麻美姉の惚気
(ま、麻美姉?)
僕はつい気になって二人の後を歩く。
そしてそのまま彼女の家の近くで彼らは別れた。
「……麻美姉」
「!?」
僕は無意識に声をかけてしまっていた。
(えーと、何を話せば……)
「見てた……?」
僕は首を縦にふった。
「そう……。さっきの人は生徒会長よ」
(やはり彼が生徒会長か)
「そうだったのか。ごめん気になってしまって」
「え? どう気になったの?」
「だから僕達は許嫁の関係なのに他の男と一緒に帰っているから……」
恥ずかしながら僕が言うと、僕達は沈黙になった。そしてちらっと彼女を見ると、少しビクビクしている。
「え? 麻美姉大丈……」
「そうね……ゴメンね要ちゃん。私達許嫁だもんね」
「え、うん」
「けど私、副生徒会長だから男女問わず他の人との付き合いがあるから」
「あぁ、そうだよね」
「でも……」
「え? わっ」
彼女は僕の右腕に抱きついてきた。
「その分、私は要ちゃんと一緒にいるから心配しないで♪」
「え??」
そして今日はずっと彼女は腕に抱きついて、鼻唄歌いながら僕の隣にいた。飯の時も、部屋の時もトイレ(!?)の時も。
「流石にトイレは駄目だって麻美姉ーっ」
「良いじゃない別に。将来のこと考えたら、先に見といても損はないじゃない」
「あーっ、やばい、やばいからーーーっっっ」
ずっと麻美姉が家にいるもんだから、案の定……
ドタドタドタと階段を駆け上がる音が聞こえてくる。
「姉さんいつまで要の家にいるの!?」
「そうよお姉ちゃん。それはずるいわーーっ」
「二人共!?」
「!? 何二人してくっ付いてるの離れなさいよ!」
「ずるいわ、お姉ちゃんばっかり。じゃあ私は左腕~」
「ちょ、ちょっと由美!? ミイラ取りがミイラになってどうするのよ!?」
「だって要ちゃんは~」
麻美姉は惚気た声で言う。
「私が他の男と一緒にいたら、ヤキモチ焼くんだものーっ」
「!?」
「え!?」
「!?」
(だ、誰がヤキモチだ)
「誰がヤキモチだ!? 許嫁として他の男といたから気になっただけだ!」
「!!」
「え~っ」
美海は震えていた。
「あんたねーっ、私には一番一緒にいるから、一番慣れてるって言っておいて、姉さんにはそれって……」
「美海??」
「こんの浮気者ーーーーっ」
「ぐわーーっ」
思いっきり殴られた。
(暴力反対ーー……)
僕はがくっとそのまま気絶した。麻美姉と由美の声が聞こえたような気がしたが分からない。
そしてムニッという感触があって、目が覚めた。
「やん♪」
二人の甘い声が同時に聞こえてきた。
「要ちゃん(お兄ちゃん)のH♪」
僕を布団に寝かせて、二人は僕の両端に制服姿でくっついていた。
「わわっ」
僕は慌てて手を引いた。
(二人の一体何処触ったんだ僕はー)
「もう23時だから寝ましょー」
「私はパジャマ持ってきたけどお姉ちゃんは?」
「私は流れで来ちゃったから、制服脱いで由美と寝るわ」
「えーっ、私はお兄ちゃんと寝たいのにーっ」
「駄目ーっ、あんたばかり良い思いはさせませーん」
こうして僕はベッドで、二人は布団で寝た。
そして朝起きてからからずっと二人と一緒にいる。
そして流石に由美とは学校に行く方向が違うのでむくれながら自転車を漕いでいった。
しかし麻美姉はずっと僕と一緒にいる。
というかくっつきぱなしだ。
「麻美姉くっつきすぎ……」
「だって要ちゃんといると楽しいもん♪」
「えぇ……」
「それに、他の男といると嫌なんでしょ?」
ここは反論出来なかった。そして美海と登校途中で会う。
「おはよう……」
相変わらずブスッとして言う。
「あ~、朝からやだやだ。姉さんが年下にそこまで密着して歩くなんて。妹として恥ずかしいわ」
「あら、妬いているの? みっともない」
「だ、誰が妬いているですって!?」
「貴女よ貴女」
美海は顔を真っ赤にして、
「誰がこいつに妬かないといけない訳? 適当なこと言わないでよ姉さん!!」
「誰も要ちゃんになんて言ってないけど」
「!!」
美海は悔しそうな顔をして、
「馬鹿ーーーーっっっ」
「美海っ!!」
急いで学校へ走って行った。
「あ~あ、行っちまった」
「あら、私だけじゃあ不満?」
麻美姉はそう言って寂しそうな顔をする。
「いやまさか。不満な訳ないじゃん」
そしてぱあと笑顔になり、より左腕をぎゅっとした。
「要ちゃ~ん♪」
(嬉しいんだけどなぁ、周りの目線が気になるなぁ)
クラスに着いて席に着くと、早川さんがこっちに来た。
「えと、どうしたの?」
「美海ちゃんが落ち込んでるからどういうことかと思って」
そして朝のことを説明した。そしたら彼女はため息をついて、
「私達は菊地姉妹のいざこざにとやかく言う立場じゃないけど、友達がしょぼくれているのを看過できないわ」
「……」
「だから貴方も美海ちゃんにしっかりしなさいよ」
「はい……」
早川さんから正論を言われ、黙ってしまった。
そしたらとんとんと叩かれ振り返ると上田がニヤニヤしながら大変だなと言った。
(うるせーっ。他人事だと思ってニヤニヤしやがって!)
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