めの新幹線で実家に戻ったわたし。玄関で待ち構えていた父にお土産を手渡しながら、



「お父さん、今日も車借りて良い?」



と唐突に告げた娘は一体その時どう思われていたのだろうかと思ってしまう。あの時のわたしは普段と少しだけ違っていた。

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