許嫁達の振る舞い
「え!? 許嫁?」
僕は急な話で狼狽えた。そんなこと言われても、困ると言うか……。
「なぁ、皆? そんなこと急に言われても……。あれ?」
三姉妹は俯いたまま、何も言わない。
そしてまずは美海が始めに口を開いた。
「要とそ、そんな仲になるなんてゴメンだわ♪」
満更でもない表情で彼女は言った。
おい、どういうことだ!? 美海の顔がニヤニヤしているぞ!?
次に由美が僕の方をちらちらちらちら見ながら言う。
「まぁ、お兄ちゃんがどうしてもって言うんなら仕方ないわ。なってあげても良いけどっ?」
由美まで……。一体どうなっているんだ?
はっと思い麻美姉の方を見ると、恥じらいながら、こっちをちらっと見て、
「要ちゃんが嫌じゃないなら、別に構わないけど……」
えーーーーっ。急にそんな展開になっても困ると言うか……。
いや、え?? 皆、まじ……?
「どうする要君? 三人のうち誰を選ぶ???」
はわはわしていると、菊地家がこちらをじっと見てくる。
「僕はその……急には選べませーん!!!」
急いで階段を駆け上がり、自分の部屋に閉じこもった。
(はあはあ、一体どうなっているんだ。三人の満更でもなさそうな顔、嫌じゃないけど……。ちょっと怖い……)
ドアをノックされ恐る恐るでると、親父だった。
「とりあえず許嫁相手を決めるのは保留にしとくか?」
父の薦めをそのまま鵜呑みにして、とりあえず今日の所は帰って貰った。
(ん? 三人の中から許嫁を選ぶのはもう決定なの?)
翌日。
温かい。やっぱり布団は気持ちがいいな。
ガッ。
「イテッ」
(ん? いて?)
僕は指を伸ばしてみると、
ムニッ、
という感触だった。
「……」
僕は目を覚まし布団の中を恐る恐る見ると、そこには由美がいた。
「おはよう、お兄ちゃん」
「ゆ、由美!?!?」
彼女は恥じらいつつも笑顔で声をかけてきた。
「もう、朝からどこ触ってるの? Hっ♪」
(一体何処を触ったんだ!?)
そしたらどたどたと階段が上がる音がして、
「由美。朝から何抜け駆けして……!?」
美海はこの状況を見て固まった。
そうだろう。僕もこの状況を見られて固まった。
「てへ。おはよう、ねーさんっ♪」
由美は吞気に挨拶をした。
「もー、由美ったら勝手に要の家に行くんだから!!」
「そんなの私の勝手でしょーっ」
なぜか一緒に味噌汁とご飯を食べる由美だった。
「美味しいです。お母様」
「あら本当? 由美ちゃんたら褒め上手ね」
そんなことないですよ~と、二人で女子トークを始めた。
そうすると問題は美海だ。とてもイライラしている風に見えた。
「早く食べて一緒に行こうよ、要」
「待てよ。そんなに急かすなって」
「も~っ」
制服に着替え、(由美は後で僕の部屋で着替えるはず、)美海と玄関を出ると、家の入口に麻美姉がいた。
「おはよう要ちゃん」
「お、おはよう」
「聞いてよ姉さん。由美ったら一人抜け駆けしてるのよ」
「まぁ、下のやることだから余裕がないのよ」
「要のベッドの中にまで入ってさ」
麻美姉も眉間をピクッとさせて、
「全く、はしたな……その手があるわね」
(その手って何!? まさか麻美姉が布団に潜って……。えへへ、それも悪くない)
「遅れた~。あっ、お姉ちゃんも居るんだ」
由美は中学の制服に着替えて出てきた。
「由美」
麻美姉は彼女に少し警戒したトーンの声を出した。
「何怒ってるのお姉ちゃん?」
彼女はにやにやしながら言う。
「別に。早く中学校に行きなさい」
「……は~い」
由美は少し悄気ながら登校した。
「よし、これからは私の番ね」
「ちょっと。私がいるの忘れないでよね」
ぎゃーぎゃーとなんか二人で言い合いを始めた。
「さあ要 (ちゃん)。行こう(行きましょう)」
「え、あっうん」
僕は戸惑いつつも僕達三人で高校に登校する。
(三人で登校するなんて、なんか久しぶりだなぁ。中学生以来か?)
なんてのんびり考えている気分は直ぐに消え去った。
「要ちゃん見て。綺麗な桜」
麻美姉は僕の左腕に右手を絡ませ豊満とした胸を当ててくる。
(さ、桜よりこっちに気持ちがいっちゃう……)
僕は彼女の巨乳に気を取られていると、背後から嫌な気配を感じる。見ると、ムッとした顔で美海がこっちを見ていた。
「美海……」
「デレデレしちゃってっ。本当要って助平なんだから!!」
「あら、この程度のことでスケベなんて美海もまだまだね」
美海はカチンと来たのか、僕の右手を取る。僕はついドキッとしたが、彼女は容赦なく関節を極めてくる。
「いたたたた。痛いって美海」
「ふん!!」
そして学校に着くと、生徒達はこの光景にザワついた。
教室に着くと、男子からの怒涛の尋問が始まる。
散々色んなことを訊かれた。
朝からどういうつもりだ? 2年の美人先輩となんであんなことが出来るんだ? 等々。
もう朝からへとへとになった。
一応彼女じゃないとは皆に言ったが信じて貰えただろうか?
姉妹を二股? とか、誘惑したんじゃないの? 最低とか女子達の声が聞こえる。
(許嫁か……)
もう学校では悪い意味で男女の注目の的だ。
(嗚呼、僕の明るく愉しい青春の高校生活がぁ……)
僕ははぁ、と机にもたれながら思った。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
ブックマーク、評価頂き励みになります。