副生徒会長の力
休み時間になると、同じ中学からの友達や席の近くの友達とグループを形成し始めた。
しかし僕が男子の輪に入ろうとすると、気まずい空気が流れたり、恨めしそうな目で見てきたりする。
(オワッタ……)
僕は凹んで机に倒れていると、美海が来る。
「何やってんのよ?」
「美海……」
「ちょっ……あんた、なんて顔しているのよ!?」
「……えっ?」
彼女は、はぁとため息をついた後、
「仕方ないわね。私のグループに来なさい」
「え? 良いのか?」
「許嫁のこと以外はある程度の誤解を解いてあるから」
そして僕は美海のグループに招待してもらった。
類は類を呼ぶというか、なかなか可愛い子を集めていた。
「この子は早川紗和」
「よろしく岩田君」
「あ、どうも」
彼女の髪の長さは美海と同じくらいで、眼鏡をかけた美人系だ。印象としてはきちっとした感じだ。
「それとこの子が水島亜美ちゃん」
「よろしくね岩田君♪」
「えっ、あ、どうも」
彼女の髪の長さは由美くらいで後ろ髪の先端は少し巻いている可愛い系であった。
まず早川さんが喋ってくれた。
「事情は軽く聞いたわ岩田君」
「あ、はい」
「まぁ、美人で有名な先輩と人目につくことをすれば、それは噂になるわ」
「はぁ……」
「気をつけなさい」
「あ、ありがとうございます」
(少し偉そうだが、怖い感じではないな)
一方、水島さんはこっちをじーと見てくる。
「あの、何か?」
「う~ん、なんか控えめな感じだね!」
「はぁ……」
水島さんはよく分からない。
そして放課後。
僕はこのままじゃ駄目だと思い、(男)友達を作るべく部活入部を決意する。
が、まだ部活の選択期間じゃないのでとぼとぼと一人帰っていると、後ろから要~、という声が聞こえた。
「美海」
「一緒に帰ろう」
「さっきの二人は?」
「もう別れたわ」
「そうか」
僕はため息を吐きながら歩いていると、
「なにため息なんてしているのよ? 幸せが逃げていくわよ」
「僕の明るく愉しい夢の高校生活にいきなり躓いてしまった……」
「ま、最初は上手くいってても途中で失敗することなんてよくあるじゃない? 最初躓いたら気をつけるから良いんじゃない?」
「美海……」
「な、何よ?」
「……菊地の親父さんがあんなこと言いだしたから、事態が変わったんだぞ」
「……」
「そりゃあさ由美がいつもより可愛い立ち振る舞いをしたり、麻美姉からはいつも以上の優しさを貰ったり嫌な気はしないさ」
「……」
「けど男子からは物凄い目で見てくるんだから……」
「じゃあ何? 私達との許嫁は嫌なの?」
「そういうことじゃないけど、夢にまで見たもう少し普通の高校生活を送りたかった」
「それなら麻美姉が絡んでくるからややこしくなるのよ」
「なんでさ?」
「この高校の副生徒会長で勉強も出来て、美人で有名な麻美姉が公然であんなに貴方とくっ付いていたらそりゃそうなるわよ」
「た、確かに……」
「そうよ、麻美姉にきっぱり言わないと!」
「そ、そうだな。美海の言う通りだ。今日は20時ぐらいに帰ってくるか?」
「多分それぐらいじゃない?」
「よし、言うぞーーーっ」
きっぱり麻美姉に断れました。
「なんでさ?」
「分からない?」
色気のある大人な感じで言われるとドキドキするな……。
「けどなクラスで男友達が作れなかったんだ」
「その分私と仲良くしましょうよ」
「いやいやだから僕は友達作って、やんちゃなことして遊ぶそういった青春を送りたいんだ!!」
僕は珍しく強めに言った。彼女は俯いた。しばらく無言になった。
(言い過ぎたか? いや、これくらい言わないと駄目だ)
「分かったわ……」
「うん」
「その代償として私が要ちゃんの為に貴方の友達作りを手伝うわ!」
「へっ!?」
「要するに学校内に横行している私との噂を払拭したら良いんでしょ?」
「ま、そりゃあそうだが……」
「任せて!!」
「……」
なんだろう。不安しかない。
後日。
朝、布団から起きると、また由美が寝ていた。
「おはよう。お兄ちゃん」
「はぁ由美。また寝てたのか?」
「あーなんか凹んでるー。今日、ここまで来るの大変だったんだから」
「ん? どういう意味だ?」
「家でお姉ちゃんと姉ちゃんに軽く軟禁状態だったんだから」
「そうだったのか??」
「そうなの。大変だったの」
「よく来れたな」
「上手く隙を突いたの」
(なんか分かんないけどすげーっ)
僕は由美の頑張りについ感嘆してしまった。
「あーっ、また要の布団の中にいるー!!!」
「姉ちゃんおはよう」
由美はにやにやしながら言った。
ご飯を食べ玄関から出ると、今日は麻美姉が居なかった。
「麻美姉は?」
「さぁ、学校に用があるから先に行ってるって」
そして僕は美海と登校する。
「姉さん何をする気かしら?」
「さ、さあな……」
「噂を払拭ってどうやってやるのかしら?」
「分からない」
(まぁ確かに、あらぬ誤解が解けたら、もしかしたら男子の友達が出来るかもしれない)
僕は一縷の望みを抱きながら美海と学校に向かう。
学校に着くと校門にビラが落ちていた。
(なんだこれ?)
見ると、
『私と美海は実の姉妹で、これは私達姉妹と岩田要との問題なので変な憶測や疑念は止めて欲しい』
という文面だった。
急いで校門を潜ると、マイクを持った麻美姉が壇に上がって生徒と対峙していた。
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